入試本番が目前のこの時期、得点力をさらに磨き上げるコスパ抜群の学習法が「復習」だ。
この時期、復習がなぜ有効なのか?どのような方法で行えば、最大の成果を得られるのか?受験の達人たちに伝授していただく。
編集協力◎笹原風花
医学博士・本郷赤門前クリニック院長
吉田 たかよし 先生
東京大学工学部卒、NHKアナウンサーとして活躍後、医学部に再入学し、東京大学大学院医学博士課程修了。受験生専門の医療機関・本郷赤門前クリニック院長。著書『合格させたいなら脳に効くことをやりなさい』(青春出版社)など。
脳の仕組みから見て、復習には大きく4つの効果があります。1つ目は、一度覚えたことを思い出しやすくなること。記憶は、「記銘(インプットする)」→「保持(長期記憶として保つ)」→「想起(思い出す)」の3つのプロセスから成り、試験本番では「想起力」が非常に重要になります。復習により「想起」が強化され、「覚えたはずなのに思い出せない…」という事態を回避できるのです。2つ目は、想起にかかる時間を大幅に短縮できること。試験本番では瞬時に記憶を引き出す必要があり、復習を重ねることでこれが可能になります。
3つ目は、記憶が再固定化されること。復習する(=思い出す)ことで既存の記憶のネッワークが強化され、精緻化が進みます。これにより、多様な知識を自由自在に使いこなす能力が高まり、応用問題の正解にたどり着きやすくなります。そして4つ目は、大脳基底核などで行われる無意識下での知的な情報処理能力が高まること。復習を重ねることで、例えば典型的な計算処理など「考えなくても直感的に身体・頭が動く」という状態に至り、結果としてより高度な情報処理に意識を集中できるようになります。また、試験本番では緊張やストレスにより脳のパフォーマンスが低下しがちですが、無意識下での情報処理はそうした要因の影響を受けにくいというメリットもあります。
疲労とストレスが脳の機能を低下させるため、本番直前期の勉強のやりすぎはNGです。脳への負担が比較的軽い復習は、その点でも直前期の学習に最適なのですが、苦手な分野や細かい知識まで完璧に仕上げようとは絶対に思わないこと(不安やストレスにより、この時期は完璧主義になりがちなので要注意!)。復習の対象範囲は、自信のある部分からやや不安が残る程度の部分までが効率良く、細部ではなく全体を俯瞰してとらえるようにしましょう。
教科書や参考書は「さっと目を通す」くらいの感覚で眺めておくこと。特に図版や写真・絵などは、一瞬見ただけでも記憶について先述のような効果を得られます。覚えた知識を体系化するためにおすすめなのが、教科書や参考書の目次を見ておくこと。実は脳内にも目次に相当する機能があり、記憶した知識が整理されることで、より使いこなせる知識になります。また、数学などの問題でも、一題一題解き直すのではなく、正しい解法を見て全体の流れを再確認するような学習が有効です。脳では睡眠中に記憶が強化されるため、こうした復習は、夕方から夜にかけての時間帯に行うとより効果的です。
試験本番で一番悔しいのは、初見問題や難題で手も足も出ない事態ではなく、覚えたはずの事項を思い出せない、解いた記憶はあるけれど解法が思い出せない…という事態です。これまでにやったことを広く浅くざっと見直して、試験本番で即座に思い出せるよう、使えるようにしておく。これが直前期の復習の鉄則です。
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