国公立大・私立大 一般選抜 合格ラインを突破する得点戦略

大学受験に満点は要らない。合格ラインをクリアすればいい。
実際の入試データを見て合格ラインを知り、それを突破するための得点戦略を立てよう。
志望校の配点や自分自身の得意・苦手を意識した考え方を紹介する。
入試動向分析

合格最低点 = 学力の目安

 入試の合否は、一部の例外を除いて「総合得点」で決まる。総合得点とは、受験したすべての教科・科目の合計得点だ。国公立大ならば共通テスト(以下、共テ)と2次試験の合計得点、私立大の一般選抜ならば個別試験2〜3教科の合計得点ということになる。

 合格するには、総合得点で合格者と不合格者の分かれ目となる得点=合格最低点を上回ればいい。満点でも合格最低点でも、合格に違いはない。

 共テをはじめ、年ごとの入試問題の難易度や倍率の変動、科目数や配点の変更などによって、合格最低点は上下する。それでも、必要な学力レベルをイメージできる、最も現実的な目安である。この“突破すべきライン”を意識しながら、得点戦略を立てていこう。

合格最低点と合格平均点

 合格最低点とは、合否の分かれ目になる、いわゆる「ボーダーライン」のことを指す。国公立大の場合は、第1段階選抜のみで共テを利用する東京工業大のような例を除き、共テと2次試験の総合得点で合否が決まるため、国公立大の合格最低点は「共テの得点+2次試験の得点」で表記される。また、大学や学部によって満点や共テと2次試験の配点比率が異なるため、合格最低点が同じ200点でも、400点満点と300点満点では難易度が異なる。合格最低点は最低目標の指針となるが、確実な合格を目指すには合格者平均点レベルの学力が望ましい。合格平均点は、おおむね合格最低点より得点率にして5〜10ポイント程度高くなる傾向にある。

【私立大一般選抜 編】

1点差で明暗

 下の図表1は、龍谷大学経済学部(前期日程)の文系型スタンダード方式の、受験者の得点分布を示したグラフである。

 合格ライン付近を見ると、合格最低点(190点)の上下10点幅のゾーン(180~199点)には、全受験者2,248人のうち344人が固まっている。特に合格者は、150人がこの合格ライン上から10点以内のゾーンにいて、これは合格者の39.6%にあたる。

 合格ライン付近では総合的にほぼ同じ学力の受験生がひしめきあい、わずか1点差で合否が決まってしまう。189点で不合格となった受験生が15人もいることからも、1点の大切さがわかるだろう。

“1点の壁”を超えるには

苦手科目の放置は危険

図表2には、上のグラフから合格最低点で合格した2人(Aさん、Bさん)と、合格最低点に1点届かず不合格となった2人(Cさん・Dさん)の得点パターンを記した。ここからわかるのは、得意科目は苦手科目を多少はカバーできるが、極端な苦手科目は得意科目の足を引っ張るということ。苦手科目は放置せず、得意科目でカバーできる程度のレベルまで、底上げする必要がある。


 私立大の一般選抜では、7割程度の得点がボーダーになることが多い。図表4の同志社大のデータ(学部個別日程:正規合格者のデータ)も同様だ。7割のボーダーをクリアするには、Bさんのように3科目で平均的に得点するか、図表3のように8割・7割・6割という具合に軽重をつけて、平均得点が7割に届くような得点戦略を考えるとよいだろう。

 傾斜配点を採用している大学・学部であれば、得意科目で苦手科目をカバーする戦略が大きな効果を発揮する場合もある(逆もしかり)。



《選択科目で有利・不利はある?》

 受験生にとって不安なのは「選択科目」の扱いだろう。文系は「地歴・公民・数学から1科目」、理系は理科で「物理・化学・生物から1科目」を選択することが多いため、科目の難易度で有利・不利が生じ、得点に較差が出てくる。ただし、多くの大学・学部では偏差値や中央値補正法(成績順で中央に位置する人の得点を、その科目の満点の5割となるように全体を補正するもの)などを用いて調整しているため、心配はいらない。

違いは!? 個別試験と共通テスト利用入試

負担「少」もハードル「高」

 難関私立大の共テ利用入試では、標準的な3教科型の場合、合格ラインは文系・理系ともに得点率が70%台後半〜80%台と、一般選抜に比べてかなり高くなる傾向だ。図表5の青山学院大(共テ利用入学者選抜。経済学部以外の4・5・6科目型、共テ併用型を除く)では、合格最低点でも80%以上が多く、90%近いケースもある。合格者を募集人員の10倍程度出すことも珍しくない共テ利用入試だが、それは10倍の合格者を出しても、実際の入学者数は募集人員程度になるから。難関私立大の共テ利用入試は、トップ層の難関国立大志望者などが併願先として出願する場合が多く、それゆえに合格ラインが跳ね上がる。共テ利用入試は時間的・金銭的負担を抑えられるが、一方でハードルは決して低くないことを覚えておこう。

【国公立大一般選抜 編】

共テの得点戦略

 国公立大の2023年入試データで、共テの合格最低点の得点率を見てみよう。図表6の岡山大(前期日程)はおおむね50%台後半〜60%台半ばで、医学科が70%超となっている。他大学も、共テの合格ラインは医・薬や超難関大の80%台を除き、全体的に60%台前後が多い。共テの目標得点を7割として、5(6)教科すべて均一に7割得点できればいいが、科目数が多い上に、得意・不得意があるから、そうはいかない。図表7のように各教科の得点割合を「6・6・6・8・9」と設定して、平均7割を確保しよう。私立大と同じく、得意教科の上積みで失点をカバーする計画だ。


2次試験と合格最低点

 国公立大の2次試験は記述式の2〜3教科が主流なので、基本的には私立大一般選抜(個別試験)と同様に考えよう。

 上の図表6の岡山大(前期日程)の入試結果では、2次試験の合格最低点が意外と低い学部・学科等もあるが、その場合は共テで高得点を取らないと合格ライン(=総合得点の合格最低点)に届かない。配点が2次試験重視である工学部機械システム系の2次試験の合格最低点は630.0点(48.5%)だが、総合点では1298.0点(59.0%)なので、共テで668.0点(74.2%)と合格者平均の627.8点(69.8%)を上回る必要があった。一方、共テ重視である文学部の2次試験の合格最低点は180.0点(45.0%)で、総合得点では737.6点(64.1%)なので、共テは557.6点(74.3%)と、合格者平均(74.5%)と同等の得点でクリアできた。

進路の先生オススメ得点戦略

 共テの自己採点の後は、2次試験で何点取れば合格に届くかを算出し、出願校決定に役立てよう。2023年との合格平均点差を踏まえ、志望校の前年合格最低点から考える。

 私立大個別試験では、合格ラインの高低で出題の難易度を測れる。過去3か年の平均、同じ学部系統の比較で、合格ラインが高い大学は基本問題中心、低ければ難しめの出題と考えてよい。過去問と照らし合わせ、自分との相性を確認しよう。

《「共テ逃げ切り」と「2次試験逆転」》

 共テの配点比率が高い大学・学部であれば、共テの持ち点を活かした先行逃げ切りが基本戦略だが、図表6の文学部のように、共テが合格最低点(480.0点)でも、2次試験で257.6点取っていれば合格できた計算になる。257.6点は平均点未満の数字なので、最後の頑張り次第で2次試験での逆転が可能だということ。逆に、共テで高得点を取っても安心できないことも意味する。最後まで気を抜かず学力アップに励むことが、合格への道だ。

【過去問演習 編】

“捨てて勝つ”とは

 共テ本試験まであと2か月足らず。これからは少しの時間もむだにできない。

 ここまで示してきたような、合格ラインをクリアする「得意科目で稼ぎ、苦手科目で失点しない」得点パターンを実現するには、普段の学習から、得意科目と苦手科目それぞれに適した対策が求められる。

 また、共テをはじめ入試本番で受験生が苦戦する要因の1つに、時間配分の拙さが挙げられる。焦りによって本来のパフォーマンスが発揮できないのを防ぎたい。そこで求められるのが「捨てて勝つ」という戦術だ。

 「捨てる」はいささか極端な表現かもしれないが、「完全にあきらめる」という意味ではない。要は得意・不得意によって到達目標やそこへ至る過程に違いを設け、対策を効率化すること。また、入試本番では解ける問題を優先して、わからない問題は見切り、効率よく得点すること。いずれにせよ、限られた時間と能力を最大限に活かすのが「捨てて勝つ」の目的だ。

過去問演習のポイント

得意科目は過去問演習や応用問題でレベルアップし高得点を狙う“攻め”の学習を

苦手科目は教科書や模試の復習で基礎を固めて失点を防ぐ“守り”の学習を

・共テと国公立大2次試験のどちらにも課される科目は2次試験対策に重点を置く

・本番で適切に時間配分するため演習時から制限時間を意識し時間の感覚を染み込ませる

得意は“攻め”、苦手は“守り”

 これからは、得意科目は過去問演習や参考書等の応用問題を中心とした学習に徹する。一方、苦手科目は教科書の例題や模試の問題などの反復練習に切り換え、「復習に力を入れる」ことが受験勉強と割り切る。得意科目の“攻め”の学習に対し、苦手科目は基礎力充実の“守り”の学習と、効率的に“合格力”をつけよう。

 国公立大志望者は、12月後半から共テ本番までは共テ対策に全力を注ぐことになるだろうが、2次試験や私立大の個別試験と共通する科目については、2次試験対策に重点を置こう。共テ対策ばかりになって、記述答案作成のカンを鈍らせないためだ。

 過去問演習では、必ず制限時間内で解くことを心がける。本番で最適な時間配分を判断するためには、「1問につき何分かかるか」という感覚を体に染み込ませよう。また、過去問や模試の問題をもう一度解き直す時は、制限時間を9割ほどに短縮して負荷をかけると、解答速度がアップし見直し時間の確保につながる。

【試験本番 編】

当日オススメ手順

1. 解けそうな順に○△×に分類

 問題が配られたら、全問にさっと目を通す。詳しく読む必要はない。この時に問題ごとに「解けそうだ」=○、「いけるかもしれない」=△、「無理かもしれない」=×と印をつけよう。問題番号順に解くのではなく、まず優先順位をつけて時間を配分するのだ。

2. ○から先に、次は△...の順に解く

 ×には手を付けず、○から始め、次は△へ......というように、解けそうな問題から順に解こう。1問解けると落ち着いて、次の○や△も普段通りの実力を発揮でき、ペースをつかめる。難問に時間を費やすより、着実に得点を稼げる○や△を優先する「タイパ」重視の戦術だ。

3. 最低でも「小問(1)」は解く

 ○や△が完全に解けない場合、逆に×を解く余裕ができた場合は、とにかく「小問(1)」だけを解こう。例えば、大問が小問3つで構成されている場合、(1)は教科書にある基本的な解法で解け、(2)は(1)の結果を利用すれば解けるケースが多い。ここで部分点を稼ごう。

“捨てて勝つ”戦術で波に乗る!

 上記で紹介してきた「得意科目で稼ぎ、苦手科目で失点しない」得点パターンを基にして合格ラインを突破するプランを決めたら、入試本番はその方針に沿って問題を解いていこう。そこでは、上記で紹介したメリハリのある学習と同じく、限られた時間を最大限に活かす「タイパ」重視の方法が求められる。それが、「捨てて勝つ」戦術につながる。

 試験で何よりも大切なのは「時間配分」。難問に貴重な時間を費やすより、「解ける問題を優先」「部分点狙い」という冷静かつ粘り強い取り組みで着実に得点を積み上げよう。一説には、「小問(1)」のみ解くだけでも全体の3割近くは取れるという。その積み重ねが、合格ラインの突破につながるのだ。この戦術は、数学や物理・化学など理系科目で特に有効だ。普段の過去問演習から制限時間内に解くことを強く意識して、手順をしっかり身につけよう。時間内で各年度の合格ラインを超えられるようになれば、本番でも冷静に対処できるはずだ。

“捨てて勝つ”のポイント

・全体を見て、問題を「解けそう」「いけるかも」「無理かも」に分類

・解けそうな問題を優先して解答。そこからペースをつかむ

・冷静な時間配分と「部分点狙い」で効率よく合格ラインを突破!


この記事は「螢雪時代12月号」より転載いたしました。