志望校を選ぶ際の観点の一つが、「学費・奨学金」。
学費には大学や学部系統により大きな差があり、家庭の経済状況等を考慮して検討する必要があります。
また、奨学金にもさまざまな種類があり、学生にとってはありがたい支援である反面、デメリットについても知っておく必要があります。
こうした情報を読み取る際の注意点や、情報をどのように志望校探しに役立てるかについて解説します。
「学費」とは、大学進学にあたってかかる費用の総称のこと。
主なものには、入学時に支払う「入学金」、半期ごともしくは年ごとに支払う「授業料」があります。加えて、「施設設備費」「実験・実習費」「教育充実費」等(大学によって名称が異なる)を別途設けている大学もあります。
また、受験料や受験時の宿泊費・交通費、一人暮らしをする場合は生活費や準備にかかる費用なども含めると、特に大学受験〜大学入学初年度には多額の費用がかかります。自分の場合は何にどれくらいお金がかかるのか、今のうちに見積もっておきましょう。
学費は、大学や学部系統によって大きく異なります。
国立大の場合は、入学金28万2000円、授業料(年間)53万5800円が標準額として定められており、標準額の20%増を限度に各大学が決定することになっています。
また、公立大では、授業料は国立大の標準額にならう大学が多いですが、入学金については居住地が指定の地域内か地域外かにより異なります。
一方、私立大の学費は一般的には国公立大よりも高く、金額は大学や学部等により異なります。
理系、特に医学、歯学、薬学部系統などは授業料が高額なケースが多く、年間の授業料が300万円を超えることもあります。
自分が希望する学部系統について、4年間ないし6年間トータルでいくらお金が必要なのか、国公立大と私立大のそれぞれで計算してみるとよいでしょう。
旺文社教育情報センター『2023年度 大学の学費平均額』より作成
大学に合格すると、指定期間内に、入学金と1年目の授業料等を含めた「学校納付金」を支払います(支払わないと合格が取り消されます)。
この学校納付金は、一度支払うと、入学を辞退しても入学金など一部の費用は返済されない場合がほとんどです。
例えば、併願校だった私立大に合格して学校納付金を支払い、その後、第1志望の国立大に合格した場合は、学校納付金を重複して支払うことになります。出費を抑えるためにも、手続き締切日を確認しておき、受験する順番を工夫する、併願校を絞り込むなど、戦略的に併願プランを練る必要があります。
また、学校納付金の延納が可能な大学、支払いを2段階方式にしている大学などもあるため、事前に情報を集めておきましょう。
パスナビでも、学費についての情報を調べることができます。なお、「備考」に掲示額以外の費用について書かれている場合があるので、その点にも注意しながら、どのくらいの費用がかかるのかをチェックしておきましょう。
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奨学金には、大きく分けて返済不要の「給付型」と要返済の「貸与型」があり、貸与型にも「無利子」「有利子」のタイプがあります。
日本学生支援機構が行う国の奨学金のほか、地方公共団体の奨学金、学校独自の奨学金、医療・保育・福祉など特定分野の奨学金、企業や公益団体が運営する民間の奨学金などがあります。
いずれも家庭の経済状況や学業成績など奨学金に申し込むための条件があり、日本学生支援機構のものを見ても、給付型の方が家計の状況や成績などの条件が厳しいです。
もっとも多くの学生が利用するのが日本学生支援機構の奨学金で、申込方法には「予約採用」と「在学採用」の2種類があります。予約採用とは、高校3年生の時点で進学後の奨学金を申し込む方法です(卒業後2年以内の過卒生も出身高校をとおして申し込み可能)。在学採用とは、大学や短期大学への進学後に申し込む方法で、春と秋の年2回、募集しています。
なお、近年は入試の成績に応じて学校が給付型奨学金(入学前予約型給付奨学金)を支給するケースも増えてきています。給付条件は大学により異なるので、気になる大学にこの制度があるか、調べておくとよいでしょう。合わせて、日本学生支援機構以外の奨学金について下表にまとめました。こちらも参考にしてください。
日本学生支援機構の貸与型の奨学金を「予約採用」で申し込む場合は、在籍する高校を通して申し込みます(2浪の既卒生まで)。高校3年次の4〜6月頃にかけて募集があり、10〜11月頃にかけて採用通知が届きます(募集回数や申請日程は高校によって異なる)。大学進学後に進学届を提出することで、正式に奨学金の採用が決まります。
採用通知が届いても辞退することができるので、奨学金の利用を迷っている人は、とりあえず申し込んでおくとよいでしょう。
また、2020年度からは国の「高等教育の修学支援新制度」がスタートし、特に経済的に厳しい家庭については、日本学生支援機構の給付型奨学金に加え、入学金と授業料が減免されることになりました。世帯年収に応じて4段階の支援内容が準備されているので、下の表を参考に、当てはまる人はぜひ検討してみましょう。
なお、貸与型の奨学金は、無利子もしくは有利子でも一般的なローンよりは利率が低いですが、将来的に返済が必要な「借金」であることを理解しておきましょう。
奨学金の返済は大学卒業後の7か月目から始まり、貸与額が多ければ返済期間は20年にもなります。
一定条件のもと返済期間猶予や減額返還などの救済制度もありますが、滞納した場合には延滞金が課されるなどリスクもあり、十分な注意が必要です。
奨学金についての詳しい情報は、『螢雪時代 6月臨時増刊 進路決定 資格・職業・奨学金ガイド』などでも調べることができます。
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志望校選びにおいて、家庭の経済状況がかかわってくる「学費・奨学金」は不可欠な視点です。まずは、受験や新生活の準備にかかる費用を概算し、「入学前にいくらかかるか」を洗い出しましょう。さらに、入学金や授業料、日々の生活費など「入学後にいくらかかるか」を、国公立大に進学したパターン〔自宅通学・一人暮らし〕と、私立大に進学したパターン〔自宅通学・一人暮らし〕で、それぞれ計算します。進学する学部系統に迷いがある場合は、さらに複数のパターンを想定しておきましょう。
そのうえで、保護者と家庭の経済状況などを含めてよく話し合い、「年間いくらまでなら学費を出せるか」という上限を確認しておきます。その額によっては、国公立大に絞ったり、地域を限定したりという志望校選びをすることになりますし、それでも私立大や遠方の大学に行きたいのであれば奨学金の利用などを視野に入れることになります。
奨学金を利用する場合は、給付型か貸与型か、月額いくら利用するのか、貸与型の場合は返還計画に無理はないかなどを保護者といっしょに検討し、条件や応募スケジュール、手続き方法などを確認しておきましょう。
ここまで見てきたように、大学受験〜入学にかけての短期間に、まとまったお金が必要になります。また、大学に在籍する4〜6年間、一定の額を支払い続ける必要もあります。
お金のことは自分だけでは判断できないものなので、必ず保護者とよく話し合って情報や意識を共有し、奨学金の利用も含めて無理のない選択をすることが大切です。
経済的な理由から大学進学をあきらめないでいいように、近年は国の支援制度も拡充されています。条件にあてはまる人は、制度の利活用も視野に入れつつ、広い視野をもって志望校を検討してみてください。
今回お伝えした「学費・奨学金」という観点や、以前の記事でお伝えした他の観点も含めて、さまざまな角度から志望校を多角的に比較・検討し、自分に合った志望校を探し出してください。
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