数学
河合塾 池田 洋介 先生
京都大学理学部数学科卒。数学講師を務めるとともに、ジャグリング、パントマイムの公演を世界各国で行う。独特の斜め45度視点から繰り出される硬軟入り交じった語り口が持ち味。『螢雪時代』にて「螢雪合格塾」連載中。
個は個別試験、共は共通テストで必要な力
解く力1 共
注目分野!「統計」を正しく読み解く力
数学の新課程の大きな改革点の1つは、「統計」(統計的な推測)を表舞台に引っ張り出したこと。共通テストでも、この分野を選択する人が今まで以上に多くなるでしょう。統計は出題のパターンを絞りやすく、きちんと対策すれば貴重な得点源となり得ます。とはいえ、付け焼き刃の知識ではダメ。意外に数学のエッセンスが集約する分野なので、確率密度関数の意味や信頼区間の公式の成り立ちなどについて、細部をきちんと説明できるようにしておきましょう。
こう鍛える!
基本を理解したうえで、過去問で傾向をつかむ
解く力2 個
知っている問題に読み替える力
典型問題は解けるのに模試レベルになると得点がとれなくなる人に足りないのは、「見た目の違う問題を、知っている問題に帰着させる力」です。例えば、階差数列の公式を知っていても、それが階差数列であることを見抜けなければ、公式を活用することはできませんよね。実際、入試に出てくるほとんどの問題は、典型問題がそうとは気づかれないように「擬態」しているものです。その擬態を見抜くには、問題の表面的な解法を覚えるのではなく、なぜそれが解けるのかという「構造」から理解しようとする姿勢が必要です。
こう鍛える!
解法を覚えるのではなく、「解ける理由」を考える
解く力3 個・共
公式が成り立つ理由を理解する力
共通テストでは、公式の成り立ちを考えさせる問題が増えると思われます。正弦定理や2次方程式の解の公式など普段当たり前に使うものについて、「なぜ成り立つのか」を確認しておきましょう。また、正の数、実数係数といった前提条件が含まれる定理では、「前提がなくなるとなぜ公式が成り立たなくなるのか」を考えてみることで、定理の深い理解につながります。
こう鍛える!
教科書の公式や定理の証明を読み直す
解く力4 個
出題者の気持ちになって考える力
どんな問題であれ、それを作った人がいる以上、その人は問題の中に何らかのテーマを設定しています。その意図を読み取りましょう。例えば「場合の数」であれば、「ここは普通に足し算すると重複が起こるぞ。出題者はその重複をどう処理するのかを聞いているんだな」といった具合です。問題だけでなく問題を考えた人について考えるという、メタな視点を意識しましょう。
こう鍛える!
自分で作った問題を他の人に解いてもらう
解く力5 個
採点者に正確に伝わるよう記述する力
2次試験では記述力が重要です。例えば「nは奇数」だけでは、それは「すでにわかっていること」なのか、「別の条件から導かれたこと」なのか、「これから証明しようとしていること」なのかは伝わりません。答案は単語の羅列ではなく文章です。「以上より、nは奇数であることがわかるので」とか「したがって、nが奇数であることが示されればよい」など、その記述が答案の中でどのような立ち位置にあるのかを採点者に理解させる言葉遣いを心がけましょう。
こう鍛える!
論理の「流れ」を意識して答案を書く
解く力がつく学習法
解法ではなく、「構造」をとらえよ
「桃太郎」と「天空の城ラピュタ」は物語としてはまったく違いますが、閉ざされた世界で生きていた主人公が別の世界に行き、また元の世界に帰ってくるという点では同じです。これを物語の「構造」と言います。数学の問題においても、この「構造」を見抜ける人は、多様な問題を効率よく分類・整理することができ、適切な対処法を見いだせるのです。さまざまな問題を見比べてみて、それらの「共通点=それらをできる限り大きくくくる言葉」を探してみましょう。