河合塾 池田 洋介 先生
いけだ・ようすけ。京都大学理学部数学科卒。数学講師を務めるとともに、ジャグリング、パントマイムの公演を世界各国で行う。独特の斜め45度視点から繰り出される硬軟入り交じった語り口が持ち味。『螢雪時代』にて「螢雪合格塾」連載中。
大前提として記述答案は「人に読んでもらうものである」ということが理解できていない人が意外と多いです。計算を脈絡なしに書いて、最後の結果に下線を引くだけで終わり……。それだけでは、採点者には何も伝わりません。大切なのは結果ではなく、答案に至る過程。答案は自分の考えを伝える「プレゼン」の場であるという意識を持ちましょう。
「伝える」には、情報をどの順番に提示するのか、がとても大切です。たとえばお湯を沸かすとき「やかんに水を入れる」→「やかんをコンロに乗せる」→「コンロの火をつけてしばらく待って消す」という順番はとても大切で、これを逆にしたらお湯は沸きませんよね。数学の論述も同じです。論理のつながりを意識して正しい順に書くことを心がけましょう。
上記2つの基本がわかったら、次はいかに「伝わりやすく」するかを意識します。「この問題は〜という問題と同じ意味である」と問題をすり替えたり、「この解答を表すには〜を示せればよい」などと条件を言い換えたりして、目指すゴールを明快にするとよいでしょう。こういった工夫は、答案を読みやすくするのと同時に、自分の考えを整理するのにも役立ちます。
「〜ということを数学的帰納法で示す」や「〜を背理法で示す」のように、これからやろうとする方針が最初に提示してある答案は(その方針がうまくいくものであれば)、採点者にとって加点しやすいものになります。
場合分けがあるときは(i)(ii)(iii)のようにラベルをつけて並べたり、少しインデント(字下げ)を入れると、読みやすい答案になります。レイアウトにメリハリをつけることは、間違いや考え漏れを減らすためにも有効です。
ベクトルや恒等式における「係数比較」のように無条件にはできないことは、それができるための前提条件が成り立っていることを答案としてきちんと記述しましょう。それがない場合は減点の対象になり得ます。
いくつかの具体例から成り立っているように “見える”ことも、それが成り立つ理由が一般的に説明できなければ事実として使うことはできません。推測と事実の境界を曖昧にしてしまうと、得点にはなりません。
たまに証明問題の解答が省略されている教材がありますが、記述問題の訓練には役に立ちません。解答例が詳細に書かれている教材・問題集を選びましょう。
教科書の例題など簡単な問題でいいので、解き方を誰かに説明してみましょう。「教えることは学ぶこと」というように、自分の理解が曖昧な点を知る、最良の機会になります。
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