数学的読解力と計算力を向上させる独自の指導法を展開。認識に関する評価基準を取り入れた自己評価の仕組みを構築。高等学校の定期テストや実力テストにも双方向型学習が実現できる新しい採点支援システムを開発中。
2つの数の大小を比べるだけなら単純な処理で片づけられるが、例えば「不等式◯◯がすべてのxに対して成り立つ」「不等式〇〇が成り立つような最大のn」といった条件を扱う場合は、実質的により多くの数についての大小関係が絡んでくるため、論理構造が複雑になり、慎重な考察を要する。この手の問題は、数式を変形することが目的ではなく、式が表す「数の大きさ」に注目し、大小をおおまかに見積りながら考察を進めていくことが求められる。数量感覚を大事にしつつ、数直線やグラフも利用しながら状況を視覚的に把握しておくと効果的だ。
出題例
2024年 東京大(文科・前期) 大問2
指数関数についての不等式を満たす最小の自然数nを求める問題。大雑把に数の大きさを見積もっておき、適切なタイミングで対数による処理を行って論理的な裏づけをとる。対数をとるときにもミスが多く見受けられるので要注意。
「自然数nに対して〇〇」という問題を見ると、安易にnを具体化し、n=1、2、3の特殊な状況での実験に時間を浪費してしまう受験生が多い。たしかに、こうした実験は複雑な問題で状況を把握するための手段としては有効だが、なんでも具体化して特殊ケースから考える癖がついてしまうと、いつまでたってもこの手の問題を手際よく解けるようにはならない。わざわざ簡単な値で実験をしなくても、一般のnでの状況が容易に把握できる問題も多い。まずは、可能な限り一般のnのまま状況把握と試行錯誤に取り組んでみることを習慣化したい。
出題例
2023年 京都大(理系・前期) 大問3
さいころをn回投げ、出た目の積が5や15で割り切れる確率を求める問題。定番だが、文系・理系問わず出題頻度は高く、差がつく問題だ。むやみにnを特殊化した“実験”に突っ走らず、まずは直接「一般のn」での事象の把握に努めたい。
理系では、数学Ⅲの積分法の体積は最頻出テーマだ。機械的に公式に代入するだけで解けることもあるが、難関大では、立体の概形がイメージしづらい場合も多く、必要な情報を見極めて定積分の立式を完成させることが重要となる。複雑な立体であっても体積はイメージから求めるものではなく、あくまで定積分の値として求められるのだから、どの座標軸に沿って断面を積み重ねていくのか(積分変数)、断面はどの範囲に存在してるのか(積分区間)、断面積はどのように表されるか(被積分関数)について丁寧に考察を進めたい。
出題例
2023年 早稲田大(基幹・創造・先進理工) 大問5
三角形を直線の回りに1回転させたときの通過領域の体積を求める問題。立体の形状はつかみづらいが、小問で丁寧な誘導が与えられており、定積分の立式に必要な情報を理解できていれば、このテーマとしては解きやすい設定になっている。
「解けるはずの問題なのに解法が思いつかない」という状況の多くは、出題単元や扱っているテーマを言葉で言い表してみることで打開できる。先に単元やテーマを特定しておくことで、要求内容を見失うことなく的確に把握でき、これまでの学習で積み上げてきたどの解決手段が有効に機能するかを判断しやすくなる。
問題の要求内容に応じた達成手段を、問題集やこれまで受けた模試からかき集めてノートにまとめていこう。単元ごとにまとめるのではなく「最大値を求める問題」「不等式を証明する問題」のように、要求内容そのものを目的ととらえ、ページごとに「目的」を分け、全分野を横断する形で手段をまとめておくとよい。
いきなり計算から始めてしまうと時間を浪費する恐れがあり、効率も悪い。先におおまかな状況把握を行い、計算せずに済むところと計算が必要なところを見極めることを習慣化したい。ある程度結果を予想しながら状況を把握していくと、問題設定の中で本当に調べないとならない部分が見えてくることが多い。
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