国語
河合塾 鹿子島 康二 先生
現代文を中心に、国語科全般の授業を担当。モットーは「語学の才能=努力」で、わかりやすい指導は定評がある。『螢雪時代』特集記事の執筆のほか、「大学受験パスナビ」では入試問題の解説を執筆。
国公立大の記述式問題も半分は標準的なレベルの問題だが、残りの半分ほどは厳しい問題。実質的に趣旨説明に相当する問題の場合もある。大問の中心となる設問だが、ここで差がつく。このタイプは、傍線と直接的に対応する箇所を拾い上げるだけでは、不足が生じたりピントが合わなかったりして、適切な解答にならない。私立大でも早稲田大(法)などはこのタイプの記述式問題が出題される。勝負となるこの設問で高得点をとるには、本文全体の論理を把握し、他の設問との関係も考慮したうえで、要約を書くつもりで答案を作成することだ。
出題例
2023年 東京大(前期) 大問1 設問(4)
設問(4)は、大問1の4題の記述式問題のメインと言える。指定字数が大きい(120字以内)ほか、「本文全体の趣旨を踏まえて」という指示があり、実質的には趣旨説明だ。設問(1)~(3)での考察を統括して答案を書く必要があった。
古文の和歌の解釈や鑑賞を問う設問や、和歌の理解を前提とする設問は点差が生じやすい。まず和歌が理解できなければ手も足も出ないと思いがちだが、攻略法はある。和歌は場面の感動の頂点であるので、逆に言えば「裾野」に相当する前後の文脈から内容を類推することは可能だ。また、短詩型文学である和歌は、作者が思いをすべて表現することは無理なので、上下の句の構造から趣旨を類推させることが多い。つまり、上下の句のいずれかに趣旨が集約されるので、区切れに注意をして趣旨の所在をつかむこともできるのだ。
出題例
2022年 名古屋大(前期) 大問2 問4
『俊頼髄脳』からの出題で、問4は別々の人物が詠む上の句と下の句をそれぞれ現代語訳するもの。設問の指示では、「それぞれの詠者の意図に言及しつつ」とあり、本文の理解を反映させることが求められていた。
共通テストの新大問のような表やグラフ、図を含む問題は、さほど難しいわけではないが差のつきやすい問題。得意な人は比較的スムーズに正答できる一方、苦手な人はどこから手をつけてよいかわからず、時間を浪費したうえ失点してしまうことが多い。このタイプの設問は非文字型資料の正しい理解が前提であることは当然だが、欄外の表記(統計年度など)や設問文など、設問指示の細かい部分を正しく把握できたかどうかで得点が左右されることが多い。「設問とコミュニケーションをとる」姿勢で、設問指示を丁寧に読み取ることが不可欠だ。
出題例
2024年 早稲田大(政治経済) 大問1
総合問題(日英両言語による長文を読んで解答)の日本語問題パートで、3つの図を含む課題文を読ませ、政治と情報の関係について考えさせる問題。共通テストの実用的文章の問題に似ているが、空欄補充やグラフ選択問題、記述式問題も出題。
秋からの個別試験対策 差がつく学習法
現代文の復習として「要約」に取り組む
現代文の大問の中心となる記述式問題は、本文の部分的な要約や、他の設問で扱っていない部分の論旨の説明を求めたりする。いずれにせよ、本文論旨と論の構成を把握して、何を解答に盛り込むか考えなければならない。要約を書くことが最も効果的な対策となるので、演習後に復習としてぜひ取り組んでほしい。
「国語便覧」を利用して和歌の修辞を習得する
和歌の問題は、先に説明したように、その理解が不十分でもなんとか対応できるが、得点力を万全にするには、修辞の理解が欠かせない。掛詞や序詞などの修辞は趣旨に関わり、多くは前後の文脈と絡み、和歌の理解を助けている。国語便覧を利用して、掛詞・序詞・縁語・枕詞などの和歌の修辞を習得しておこう。
ワンランク上の過去問で語彙力・論理性を鍛える
語学は「言葉をどれだけ知っているか?」の側面があり、語彙力・論理性が学力に直結する。これらの力を鍛えるには、志望校の過去問を利用するだけでなく、ワンランク上の難易レベルの過去問を演習するのが効果的だ。語彙力・論理性に自信をもてるようになれば、各設問形式の対策も驚くほどはかどるはずだ。