物理
代々木ゼミナール 中川 雅夫 先生
丁寧で明快な講義と生徒指導での面倒見のよさは定評がある。『物理の良問問題集』『物理 標準問題精講』『センバツ33題 物理』などの著者であり、『全国大学入試正解 物理』(いずれも旺文社)の解答者・巻頭言執筆者を務める。
受験生の多くは、目新しくて見慣れない状況が設定された問題に出くわすと、解くために何をすればいいのか思いつかず、途方に暮れてしまうようだ。しかし、入試問題である以上、必ず教科書で身につけた知識で対応できるはず。そこで、問題文を読むときは、出題者は今まで身につけた物理の知識の何を問おうとしているのか考えてみよう。最初は解答を見てから「ああそうだ!」と気づくことが多いかもしれない。しかし、繰り返し意識して練習していくと、問題中のヒントに気がつき、短時間で物理的ポイントを押さえられるようになる。
出題例
2024年 横浜国立大(前期) 大問2
原子サイズでの精密な分析という目新しいテーマの問題である。しかし、設問はまず電子を加速するための電圧のかけ方から始まり、問いに応じて考えていくだけの問題である。このように、出題者の誘導に乗ればよい問題も少なくない。
物理の計算は、やり方次第でミスが減り、かかる時間も短くなる。まず意識すべきことは、式変形をなるべくまとめることである。答えを出すまでの式変形の回数が10回と4回ではかかる時間に差が出るのは当たり前、さらに10回のほうが式変形ミスも起こりやすい。よりよい方法を意識して練習することで、頭の中で変形する部分が増え、式変形の回数が少なくなる。また、2つの式を連立する問題でも、単に代入するだけではなく、辺々足し算したり割り算したりして素早く計算できることがある。自分の計算を客観的に見直すだけでも上達する。
出題例
2022年 同志社大(理工) 大問2(キ)
点電荷による電場と電位に関する問題で、静電気力による位置エネルギーを考慮してエネルギー保存則の式を立て、それを解けばよい。しかし、うまく整理しないと複雑になり、ミスをしやすい。他の設問も含めて練習がものを言う出題だ。
途中経過の記述では、考え方を簡潔に伝えなければならない。単なる式変形などは不要で、何の式を立てたか、どのように近似したかなど考えたことを明確に示す。初めは書きすぎるくらいでもよいが、次第に答案に入れる内容を絞って余分な記述を減らしていこう。また、理由説明などの記述も何回も書いてみることが上達の秘訣。その際、字数を埋めることばかり考えるのではなく、書くべき事項を箇条書きにしてみて、それに肉付けをしながら調節するとよい。字数を合わせるために不確かなことを書いてしまうと、大きな減点につながることもある。
出題例
2024年 滋賀医科大(前期) 大問1 問1・2
浮力の実験を扱った問題で、問1は気体の内部エネルギーの変化、問2は熱力学第1法則に関するもの。熱力学は用いる考え方や式が少ないので、答案を書き慣れておけば類型的に対応できる。問3の説明問題も練習素材としておすすめ。
秋からの個別試験対策 差がつく学習法
電磁気の問題のうまい解き方を研究する
電磁気は、現役生が準備不足のまま受験本番を迎えることが多い分野だ。また、浪人生であっても、単に解ければよいと考えてしまいがちである。しかし、うまく解けば、他の受験生に点差をつけられる問題が電磁気には多い。解けたら終了ではなく、もっとうまく解く方法はないか見直して、解き方を工夫しよう。
グラフや図を描くときは、まず問いの意図を押さえる
グラフや図は、問われている物理的ポイントを押さえて描くことが重要だ。まずは、出題者の立場でその問いの意図を考えてみるとよい。グラフを描く問題では、軸との切片、主要値、傾きをチェックする習慣をつけよう。図を描く場合は、出題者が何を描かせたかったのかを考えると、描くべきポイントが見えてくる。
“やや難”レベルの思考力を問う問題に取り組む
入試で問われる物理の思考力は、それほど多くの種類はない。したがって、思考力を問う“やや難”レベルの問題をしっかり考えて解くことで、幅広い入試問題に対応できるようになる。また、可能であれば、その問題が解けない友人に考え方を説明してみることも効果的だ。口に出してみることで、頭が整理される。