化学
『螢雪時代』アドバイザー 庄司 憲仁 先生
『全国大学入試問題正解 化学』の解答者であり、『螢雪時代』記事のほか、『10日間完成 文系のための分野別 センター化学基礎』(旺文社)、数研出版の教科書・チャート式など多数執筆している。
結晶格子の問題で頻出している面心立方や体心立方については、格子定数と原子間距離の関係や密度の算出など、容易に対処できるはず。だが、ダイヤモンドやケイ素はやや難しいし、黒鉛に関してはさらに難度が高い。下の出題例では、与えられた構造を見ても、どの部分の長さなのかを正しく把握するのが困難であった。また、この値を正しく求めないと密度も算出できないので、慎重に解いていく必要があった。このような難解な結晶構造やイオン結晶の限界半径比については、いくらか余裕があるうちに解き方をしっかり身につけておきたい。
出題例
2024年 大阪大(前期) 大問1
黒鉛の結晶構造と単位格子の図が示されていて、隣接した炭素原子間の共有結合の距離と黒鉛の密度を求める問題であった。図中から求める距離がどの部分かを見つけるのが難しく、さらにその算出も数学的な手法を上手に用いる必要があった。
例えば、有機の構造決定の問題は頻出だが、大問自体は難しくなくても、一部設問に教科書の「発展」項目の内容が含まれていることがしばしばある。これは、他分野でも時折見られることだ。他の受験生に差をつけたいのであれば、「発展」項目は狙い目となる。貪欲に学習し、マスターしてしまおう。まだ時間のある今のうちに、教科書をおさらいし、さらに参考書などを利用して理解を深めておけば万全だ。下の出題例ではマルコフニコフの法則が適用されるが、「発展」項目であるザイツェフの法則の内容を知らないと正誤の判断ができない。
出題例
2024年 九州大(前期) 大問4 問4
「1-ブテンに対する塩化水素の付加反応は、ザイツェフの法則に従うため、2-クロロブタンが主生成物として得られる」という記述の正誤を問われたが、マルコフニコフ則と「発展」項目のザイツェフ則の違いを正確に把握しておく必要があった。
最近では、立体異性体について、アミノ酸だけではなく、アルケンに臭素を付加させた化合物の立体構造なども出題されている。下の出題例では、アミノ酸のL体とD体の変換を触媒する酵素は、特定の炭素原子について触媒することが与えられているので、それを正確に把握すれば比較的容易に解けるが、くさびと点線で立体異性体を表す手法を普段から理解していないと、かなり難しく感じるはずだ。立体構造を正しく表現できる力や、メソ体や配座異性体など「発展」項目に属する用語を問われる場合もあるので、しっかりと対策しておきたい。
出題例
2024年 名古屋大(前期) 大問3 問2
アミノ酸のL体とD体の変換を触媒する酵素によって生じた化合物の立体構造を答えさせる問題。ある条件に合致する不斉炭素原子についてのみ、触媒作用を示すことに注意することと、立体構造を破線とくさびで表せることがポイントであった。
秋からの個別試験対策 差がつく学習法
まずは本文の内容を分析し、要点を書きとめる習慣を
いきなり設問を解き始めず、まず内容を正確に把握するために、本文を読み進めながら分析し、条件を箇条書きで表すことを習慣化しよう。図や表は、そのポイントも書き出しておこう。それらを概観し、用いる法則や公式の選択、計算手段をどうするかなど、解決の道筋をつけてから解き始めると、得点は伸びる。
グラフの本質を見抜いて正しい判断をする経験を積む
以前、センター試験で両対数グラフが登場したことがあった。こうした見慣れない表現法では、読み取りで勘違いをしやすいが、初見でも冷静に目盛りを見て判断すればなんとかなるものだ。新形式では予期しない展開が予想されるが、問題解決に必要な条件を選び、問うている事象を的確に判断することが大切である。
記述・論述は、焦点を定めて簡潔に書き表す練習をする
記述・論述問題では、自分の考え方を含め、答案上に適切にアウトプットするスキルが必要だ。文字数指定の有無に関わらず、簡潔に述べることができるように、普段から通常の問題でも文字数を考慮した記述をしてみる訓練をしておくとよい。これにより、いかなる状況でも迅速に対処できるようになる。