生物
駿台予備学校 大森 徹 先生
生物を得意にする救世主として有名。『大森徹の生物Doシリーズ』『生物 基礎問題精講』(ともに旺文社)、『大森徹の最強講義 生物』『生物の最重要知識スピードチェック』(ともに文英堂)などわかりやすさで大好評の著書多数。
多くの見知らぬ実験と多くのデータが登場するような問題では、与えられた1つ1つの実験やデータの細かい点にとらわれすぎると、限られた時間内では解けなくなってしまう。したがって、それぞれの実験内容を素早く理解し、与えられたデータの大きな特徴をとらえる必要がある。そのためには、まず実験内容をメモする訓練をしたい。さらに、与えられたデータの中から、気にしなければいけない点と気にする必要のない点を見極めることも必要になってくる。見知らぬ実験問題は、大きな特徴さえつかめば、意外と簡単に解けることが多い。
出題例
2024年 名古屋大(前期) 大問2
シグナル分子の受容に伴う調節タンパク質のリン酸化がテーマで、グラフが14個も登場する。各グラフの特徴を読み取り、メモしながら読むのがコツ。「Bの阻害剤添加で反応が起こるのは、Bの作用がすでに完了している」と解釈する。
生物学では次々と新しい現象やしくみが解明され、すぐに入試問題にも反映される。だが、そうした内容を事前に学習しておくことは不可能だ。与えられた問題文を手がかりに、その場で理解しなければならない。だが、文章だけで理解するのは難しい。そこで効果的なのが、文章の内容を図にすること。それを習慣化することで、現象のイメージがつかめるようになってくる。まずは既知の内容を図にする練習から始め、どのような図にすればわかりやすいかを習得していこう。すると、未知の現象でも図に表せて、理解できるようになるはずだ。
出題例
2024年 京都大(前期) 大問1(A)問4
ステムループ構造による遺伝子発現調節という、受験生にとってはまったく未知の現象が取り上げられている。TPPがエネルギー代謝に関わる補酵素だというヒント、ピリチアミンが抗菌物質であるというヒントを見逃さないことがポイント。
まったく何を書けばよいのか見当がつかないような論述問題では差はつきにくい。しかし、なんとなく書くことはわかるが、的確な生物用語を用いないと制限字数内に収まらないような典型的な論述問題のほうが実は差がつく。ただ、単にキーワードを使って書けばよいというのではない。そのキーワードを正しく使う訓練が必要になる。そのためには、定番の論述問題の模範解答を、ちょうど英語の基本例文を覚えるように1つ1つ覚えていくことが効果的だ。こうした訓練が正しい表現の仕方、正しい用語の使い方を身につける最善の攻略法と言える。
出題例
2024年 神戸大(前期) 大問4 問5
大型ハ虫類の大量絶滅と哺乳類の多様化についての論述で、書く内容はわかっていても50字以内にまとめるのは意外と難しい。生態的地位(ニッチ)に空白が生じ、哺乳類が適応放散したというキーワードを的確に使えば制限字数内で書ける。
秋からの個別試験対策 差がつく学習法
効果的な対策を練るために過去問を研究する
論述量はどのくらいか、考察問題の数、計算問題は出題されるのか、どの分野がよく出題されるか、といった特徴を研究するために過去問を利用しよう。それによって今後の対策も異なってくる。今は問題が解けなくてもかまわないし、時間配分の研究も焦らなくても大丈夫。志望校の出題傾向がわかればOKだ。
しくみや現象をストーリー化する
国公立大では、ほぼ確実に論述問題が出題され、その出来が合否に大きく影響する。単語を暗記するだけでなく、キーワードを押さえたうえで、しくみや現象をストーリーにしていく。これが知識の確認と同時に論述対策になる。これは、論述問題が出題されない私立大であっても、知識の定着に極めて有効な学習法だ。
問題演習で弱点を補強し、応用力&スピードを鍛える
秋からは、インプットよりもアウトプットに力を入れる時期。志望校に合ったレベルの問題集を使って問題を解き、そこで弱点を発見できたら、すぐに教科書に戻ってその部分を集中的に補強する。さらに、演習量を増やすことで、どの知識をどこでどのように使うかの訓練ができ、問題を解くスピードも上がっていく。