日本史(歴史総合、日本史探求)
代々木ゼミナール個別指導 菅野 祐孝 先生
『ココが出る!! 日本史ノート 歴史総合,日本史探究』『タテヨコ 日本史 総整理 テーマ史』(いずれも旺文社)、『日本史図版・史料読みとり問題集』(山川出版社)、『共通テスト日本史〔文化史〕』(教学社)など著書多数。
例えば、「1906年の鉄道国有法によって民営鉄道11社が買収された」という文章。これは11社ではなく17社が正しいので誤文だ。私立大の正誤問題には、こうした細かい数値を覚えているかを試す問題や、東日本大震災など最新の出来事に関する問題もあり、これらで差がつく。用語集で近現代まで漏れなく数値や意味を正確に押さえるとともに、ネットなども活用して理解を確かなものにし、瞬発的に正誤を識別できるようにしよう。また、私立大では「正しいものをすべて選べ」「誤りがない場合は⑥をマークせよ」など変則的な問い方にも要注意。
出題例
2022年 早稲田大(商) 大問4 問B
明治時代の教育と女性に関する5つの短文の中から正しいものを2つ選ばせる問題。「女子高等教育機関として高等女学校が設立された」を誤文と判断できたかがポイント。高等女学校は、高等教育機関ではなく中等教育機関である。
短文を示して、時代や年代を古い順に配列させる問題は、共通テストだけでなく私立大でも定番化しつつある。西暦年代に大きな開きがあったり、天皇・将軍・執権など時の権力者や為政者名だけで解ければ問題ないが、状況がめまぐるしく変転する政変抗争や太平洋戦争のような戦局の推移については、同年代に多くの出来事が集中するので簡単にはいかない。西暦年代だけではなく、なるべく「○月」まで押さえたい。特に、藤原氏や北条氏による他氏排斥事件、南北朝の動乱や幕末の政局の推移などは、年表形式で状況を細かく整理するとよい。
出題例
2024年 立教大(2/9) 大問2 問12
「a.サイパン島などの陥落、b.絶対国防圏の設定、c.ガダルカナル島から撤退、d.レイテ島沖の海戦」に関する短文を4つ挙げ、年代順に配列させる問題。bとc、aとdが同年代なことから、その前後の判断が難しかった。
国公立大の論述問題では、史料や図版・統計など史資料を提示した問題が頻出。文語体の文章、新聞・論説など初見の史資料が多いのが特徴で、苦手な受験生が多い。これらの問題では、まず史資料が「何についての内容か」を読み取ったうえで、関連する歴史用語や年代など周辺知識を頭の中で紐づけし、題意に応じて適切な日本語で表現することが求められる。対策としては、演習を通して史資料の読み取りに慣れること。そして、考察力や表現力を鍛えるために、歴史事象に関する説明文を週2~3題のペースで書き進め、先生に添削してもらうとよい。
出題例
2024年 名古屋大(前期) 大問2 問2
「一遍聖絵」に描かれた備前国の福岡市の絵図を提示し、鎌倉時代の商品流通について絵図から読み取れる交易状況を説明させる問題。絵図はほとんどの教科書に掲載されているが、「図版を読み取る」学習をしていないと難しい出題であった。
秋からの個別試験対策 差がつく学習法
テーマ史学習で歴史をタテ・ヨコ両面から攻略
時代ごとに学習するヨコの通史に対し、1つの主題に焦点を当てたタテの歴史を「テーマ史」と言う。近年は地域史の出題が多いのが特徴だ。立教大・学習院大・早稲田大などでは毎年テーマ史が出題されるので、宗教史・外交史など、主要なテーマについては、古代~現代までの要点を俯瞰的に整理しておくとよい。
教科書のスキマ学習で弱点を強化して得点アップ
教科書学習の基本は本文の精読と要点整理にあるが、太字の歴史用語を暗記するだけでは心もとない。そこで、史料はもちろん、写真・地図・絵図・人物系図・職制図・模式図・統計表・グラフなど、教科書のスキマ部分を細かくチェックし、欄外の注も確実に覚え込もう。得点力の飛躍的なアップが期待できる。
問題集は過去問を含めて最低5冊は用意する
スポーツに他流試合があるように、受験勉強にも模試という他流試合がある。問題を解くことで敵を知り、対策を強化することが合格への近道となる。また、1冊を何度繰り返し解いても、それ以上の知識に出会うことはないので、問題集は最低5冊は解き、多くの問題に触れながら他流試合を重ねることが大切だ。