世界史(歴史総合、世界史探求)
河合塾 上住 友起 先生
東京大・京都大などの志望者が受講する世界史論述から共通テスト・私立大の講座まで担当し、大きな支持を得る。『一問一答 世界史 ターゲット4000』(旺文社)など著書多数。近年は実業家としても注目される。
やはり得点に差がつきやすい論述問題。対策は、まず短論述の練習から始めよう。その際に心がけたいのは、まず設問が要求している解答は何かを「想起する力」を養うこと。ピントがずれた記述では得点は稼げない。次に大切なのが、答えとして求められる要素を字数内にすべて盛り込むように意識すること。つまり「構想する力」が重要だ。答案は教科書を基本とし、それ以外の知識を盛り込む必要はない。設問の趣旨を読み取り、論点を整理し、教科書の記述に沿って文章を作成する練習を積み重ね、最終的には教科書なしで書けるようにしよう。
出題例
2021年 東京大(前期) 大問2 問1(a)
14~15世紀の西ヨーロッパにおける農民の地位向上に関する複数の要因を89字以内で説明させる問題。ここでは、貨幣経済の浸透、寒冷化と疫病の流行による人口減少、農民と領主の関係などの要素を簡潔に記述する必要があった。
苦手とする受験生も多い正誤判定問題。これを攻略するには、演習量をこなすことによる経験が重要だ。しかし、多くの受験生は知識の暗記に必死になって、「知識を使う学習」を怠りがち。インプット偏重では差をつけられる一方だと心得よう。特に難関私立大の正誤判定問題に対応するには、「過去問を解く→間違った問題のフォロー学習(用語集などで知識を確認)→志望校の傾向を掌握」といった手順が必要だ。例えば、早稲田大の正誤判定問題は難解だが、演習量を増やしていくと意外に基礎的な知識で解答に至れる場合が多いことに気がつく。
出題例
2022年 早稲田大(商) 大問2 問E
問題は、モンゴル帝国支配下で作成された漢語文献に関するもので、マイナー用語やその説明などを盛り込んだ4つの選択肢から誤りの文章を選ばせるもの。ここで必要だったのは、『西遊記』は元曲ではないという知識だけであった。
単答問題でも、いつもとは違った角度から問われると苦戦する受験生が多い。こうした設問に対応するためには、一問一答的な学習だけでは不十分。一問一答を完成させた後は、基礎的な空所補充問題などで実戦的な学習に取り組みたい。ある程度学習が進んでいる場合は、難関私立大などの過去問演習と並行して用語集などで歴史的事象の内容や意味の理解に努めよう。志望校以外の問題を解くことは、異なった問われ方に遭遇する機会も多いので効果的だ。新たな発見があったときにそれを記載する「新発見ノート」を作っておくのもおすすめ。
出題例
2023年 東京大(前期) 大問3 問(2)
①14世紀半ば、②ペストの流行を背景としたイタリア語の物語、③テーマは人間の愛や欲望、このヒントから物語の名称を問う問題であった。「ルネサンス期にイタリアのボッカチオが描いた物語は?」なら『デカメロン』と即答できたはず。
秋からの個別試験対策 差がつく学習法
3ステップの論述対策で確実に実力を完成させる
論述の学習には3段階ある。まずは短論述かつ入試頻出のテーマを選び、教科書や授業プリント・ノートなどを見ながら時間制限を設けないで論述する第1段階、教科書などを参照しながら制限時間内に作成する第2段階、何も参照せず制限時間内に完成させる最終段階だ。この3段階で確実に実力を完成させよう。
過去問などの実戦的な演習でタテとヨコで知識を整理
難関私立大や国立大では、1つのテーマについて古代から現代までの大きな時間軸で問うてくる問題や、同時代の世界を鳥瞰しつつ各地域の政治的・経済的・文化的な絡みについて問うてくる問題が多く見られる。2学期後半からは、志望校の過去問を分析しつつ、類似した問題を解きながら知識の整理を行うとよい。
自分の弱点・盲点を把握し、重点的に攻略する
難関私立大では、紛らわしい用語の選択肢問題・記述問題や、共通テストより難しい正誤判定問題が頻出している。過去問演習を通じて苦手な問題形式の把握と対策を行うとともに、不得意な時代や分野については、教科書の熟読や一問一答集により再確認しておきたい。中国史を中心に、用語の記述対策も重要だ。
この記事は「螢雪時代(2024年10月号)」より転載いたしました。
「螢雪時代」最新号は好評発売中!詳細はこちらをご覧ください。