河合塾
佐藤 裕治 先生
東京大学大学院理学系研究科修了。河合塾で長年にわたり、授業、模試作成、入試問題の分析に携わる。日本地理学会地理教育専門委員を務め、大学入試制度や高校の教育課程の改革に関しても詳しい。
テーマ1・2は、地理総合の「地図と地理情報システム」「国際理解と国際協力」「自然環境と防災」の分野からの出題が予想される。テーマ6は地理探究の新しい分野で、試作問題において最も高い配点が与えられていたことに注目したい。これまで学習指導要領改訂後の最初の入試には、新しいカリキュラムの特徴を反映した出題があったが、2025年も同様と考えられる。全体的な出題形式や難易度は、これまでの共通テストから大きな変化はないと思われるが、探究型の学習を踏まえて、大問ごとにテーマ性を持った出題が予想される。
傾向
日本の地形や気候の特徴と自然災害が発生するしくみ、ハザードマップの見方、災害発生時の行動、減災のための対策、復旧・復興の取り組みなど、多方面からの出題が予想される。都市化に伴う内水氾濫など、人の営みが災害のリスクを高めていることにも注意したい。
対策
自然災害の発生するしくみを整理しよう。地震・津波、火山災害、風水害など日本が直面する自然災害は、プレートの沈み込み帯に位置し、台風が襲来する大陸東岸に沿うことと関わる。そして、その自然現象が災害となるのは、そこに人が生活していることによるので、教科書に掲載された地形分類図やハザードマップなどから災害に脆弱な場所を確認しておきたい。
傾向
地形、気候、植生、土壌などの自然環境の分布や形成のメカニズム、地域による特徴の違いなどを問うオーソドックスなテーマであるが、初見の図表が使われ、判読のスキルが問われることもある。水循環や生態系など、地球システムや環境問題と関連づけた出題も予想される。
対策
プレートの動きと大地形、大気の大循環と気候など基本的事項を踏まえ、地図帳や教科書で分布の特徴をしっかり押さえておくこと。形成のメカニズムはフローチャートなどでまとめて整理したい。問題演習を通じて様々な図表の判読に慣れておくことも必要で、初見の図表でも、既知の情報と結びつけて考えることができれば難しくはないはずである。
傾向
農林水産業、資源・エネルギー、工業、第3次産業などが扱われるが、単独の産業ではなく探究型学習の切り口から相互に関連させた出題が予想される。例えば、「技術革新」をテーマに、工業の知識集約型産業の発達とスマート農業や電子商取引などを関連させた設問が考えられる。
対策
各産業の特徴、立地、分布、地域的特徴など基本的事項をきちんと押さえたうえで、グローバル化や技術革新によって各産業がどのように変化してきたのかを、教科書の記述から抜き出してまとめてみるとよい。産業に関しては、知識を詰め込む学習に偏りがちだが、共通テストでは単なる知識ではなく、教科書をもとに主体的に考える学習を反映させた設問が予想される。
傾向
日本の地理的課題と解決の方向性を、探究型の場面設定などで出題される可能性が高い。戦後の日本の人口構造や産業構造の変化とその背景、各地域が現在直面している人口減少社会において地域を維持する方法、食料やエネルギーの自給の方向といった持続可能性が問われる。
対策
教科書でのページ数は少ないが、地理探究という教科の集大成と位置づけられ、試作問題では最も配点の高かったテーマである。教科書の系統地理考察の人口、産業などの項目の最後に「日本の人口問題」「日本の工業」などとしてまとめられている部分から、課題と方向を整理しておきたい。高度経済成長、東京一極集中、地方創生などの用語もチェックすること。
演習開始時期:11月下旬~
目標使用量:4回分
自然環境の問題はセンター試験に遡ってもよいが、全問を通した演習は共通テストの4回分でよい。大問ごとに難易度が異なり、資料の判読に思わぬ時間がかかることもあるので、本番同様に60分で解いて時間配分のコツをつかみたい。正答率がきわめて低く差のつきにくい問題もあり、間違えても落ち込むことはない。正解すべき問題を落とさないことが重要である。
新しいテーマの大問が予想され、教科書での学習が重要になる。教科書は本文だけでなく、注やコラム、特集ページなどにも新しい情報が載っており、教科書を使い尽くすつもりで取り組もう。副読本の資料集なども役に立つ。2024年に行われた共通テスト模試は、新しい傾向を踏まえた出題となっているので、過去問演習を補うものとしてしっかり復習しておきたい。
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