小船 幹生 先生
京都大理学部を卒業後、同・大学院高エネルギー物理学専攻修士課程を修了。欧州原子核研究機構で研修後、東京大理科三類に合格。現在、予備校や中高一貫校では数学・情報科、大学では統計学・情報系資格の講師として教鞭をとる。
共通テストでは、制限時間内に非常に多くの情報を処理し、ヒントや誘導に基づいて解答を導く、判断力と処理能力が試される。とりわけ「情報Ⅰ」は新科目ゆえに、知識を深掘りするよりも、こうした共通テスト特有の傾向が色濃く反映されるだろう。どのテーマも日常生活における情報技術が出題背景となるが、知識問題になりやすいテーマ1・2・4は配点がやや低い一方、思考問題を作成しやすいテーマ5・6は計50点の高配点が予想される。また、読解や計算など文理を横断するハイブリッドな要素を持つテーマ3は、手堅く15点ほどが期待される。
傾向
コンピュータの仕組みやデジタル表現の知識が問われ、知識・計算・読解問題といった文理ハイブリッドな出題が予想される。例えば、身の回りにある様々なメディア(画像・音・動画など)がどのようにデジタル化されているか、またそれを可能にするコンピュータでの動作が問われる。そして、これらの原理は最終的に二進法に帰着するため、単に知識を問う問題だけでなく、計算問題に発展するパターンが多い。
対策
まずは二進法をしっかりと押さえたうえで、このテーマの土台となる情報量の知識と、基礎的な計算力(数学A)を養うこと。ここで問われる音・文字・画像・動画のデジタル理論は、どれも根底に二進法が据えられているためである。また、情報量の単位バイト・ビットやその接頭語の表現に習熟しておこう。問題文中にも示されるはずだが、単位変換は非常に計算ミスを起こしやすい。とはいえ、配点はそこまで高くないため、教科書の例題や薄めの問題集でよいので、知識だけでなく計算演習を積んでおこう。
傾向
通信プロトコルやネットワークの基本的な仕組みについて問われる。知識や読解中心の出題になると予想され、文系的な要素が強い。例えば、インターネットやWi-Fi、メールの送受信やWebブラウザの仕組みなど、身近な「ブラックボックス」は出題テーマになりやすい。「試作問題」や「サンプル問題」でIPアドレスの仕組みやプロトコルの具体名が問われたように、知識をストレートに問う問題が予想される。
対策
知識中心の出題とはいえ、見慣れない用語や概念が多く、理解しながら覚えることが重要だ。特に、LANやWAN、インターネットといったネットワーク構造と、IPアドレスを用いた様々な通信の仕組みは、対応する図を用いて学習すると理解が深まる。また、TCP/IPプロトコルの【SMTP、IMAP、DHCP、DNS】などは、省略形でなく英語の意味合いを覚えると、特徴や役割を整理しやすい。暗記量は多いが、知識が得点に直結する分野であるため、直前期に集中して復習すると効率的に得点を伸ばせる。
傾向
25点ほどの高配点となる見込みで、統計的なデータの解釈や、モデル化とシミュレーションの内容が問われる。本格的な計算よりも読解や図表の読み取りに重点が置かれるが、数学Ⅰで学ぶ知識が前提となるため、理系有利な出題となる。ヒストグラムや箱ひげ図、散布図などの統計グラフの読み取りや、待ち行列といった確定的モデル(変動する要素がなく、解が一意に定まるモデル)のシミュレーションには、どうしても数学的発想が必要となる。
対策
数学Ⅰ「データの分析」を中心に統計的な知識を確認しつつ、まずは代表値(平均値・中央値・最頻値)や分散・標準偏差といった統計指標を図表から素早く読み取る力を養おう。確定的モデルについては、具体的な場面(在庫管理や交通量)を想定した初見問題が、図表付きで問われるだろう。ここでは、簡単な具体例で実験したり、一番わかりやすい部分のみに焦点を当ててパターンを理解することが重要だ。いずれにせよ、問題の長文や図表の中から解答に必要なキーワード・数値に素早くアクセスできるかが、勝負の分かれ目となる。
傾向
大問全体で25点ほどの高配点となり、具体的な問題解決の観点から簡単なコードを与え、その結果やプロセスを推測する内容が問われる。論理的思考力が求められる「情報Ⅰ」特有のテーマである。共通テスト仕様のプログラム表記の理解に加え、会話形式の長文から問題の全体像を把握することが求められ、最も時間を要する大問になる可能性が高い。条件分岐や繰り返し処理など、基本的なプログラム構造を解析しながら、正確に手順を意識する力が求められる。
対策
焦っていきなりプログラムの読解に取りかからないこと。会話形式の長文から、結局「何を解決したいのか」を読解することが先決だ。それができたら、コードを「意味ブロック」に分解して、各ブロックがどのような役割を果たしているか整理する。分岐や反復が複雑な処理については「トレース表」を活用して、プログラムの動作を1つ1つ追いながら考える練習を積もう。限られた時間内で確実に答えを導き出すためには、考え方のフレームワーク(自分の決まったやり方)を常に意識してプログラムを読み解く習慣を身につけることが効果的だ。
大学入試センター発表の「試作問題」「サンプル問題」は対策の基礎となるため、必ず目を通すこと。知識の整理は、各出版社で表記や内容の揺れはあるものの、手持ちの教科書を2~3周すれば十分。『重要キーワード736』(河合出版)などの用語集を併用すれば、スキマ時間に知識の補強と完成を目指せる。
問題集は、この時期に旧「情報関係基礎」の過去問はオーバーワークだ。限られた時間で「情報Ⅰ」を効率よく対策するには、実戦に特化した模試形式の問題集で十分である。足りない部分は、テーマ別に充実した問題集(実教出版など)でスポット演習をしたい。
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この記事は「螢雪時代(2024年12月号)」より転載いたしました。
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