元河合塾
大竹 真一 先生
長年にわたり河合塾講師として受験生を指導。旺文社の『全国大学入試問題正解』の解答者・巻頭言執筆者であり、受験生向けの参考書・月刊誌、大学の教科書など多数の著書がある。また、大学でも教鞭をとっている。
2025年からの新課程では、数学Ⅱ・B・Cがセットで出題される。このうち、数学Ⅱは全問必答、数学B・Cについては、数学Bの「数列」「統計的な推測」、数学Cの「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の4項目に対応する4題から、3項目に対応する3題を選択して解答する。2024年より選択問題が1題増えることになり、そのぶん試験時間も10分増えて70分となる。また、2024年までの数学Bの「確率分布と統計的な推測」は、新課程では「統計的な推測」となり、仮説検定が新たに加わった。さらに、「平面上の曲線と複素数平面」が初めて登場する。
傾向
例えば、素朴な二項分布の計算のみといった推測以前の内容は、扱いが軽くなりそうだ。確率分布の特徴を、確率変数の平均、分散、標準偏差などを用いて考察したり、母集団の特徴や傾向を仮説検定によって判断するような「統計的な推測」が、出題の中心になるだろう。
対策
与えられた日常的な事象について、これを数学化し、確率変数の平均、分散、標準偏差などを用いて考察できるようにするのが最初のステップで、数学Ⅰの「データの分析」と関連する学習となる。さらに、仮説検定での帰無仮説・対立仮説の意味を知り、仮説を立てて検定する手順を基本的な例でよいので練習しておこう。これらの手順が意外に素朴だとわかるだろう。
傾向
この分野は古典的な図形と計算だと思われがちだが、平面上の文字係数の曲線は文字が変化すると図形も変化する。複素数平面上では、図形を複素数で表現し、回転することや平行移動することができる。共通テスト全体の傾向を見ると、コンピュータが登場する可能性は高い。
対策
理系の大学・学部は、2次試験でこの項目を出題範囲に含んでいる場合が多い。したがって、理系の受験生は2次試験対策として勉強するので、数学的な内容は理解できているはずだ。ただし、コンピュータを用いる内容の問題の対策については、分野は違うがこれまでの共通テストでも出題されているので、それを参照しよう。文系の受験生は十分に学ぶ時間を確保すること。
傾向
教科書にはないような形の漸化式を、誘導付きで出題する。解いていく過程を2人の会話の形式で問題にしているが、このとき、式の変形などで理由や論理が話題になる。単に解き方だけが問題にされるのではなく、対話の形や選択肢もあるので、数学的帰納法も考えられる。
対策
共通テストやセンター試験で出題される数列は、標準レベル以上のものが多く、中には2次試験以上に難しいものもあった。数列は、計算問題としてパターン化して考えるだけでは厳しい。漸化式、数学的帰納法などは、教科書の範囲を越えて出題されることもある。この分野は大きく傾向を変えないので、共通テストに加えてセンター試験の過去問も研究してみよう。
傾向
選択解答の数学B・Cは出題項目が決まっている。しかし、数学Ⅱの必答3題それぞれには、(数学Ⅱという以外に)出題項目の制限がない。例えば、「微分・積分の考え」の問題で、ある条件から領域を求めて、その面積を求めるという、「図形と方程式」との融合問題も出題可能である。
対策
ある領域を求めてその面積を計算する問題では、まず領域を正しく求められなければ、面積を積分で求める方法を知っていても正解は得られない。また、2接線のなす角を求めるときには、三角関数の知識が必要だ。ただし、融合問題は複数の項目にまたがる複雑さがあるためか難問は少ないので、すべての分野の基礎学力を充実させることが最善の対策となる。
演習開始時期:12月中旬
目標使用量:4回分
2021~2024年までの過去問のうち、2022年は平均点が低く傾向も異なるので、この年は参考程度にして、残り3年分を中心に使うとよい。過去問を使用する目標は、共通テストの特徴を知って慣れることである。それ以前のセンター試験の過去問は、出題形式は少し異なるものの内容はよいので、計算練習用や弱点チェック用として3年分ぐらいはやっておきたい。
旧課程の共通テストの過去問集は、優れた参考書として使えるが、新課程の「統計的な推測」「平面上の曲線と複素数平面」は含まれていない。したがって、これらを含むものとして、模試は本番に最も近い存在と言える。過去問に含まれていないこの2項目のうち、選択する予定の項目については、分野別の問題集などで補強しつつ、新課程の共通テスト問題集にも挑もう。
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