『螢雪時代』アドバイザー
庄司 憲仁 先生
『全国大学入試問題正解 化学』の解答者であり、『螢雪時代』記事のほか、『10日間完成 文系のための分野別 センター化学基礎』(すべて旺文社)、数研出版の教科書・チャート式など多数執筆している。
過去を遡ると、新課程初年度のセンター試験や共通テストでは易化の傾向が見られた。しかし、油断は禁物で、今回は「化学基礎」も「化学」も内容的に大きく変わった事項がないので、全体的な傾向は例年と類似したものになるだろう。とはいえ、新しさを求めるあまり、例年通りに加えて「読解力・思考力・計算力をさらに深く問う設問」「時間的に厳しい計算問題」「見慣れない反応」など、通常意識しない視点からの設問も考えられる。「化学基礎」の計算は比較的平易なものが多いので心配は無用であるが、後述する「化学」の熱化学には注意したい。
傾向
「化学基礎」のテーマ1は例年通り比較的平易な小問集合と考えてよいが、テーマ2は新傾向の可能性が大である。しかも、今まで見たことのない実験装置やグラフなどを使いながらも、学習範囲内で考察すれば解けるようにうまく工夫された問題が出題されるだろう。
対策
2024年の第2問は、やや小問集合的な大問であったが、2025年は新傾向問題を含む総合的な内容になるだろう。配点は20点であり、意外と考察に時間がかかるので、易問が比較的多いテーマ1は素早くかつ注意深く解答を済ませて、十分な時間をテーマ2に確保したい。内容的には、酸化還元反応、酸・塩基と中和反応、反応の量的関係などが主体となると思われる。
傾向
気体・平衡・反応速度など理論分野の最近の問題構成は、分野単独ではなく、2つ以上の分野にまたがった形で出題されることが多い。また、小問の扱いとして、結晶構造の面倒な計算や無機物質などで細かい内容が問われる傾向も強まっている。
対策
理論化学の王道である気体・平衡・反応速度など理論分野についての出題は必出だが、すべてから出題されるわけではない。日頃からこれらの演習は十分に行っていると思うが、もし弱点だと感じる分野があったら、諦めることなく至急に補強しておきたい。演習においては、通常の難問対策に加え、マーク式の設問に慣れるべく過去問にも多くあたっておこう。
傾向
芳香族を含む複雑なエステルの加水分解生成物を推定する問題や、ペプチドの構成アミノ酸の推定など、記述式試験でよく扱われる問題をマーク式に置き換えたものになるだろう。これらは、構造式の一部分を選択肢から選んだり、分子の並び順を答えるタイプになると思われる。
対策
共通テストでは、あまり複雑な構造の化合物が扱われることはないので、よくある記述式の演習問題を短時間で解き切れるように準備しておこう。通常の記述試験対策の中で、構造推定や立体構造の表現などが「共通テストでは選択肢としてどのように扱われるか?」と自分なりに推定してみるのもよい。浸透圧との関連など、理論分野との融合も視野に入れておこう。
傾向
2024年に出題された質量分析のスペクトルを考察させる問題は意表を突いたものであったが、導入文をよく読んで順に理解を深めれば、初めて見る表やグラフでも恐れることはない。 2025年はNMRや赤外スペクトルなど、より深く追求される可能性もある。
対策
このタイプの問題は、過去問で体験できないし、問題集でもあまり見かけない。大学によっては学校推薦型選抜などにおいて見られることもあるが、問題の入手は難しい。通常の難問で物足りない場合には、「化学グランプリ」に出題された問題がネット上に掲載されているので、その超難問に挑戦するのもよいだろう。
過去問検索:https://gp.csj.jp/examarchives/
演習開始時期:12月上旬~
目標使用量:10回分+α
2015年以降は新課程とほぼ同じだが、「熱化学」の分野だけは過去問を使えないため、最新の問題集で手当てしておきたい。使用年度で悩んだら、平均点の低かった年度に挑戦しよう。センター試験では1994・2004・2016・2017年、共通テストでは2022年などで、いずれも間違えやすい問題を含んでいるので、慎重に対処して時間内に正しく解けるようにしよう。
「熱化学」は反応熱の表し方が変わったことから旧課程の問題集が使えないため、「新課程」と表された通常の問題集や予想問題集を手に入れて進めよう。他の分野は、用語の相違などが多少あるものの、演習するうえでは影響がないので、過去問や古い問題集を有効に活用したい。あやふやな用語や器具などがあったら、手間を惜しまず教科書や資料集を活用して理解しよう。
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