お金の管理の基本的な考え方と、大学生の収支例を理解したら、アルバイトや、最近話題になっている投資など具体的なテーマ別に、齋藤先生からお金の管理のコツを教えてもらおう。
年間でどれだけ稼ぎたいか
保護者と相談が必要なことも
読者の皆さんは「103万円の壁」という言葉を聞いたことがあるだろうか。2024年12月現在、国政の場で盛んに議論されているテーマだ。年収が103万円を超えると所得税が課され、大学生が年間103万円以上稼ぐと、保護者の手取り収入が減るなどの影響がある。齋藤先生は「103万円の壁は今後、引き上げられる見通しです。ただし、壁の金額がいくらになっても、自分がアルバイトでどれだけ稼ぐ必要があるか、事前に保護者と相談しましょう」と呼びかける。
また、齋藤先生は、アルバイト選びでは時給以外の観点も大事にしてほしいと語る。「自分が挑戦してみたいことや、将来の就職活動に向けた経験なども考えて、興味を持てるアルバイトを探してみてください」とアドバイスする。
まずはアナログなやり方で
お金の出入りを実感しよう
実際にお金の管理に取り組むにあたって、初心者でも実践しやすい方法はあるだろうか。齋藤先生は「個人的な意見としては、最初はアナログな方法でやってみることをオススメします」と語る。「読者の皆さんはデジタルネイティブの世代ですし、最近はアプリなどでも家計管理ができます。しかし、まずはノートやペンを使ってお金の流れを記録することで、自分が何にどれだけ使っているのか、実感しやすくなります」と効果を説明する。
本格的な家計簿を使う必要はなく、日々の収入・支出・残高が把握できていれば十分だという。ただし、注意点として「クレジットカードのように後払いの決済方法を使った支出については、記録の際に文字の色を変えるなどして、わかりやすくしましょう」と話す。
将来返還する意識は持ちつつ
貴重な経験のために活用
奨学金を受給している大学生向けの注意点として、齋藤先生は「奨学金はあくまで借り物であることを忘れないでください」と語る。奨学金には返還の必要がない給付型と、いずれ返還する必要がある貸与型があり、多くは貸与型だ。「手元にあるお金は、自分のものだという意識が働きがちです。貸与型の奨学金を受けている場合、大学卒業後に返すお金だという意識を持ちましょう」と話す。
とはいえ、返還を意識し過ぎてせっかくの奨学金を使わないのも本末転倒だという。「学生時代にしかできない経験は確実にあります。心から挑戦してみたいことがあるならば、その費用に奨学金を使うのは大賛成です。そうした経験は、大学卒業後も自分を成長させてくれる肥やしになります」と語りかける。
収入の範囲内の生活を優先し
一定額の「先取り」を実践
近年は学校でも金融教育が取り入れられ、貯蓄や投資に関心を持つ若い世代も増えている。齋藤先生は貯蓄や投資への関心の高まりを歓迎しつつも、「収入の範囲内で生活できることが最優先で、貯蓄や投資はその先の話です。また、貯蓄や投資の目的も大事です」と念を押す。
具体的な方法としては、収入の中から毎月一定額を貯蓄や投資に回す「先取り貯蓄・投資」と呼ばれるやり方がオススメだという。「たとえば月に1万円を貯蓄に回し、残る金額内で生活するようにすれば、最終的な収支は必ず黒字になります。それを習慣化できるといいですね」と齋藤先生。さらに、「もし投資に興味があれば、まずは各種ポイントを使って疑似的な投資体験をしてみるといいでしょう」とアドバイスする。
大学生が注意したいお金のトラブルについて、齋藤先生がまず挙げたのは「友人同士でもお金の貸し借りをしない」ことだ。「良好だった友人関係がお金の貸し借りをきっかけに破綻することもあるので、できるだけ避けましょう」と話す。さらに、詐欺にも注意を呼びかける。「儲け話などに誘われて、何らかの先払いを求められることがあれば、詐欺を疑いましょう。困ったら家族や大学に相談してください」と対策を示す。社会問題になっている闇バイトにも警鐘を鳴らし、「特に専門性のない普通の大学生が、短時間で楽に大金を稼げる仕事は存在しません」と語る。
友人同士でもお金の貸し借りはしない。
儲け話などで先払いを求められたら詐欺を疑おう。
楽して大金を稼げるアルバイトは存在しない。
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「螢雪時代(2025年3月号)」
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