河合塾講師
中川 雅博 先生
3きょうだいの猫(戒・定・智慧)とともに、戦争倫理学をはじめとする東西思想の融合を試みる研究者。河合塾では公民科目の授業、大学では哲学系や倫理学系の講義を担当している。
大問数は4、マーク数は合計33、リード文はすべて会話文になると思われる。資料文を比較して思想的な共通点を見つけ出したり、論理的に一貫した対話になるように会話文の空欄を埋めたりする出題が中心の構成になるだろう。全体として出題内容や難易度に大きな変化はないが、難化傾向にあった日本思想は易化すると予想される。「青年期と心理」や「現代社会の諸課題」が出題される大問は、25点分が「公共」と共通の出題になると思われるが、知識を必要としない読解問題が中心になるだろうから、教科書中心の学習で十分に対応できるはずだ。
※「公共、倫理」のうち「公共」の傾向▶対策についてはこちらを参照。
傾向
青年のキャリア形成、「共有地の悲劇」論や相対的貧困率の国際比較などをめぐる出題が予測される「公共」との共通問題以外に、メルロ=ポンティや吉本隆明のように、教科書に記載があるものの受験生には馴染みの薄い現代思想から、「倫理」特有の設問が出題されるだろう。
対策
出題頻度の高いロールズなどは比較的解答しやすい内容の出題が多いが、まれに出題されるドイツやフランスや日本の現代思想は、確認が不十分だと、たとえ選択肢の記載内容が思想家の代表的な主張であっても、その正誤を判断するのは容易でない。出題歴にとらわれず、事前に一問一答集を利用してこれらの思想を確認し、取りこぼしのないようにしよう。
傾向
出題範囲のギリシア・インド・中国思想および宗教思想関連の資料を提示して、その読解を基にした設問が出題される傾向がある。ただし、単項目の単純な読解ではなく、例えばキリスト教関連の資料とイスラーム関連の資料を比較し、その共通点や差異を問うような形式になる。
対策
出題される可能性のある全資料にあらかじめ当たっておくことは不可能だが、例えばモーセの十戒のように、どの教科書にも掲載されている資料は必ず読んでおこう。その際、重要語を覚えようとするのではなく、資料からユダヤ教を特徴づける内容(その資料が教科書に掲載される理由)を見つけ出し、複数の資料を比較させる問題に対応できる学力を養成しておきたい。
傾向
出題範囲が古代~中世(仏教)、近世(儒学・国学)、近代(欧化主義・反欧化主義)と時代やテーマで区分しやすいので、本番でも3部構成で出題されることが多い。また、比較的多くの受験生が苦手とする芸術関連の設問や、近代の文芸関連をテーマとする設問も出題される。
対策
最近の共通テストでは、日本思想に限らず、思想家・作家とその著書名を単純に結びつける出題は、空欄補充問題を含め見られなくなった。そうした出題に代わって、例えば『方丈記』に見出される「無常観」や、夏目漱石が自己本位を唱えた時代状況についての正しい理解が求められるので、理解が曖昧な項目は必ず教科書に立ち返って理解を深めておきたい。
傾向
出題傾向として、経験論と合理論、観念論と功利主義、社会契約論や実存主義や社会主義などをテーマに、関連する思想家や思想の比較や理解、および思想の時代背景が問われることが多い。デカルトの暫定道徳論など、比較的マイナーな内容が出題されることは減ってきている。
対策
多くの受験生は、例えばデカルトが新しい学問の方法として演繹法を提唱したことは知っているが(現代の受験生にとって演繹法は目新しいものではない)、それが当時なぜ新しかったのかまでは確認しない。高得点をとるためには、こうした理解を深めておくことが重要なので、過去問演習の際に重要語にとらわれず、選択肢の記載内容をきめ細かく検討するようにしよう。
演習開始時期:12月中旬~
目標使用量:6回分
過去問演習の目的は近年の出題傾向を知ることにある。週に2題程度のペースで、2023年から遡って3年分(本試験・追試験)を検討しよう。これまで一問一答集を利用してきた受験生は基本的にセンター試験まで検討する必要はないが、資料文や統計資料の読解問題は共通テストが重視する読解力の育成に有効なので、時間的な余裕があればチャレンジしてほしい。
一問一答集や教科書は、全出題範囲を復習するのに有効である。まずは、一問一答集をひと通り検討して知識にヌケがないか確認し、ヌケている部分についてのみ教科書を再読するのが効率的だろう。加えて、過去3年分の過去問演習だけでは演習不足に感じるなら、スキマ時間にもう一度、これまでに受けた共通テスト模試を解いて出題形式に慣れておくのもよいだろう。
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