まずは、国公立大志望者の共通テスト戦略について紹介する。直前期の戦略や具体的な対策、共通テストのみの科目の扱い、私立大の共通テスト利用入試の活用などについて確認しよう。
国公立大の志望者にとって、共通テスト直前期の最適な戦略はどのようなものだろう。高桑先生は「共通テスト直前の時期は、国公立大の志望者なら共通テスト対策に集中すべきです」と説く。「共通テストは問題の形式が独特です。生徒たちからは『とにかく解答時間が足りない』という声を多く聞きます。手際よく解く練習を積まなければなりません」と説明。「本番直前の時期は、共通テストと2次試験の対策の比率は、8:2か9:1くらいでしょう」と語る。
立崎先生も「国公立大を志望しているならば、直前期は共通テスト対策に絞るのがいいでしょう」と話す。高桑先生同様、立崎先生も共通テストならではの「解答時間の厳しさ」に言及。「共通テスト直前の時期は、時間を計りながらの演習が大切になります。本番同様の解答時間を設定し、過去問や予想問題を解いていくことが効果的な対策になります」と解説する。
高桑先生も立崎先生も、「旧帝大などの難関国公立大を目指す受験生でも、直前期は共通テスト対策を疎かにはできません」と声を揃える。高桑先生は「東京大や京都大など最難関の国公立大志望者でも、共通テストのスピード重視の解き方に慣れる必要があります」と指摘する。
立崎先生は「(共通テストの前身の)センター試験時代は、難関大志望者は12月からの対策でも間に合いました。しかし、共通テストでそれをやると、得意科目でも8~9割取るのは難しい。難関大志望者でも11月から始めたほうがいいですし、少なくとも12月以降は共通テスト対策を優先してください」と呼びかける。
国公立大志望者の共通テスト直前期の対策法として、高桑先生と立崎先生が共通して挙げたのは「過去問演習を最優先にすること」「過去問は本番通りの時間設定で解くこと」の2点だ。
高桑先生は「センター試験から共通テストになり4年経ちました。追試験を含めると、それなりの数の過去問があります。これらはできる限り解きましょう」と呼びかける。立崎先生も「共通テストを受けるなら、直前期の対策は過去問演習が原則。この点は国公立大志望でも私立大志望でも変わりません」と語る。演習の際に時間を計るのは、共通テストならではの“タイムアタック”的な解答スピードに慣れるためだ。
さらなる対策のポイントとして、高桑先生は「2日間ごとに全科目の問題に触れること」を挙げ、「冬休みを苦手科目の対策のみに費やして、本番で得意科目が振るわない人がいます。苦手・得意に関わらず、2日に1回は問題を解きましょう」と注意喚起する。立崎先生は「1科目の問題を通しで解くのが難しい場合、大問別の問題集などを活用しましょう。時間を計って大問を解くことで力がつきます」と解説する。
共通テスト本番まで残り1か月の期間には、お正月など年末年始のイベントが続く。立崎先生は「たとえば、大晦日や元日限定で1日オフにするのはありです。しかし、お正月の三が日だけ休むつもりで、結局ダラダラと5日間くらい勉強を止める生徒もいます。5日間あれば、過去問演習は復習まで含めて1~2年分できるはずです」と語る。高桑先生は「テレビを見たり外食に行ったりするのは、いいと思います。ただし、初詣は少し注意が必要です。人ごみに行くことで感染症や風邪の危険性もあります。お正月気分に流されないよう、オフの日を作るなら、年始ではなく年末にすることをオススメします」と呼びかける。
国公立大志望者の場合、共通テストでは受験しなければならないが、2次試験では受験の必要がない、「共通テストのみの科目」が存在する。文系の受験生なら数学や理科、理系の受験生なら国語や地歴・公民が、共通テストのみの科目であるケースが多い。共通テストのみの科目と2次試験でも必要な科目、本番直前期の対策に費やす時間や労力は差をつけるべきだろうか。
立崎先生は「共通テストのみ、2次試験も使う、という分け方にあまり意味はありません。判断基準はシンプルで、実戦形式の問題を解いてみて、得点が悪ければ対策をするだけです。それが2次試験でも必要な英語であっても、共通テストでしか使わない化学基礎であっても、同じです」と語る。「センター試験と比べ、共通テストでは得意科目でも狙って9割以上を取るのが難しくなりました。苦手科目を得意科目でカバーする戦略が取りにくいため、全科目まんべんなく対策する必要があります」と解説する。
高桑先生も「共通テストのみの科目であっても、受験するならば偏りなく対策することが原則です」と強調する。「理科や地歴・公民は、学校の授業で全範囲が終わるのが遅い時期になりがちです。そうした科目も、2次試験で使う科目同様に、過去問や予想問題を解いて解答や解説を読み、わからなければ教科書に戻りましょう。結局、これが最短距離の勉強法だと思います」とアドバイスする。
国公立大志望者にとって、私立大の個別試験対策が必要ない共通テスト利用入試はぜひ受験したい入試だ。ただし、そのハードルは決して低くない。いわゆるMARCHなら、求められる共通テストの得点率が80%を超えることも少なくない。そのため、MARCHは国公立大なら旧帝大やそれに準じる難関大志望者の併願校となるケースが多い。立崎先生は「共通テスト利用入試で自分が合格できる可能性があるのは、第1志望校よりワンランク下の大学であると考えたほうがいいでしょう。これは国公立大志望でも私立大志望でも同じです」と解説する。
高桑先生は「上位私立大の共通テスト利用入試は、共通テスト受験前に出願しなければならないケースが多いので注意しましょう」と呼びかける。「共通テスト後に、結果がよかったからと共通テスト利用入試に出願しようとしたら、締め切りが終わっていたというケースはよくあります。出願する可能性があるなら、事前に調べておくことが大切です」と注意喚起する。
共通テスト本番で注意したいミスやトラブルについて、先生方に聞いてみた。立崎先生は「マークシートの塗り方が乱れていたり、ドーナツ状に真ん中だけ塗られていなかったりするケースがあります。自分の塗り方を機械が読み取れるか、という視点を持ってほしいです」と語る。高桑先生は「定番ですが、マークの段ズレには気をつけましょう。また、解ける問題を優先して解くことを徹底し、最後までたどり着くようにしましょう」と呼びかける。
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