公共、倫理
河合塾 中川 雅博 先生
3きょうだいの猫(戒・定・智慧)とともに、戦争倫理学をはじめとする東西思想の融合を試みる研究者。河合塾では公民科目の授業、大学では哲学系や倫理学系の講義を担当している。
本番を制する解答戦略は?
解答時間50分、見直し10分が時間配分の目安となる。試験開始後すぐに全体を見渡し、従来の出題傾向を踏襲すると予想される「倫理」のみの大問から迅速に解答しよう。「倫理」の解答後はとりあえずマークミスがないかを確認し、残りの解答時間を出題の約3割を占めると予想される「公共」中心の問題群に割こう。この問題群は多くの資料の読解を求めると同時に出題構成も複雑になると思われるので、設問文の要求に細心の注意を払いつつ順に解答していこう。
本番解答術 おすすめ!TOP1
思い込みを捨て、論理的な一貫性で試験をやり抜く
会話文を読解して空欄を補充し、意味のある一連の会話を再構成するタイプの問題が求めるのは、非論理的な展開も多い現実の日常会話の再現力ではなく、与えられた会話や文章を論理的に理解して再構成できる力である。つまり、どこかにヒントがあり、根拠をもって解答できる問題しか出題されない。資料文や統計資料の読解問題も同様なので、資料から読み取れない余計な知識を持ち込んで考えるのではなく、常に与えられた資料に根拠を求めて解答しよう。
本番解答術 おすすめ!TOP2
重要語だけ見て正誤を判断しない
共通テストは、理解の伴わない単純な暗記学習を排除しようとしており、4択問題であっても、例えば〈安藤昌益=『自然真営道』〉といった思想家と著作名、〈レヴィナス=顔〉といった思想家と重要語の組合せなど、表面的な知識では解けないことが多い。そもそも選択肢のすべてに同じ重要語が記載されていることも少なくない。重要語の有無よりも、「その説明は本当に正しい内容なのか?」を吟味して、選択肢の正誤を判断するようにしよう。
本番解答術 おすすめ!TOP3
同じ解答番号が連続したときは、焦らずに見直す
センター試験の時代から同じ正答番号が4つ以上連続することはほぼなく、正答番号に何らかの規則性も見いだせなかった。共通テストも同様なので、同じ解答番号が4つ以上連続する場合には、解答を再検討したほうがよい。また、3つの短文の正誤を判断させる出題には、必ず1つは正文があるといった思い込みも捨てよう。「該当するものはない」という選択肢が正解となる9択問題が出題されると極端に正解率が落ちるが、固い信念をもって問題に取り組もう。
要注意!共通テスト本番の痛いミス
緊張して人名や用語を読み間違える
過去問と同じと思い込み、安易に解答して失敗
解答を留保した設問のマーク記入をし忘れる
設問文に示された条件を見落としてしまう
難問にこだわりすぎて時間切れになる
プロのおすすめ!得点が伸びる直前対策はこれ!
TOP1
統計資料読解の過去問を集中的に解く
時間の許す限り、センター試験の過去問にもあたり、どのような形式の出題にも対応できるようにしておこう。
TOP2
「倫理」は出題頻度にとらわれずに対策する
近年は受験生にはなじみの薄い叡尊やドゥルーズなども出題されているので、教科書の脚注まで読み込もう。
TOP3
「公共」は基本事項の再確認を徹底する
一問一答集などを利用して、人権問題や市場機構などの基本事項に知識の漏れがないか丁寧に確認しておこう。
「倫理」を対策の中心とし、費用対効果を高める
「公共、倫理」は、公共5割+倫理5割の割合で出題されるわけではない。「公共」の出題は見かけ上は約3割だ。しかも、その大半が「倫理」でも学習するテーマ(少子高齢化問題といった現代の日本社会が抱える問題や国際問題など)や「青年期と心理(一部は「公共のとびら」に相当)」からの出題になるだろう(「公共」でのみ学ぶ項目についての知識問題は2問程度)。つまり、実際には7割以上が「倫理」の学力と資料の読解力で対応できる出題と予想される。対策も大半を「倫理」の過去問の研究に充てるとよい。その際、正答・誤答に関わらず、「現代社会の諸問題」分野は詳細に、残りの分野は誤答したもののみを研究して時間を節約しよう。