何を学ぶ
ドイツ語力を身につけ、ドイツ語圏の文学、文化、社会について学ぶ。文学や文化、社会研究はグローバル社会を構成する他者との対話であり、現代を生きるための力となる。

田丸 理砂(たまる りさ)先生
学習院大学/文学部/教授
1963年、埼玉県生まれ。東京都立大学大学院満期退学。文学博士。学習院大学文学部教授。ドイツ近現代文学専攻。著書『女の子という運動』、訳書『この夜を越えて』など。
ドイツ文学科はこんな人におススメ
たとえばこんな方にはドイツ文学科*をおススメしたい。(*実際にはドイツ文学科、ドイツ語圏文化学科、独文学専修、ドイツ文学専修、ドイツ語ドイツ文学コースなど大学によって名称は異なるが、ここでは「ドイツ文学科」を総称として使用)
・ゲーテやカフカ、トーマス・マン、ヘッセなどのドイツ文学が好き
・ドイツの思想家(カント、ニーチェ、アーレントなど)に関心がある
・ヨーロッパのクラシック音楽をこよなく愛している
・ドイツ語圏の映画や演劇、ダンスに興味を持っている
・ヨーロッパの歴史に関心がある
・ミュージカル『エリザベート』をきっかけに皇妃エリザベートに興味を持った
・ヨーロッパの建築や街の景観に心ひかれる
・バウハウスをはじめとしたモダンなデザインやアートをカッコいいと思う
・現在の環境問題に危機感を抱き、何かしなければと考えている
・世界各地で起きている戦争に心を痛め、戦争について考えるようになった
・世界の移民、難民問題について理解を深めたい
・サッカーをはじめとするドイツ語圏のスポーツが好き、などなど。
もちろんこれらに当てはまらなくても、なんとなくドイツ語圏(主にドイツ、オーストリア、スイス)の文学、文化、社会に関心がある人なら、ドイツ文学科は大歓迎である。かくいう私は、日本の近現代文学が好きで、でも日本語は自分で読めるしと思い、たまたま当時読んでいたドイツ文学の本がおもしろかったから、ドイツ文学科を選んだ。
・ゲーテやカフカ、トーマス・マン、ヘッセなどのドイツ文学が好き
・ドイツの思想家(カント、ニーチェ、アーレントなど)に関心がある
・ヨーロッパのクラシック音楽をこよなく愛している
・ドイツ語圏の映画や演劇、ダンスに興味を持っている
・ヨーロッパの歴史に関心がある
・ミュージカル『エリザベート』をきっかけに皇妃エリザベートに興味を持った
・ヨーロッパの建築や街の景観に心ひかれる
・バウハウスをはじめとしたモダンなデザインやアートをカッコいいと思う
・現在の環境問題に危機感を抱き、何かしなければと考えている
・世界各地で起きている戦争に心を痛め、戦争について考えるようになった
・世界の移民、難民問題について理解を深めたい
・サッカーをはじめとするドイツ語圏のスポーツが好き、などなど。
もちろんこれらに当てはまらなくても、なんとなくドイツ語圏(主にドイツ、オーストリア、スイス)の文学、文化、社会に関心がある人なら、ドイツ文学科は大歓迎である。かくいう私は、日本の近現代文学が好きで、でも日本語は自分で読めるしと思い、たまたま当時読んでいたドイツ文学の本がおもしろかったから、ドイツ文学科を選んだ。
憧れとしての西洋文化からグローバル時代のドイツ語圏文化へ
いうまでもなく、明治以降の日本は欧米にならって近代化を進め、その際、西欧の言語はそれらの国々から知識を得るための必須のツールであった。当時のエリートたちは、近代国家の基盤を築くために、ヨーロッパへと送られた。その代表格が森鷗外である。鷗外が数々のドイツ文学を日本語に翻訳し、紹介したことはよく知られている。
鷗外は軍医であったが、ドイツ語圏の学問や文化は、医学のみならず、日本の法学、政治学、工学、文学、芸術などの分野に大きな影響を与え、第二次世界大戦前の日本の高等教育機関ではドイツ語を学ぶものも多かった。当時の教養としてのドイツ語圏文化の普及の例として、1927年の岩波文庫の発刊が挙げられる。岩波文庫はドイツで廉価に名作を提供していたレクラム文庫(1867年)を範としている。
今でも日本語として通用するドイツ語のArbeit(アルバイト)などは、当時学生同士で使われていた言葉が一般化したものだろう。とはいえ、ここでいう高等教育機関に通っていた学生とはジェンダー的にはほぼ男性であったことも忘れてはならない。
第二次世界大戦後も1990年代初頭まではドイツ文学科では文学や言語、文化研究が中心に行われ、フランス文学科のような華やかさはないものの、その質実剛健なイメージは、英語圏とは違うヨーロッパ発というステータスを保持し、西洋文化に憧れる学生たちもそれなりに存在した。そして冷戦構造の終焉を告げるベルリンの壁の崩壊(1989年)は人びとにインパクトを与え、一時的にドイツ語圏への関心も高まった。
1990年代後半以降、大学での第二外国語の選択肢は韓国語やスペイン語へと広がり、またインターネットの普及により英語がますます席巻するなかで、ドイツ文学科にはこれまでとは異なるあり方が求められるようになった。
今やドイツ文学科にはかつての欧米偏重主義ではない、グローバルな視点からドイツ語圏の文化や社会をとらえることが求められている。その学びの可能性については次の項で説明してみたい。
鷗外は軍医であったが、ドイツ語圏の学問や文化は、医学のみならず、日本の法学、政治学、工学、文学、芸術などの分野に大きな影響を与え、第二次世界大戦前の日本の高等教育機関ではドイツ語を学ぶものも多かった。当時の教養としてのドイツ語圏文化の普及の例として、1927年の岩波文庫の発刊が挙げられる。岩波文庫はドイツで廉価に名作を提供していたレクラム文庫(1867年)を範としている。
今でも日本語として通用するドイツ語のArbeit(アルバイト)などは、当時学生同士で使われていた言葉が一般化したものだろう。とはいえ、ここでいう高等教育機関に通っていた学生とはジェンダー的にはほぼ男性であったことも忘れてはならない。
第二次世界大戦後も1990年代初頭まではドイツ文学科では文学や言語、文化研究が中心に行われ、フランス文学科のような華やかさはないものの、その質実剛健なイメージは、英語圏とは違うヨーロッパ発というステータスを保持し、西洋文化に憧れる学生たちもそれなりに存在した。そして冷戦構造の終焉を告げるベルリンの壁の崩壊(1989年)は人びとにインパクトを与え、一時的にドイツ語圏への関心も高まった。
1990年代後半以降、大学での第二外国語の選択肢は韓国語やスペイン語へと広がり、またインターネットの普及により英語がますます席巻するなかで、ドイツ文学科にはこれまでとは異なるあり方が求められるようになった。
今やドイツ文学科にはかつての欧米偏重主義ではない、グローバルな視点からドイツ語圏の文化や社会をとらえることが求められている。その学びの可能性については次の項で説明してみたい。
グローバル時代のドイツ語圏文化研究の可能性
もちろんあなたがドイツ文学を研究したいのなら、ドイツ文学科では中世から現代に至るまでの文学を学ぶことができる。ゲーテ、ホフマン、カフカ、トーマス・マンの作品や『グリム童話』などは今でも人気が高い。意外なところでは、日本ではよく知られる『アルプスの少女ハイジ』も、発表当時の思潮に照らし合わせ、自然(健康)と都会(病的)という二項対立、教育の持つ矛盾に注目して解釈すると、これまでとはちがった『ハイジ』像が見えてくる。
ドイツ文学科では音楽文化について関心のある学生も多い。音楽の背景にある社会のあり方にも目を向けるとさらに理解が深まるだろう。
ナチス、ホロコースト、第二次世界大戦での敗戦は、文学、思想、アート、映画などでも積極的に取り上げられる、ドイツ語圏の文化研究における永遠のテーマだ。同じ敗戦国である日本に住む私たちには、過去との向き合い方を考える上で、大いに参考になるはずだ。
映画について補足すると、日本で劇場公開されるドイツ語圏の映画は第二次世界大戦や東西ドイツ統一がテーマのものに偏っているが、もちろんそれだけではない。最近では文学や他の文化表現同様、移民や難民の問題が扱われる作品も多い。
移民や難民もそうだが、環境問題はグローバルな時代を生きる私たちが共通に抱える課題である。環境先進国といわれるドイツの環境政策、環境教育からは、問題の解決策を探るためのヒントを得られるかもしれない。またそのほかのグローバルイシュー、貧困、格差、ジェンダー、「人種」などについても、もう一つ別の参照先を持つことは私たちの強みになる。
なかでもジェンダーという視点の導入は文学、文化においてもこれまでの見方を大きく変えることとなった。女性作家や女性アーティストが少ないのはなぜか。本当に少ないのか、それとも研究テーマとして扱われていないだけなのか。また近年ではドイツ語圏でもセクシャルマイノリティーについて多くの議論が交わされている。
このようにドイツ語圏の地域やそこで生まれる文化は、かつてのはるか彼方の憧れの対象から、グローバル社会を共に構成するリアルな存在へと変化している。
ドイツ文学科では音楽文化について関心のある学生も多い。音楽の背景にある社会のあり方にも目を向けるとさらに理解が深まるだろう。
ナチス、ホロコースト、第二次世界大戦での敗戦は、文学、思想、アート、映画などでも積極的に取り上げられる、ドイツ語圏の文化研究における永遠のテーマだ。同じ敗戦国である日本に住む私たちには、過去との向き合い方を考える上で、大いに参考になるはずだ。
映画について補足すると、日本で劇場公開されるドイツ語圏の映画は第二次世界大戦や東西ドイツ統一がテーマのものに偏っているが、もちろんそれだけではない。最近では文学や他の文化表現同様、移民や難民の問題が扱われる作品も多い。
移民や難民もそうだが、環境問題はグローバルな時代を生きる私たちが共通に抱える課題である。環境先進国といわれるドイツの環境政策、環境教育からは、問題の解決策を探るためのヒントを得られるかもしれない。またそのほかのグローバルイシュー、貧困、格差、ジェンダー、「人種」などについても、もう一つ別の参照先を持つことは私たちの強みになる。
なかでもジェンダーという視点の導入は文学、文化においてもこれまでの見方を大きく変えることとなった。女性作家や女性アーティストが少ないのはなぜか。本当に少ないのか、それとも研究テーマとして扱われていないだけなのか。また近年ではドイツ語圏でもセクシャルマイノリティーについて多くの議論が交わされている。
このようにドイツ語圏の地域やそこで生まれる文化は、かつてのはるか彼方の憧れの対象から、グローバル社会を共に構成するリアルな存在へと変化している。
ドイツ文学科での学びとその後
ドイツ文学科で最終的に何を研究するとしても、まず基本となるのはドイツ語の習得である。
ドイツ文学科では、1、2年生のうちにドイツ語の基礎を身につけることが求められ、3年生以上も専門教育とは別にドイツ語の中級、上級クラスが設けられていることが多い。またネイティヴの教員による実践的なドイツ語運用を目指した授業も行われている。語学力向上の目標として、ドイツ語技能検定試験などを利用するのもいいだろう。さらに実践力を高めるには、大学が提供している現地短期語学実習や1年間の交換留学制度を利用することもできる。
ドイツ語学習と並行して、1、2年生はドイツ語圏の言語、文学・文化、現代地域事情などの初歩を学びながら、アカデミック・スキル(レポート、プレゼンテーション、文献検索の仕方など)も習得する。3年生になると、究めたい領域のゼミを選択するが、もちろんゼミ以外にもドイツ語の文献講読や、あるテーマに特化した講義なども履修できる。
そして4年生になるといよいよ大学の学びの集大成として卒業論文(大学によっては卒業研究)の執筆だ。自らテーマを見つけ、調べ、分析する。大変だけれど、完成後には必ずや充実感を覚えるはずだ。
卒業後の進路は、他の文系学科と特に変わった傾向はなく、銀行、商社、物流、旅行業など一般企業が中心となる。なかにはドイツ語圏にこだわって就職先を決める学生もいる。またさらに研究を続けたい人には、国内外の大学、大学院進学という道もある。
ドイツ文学科では、1、2年生のうちにドイツ語の基礎を身につけることが求められ、3年生以上も専門教育とは別にドイツ語の中級、上級クラスが設けられていることが多い。またネイティヴの教員による実践的なドイツ語運用を目指した授業も行われている。語学力向上の目標として、ドイツ語技能検定試験などを利用するのもいいだろう。さらに実践力を高めるには、大学が提供している現地短期語学実習や1年間の交換留学制度を利用することもできる。
ドイツ語学習と並行して、1、2年生はドイツ語圏の言語、文学・文化、現代地域事情などの初歩を学びながら、アカデミック・スキル(レポート、プレゼンテーション、文献検索の仕方など)も習得する。3年生になると、究めたい領域のゼミを選択するが、もちろんゼミ以外にもドイツ語の文献講読や、あるテーマに特化した講義なども履修できる。
そして4年生になるといよいよ大学の学びの集大成として卒業論文(大学によっては卒業研究)の執筆だ。自らテーマを見つけ、調べ、分析する。大変だけれど、完成後には必ずや充実感を覚えるはずだ。
卒業後の進路は、他の文系学科と特に変わった傾向はなく、銀行、商社、物流、旅行業など一般企業が中心となる。なかにはドイツ語圏にこだわって就職先を決める学生もいる。またさらに研究を続けたい人には、国内外の大学、大学院進学という道もある。
