何を学ぶ
英語を鍛え、英語圏世界の言語・文学・文化を複眼の視点で探究する。異文化と、変化し続ける時代・社会とを、卒業後も自力で理解し、考察し、伝える人間力の根本を培う場。

伊達 直之(だて なおゆき)先生
青山学院大学/文学部英米文学科/教授
1961年、東京都に生まれる。早稲田大学、東京都立大学大学院修了。英国ヨーク大学Ph.D.(文学博士)。19、20世紀英国文学・文化、英語詩専攻。編著に『ギリシア劇と能の再生』『英語文学事典』『戦争・文学・表象』『戦争・詩的想像力・倫理』など。
グローバル言語による文学と文化
英米文学科は、英語というグローバルな外国語、それによって表現された実に多様な作品群と、英語が根付いた「英語圏」各国の社会と文化について、合わせて研究する場だ。
文学は想像力と人間力を養う。だが、今の文学部では、さらに社会で使うあらゆる文章(テクスト)を対象に入れ、人の言語活動の全てを研究する。論理構造、比喩(ゆ)・感情の表現技法、文字の視覚効果。本当の意味を理解するには、文化や歴史の背景知識が必要なときもある。最終的に、世界に通用する、英語の正確な理解力と自ら発信する力―グローバルなコミュニケーション力を修得する。
文学は想像力と人間力を養う。だが、今の文学部では、さらに社会で使うあらゆる文章(テクスト)を対象に入れ、人の言語活動の全てを研究する。論理構造、比喩(ゆ)・感情の表現技法、文字の視覚効果。本当の意味を理解するには、文化や歴史の背景知識が必要なときもある。最終的に、世界に通用する、英語の正確な理解力と自ら発信する力―グローバルなコミュニケーション力を修得する。
多様で変化に富む英文学
文学研究の対象は、時代と共に変化し、拡大してきた。英語は世界中を巻き込んで使われるグローバルな言語だから、英語で書かれた文学が示すバラエティと時代変化の大きさは、他のどの言語よりもダイナミックだ。対象となる「作品」も、伝統的な文学ジャンル(小説、演劇、詩)はもちろん、文化研究の視点から、映画や音楽、コミュニケーション・メディア、広告やマンガ、アニメと、人間のあらゆる表現活動が研究の視野に入ってきている。
英語による文字作品が成立したのは7世紀頃。以後、英語自体も大きく変化した。古文のような古英語(11世紀まで)、中英語(15世紀末まで)から現在の近代英語(16世紀以降)と3時期に分かれるが、古い時代の物語も、現代の私たちに意外なほど深くつながる。
勇者による巨人やドラゴン退治の叙事詩『ベーオウルフ』は8世紀に、中世民衆の生活が生き生きと語られる『カンタベリー物語』は14世紀に、名剣エクスカリバーを手に宮廷騎士たちと王国を統治した『アーサー王物語』の原作は15世紀に書かれた。これらは『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』『ナルニア国物語』『ゲド戦記』などのファンタジーや、アニメ、数多くのゲームの原型として、今もエンターテイメントの主流だ。『ロミオとジュリエット』『ハムレット』などのシェイクスピアの原作は16世紀から17世紀にかけて書かれた。シェイクスピア作品は今も世界中で舞台上演され、映画、バレエ、オペラ、ミュージカルにリメイクされてもいる。
近・現代英語の文学作品、特に小説は膨大な数で、映画やテレビ・ドラマ化は今なお進行中。英国18世紀には、『ロビンソン・クルーソー』『ガリバー旅行記』、19世紀にはスコットの『アイヴァンホウ』、オースティンの『エマ』『高慢と偏見』、シェリー夫人の『フランケンシュタイン』、ブロンテ姉妹の『ジェーン・エア』や『嵐が丘』、ディケンズの『オリヴァー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』、20世紀になると精神分析学や言語学の最新成果が反映されたような実験的作品も生まれ、ジョイス、V.ウルフ、ロレンスらはその代表格だ。カズオ・イシグロも忘れてはならない。1776年に英国から独立したアメリカは、大西洋を挟んで英国やヨーロッパとの関係を保ちつつ、急速に独自の文化を開かせた。『白鯨』のメルヴィル、『緋文字』のホーソーン、『ねじの回転』のH.ジェイムズ、『八月の光』のフォークナー、『ビラヴィド』のモリソンなど。
シャーロック・ホームズで名高い推理小説ジャンル、SFは『タイムマシン』から『スター・ウォーズ』まで興味が尽きない。児童文学ではピーター・ラビットやクマのプーさん、『不思議の国のアリス』『ピーター・パン』がブリティッシュ代表なら、『ハックルベリー・フィン』『若草物語』『赤毛のアン』などはアメリカ大陸側を代表する。
英詩は世界文学の宝とも称えられる伝統があり、アイルランドやアメリカも含めて、美、真実、人間の本質を言葉に凝縮した多くの詩人がいる。ミルトン、ロマン派詩人たち、現代詩を拓いたホイットマン、W.B.イェイツ、E.パウンド、T.S.エリオット、ビート詩人たち。ノーベル賞のヒーニー (アイルランド) やD.ウォルコット(カリブ海)もいる。アメリカ演劇では『ガラスの動物園』のT.ウィリアムズ、『るつぼ』のA.ミラー、アイルランドにはワイルド、ショー、シングの劇がある。ブロードウェイやロンドンで、ミュージカルはますます盛んだ。
英語による文字作品が成立したのは7世紀頃。以後、英語自体も大きく変化した。古文のような古英語(11世紀まで)、中英語(15世紀末まで)から現在の近代英語(16世紀以降)と3時期に分かれるが、古い時代の物語も、現代の私たちに意外なほど深くつながる。
勇者による巨人やドラゴン退治の叙事詩『ベーオウルフ』は8世紀に、中世民衆の生活が生き生きと語られる『カンタベリー物語』は14世紀に、名剣エクスカリバーを手に宮廷騎士たちと王国を統治した『アーサー王物語』の原作は15世紀に書かれた。これらは『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』『ナルニア国物語』『ゲド戦記』などのファンタジーや、アニメ、数多くのゲームの原型として、今もエンターテイメントの主流だ。『ロミオとジュリエット』『ハムレット』などのシェイクスピアの原作は16世紀から17世紀にかけて書かれた。シェイクスピア作品は今も世界中で舞台上演され、映画、バレエ、オペラ、ミュージカルにリメイクされてもいる。
近・現代英語の文学作品、特に小説は膨大な数で、映画やテレビ・ドラマ化は今なお進行中。英国18世紀には、『ロビンソン・クルーソー』『ガリバー旅行記』、19世紀にはスコットの『アイヴァンホウ』、オースティンの『エマ』『高慢と偏見』、シェリー夫人の『フランケンシュタイン』、ブロンテ姉妹の『ジェーン・エア』や『嵐が丘』、ディケンズの『オリヴァー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』、20世紀になると精神分析学や言語学の最新成果が反映されたような実験的作品も生まれ、ジョイス、V.ウルフ、ロレンスらはその代表格だ。カズオ・イシグロも忘れてはならない。1776年に英国から独立したアメリカは、大西洋を挟んで英国やヨーロッパとの関係を保ちつつ、急速に独自の文化を開かせた。『白鯨』のメルヴィル、『緋文字』のホーソーン、『ねじの回転』のH.ジェイムズ、『八月の光』のフォークナー、『ビラヴィド』のモリソンなど。
シャーロック・ホームズで名高い推理小説ジャンル、SFは『タイムマシン』から『スター・ウォーズ』まで興味が尽きない。児童文学ではピーター・ラビットやクマのプーさん、『不思議の国のアリス』『ピーター・パン』がブリティッシュ代表なら、『ハックルベリー・フィン』『若草物語』『赤毛のアン』などはアメリカ大陸側を代表する。
英詩は世界文学の宝とも称えられる伝統があり、アイルランドやアメリカも含めて、美、真実、人間の本質を言葉に凝縮した多くの詩人がいる。ミルトン、ロマン派詩人たち、現代詩を拓いたホイットマン、W.B.イェイツ、E.パウンド、T.S.エリオット、ビート詩人たち。ノーベル賞のヒーニー (アイルランド) やD.ウォルコット(カリブ海)もいる。アメリカ演劇では『ガラスの動物園』のT.ウィリアムズ、『るつぼ』のA.ミラー、アイルランドにはワイルド、ショー、シングの劇がある。ブロードウェイやロンドンで、ミュージカルはますます盛んだ。
現代化する研究の方法と視点
「作品」のさまざまな言語表現について考えるとき、私たちはその表現を背後から支える「文化」のことも考える。大好きな「作品」や作家は、世界にたった一つだけの、個性の表現なのかもしれない。かけがえのない個性との出会いと感動を、深く味わうことは、人生において大切なことだ。
だが、少し視点を変えてみよう。似たようなメッセージの作品が、同じ時代や過去にも存在していなかっただろうか? 他のジャンルやメディアで違った形で発信されていなかったか? 語り口や文体はどうだろう。事件を物語る語り手の口調は、文字に書き表す場合と、声に出して語りかける場合と、YouTubeで見せる場合と、掲載メディアによる違いはないだろうか? その違いが、人びとの心理や理解の仕方に、大きな違いを生み出してはいないか。
外国語による表現は、異言語と異文化の二つの理解の壁を、私たちに強く意識させる。壁の反対側に共通するものがあると感動する。だが異なる価値観や未知の新しい世界に向かい合うのにもスリルがある。時代や場所、地理の違いにも目を向けてみよう。英国と、かつての植民地だった米国、オーストラリア、インド、アフリカ、カリブ海の英語圏諸国の、それぞれの地域の政治・経済・社会の背景事情が、作品の世界に与えている影響を、腰を据えてじっくり考えてみる。それぞれの国での階級制度や奴隷制度、男女の違いについて。すると、一つひとつの「作品」表現と、それら全体を包み込み働きかける「文化」との間の、深く刺激的な関係も、理解されてくる。
現代世界は、進行するグローバル化や、国際テロの衝撃、ネットや携帯電話、SNSによるコミュニケーションの変容など激動を続ける。英語圏文学と文化の研究は、伝統を受け継ぎつつ、変化に対応して、新たな視点を取り入れ続けている。最近は、多人種・多文化と変容する現代社会を視座に置くLGBTQ+などマイノリティの文学やポストコロニアルの文学、メディア文化論などもテーマになる。デジタル・ヒューマニティーズなど、情報テクノロジーやAIを駆使した分野も成長し、生成系AIの登場でますます必要を高める個人の人間力を鍛える人文科学の王道を守る。
だが、少し視点を変えてみよう。似たようなメッセージの作品が、同じ時代や過去にも存在していなかっただろうか? 他のジャンルやメディアで違った形で発信されていなかったか? 語り口や文体はどうだろう。事件を物語る語り手の口調は、文字に書き表す場合と、声に出して語りかける場合と、YouTubeで見せる場合と、掲載メディアによる違いはないだろうか? その違いが、人びとの心理や理解の仕方に、大きな違いを生み出してはいないか。
外国語による表現は、異言語と異文化の二つの理解の壁を、私たちに強く意識させる。壁の反対側に共通するものがあると感動する。だが異なる価値観や未知の新しい世界に向かい合うのにもスリルがある。時代や場所、地理の違いにも目を向けてみよう。英国と、かつての植民地だった米国、オーストラリア、インド、アフリカ、カリブ海の英語圏諸国の、それぞれの地域の政治・経済・社会の背景事情が、作品の世界に与えている影響を、腰を据えてじっくり考えてみる。それぞれの国での階級制度や奴隷制度、男女の違いについて。すると、一つひとつの「作品」表現と、それら全体を包み込み働きかける「文化」との間の、深く刺激的な関係も、理解されてくる。
現代世界は、進行するグローバル化や、国際テロの衝撃、ネットや携帯電話、SNSによるコミュニケーションの変容など激動を続ける。英語圏文学と文化の研究は、伝統を受け継ぎつつ、変化に対応して、新たな視点を取り入れ続けている。最近は、多人種・多文化と変容する現代社会を視座に置くLGBTQ+などマイノリティの文学やポストコロニアルの文学、メディア文化論などもテーマになる。デジタル・ヒューマニティーズなど、情報テクノロジーやAIを駆使した分野も成長し、生成系AIの登場でますます必要を高める個人の人間力を鍛える人文科学の王道を守る。
英語運用能力の基礎と専門知識
英米文学科の学びは、英語を通して、自己と他者をより深く理解するところから始まる。まずは英語というコミュニケーション・ツールを理解・修得し、語学力を鍛えるのが先決だ。青山学院大学の場合、英語の運用能力を高めるために、1・2年次に集中的なIntegrated Englishクラスを必修で置き、ネイティブスピーカーの教員が主になる少人数クラスで、「読む・聞く・話す・書く」の4技能を統合的に学ぶ。また、専門科目への導入に、豊富な文学系、文化系の各種概論と、英語史、英語学概論、英語音声学、英文法、コミュニケーション概論、異文化コミュニケーション概論、英語教育学概論、スピーチ・インプルーブメント、分野別の基礎ゼミ等を選択履修する。
卒業に必要な科目のほとんどを英語による授業だけで履修できる「PESE(ピース)」プログラムを選ぶことも可能だ。
3・4年次で各分野の専門講義、ゼミ、卒業論文を選択履修していき、学問研究を深める。柔軟なコース制を採用しており、イギリス文学・文化コース、アメリカ文学・文化コース、グローバル文学・文化コース、英語学コース、コミュニケーションコース、英語教育学コースの6コースを設置。学生は全てのコース科目を横断して受講でき、どの分野からも幅広く学べるが、関心を持って専門的に履修した分野からコース修了の認定を受けることが可能だ。その他多数の選択科目を利用し、自分に合ったプログラムを組むことができる。
卒業に必要な科目のほとんどを英語による授業だけで履修できる「PESE(ピース)」プログラムを選ぶことも可能だ。
3・4年次で各分野の専門講義、ゼミ、卒業論文を選択履修していき、学問研究を深める。柔軟なコース制を採用しており、イギリス文学・文化コース、アメリカ文学・文化コース、グローバル文学・文化コース、英語学コース、コミュニケーションコース、英語教育学コースの6コースを設置。学生は全てのコース科目を横断して受講でき、どの分野からも幅広く学べるが、関心を持って専門的に履修した分野からコース修了の認定を受けることが可能だ。その他多数の選択科目を利用し、自分に合ったプログラムを組むことができる。
