何を学ぶ
中等教育の教員には、生徒たちの学習を探究として組織して「主体的・対話的で深い学び」を遂げさせるとともに、大人としてのロールモデルを示すことが求められる。

藤井 千春(ふじい ちはる)先生
早稲田大学/教育・総合科学学術院/教授
1958年、千葉県生まれ。筑波大学大学院博士課程教育学研究科修了。博士(教育学)。アメリカ教育思想を専攻。著書『時代背景から読み解く西洋教育思想』(ミネルヴァ書房)など。「高等学校学習指導要領解説総合的な探究の時間編」作成協力者、SGH企画評価委員。
中等教育の教員になるための2つの道
中学校および高等学校の教員免許状は、教員養成系大学・学部だけではなく、一般学部(文学部、法学部、工学部など)でも、教職課程を履修して取得できる。ただし、中学校および高等学校の教員免許状は、教科別に授与されるため、どの教科の教員免許状を取得できるかは、学部や学科ごとに決められている。中学校・高等学校(以下、中等教育)の教員を志望する場合、受験する学部・学科でどの教科の教員免許状を取得できるかを確認する。これは大学案内の「資格・免許」に掲載されている。
教員養成系大学・学部で学ぶ場合と一般学部で教職課程を履修する場合では、どのような違いがあるのだろうか。
教員養成系大学・学部に入学した場合、小学校の教員免許状も取得可能である。多くの学生は、小学校や特別支援学校の教員免許状も取得している。この場合、それらの学校での教育実習も経験する。学校種を越えた視野で、生徒の心理的発達やカリキュラムなど、初等教育から中等教育への接続について考えることができる。学校教育や教職に関する全般的な専門性が身につく。地域の初等中等教育や特別支援教育などとのつながりの中で活躍が期待できる。
一般学部に入学して中等教育の教員免許状を取得する場合、入学した学部・学科の卒業要件として必要な専門科目の単位を修得しつつ、教職課程を履修する。それぞれの学部・学科の専門性の高い学術的な科目を学びつつ、教員として必要な科目を学ぶ。このため教職課程を履修した場合、卒業までに履修する単位数は、他の学生に比べて多い。しかし、それぞれの学部・学科の専門性の高い学術的な科目を中心に履修するため、各教科・科目の内容については学術的に深く学ぶことができる。各教科・科目の内容についての専門性を身につけることができる。例えば、文学部の国文学科に入学した場合、国文学についての専門的な科目が多数用意されており、それらを幅広く深く学ぶことになる。理学部の生物学科に入学した場合にも、動物や植物などについて、それぞれ専門的に深く学ぶことができる。この点で「国語」に関しては國學院大學、「理科」に関しては東京理科大学、「英語」に関しては青山学院大学や明治学院大学などは、大学の特色に基づいて、中等教育の教員を多数輩出してきた。
どのようなタイプの教員になりたいか、また、大学で何を学びたいかを考えて、教員養成系大学・学部で学ぶか、一般学部で学びつつ教職課程を履修するかを決めるとよい。
教員養成系大学・学部で学ぶ場合と一般学部で教職課程を履修する場合では、どのような違いがあるのだろうか。
教員養成系大学・学部に入学した場合、小学校の教員免許状も取得可能である。多くの学生は、小学校や特別支援学校の教員免許状も取得している。この場合、それらの学校での教育実習も経験する。学校種を越えた視野で、生徒の心理的発達やカリキュラムなど、初等教育から中等教育への接続について考えることができる。学校教育や教職に関する全般的な専門性が身につく。地域の初等中等教育や特別支援教育などとのつながりの中で活躍が期待できる。
一般学部に入学して中等教育の教員免許状を取得する場合、入学した学部・学科の卒業要件として必要な専門科目の単位を修得しつつ、教職課程を履修する。それぞれの学部・学科の専門性の高い学術的な科目を学びつつ、教員として必要な科目を学ぶ。このため教職課程を履修した場合、卒業までに履修する単位数は、他の学生に比べて多い。しかし、それぞれの学部・学科の専門性の高い学術的な科目を中心に履修するため、各教科・科目の内容については学術的に深く学ぶことができる。各教科・科目の内容についての専門性を身につけることができる。例えば、文学部の国文学科に入学した場合、国文学についての専門的な科目が多数用意されており、それらを幅広く深く学ぶことになる。理学部の生物学科に入学した場合にも、動物や植物などについて、それぞれ専門的に深く学ぶことができる。この点で「国語」に関しては國學院大學、「理科」に関しては東京理科大学、「英語」に関しては青山学院大学や明治学院大学などは、大学の特色に基づいて、中等教育の教員を多数輩出してきた。
どのようなタイプの教員になりたいか、また、大学で何を学びたいかを考えて、教員養成系大学・学部で学ぶか、一般学部で学びつつ教職課程を履修するかを決めるとよい。
教員に採用されるための準備
中等教育の教員の採用状況は、都道府県によって、また、教科によって、きわめて少数であったり、倍率が高かったりする。自分が志望する都道府県の教科の採用状況について情報を確認することが望ましい。中等教育の教員の場合、多くの教員は、現実的には、臨時採用の常勤や非常勤の講師を経て、教員採用試験に合格して正規教員となっている。大学入学後、自分の志望する自治体の採用試験の実施時期・実施方法や採用試験の過去問題などを調べ、試験対策を開始することを勧める。
私立学校の教員採用には、地域で私学教員採用の適性検査が実施されている場合もある。しかし、各学校の採用募集は不定期であり、また、年度末に急に募集が出る場合もある。採用募集は大学の就職課や教職担当事務所などを通じて行われることも多い。また、各学校のHPなどに掲載されることもある。採用情報について、アンテナを立てておこう。
私立学校の教員採用には、地域で私学教員採用の適性検査が実施されている場合もある。しかし、各学校の採用募集は不定期であり、また、年度末に急に募集が出る場合もある。採用募集は大学の就職課や教職担当事務所などを通じて行われることも多い。また、各学校のHPなどに掲載されることもある。採用情報について、アンテナを立てておこう。
教員採用後のキャリア
私立学校の教員に正規採用されると、自分から異動を希望しない限り、長くその学校に勤務する。
それに対して、公立の学校の教員に採用されると人事異動がある。数年の期間で、数校の勤務を経験する。学校以外にも、教育委員会、博物館、社会教育施設などへの異動もある。教員養成系大学・学部の附属中学校の教員に異動することもある。それらを経た後に、校長や副校長(教頭)など、管理職として学校運営を中心的に担う立場となる。公立学校の教員の場合、それぞれの年齢段階で、各自の適性に応じて多様な職務を経験できる。公立学校の教員には、多様性あるキャリアが開かれている。
なお、中等教育の教員を志望する場合、大学院進学も視野に入れておくことが望ましい。大学院では専修免許状を取得できる。現在、教員養成系大学・学部、および私立大学の数校には、教職大学院が設置されている。教職大学院は、現職教員の研修機関としての色彩が強いが、学部卒業後にそのまま進学する院生にも開かれている。現職の教員と共に、学校の教育現場の状況を具体的に踏まえて実践的に学ぶことができる。ただし、教職大学院のカリキュラムは、教職についての高度な専門性を修得するという目的で準備されている。つまりは将来、学校運営における主幹教諭などのミドルリーダーとして、教育委員会の指導主事・管理主事などとして、その先には校長として学校運営に当たることを期待してのカリキュラムとなっている。このため、大学院で自分の学術的な専門性を深めて、それを教科の学習指導で生かしたいと考える場合には、教職大学院以外の一般の研究科に進学するとよい。
それに対して、公立の学校の教員に採用されると人事異動がある。数年の期間で、数校の勤務を経験する。学校以外にも、教育委員会、博物館、社会教育施設などへの異動もある。教員養成系大学・学部の附属中学校の教員に異動することもある。それらを経た後に、校長や副校長(教頭)など、管理職として学校運営を中心的に担う立場となる。公立学校の教員の場合、それぞれの年齢段階で、各自の適性に応じて多様な職務を経験できる。公立学校の教員には、多様性あるキャリアが開かれている。
なお、中等教育の教員を志望する場合、大学院進学も視野に入れておくことが望ましい。大学院では専修免許状を取得できる。現在、教員養成系大学・学部、および私立大学の数校には、教職大学院が設置されている。教職大学院は、現職教員の研修機関としての色彩が強いが、学部卒業後にそのまま進学する院生にも開かれている。現職の教員と共に、学校の教育現場の状況を具体的に踏まえて実践的に学ぶことができる。ただし、教職大学院のカリキュラムは、教職についての高度な専門性を修得するという目的で準備されている。つまりは将来、学校運営における主幹教諭などのミドルリーダーとして、教育委員会の指導主事・管理主事などとして、その先には校長として学校運営に当たることを期待してのカリキュラムとなっている。このため、大学院で自分の学術的な専門性を深めて、それを教科の学習指導で生かしたいと考える場合には、教職大学院以外の一般の研究科に進学するとよい。
中等教育の転換と課題
「中学校学習指導要領(平成29年告示)」「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」では、学習活動のあり方が転換された。中学校では「探究的」、高等学校では「探究」が学習活動の原理とされた。高等学校には、「古典探究」「地理探究」などの探究科目が登場した。さらに「総合的な探究の時間」だけではなく、「歴史総合」などでも、教科・科目横断的な内容での指導が求められている。各教科・科目に分けられた知識を系統的に生徒たちに伝えて習得させるという、旧来の学習指導のあり方、およびそのような教師の役割を転換することが明示されている。
この点で、教科の学習指導のスペシャリストとしての教師は、学術的に高度な知識を豊富に所有しているだけでは不十分である。その教科・科目について生徒たちの興味関心を喚起し、意欲的な探究(的な学び)を生み出すことに専門性が求められている。生徒たちの探究(的な学び)を学習活動において組織して指導・支援できる点に、教科についての専門性が求められている。さらにいえば、自分の専門教科と他教科等とを横断するクロスカリキュラムを設計すること、生徒たちにそれぞれのよい点や可能性を発揮させ、協働的に探究を深めさせることなど、生徒たちに「主体的・対話的で深い学び」を遂げさせる、学習活動に対する指導力・支援力が求められている。学習指導に関して期待される教師の役割は大きく転換した。
また近年、私立学校の多くは中高一貫の中等教育学校となっている。公立の中等教育学校も増加している。このため各学校における生徒が同質化して、多様な生徒たちが学び合い成長していく場という性質が中等教育から薄れている。他方、少子化に伴い公立高等学校の統廃合が進められ、それぞれに特色を打ち出した新しい学校づくりが推進されている。この点で学校ごとの実情や課題に応じて、学校づくりに対する教員の積極的で意欲的な貢献が求められている。また、中等教育の学校教員に求められる課題は、生徒たちの国際交流の推進、地域のさまざまな人たちとの協働的な取り組み、心理面や生活面での支援、個性・背景・事情といった多様性への配慮と対応など、多様である。これらに探究的で協働的に取り組むことが求められている。単に教科を教えるという伝統的な役割に留まっていることは許されない。
この点で、教科の学習指導のスペシャリストとしての教師は、学術的に高度な知識を豊富に所有しているだけでは不十分である。その教科・科目について生徒たちの興味関心を喚起し、意欲的な探究(的な学び)を生み出すことに専門性が求められている。生徒たちの探究(的な学び)を学習活動において組織して指導・支援できる点に、教科についての専門性が求められている。さらにいえば、自分の専門教科と他教科等とを横断するクロスカリキュラムを設計すること、生徒たちにそれぞれのよい点や可能性を発揮させ、協働的に探究を深めさせることなど、生徒たちに「主体的・対話的で深い学び」を遂げさせる、学習活動に対する指導力・支援力が求められている。学習指導に関して期待される教師の役割は大きく転換した。
また近年、私立学校の多くは中高一貫の中等教育学校となっている。公立の中等教育学校も増加している。このため各学校における生徒が同質化して、多様な生徒たちが学び合い成長していく場という性質が中等教育から薄れている。他方、少子化に伴い公立高等学校の統廃合が進められ、それぞれに特色を打ち出した新しい学校づくりが推進されている。この点で学校ごとの実情や課題に応じて、学校づくりに対する教員の積極的で意欲的な貢献が求められている。また、中等教育の学校教員に求められる課題は、生徒たちの国際交流の推進、地域のさまざまな人たちとの協働的な取り組み、心理面や生活面での支援、個性・背景・事情といった多様性への配慮と対応など、多様である。これらに探究的で協働的に取り組むことが求められている。単に教科を教えるという伝統的な役割に留まっていることは許されない。
多様な経験・多様な人びとのつながりを
教師としての適性は、基本的には明るい人間力である。生徒の心に対する共感的な洞察力と、他者を信頼して温かく仲間に巻き込んでいく勧誘力である。大学生活では、自らの専門分野の探究はもちろん、学ぶことの楽しさを実感してほしい。
また、大学時代は自由な時間も多い。さまざまな活動に自ら進んで参加し、多くの体験を積み重ねてほしい。そのような活動を通じて、年齢、国籍、文化、生活条件など、多様な人びとと出会って語り合い、自らとは異なった生活環境を生きる人についての理解を深めてもらいたい。それが人間理解のための基盤を豊かに形成することにほかならない。
学校では、毎日さまざまな出来事が発生する。教師はそれら一つひとつに誠実に対応しなければならない。それだけにマニュアルが存在せず、ルーティン化することのできない職務である。生徒たちと共にこの世界を生きていると実感できる仕事である。生徒の生きる姿の中に、自分の仕事の成果を見ることができるはずだ。
生徒たちは、教師の大人としてのあり方を見ている。自分たちを支えてくれる温かく、タフで前向きな大人としての人間性を期待している。成熟した大人のロールモデルを生徒たちに示し、生徒の期待に応えられる人格へと成長してほしい。
また、大学時代は自由な時間も多い。さまざまな活動に自ら進んで参加し、多くの体験を積み重ねてほしい。そのような活動を通じて、年齢、国籍、文化、生活条件など、多様な人びとと出会って語り合い、自らとは異なった生活環境を生きる人についての理解を深めてもらいたい。それが人間理解のための基盤を豊かに形成することにほかならない。
学校では、毎日さまざまな出来事が発生する。教師はそれら一つひとつに誠実に対応しなければならない。それだけにマニュアルが存在せず、ルーティン化することのできない職務である。生徒たちと共にこの世界を生きていると実感できる仕事である。生徒の生きる姿の中に、自分の仕事の成果を見ることができるはずだ。
生徒たちは、教師の大人としてのあり方を見ている。自分たちを支えてくれる温かく、タフで前向きな大人としての人間性を期待している。成熟した大人のロールモデルを生徒たちに示し、生徒の期待に応えられる人格へと成長してほしい。
