何を学ぶ
子どもたち一人ひとりの人格を尊重し、その成長に寄り添い未来を開いていく、専門家としての教師を育てることを使命としているのが教員養成系学部である。

山内 規嗣(やまうち のりつぐ)先生
広島大学/大学院人間社会科学研究科/教授
1969年埼玉生まれ。筑波大学第二学群人間学類(現・人間学群)卒、筑波大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。『J.H.カンペ教育思想の研究 ドイツ啓蒙主義における心の教育』、他執筆。
子どもたちの未来を開く礎となるしごと
「あなたは将来、何になりたいですか?」「どんなしごとにつきたいですか?」。小学校あるいは幼稚園に通っていた時期に、そんなふうに問いかけられたことがある人は多いだろう。これらの問いを皆さんに発した小学校や幼稚園の先生(教師)は、子どもたちに自分の将来・キャリアについて考える機会をつくるとともに、その手がかりとなる子どもたち一人ひとりの個性を尊重し、それぞれの個性を伸ばしていけるように働きかけていただろう。さらに、子どもたちがどのような道を歩んでいくにも不可欠な知識や技能を習得し、自主性や共感性や価値観など自分で生きるための・他者と共に生きるための大切な基盤を獲得できるように、皆さんを教え育んでいただろう。
このように先生という仕事は、子どもたちが生きていくための土台を築き、自信と希望を持って未来へと歩みだせるようにするという大きな責任を担っている。この務めを果たすために、先生は専門家としてのマインド、高い意識、そして、専門的な技術を備えたプロであることが求められる。先生になるためには、子どもたちの成長のために尽力したいという情熱を持っていることが望ましいが、その情熱だけで専門家としての知識・技能やマインドが欠けていれば、自覚のないままに子どもたちに誤ったことを教えてしまったり、あやふやな方向へと導いてしまったりするおそれがあるからだ。そのため、先生になるには、幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校など、それぞれの学校種の教員免許を取得することが必要である。
専門家としての先生を育てることを主な目的とし、免許を取って卒業できるのが、大学のなかの教員養成系学部、教員養成課程である。所属学生は、免許資格として求められることを中心に学び、実際に子どもたちと向き合い指導・支援するための幅広い専門性を身につけ、学習や教育の本質について学ぶことで、先生としてのマインドを形成していく。
それでは、「専門家としての教師」になるには、どんな勉強をするのだろう。ここでは、まず、小学校や幼稚園の先生の専門性について幅広く説明し、次に、教員養成課程でどのようなことを学ぶのか、具体的な事例で紹介することにしよう。
このように先生という仕事は、子どもたちが生きていくための土台を築き、自信と希望を持って未来へと歩みだせるようにするという大きな責任を担っている。この務めを果たすために、先生は専門家としてのマインド、高い意識、そして、専門的な技術を備えたプロであることが求められる。先生になるためには、子どもたちの成長のために尽力したいという情熱を持っていることが望ましいが、その情熱だけで専門家としての知識・技能やマインドが欠けていれば、自覚のないままに子どもたちに誤ったことを教えてしまったり、あやふやな方向へと導いてしまったりするおそれがあるからだ。そのため、先生になるには、幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校など、それぞれの学校種の教員免許を取得することが必要である。
専門家としての先生を育てることを主な目的とし、免許を取って卒業できるのが、大学のなかの教員養成系学部、教員養成課程である。所属学生は、免許資格として求められることを中心に学び、実際に子どもたちと向き合い指導・支援するための幅広い専門性を身につけ、学習や教育の本質について学ぶことで、先生としてのマインドを形成していく。
それでは、「専門家としての教師」になるには、どんな勉強をするのだろう。ここでは、まず、小学校や幼稚園の先生の専門性について幅広く説明し、次に、教員養成課程でどのようなことを学ぶのか、具体的な事例で紹介することにしよう。
現在と未来の課題に応えられる教員が求められている
日本では今から約150年前、明治時代に近代化政策として学校制度が開始され、すぐに日本の各地に小学校がつくられた。皆さんの出身校のなかにも、創立150周年を迎えたところがあるのではないだろうか。幼稚園もその数年後に開設され、学校とともに発展してきた。そして学校での教育が成り立つためには、そこで子どもたちを教え育てるプロの先生をまず育てる必要がある。教員養成は、わが国では学校制度とともに開始され、学校とともにある長い歴史のある「専門」である。
今の時代に目を向けてみると、子どもたちを取り巻く社会がいっそう急速に変化するなかで、一人ひとりの子どもがこれからの時代・社会を、自分の力で、また他者と共に力を合わせて生き抜いていけるよう、学校の役割は絶えず見直されている。この変化を前向きに受け止め、子どもたちとともに自分なりに学び続ける先生が必要とされている。
将来、AIが人間の職業を奪うのではないか、といった不安の声も聴かれる。こうした変化が激しく将来の予測が困難な時代にあって、子どもたちが自信を持って自分の人生を切り開いていけるようにするためにも、現在と未来の課題をよく理解して、その成長に寄り添う先生の存在が大切である。そして、先生が自らの人格を持って子どもに関わり、自らの学び続ける姿を通じて人間としてのあり方を子どもに伝え、未来に向けて励ましていくという役割は、おそらくAIで置き換えがたいと思われるかけがえのない役割である。
現代日本に求められる先生のイメージを示すものとして、2022年12月には中央教育審議会の答申として、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~」という方向性が示された。そこでは、子どもたちに寄り添い、全ての子どもたちの可能性を引き出すとともに、先生自身も自分の個性を生かしながら、仲間とともに積極的に学んでいく、そんな姿が求められている。
この答申で述べられている現代社会と学校の課題の具体例をひとつ挙げると、子どもたちの多様化に関するトピックに、外国人・外国籍児童の教育がある。皆さんは小学校や幼稚園で外国人・外国籍の仲間と共に学んだ経験があるだろうか。私たちが多文化共生社会を目指そうとするならば、教師にとって今後いっそう重要となるテーマである。
教員養成系の学部やコースは、単に「資格としての免許」を取るだけではなく、こうした現在と未来の課題に応えていける教師を育てることを使命としている。そして、皆さんと同じように教師を目指す多くの仲間と出会える場所である。
今の時代に目を向けてみると、子どもたちを取り巻く社会がいっそう急速に変化するなかで、一人ひとりの子どもがこれからの時代・社会を、自分の力で、また他者と共に力を合わせて生き抜いていけるよう、学校の役割は絶えず見直されている。この変化を前向きに受け止め、子どもたちとともに自分なりに学び続ける先生が必要とされている。
将来、AIが人間の職業を奪うのではないか、といった不安の声も聴かれる。こうした変化が激しく将来の予測が困難な時代にあって、子どもたちが自信を持って自分の人生を切り開いていけるようにするためにも、現在と未来の課題をよく理解して、その成長に寄り添う先生の存在が大切である。そして、先生が自らの人格を持って子どもに関わり、自らの学び続ける姿を通じて人間としてのあり方を子どもに伝え、未来に向けて励ましていくという役割は、おそらくAIで置き換えがたいと思われるかけがえのない役割である。
現代日本に求められる先生のイメージを示すものとして、2022年12月には中央教育審議会の答申として、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~」という方向性が示された。そこでは、子どもたちに寄り添い、全ての子どもたちの可能性を引き出すとともに、先生自身も自分の個性を生かしながら、仲間とともに積極的に学んでいく、そんな姿が求められている。
この答申で述べられている現代社会と学校の課題の具体例をひとつ挙げると、子どもたちの多様化に関するトピックに、外国人・外国籍児童の教育がある。皆さんは小学校や幼稚園で外国人・外国籍の仲間と共に学んだ経験があるだろうか。私たちが多文化共生社会を目指そうとするならば、教師にとって今後いっそう重要となるテーマである。
教員養成系の学部やコースは、単に「資格としての免許」を取るだけではなく、こうした現在と未来の課題に応えていける教師を育てることを使命としている。そして、皆さんと同じように教師を目指す多くの仲間と出会える場所である。
教師として学び続けるために大切なことを身につける4年間
教師として成長していく過程は、教員採用試験を経て幼稚園や学校の教師になってからも続いていく。そのスタート地点である大学は、「学び続ける教師としての基礎力を身につける時期」にあたる。大学ごとに、その地域の課題に対応するプログラムや、学部と大学院を接続した5年間一貫プログラムなど、特色のあるコースや専攻が準備されている。入試も、プレゼンテーションや小論文、実技試験など、その特色に応じた課題が課されている場合がある。広島大学でも、初等教育学プログラムで地域教員希望枠「育成型」入試が開始される。それぞれの大学、コース等で公表されている資料をよく確認していただきたい。
大学での学びについて、ここで広島大学の例を示してみよう。
中学校や高等学校と異なり、小学校では学級担任の先生が子どもたちと一日を共に過ごし、多くの教科を教えることが今も一般的である。そのため、どの教科についても、教科の内容(教科の目標のもとに何を教えるのか)、教育法(どのように教えるのか)、学習材の研究(教科書や学習材の分析・開発)や指導論(カリキュラムや授業計画の組み立て方)についての授業が開講されており、それぞれの教科等の専門家である専任教員のもとで理解を深め、技能を修得していく。また、外国語、道徳、ICT、特別支援教育、学級経営、心理学に基づく児童理解、教育相談、外国人・外国籍児童の教育などについての授業や、さらに幼稚園や中高など他校種との連携に関わる課題にも対応できるよう、多様な科目が開講されている。さらに、地域の子どもたちを大学に迎えて、地域や家庭との連携のもとで、児童が楽しく協働遊びしながら成長する活動を運営・サポートする活動や、児童一人ひとりの学校生活や学習上のつまずきに寄り添いその改善を図るための実践をしたりする活動、地域との連携のもとで野外活動の指導力を実地に育成する活動などの集団体験型授業も行われている。
大学では、学生各自が目指す教師像をもとにしつつ、自分なりに大学での学びを組み立て、理論的な学びを通してものの考え方や視野を拡げ、さらに系統的な教育実習の科目を通して、先生としての実践的な力を身につける。学校での授業参観、実習観察、そして、3年次の5週間にわたる実習では附属学校の学級に配属され、担任の先生方からも密度の濃い指導を受けることになる。また、3・4年次には、それまでの学びをより専門的な基礎へと高めるために、少人数ゼミに分かれる。ゼミでは卒業研究に取り組みながら、教員採用試験準備、就職活動、そして、各自の深めたい内容に応じた大学院や専攻科進学準備など、仲間とともに励まし合う日々である。
これらの専門的な授業科目や学習活動とともに、大学では教養教育の授業科目も1・2年次に学んでいく。英語のほかにも外国語を1つ選択することになる。そこで自分が教師として働きたい地域で暮らす外国人・外国籍児童はどんな国・地域の出身者が多いのかを調べて、その児童の使用言語を教養教育の授業で学ぶことで、将来自分が向き合う子どもたちのために役立つ力をより幅広く身につけられるかもしれない。ほかにも大学ではさまざまな学ぶチャンスが開かれている。公立学校インターンシップやボランティア、大学の海外留学・研修プログラムなどに参加したりして、積極的に学ぼう。
なお、大学によって異なるが、幼稚園や小学校以外の免許資格等も取得できる。保育士資格は個人的に保育士試験を受験して取得することもできる。広島大学の場合は、幼稚園と中高の各教科、学校図書館司書教諭、社会教育主事の資格を取る学生が多い。特別支援学校教諭の免許を取得する人もいる。とはいえ、必要な単位を取ってあれこれ免許状をもらえば、よい先生になれるというわけではない。「専門家」としての自分の姿をどのように描くか、先生になって何をしたいかが大切である。教員採用試験合格後、採用期日を延期して大学院を修了するのを待ってくれる県や市の制度も活用できる。
最初に書いたように、教員養成系の学部・学科では先生を育てることを主な目的とし、大学での学びを計画している。学び続ける教師としての自分の成長を長い目でとらえてみよう。そして、自分らしい専門性を身につけることができるカリキュラムやプログラム、進路が選択できる大学、それを保証してくれるしっかりとしたスタッフ、共に学ぶさまざまな個性の仲間や先輩のいるところに飛び込もう。
大学での学びについて、ここで広島大学の例を示してみよう。
中学校や高等学校と異なり、小学校では学級担任の先生が子どもたちと一日を共に過ごし、多くの教科を教えることが今も一般的である。そのため、どの教科についても、教科の内容(教科の目標のもとに何を教えるのか)、教育法(どのように教えるのか)、学習材の研究(教科書や学習材の分析・開発)や指導論(カリキュラムや授業計画の組み立て方)についての授業が開講されており、それぞれの教科等の専門家である専任教員のもとで理解を深め、技能を修得していく。また、外国語、道徳、ICT、特別支援教育、学級経営、心理学に基づく児童理解、教育相談、外国人・外国籍児童の教育などについての授業や、さらに幼稚園や中高など他校種との連携に関わる課題にも対応できるよう、多様な科目が開講されている。さらに、地域の子どもたちを大学に迎えて、地域や家庭との連携のもとで、児童が楽しく協働遊びしながら成長する活動を運営・サポートする活動や、児童一人ひとりの学校生活や学習上のつまずきに寄り添いその改善を図るための実践をしたりする活動、地域との連携のもとで野外活動の指導力を実地に育成する活動などの集団体験型授業も行われている。
大学では、学生各自が目指す教師像をもとにしつつ、自分なりに大学での学びを組み立て、理論的な学びを通してものの考え方や視野を拡げ、さらに系統的な教育実習の科目を通して、先生としての実践的な力を身につける。学校での授業参観、実習観察、そして、3年次の5週間にわたる実習では附属学校の学級に配属され、担任の先生方からも密度の濃い指導を受けることになる。また、3・4年次には、それまでの学びをより専門的な基礎へと高めるために、少人数ゼミに分かれる。ゼミでは卒業研究に取り組みながら、教員採用試験準備、就職活動、そして、各自の深めたい内容に応じた大学院や専攻科進学準備など、仲間とともに励まし合う日々である。
これらの専門的な授業科目や学習活動とともに、大学では教養教育の授業科目も1・2年次に学んでいく。英語のほかにも外国語を1つ選択することになる。そこで自分が教師として働きたい地域で暮らす外国人・外国籍児童はどんな国・地域の出身者が多いのかを調べて、その児童の使用言語を教養教育の授業で学ぶことで、将来自分が向き合う子どもたちのために役立つ力をより幅広く身につけられるかもしれない。ほかにも大学ではさまざまな学ぶチャンスが開かれている。公立学校インターンシップやボランティア、大学の海外留学・研修プログラムなどに参加したりして、積極的に学ぼう。
なお、大学によって異なるが、幼稚園や小学校以外の免許資格等も取得できる。保育士資格は個人的に保育士試験を受験して取得することもできる。広島大学の場合は、幼稚園と中高の各教科、学校図書館司書教諭、社会教育主事の資格を取る学生が多い。特別支援学校教諭の免許を取得する人もいる。とはいえ、必要な単位を取ってあれこれ免許状をもらえば、よい先生になれるというわけではない。「専門家」としての自分の姿をどのように描くか、先生になって何をしたいかが大切である。教員採用試験合格後、採用期日を延期して大学院を修了するのを待ってくれる県や市の制度も活用できる。
最初に書いたように、教員養成系の学部・学科では先生を育てることを主な目的とし、大学での学びを計画している。学び続ける教師としての自分の成長を長い目でとらえてみよう。そして、自分らしい専門性を身につけることができるカリキュラムやプログラム、進路が選択できる大学、それを保証してくれるしっかりとしたスタッフ、共に学ぶさまざまな個性の仲間や先輩のいるところに飛び込もう。

