何を学ぶ
特別支援教育は、障害のある子どもの自立と社会参加を支援する教育。一人ひとりの学習・生活上の困難に応じた指導と支援を学ぶ。教育とは何かを本質的に問うものである。

米田 宏樹(よねだ ひろき)先生
筑波大学/人間学群障害科学類/教授
1969年生まれ。宮崎県出身、筑波大学人間学類卒。茨城大学教育学部講師を経て現職。専攻は特別支援教育学。著書に『特別支援教育―共生社会の実現に向けて―』(編著、ミネルヴァ書房、2018年)など。
障害のある子どもの全員就学を目指して
1947年の学校教育法第1条に示す学校に盲・聾・養護学校(=現在の特別支援学校)が、明文化された。これにより特殊教育も「一般の学校教育」に位置づいた。障害のある子どもも、障害のない子どもと全く同じ目標のもとで教育を受けるべきであり、ただ、その障害があるというために、教育上特別に方法的な配慮を必要とする教育を行うのが特殊教育であることが明確にされた。
1947年学校教育法では、盲・聾・養護学校と小・中学校等通常の学校(以下、通常学校)内の特殊学級(=現在の特別支援学級)の2系統の学びの場が規定されたが、障害のある子どもの全員就学が実現するのは、戦後の復興を経た1979年の養護学校教育の義務制実施の年であった。同年、通学できない子どものために、教師が子どもの自宅や病院などで指導を行う訪問教育も始められた。
1947年学校教育法では、盲・聾・養護学校と小・中学校等通常の学校(以下、通常学校)内の特殊学級(=現在の特別支援学級)の2系統の学びの場が規定されたが、障害のある子どもの全員就学が実現するのは、戦後の復興を経た1979年の養護学校教育の義務制実施の年であった。同年、通学できない子どものために、教師が子どもの自宅や病院などで指導を行う訪問教育も始められた。
特別な教育ニーズと特別支援教育
2007年、学校教育法等の一部改正により、日本の特殊教育は特別支援教育へと制度転換した。盲・聾・養護学校は、特別支援学校に統一され、学校種別だった教員免許も特別支援学校教員免許に総合化された。さらに、通常学校において特別支援教育を推進することが明確化された。
特別支援教育では、従来の障害児教育の対象児(視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱)に加え、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症(自閉スペクトラム症)等の発達障害のある児童生徒に、その対象が拡大された。特別支援教育は、障害等により生活上、学習上の困難を有する「特別な教育的支援を必要とする児童生徒」一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その子どもの持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するために、適切な教育を通じて必要な支援を行うものであり、これらの子どもたちの自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するものである。特別な教育的ニーズにもとづく指導と支援の提供が特別支援教育である。
特別支援教育では、従来の障害児教育の対象児(視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱)に加え、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症(自閉スペクトラム症)等の発達障害のある児童生徒に、その対象が拡大された。特別支援教育は、障害等により生活上、学習上の困難を有する「特別な教育的支援を必要とする児童生徒」一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その子どもの持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するために、適切な教育を通じて必要な支援を行うものであり、これらの子どもたちの自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するものである。特別な教育的ニーズにもとづく指導と支援の提供が特別支援教育である。
「連続性のある多様な学びの場」における特別支援教育の推進と日本型インクルーシブ教育システム
特別支援学校での教育が拡充された一方、通常学校でも子どもたちの特別な教育的ニーズに対応すべく、制度的工夫が積み重ねられてきた。大部分の時間は通常の学級で学習し、一部、必要に応じて特別な指導を特別な場で受ける子どものための「通級による指導」(1993年、小・中学校で制度化・2018年、高校で開始)。就学基準では特別支援学校への就学が適しているとされる子どもが、通常学校への就学を希望し、適切な教育が可能であると教育委員会が判断した場合に、通常学校への就学を認める「認定就学者」(2002年)。通常学級で学ぶ障害のある子どもの支援を行う特別支援教育支援員の配置(2007年)等がある。
さて、このようななか、2006年12月に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」において、人間の多様性の尊重等を強化し、障害のある者が、その能力等を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下で、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みとしての「インクルーシブ教育システム」の理念が提唱された。日本は、この条約に2007年に署名し、2014年に締結した。
障害者基本法改正(2011年)では、「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない」(第16条1項)とされた。学校教育法施行令改正(2012年)では、一定の障害のある児童生徒は原則として特別支援学校に就学するという基本的な考え方が改められ、市町村の教育委員会が、個々の児童生徒について障害の状態等を踏まえた十分な検討を行った上で、小・中学校または特別支援学校のいずれかを判断・決定する仕組みになった。特別支援学校に就学する子どもは、特別に特別支援学校への就学を認められた「認定特別支援学校就学者」とされた。
日本は、障害のある子と障害のない子が同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある子どもに対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズにもっとも的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であるという考えに立ち、通常学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場(図1)を用意することで、特別支援教育を推進し、日本型インクルーシブ教育システムを構築しようとしている。
さて、このようななか、2006年12月に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」において、人間の多様性の尊重等を強化し、障害のある者が、その能力等を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下で、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みとしての「インクルーシブ教育システム」の理念が提唱された。日本は、この条約に2007年に署名し、2014年に締結した。
障害者基本法改正(2011年)では、「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない」(第16条1項)とされた。学校教育法施行令改正(2012年)では、一定の障害のある児童生徒は原則として特別支援学校に就学するという基本的な考え方が改められ、市町村の教育委員会が、個々の児童生徒について障害の状態等を踏まえた十分な検討を行った上で、小・中学校または特別支援学校のいずれかを判断・決定する仕組みになった。特別支援学校に就学する子どもは、特別に特別支援学校への就学を認められた「認定特別支援学校就学者」とされた。
日本は、障害のある子と障害のない子が同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある子どもに対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズにもっとも的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であるという考えに立ち、通常学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場(図1)を用意することで、特別支援教育を推進し、日本型インクルーシブ教育システムを構築しようとしている。
インクルーシブな学校の実現と特別支援教育
インクルーシブ教育は、社会・経済的格差、民族・文化等の差異がもたらす差別の軽減・解消を目指し、不利な立場にある人の自立と社会への完全参加を、学校教育改革によって実現しようとするものである。日本でも、外国につながる子どもの日本語のニーズから生じる困難や、貧困や家庭の問題等から生じる困難等への対応が積極的に求められている。
また、通常学校におけるインクルーシブ教育を実現するためには、できるだけ多くの子どもが、その学級に包含されるような環境・学級のルール・授業方法等の改善が必要である。特に「学級全体への指導の工夫や配慮」が整えられると、個別の支援なしで授業や学級活動に実質的に参加できる子どもが増え、結果的に、教師や特別支援教育支援員が、支援の必要な子どもに十分に関わることが可能になる。子どもの最適な発達を妨げる多様な理由によって生じる特別な教育的ニーズに対応してきた特別支援教育の知見は、障害はないが特別の教育的ニーズがある子どもへの支援や学級全体への働きかけ、環境整備、個々の子どもへの合理的配慮の提供においても有用である。
このように、インクルーシブ教育時代の特別支援教育は、全ての学校で全教職員が一丸となって取り組む営みであるため、2019年度より実施の新教職課程コアカリキュラムに、「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」に関する科目(必修1単位)が設定されている。
また、通常学校におけるインクルーシブ教育を実現するためには、できるだけ多くの子どもが、その学級に包含されるような環境・学級のルール・授業方法等の改善が必要である。特に「学級全体への指導の工夫や配慮」が整えられると、個別の支援なしで授業や学級活動に実質的に参加できる子どもが増え、結果的に、教師や特別支援教育支援員が、支援の必要な子どもに十分に関わることが可能になる。子どもの最適な発達を妨げる多様な理由によって生じる特別な教育的ニーズに対応してきた特別支援教育の知見は、障害はないが特別の教育的ニーズがある子どもへの支援や学級全体への働きかけ、環境整備、個々の子どもへの合理的配慮の提供においても有用である。
このように、インクルーシブ教育時代の特別支援教育は、全ての学校で全教職員が一丸となって取り組む営みであるため、2019年度より実施の新教職課程コアカリキュラムに、「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」に関する科目(必修1単位)が設定されている。
特別支援教育の専門資格としての「特別支援学校教諭免許状」
「特別支援学校教諭免許状」(以下、特支免許)は、特別支援学級や通級による指導の担当教師にもその取得が推奨されており、特別支援教育の専門資格として位置づいている。
2022年7月には、特支免許の教職課程についても、その内容や水準を全国的に担保するため、共通的に修得すべき資質・能力を示した「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム」が策定された。2024年4月からは、このコアカリキュラムに即した教員養成課程が全面実施されている。
特別支援学校は、その在籍児の教育指導に加えて、地域の通常の学校に在籍する障害のある子どもの教育について助言援助に努めなければならない。特別支援学校は、高い専門性を生かしながら、地域の特別支援教育センターとして機能することが求められる。
特別支援教育を志す読者諸氏には、インクルーシブ教育を推進するキーパーソンとしての活躍を期待したい。また民間の教育・福祉関連企業で専門家として活躍する人材など、学校教育の枠にとどまらない活躍も可能である。
特支免許は、小・中・高・幼稚園教諭免許状(基礎免許状)のいずれかを有する者が取得できる付加免許状のため、大学では、通常の学校の教諭免許(基礎免許)と特支免許に必要な科目の両方を履修する。特支免許は、特別支援教育に必要な資質能力を担保するために、①総合的知識・理解のための10単位(基礎理論、教育実習、発達障害に関する科目及び重度・重複障害に関する科目)と②特定障害(特別支援学校の対象となる視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱の5障害種別教育領域)の専門性確保のための知識・理解16単位の計26単位を1種免許状の最低必修単位数としている。5障害種別の教育領域については、特別支援教育に関する科目の修得の状況等に応じて、1または2以上の特別支援教育領域を定めて授与される。5教育領域全ての免許取得には対応していない大学もあるが、現職教員向けの認定講習や大学の科目等履修生などで、必要な単位を修得して教育領域を追加することも可能なので、大学4年間では、無理なく堅実な学修をすすめたい。
2022年7月には、特支免許の教職課程についても、その内容や水準を全国的に担保するため、共通的に修得すべき資質・能力を示した「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム」が策定された。2024年4月からは、このコアカリキュラムに即した教員養成課程が全面実施されている。
特別支援学校は、その在籍児の教育指導に加えて、地域の通常の学校に在籍する障害のある子どもの教育について助言援助に努めなければならない。特別支援学校は、高い専門性を生かしながら、地域の特別支援教育センターとして機能することが求められる。
特別支援教育を志す読者諸氏には、インクルーシブ教育を推進するキーパーソンとしての活躍を期待したい。また民間の教育・福祉関連企業で専門家として活躍する人材など、学校教育の枠にとどまらない活躍も可能である。
特支免許は、小・中・高・幼稚園教諭免許状(基礎免許状)のいずれかを有する者が取得できる付加免許状のため、大学では、通常の学校の教諭免許(基礎免許)と特支免許に必要な科目の両方を履修する。特支免許は、特別支援教育に必要な資質能力を担保するために、①総合的知識・理解のための10単位(基礎理論、教育実習、発達障害に関する科目及び重度・重複障害に関する科目)と②特定障害(特別支援学校の対象となる視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱の5障害種別教育領域)の専門性確保のための知識・理解16単位の計26単位を1種免許状の最低必修単位数としている。5障害種別の教育領域については、特別支援教育に関する科目の修得の状況等に応じて、1または2以上の特別支援教育領域を定めて授与される。5教育領域全ての免許取得には対応していない大学もあるが、現職教員向けの認定講習や大学の科目等履修生などで、必要な単位を修得して教育領域を追加することも可能なので、大学4年間では、無理なく堅実な学修をすすめたい。

