何を学ぶ
「多様な個人からなる社会をいかに運営すべきか」という政治のあり方を探究する。哲学・科学・歴史学などの幅広い学術的アプローチを学び、社会に対する問題解決能力を培う。
_%e3%82%b5%e3%82%b7%e3%82%ab%e3%82%a8ph_fmt.jpg)
築山 宏樹(つきやま ひろき)先生
慶應義塾大学/法学部/教授
1988年滋賀県生まれ。慶應義塾大学大学院、博士(法学)。関西大学総合情報学部准教授、慶應義塾大学法学部准教授を経て2024年4月から現職。専攻は、政治過程論。
政治学とは
一言で言えば、政治学は、政治のありようの探究を通じて、よりよい政治や社会を作り出すことを目的とした学問である。その目的のために、政治学では二通りのアプローチから研究が行われる。第一に、「理想の政治とはどのようなものか」という哲学的な問いが探究される。たとえば、社会的に恵まれない人を助けるために、社会的に恵まれた人から集めた税金を再分配するという社会保障の是非を考えてみよう。
病気や失業などによって困窮した人を社会として助けるべきかと問われると、多くの人は心情的にYESと答えるだろう。しかし、ある人が自分の努力によって得たお金を、社会が強制的に取り上げて他人に配るという行いは、所有権の侵害ではないのだろうか。社会保障といった当たり前の仕組みも、いかなる理由から正当化されるのかを考えてみると、容易には答えが出せない。
このような問いに対して、政治学者は、政治や社会のあるべき姿を、哲学の道具を使って明らかにしようとする。たとえば、上記の例では、社会契約という思考実験による考察が有名である。政治学では、政治や社会の理想について、万人が理にかなっていると思える価値判断を探し出そうとするのである(政治哲学)。
第二に、「現実の政治はどうなっているのか」という科学的な問いが探究される。たとえば、ときに政治家は自分の政策に対する影響力を利用して、金銭的な見返りを得るなどの汚職に手を染めることがある。政治学者は、こうした問題に知的好奇心を感じる。そもそも政治家はなぜ汚職という悪いことをするのか、どうすればそれを防ぐことができるのかを考えてみるのである。
民主主義国家では、選挙を通じて市民が政治家を選出する。そのため、悪さをした政治家は次の選挙で落とすことができる。このようなリスクがあるにもかかわらず、不正に金銭を得ようとする政治家が出てくるのはなぜか。実は、特定の選挙制度では、選挙活動に多額の費用がかかるために、その費用をまかなおうとして、政治家が汚職を行いやすい可能性があると考えられている。
このように、政治学者は、政治や社会のあるがままの姿を、科学の道具を使って明らかにしようとする。具体的には、政治現象のメカニズムを考察し、その確からしさをデータや資料に基づいて検証するのである。政治学は、政治や社会の現実について、その科学的事実を探し出そうとする学問でもある(政治科学)。
政治や社会をよりよくするためには、いずれのアプローチも欠くことができない。政治のあるべき姿がわからなければ、現実の政治のどこに問題があるのかを認識できず、政治のメカニズムがわからなければ、政治を変えるための現実的な方策を見出すことはできないからである。
病気や失業などによって困窮した人を社会として助けるべきかと問われると、多くの人は心情的にYESと答えるだろう。しかし、ある人が自分の努力によって得たお金を、社会が強制的に取り上げて他人に配るという行いは、所有権の侵害ではないのだろうか。社会保障といった当たり前の仕組みも、いかなる理由から正当化されるのかを考えてみると、容易には答えが出せない。
このような問いに対して、政治学者は、政治や社会のあるべき姿を、哲学の道具を使って明らかにしようとする。たとえば、上記の例では、社会契約という思考実験による考察が有名である。政治学では、政治や社会の理想について、万人が理にかなっていると思える価値判断を探し出そうとするのである(政治哲学)。
第二に、「現実の政治はどうなっているのか」という科学的な問いが探究される。たとえば、ときに政治家は自分の政策に対する影響力を利用して、金銭的な見返りを得るなどの汚職に手を染めることがある。政治学者は、こうした問題に知的好奇心を感じる。そもそも政治家はなぜ汚職という悪いことをするのか、どうすればそれを防ぐことができるのかを考えてみるのである。
民主主義国家では、選挙を通じて市民が政治家を選出する。そのため、悪さをした政治家は次の選挙で落とすことができる。このようなリスクがあるにもかかわらず、不正に金銭を得ようとする政治家が出てくるのはなぜか。実は、特定の選挙制度では、選挙活動に多額の費用がかかるために、その費用をまかなおうとして、政治家が汚職を行いやすい可能性があると考えられている。
このように、政治学者は、政治や社会のあるがままの姿を、科学の道具を使って明らかにしようとする。具体的には、政治現象のメカニズムを考察し、その確からしさをデータや資料に基づいて検証するのである。政治学は、政治や社会の現実について、その科学的事実を探し出そうとする学問でもある(政治科学)。
政治や社会をよりよくするためには、いずれのアプローチも欠くことができない。政治のあるべき姿がわからなければ、現実の政治のどこに問題があるのかを認識できず、政治のメカニズムがわからなければ、政治を変えるための現実的な方策を見出すことはできないからである。
政治学の研究対象
政治学の研究対象は、多岐にわたる。二通りのアプローチのうち、ここでは、政治や社会の現実を探究する後者の研究対象について、より詳しく見ていこう。
まず、選挙・議会・政府など、社会のルールを決める政策決定の過程である「政治過程」は、主要な研究対象の一つとなっている。いくらよりよい公共政策がわかっていても、それを選ぶことができなければ絵に描いた餅である。われわれは、いかに社会を運営すべきなのか、その運営の方法を明らかにすることで初めて社会を変えることができる。そのため、市民が政治家を選出するという民主主義の仕組みを中心に、政治のありようが研究されているのである。
一方、これらの政策決定の過程は、国によっても異なる。ある国の経験や制度を学ぶことで、人類全体にとってよりよい制度設計のヒントを得ることができるかもしれない。国家間の比較に基づき、政治のありようを探究する「比較政治」や、特定の地域に焦点を当てて、その政治の歴史や実態を明らかにする「地域研究」も重要な研究対象である。
さらに、国家間の戦争をいかになくすことができるのかといった「国際関係」を巡る問題は、国内政治の問題と並び、政治学の主要分野を形成している。この点、対外政策をはじめ、国家の政策決定に対しては、指導者や行政官の意思決定が大きな影響力を持つ。彼らのいかなる判断や行動の結果、世界が動いてきたのか。「政治史」や「外交史」など、国内政治や国際関係に関する歴史的事実の探究も、政治学の課題であり、この点では歴史学との関連性も強い。
最後に、政治を通じて社会をよりよいものにしていくというとき、その手段となるものが「公共政策」である。経済政策、医療政策、教育政策、治安政策、環境政策など、さまざまな政策を通じて、社会問題を解決するには、①いかに公共政策を形成・運用できるのか、②公共政策にいかなる効果があるのか、という2点を明らかにする必要がある。特に、政策学では、こうした公共政策の問題に焦点を当てて、自然科学を含む多種多様な学問分野の知見を総合的に活用しながら、社会問題を解決するための公共政策の形成・運用・評価の方法について研究が行われている。
まず、選挙・議会・政府など、社会のルールを決める政策決定の過程である「政治過程」は、主要な研究対象の一つとなっている。いくらよりよい公共政策がわかっていても、それを選ぶことができなければ絵に描いた餅である。われわれは、いかに社会を運営すべきなのか、その運営の方法を明らかにすることで初めて社会を変えることができる。そのため、市民が政治家を選出するという民主主義の仕組みを中心に、政治のありようが研究されているのである。
一方、これらの政策決定の過程は、国によっても異なる。ある国の経験や制度を学ぶことで、人類全体にとってよりよい制度設計のヒントを得ることができるかもしれない。国家間の比較に基づき、政治のありようを探究する「比較政治」や、特定の地域に焦点を当てて、その政治の歴史や実態を明らかにする「地域研究」も重要な研究対象である。
さらに、国家間の戦争をいかになくすことができるのかといった「国際関係」を巡る問題は、国内政治の問題と並び、政治学の主要分野を形成している。この点、対外政策をはじめ、国家の政策決定に対しては、指導者や行政官の意思決定が大きな影響力を持つ。彼らのいかなる判断や行動の結果、世界が動いてきたのか。「政治史」や「外交史」など、国内政治や国際関係に関する歴史的事実の探究も、政治学の課題であり、この点では歴史学との関連性も強い。
最後に、政治を通じて社会をよりよいものにしていくというとき、その手段となるものが「公共政策」である。経済政策、医療政策、教育政策、治安政策、環境政策など、さまざまな政策を通じて、社会問題を解決するには、①いかに公共政策を形成・運用できるのか、②公共政策にいかなる効果があるのか、という2点を明らかにする必要がある。特に、政策学では、こうした公共政策の問題に焦点を当てて、自然科学を含む多種多様な学問分野の知見を総合的に活用しながら、社会問題を解決するための公共政策の形成・運用・評価の方法について研究が行われている。
政治学の歴史と将来
このような政治学の歴史は、非常に古いものである。たとえば、古代ギリシアの時代には既に、多様な個人からなる共同体をいかに統治すべきなのかという問題が議論されていた。たしかに、中世以降、君主や貴族が共同体を支配する封建秩序の下で、この種の統治の問題はいったん後景に退いたものの、産業革命などの近代化の過程で、社会問題が急速に拡大すると同時に、市民の主権が確立し始めると、人びとは、自由で平等な個人が集まって社会を統治するという難題に取り組まなければならなくなった。現代の政治学は、こうした歴史的背景の下に発展してきたものと言える。
さて、現代の学問を考える上で、情報技術の発展を無視することは難しくなってきている。政治学の分野でも、データ分析を用いた科学的研究の進展が著しいところである。たとえば、近年、公共政策の効果を科学的に評価した上で、「根拠に基づく政策立案」を行うべきだという考え方が社会的に広まっている。この点、政策評価を厳密に行うためには、適切な研究設計の下、コンピュータを用いたデータ分析を行うことで、政策が社会に及ぼす影響を客観的に推定することが必要になる。現在では政治学科にも、統計情報処理・社会調査法などの情報科目が設置されており、今後ますます重要性の高まるデータサイエンスの分析技術を学ぶことができるようになっている。
さて、現代の学問を考える上で、情報技術の発展を無視することは難しくなってきている。政治学の分野でも、データ分析を用いた科学的研究の進展が著しいところである。たとえば、近年、公共政策の効果を科学的に評価した上で、「根拠に基づく政策立案」を行うべきだという考え方が社会的に広まっている。この点、政策評価を厳密に行うためには、適切な研究設計の下、コンピュータを用いたデータ分析を行うことで、政策が社会に及ぼす影響を客観的に推定することが必要になる。現在では政治学科にも、統計情報処理・社会調査法などの情報科目が設置されており、今後ますます重要性の高まるデータサイエンスの分析技術を学ぶことができるようになっている。
政治学のカリキュラム
政治学の特徴の一つは、学際性の高さにあり、政治学科のカリキュラムは人文・社会科学の隣接分野に対して、幅広い知識を獲得できるように設計されていることが多い。以下では、慶應義塾大学法学部政治学科のカリキュラムを例として取り上げる。表は、当学科の開講科目を抜粋したものである。
①政治思想論は、政治哲学・政治思想を扱う科目系列である。近代・現代政治思想、日本・東洋政治思想、政治哲学などの科目が設置されており、さまざまな時代・地域の政治思想について包括的に学ぶことができる。
②政治・社会論は、政治・社会を探究するための諸理論を扱う科目系列である。政治過程論や公共政策論などの前述した科目だけでなく、公共経済論などの経済学、社会理論などの社会学、行政学・地方自治論、マス・コミュニケーション論、社会調査論など、社会科学の諸分野についても幅広く学ぶことができる。
③日本政治論は、日本の政治の歴史や実態を扱う科目系列である。具体的には、古代から戦後に至るまでの日本政治史や、現代日本政治およびその立法過程など、日本の政治について集中的に学ぶことができる。
④地域研究・比較政治論は、世界の各地域の政治・社会と、それらの比較を行う比較政治を扱う科目系列である。たとえば、アメリカ、ラテン・アメリカ、中国、朝鮮半島、ロシア、中東、アフリカなど、広範な地域科目が設置されており、特定の地域の政治・社会についても専門的に学ぶことができる。
⑤国際政治論は、国家間の国際関係に関連した研究対象を扱う科目系列である。安全保障論、国際政治理論、西洋・日本外交史など、理論と歴史の両面から、国家間の問題について学ぶことができる。
もちろん単に幅広い分野について学ぶだけでなく、3・4年次には各系列に設置された研究会(ゼミナール)を履修し、特定の専門分野について教員から研究指導を受けることで、専門知識を身につけることができる。
①政治思想論は、政治哲学・政治思想を扱う科目系列である。近代・現代政治思想、日本・東洋政治思想、政治哲学などの科目が設置されており、さまざまな時代・地域の政治思想について包括的に学ぶことができる。
②政治・社会論は、政治・社会を探究するための諸理論を扱う科目系列である。政治過程論や公共政策論などの前述した科目だけでなく、公共経済論などの経済学、社会理論などの社会学、行政学・地方自治論、マス・コミュニケーション論、社会調査論など、社会科学の諸分野についても幅広く学ぶことができる。
③日本政治論は、日本の政治の歴史や実態を扱う科目系列である。具体的には、古代から戦後に至るまでの日本政治史や、現代日本政治およびその立法過程など、日本の政治について集中的に学ぶことができる。
④地域研究・比較政治論は、世界の各地域の政治・社会と、それらの比較を行う比較政治を扱う科目系列である。たとえば、アメリカ、ラテン・アメリカ、中国、朝鮮半島、ロシア、中東、アフリカなど、広範な地域科目が設置されており、特定の地域の政治・社会についても専門的に学ぶことができる。
⑤国際政治論は、国家間の国際関係に関連した研究対象を扱う科目系列である。安全保障論、国際政治理論、西洋・日本外交史など、理論と歴史の両面から、国家間の問題について学ぶことができる。
もちろん単に幅広い分野について学ぶだけでなく、3・4年次には各系列に設置された研究会(ゼミナール)を履修し、特定の専門分野について教員から研究指導を受けることで、専門知識を身につけることができる。
卒業後の進路
これまで見てきたように、政治学は、政治や社会の問題を発見・解決するという問題解決能力を重視した学問と言える。そのため、政治学科で身につけた専門知識や技術を生かして、国家公務員・地方公務員・外交官などになり、社会問題を解決するための政策形成の実務に携わる卒業生も多くいる。
また、民間企業の就職先では、政治や社会の問題を調査・報道するテレビ局や新聞社などのマス・メディア、世界各地でビジネスを展開する商社、多種多様な業種のビジネス課題を解決することを目指す金融機関・広告会社・コンサルティングファームなどが目立つ。
もちろん大学院に進学して、より高度な研究能力を身につけ大学教員になる者、国際機関の職員になる者、研究機関やシンクタンクに入る者など、各種の研究職として政治や社会の問題と関わることもできる。
社会に対して幅広い関心を持っており、問題解決思考や分析技術を身につけ、将来、国内・海外、公的機関・民間企業などの活躍の場を問わず、社会の諸課題の解決に取り組みたいという問題関心の強い学生には、ぜひ政治学という学問にも目を向けてもらいたい。
また、民間企業の就職先では、政治や社会の問題を調査・報道するテレビ局や新聞社などのマス・メディア、世界各地でビジネスを展開する商社、多種多様な業種のビジネス課題を解決することを目指す金融機関・広告会社・コンサルティングファームなどが目立つ。
もちろん大学院に進学して、より高度な研究能力を身につけ大学教員になる者、国際機関の職員になる者、研究機関やシンクタンクに入る者など、各種の研究職として政治や社会の問題と関わることもできる。
社会に対して幅広い関心を持っており、問題解決思考や分析技術を身につけ、将来、国内・海外、公的機関・民間企業などの活躍の場を問わず、社会の諸課題の解決に取り組みたいという問題関心の強い学生には、ぜひ政治学という学問にも目を向けてもらいたい。

