何を学ぶ
企業を中心とした経営体のマネジメントが研究対象。モチベーション向上などの組織内部の管理から始まり、現在ではイノベーション創出が注目トピックに。

高尾 義明(たかお よしあき)先生
京都産業大学/経営学部/教授
1967年大阪市生まれ。京都大学卒業後、大手素材企業勤務を経て、京都大学大学院経済学研究科に学ぶ。博士(経済学)。著書に『はじめての経営組織論』(有斐閣)など。
身の回りにある経営
経営学とは、一言でいえば企業などでの経営(マネジメント)を対象とした科学的知識の体系である。ここでいうマネジメントとは、「自分以外の誰かを通じて何かを成し遂げること(getting things done through others)」と言い換えられる。
実は企業で働いていない高校生の皆さんにとっても、マネジメントは身近なものである。サッカーや野球といったチームスポーツの部活動を考えてみよう。部長やキャプテンは、チームの目標達成に向けて他の人を動かしていかなければならない。吹奏楽部であれば、指揮者は自ら音を出せないなかで、よい音楽を作り上げなければならない。皆さんが通う学校でも、校長先生や教頭先生がマネジメントを担い、よりよい学校を作り上げようとしている。このようにわれわれの社会では身の回りの至るところでマネジメントがなされている。
経営学は主に企業におけるマネジメントを研究している。そこで、企業のマネジメントを皆さんに想像してもらうために、高校生にとっても身近な、マクドナルドなどのファストフード・チェーンを取り上げてみよう。ファストフードでは、日本全国どの店舗でも、概ね同じメニューが用意され、同じ味・ボリュームのものが(ほぼ)同じ価格で提供されている。私たちにはごく当たり前に思えるが、それを実現するためにはさまざまなマネジメントがなされている。
もう少し詳しく見るために、インプット、スループット、アウトプットに分けてみよう。アウトプットとはハンバーガーなどの顧客に提供される食品、インプットは食材や労働力である。スループットのスルーとは「通り抜ける」という意味であり、インプットをアウトプットに変える過程となる。この場合には、食材を調理することなどが当てはまる。
まず、インプットである食材にバラツキがあっては同じアウトプットを提供できない。したがって、同じ品質の食材を全国数多くの店舗に届けられるように、食材を供給する業者や物流業者などをマネジメントすることが不可欠である。
同じインプット(食材)が入ってきても、働いている人によって調理の方法が違えば味や量にバラツキがでてしまう。誰が働いても、同じように調理できるようにするために、しっかりとした調理マニュアルを準備することに加えて、マニュアル通りにできるようなトレーニングも行わなければならない。さらに、調理機器などを統一する必要もある。こうしたことがスループットのマネジメントに含まれる。それを担当するのは各店舗のマネジャーだけでなく、マニュアルを整備したり、調理機器の仕様を決めたりするファストフード・チェーンの本部も含まれる。
以上でごく一部を紹介したように、ファストフード・チェーンでは、インプット、スループット、アウトプット全てを標準化するマネジメントが行われ、それによって全国共通のサービスが可能になっている。
実は企業で働いていない高校生の皆さんにとっても、マネジメントは身近なものである。サッカーや野球といったチームスポーツの部活動を考えてみよう。部長やキャプテンは、チームの目標達成に向けて他の人を動かしていかなければならない。吹奏楽部であれば、指揮者は自ら音を出せないなかで、よい音楽を作り上げなければならない。皆さんが通う学校でも、校長先生や教頭先生がマネジメントを担い、よりよい学校を作り上げようとしている。このようにわれわれの社会では身の回りの至るところでマネジメントがなされている。
経営学は主に企業におけるマネジメントを研究している。そこで、企業のマネジメントを皆さんに想像してもらうために、高校生にとっても身近な、マクドナルドなどのファストフード・チェーンを取り上げてみよう。ファストフードでは、日本全国どの店舗でも、概ね同じメニューが用意され、同じ味・ボリュームのものが(ほぼ)同じ価格で提供されている。私たちにはごく当たり前に思えるが、それを実現するためにはさまざまなマネジメントがなされている。
もう少し詳しく見るために、インプット、スループット、アウトプットに分けてみよう。アウトプットとはハンバーガーなどの顧客に提供される食品、インプットは食材や労働力である。スループットのスルーとは「通り抜ける」という意味であり、インプットをアウトプットに変える過程となる。この場合には、食材を調理することなどが当てはまる。
まず、インプットである食材にバラツキがあっては同じアウトプットを提供できない。したがって、同じ品質の食材を全国数多くの店舗に届けられるように、食材を供給する業者や物流業者などをマネジメントすることが不可欠である。
同じインプット(食材)が入ってきても、働いている人によって調理の方法が違えば味や量にバラツキがでてしまう。誰が働いても、同じように調理できるようにするために、しっかりとした調理マニュアルを準備することに加えて、マニュアル通りにできるようなトレーニングも行わなければならない。さらに、調理機器などを統一する必要もある。こうしたことがスループットのマネジメントに含まれる。それを担当するのは各店舗のマネジャーだけでなく、マニュアルを整備したり、調理機器の仕様を決めたりするファストフード・チェーンの本部も含まれる。
以上でごく一部を紹介したように、ファストフード・チェーンでは、インプット、スループット、アウトプット全てを標準化するマネジメントが行われ、それによって全国共通のサービスが可能になっている。
経営学の展開
このような標準化を提唱したのが、経営学の父と呼ばれるフレデリック・W・テイラーである。彼の代表作が1911年に出版されているように、経営学が一つの学問領域として確立したのは古いことではない。テイラーはもともと工場の現場で働くエンジニアであったが、生産現場の管理を科学的に行うことを提唱し、管理者、さらに経営コンサルタントとして活躍した。社会における企業の影響力が拡大しているなかで、彼の提唱する科学的管理法が大きなインパクトを持ったことから、経営についての科学的知識を体系化しようとする経営学が始まった。
経営学が誕生した頃に企業が直面していたもっとも重要な課題は効率的に大量生産をすることであった。経営学では、複数の人たちが協力して働く仕組みのことを組織と呼ぶが、組織の内部のマネジメントのあり方が当時の経営学の中心的な研究課題だった。
組織内部のマネジメントの課題の一つが、低いワーク・モチベーションであった。生産現場の人たちに意欲的に働いてもらうために、職務のあり方や賃金制度だけではなく、人間関係や上司のリーダーシップなども検討の対象になった。
後でも述べるようにワーク・モチベーションやリーダーシップは現在でも経営学の重要なテーマではあるが、社会の変化とともに、組織の内部のみならず外部にも目を向けることがしだいに重要になってきた。
たとえば、3年前と全く同じメニューしか提供しないファストフード・チェーンは存在しない。その間に顧客の嗜好が変わったり、少し前のタピオカのように新しい食材が話題になったり、ライバルが大幅値下げしたりするといった組織外部の変化を踏まえた適応を図っているためである。
経営学ではこうした外部のことを環境と呼ぶ。環境が変化するなかで、自社の持つ力を生かして、企業としての目標を達成するための戦略が重要性を増してきた。他社との競争にいかに打ち勝っていくかだけではなく、成長のためにどのような事業に力を入れていくかを考えることも経営戦略に含まれる。
環境の変化がますます激しくなるなかで注目が高まっているのが、イノベーションの創出である。イノベーションとは要素の新結合といわれるが、その典型は新製品開発に見いだされる。コンビニには毎日のように新製品が登場する。スマートフォンも、機能がよくなったものが次々と市場に投入されている。そこで動くアプリやキャッシュレス決済のシステムなどもイノベーションの成果である。
しかし、イノベーションの創出にはたくさんのリスクがある。技術的な落とし穴のために開発途中で断念せざるをえないこともあれば、思ったように顧客を引きつけることができずにすぐに市場からの撤退を迫られることもある。しかし、社会の変化が激しいなかで企業が成長していくためにはリスクを取ってでも、イノベーションを追い求めていく必要がある。
このような企業の経営の現状を反映して、近年の経営学ではイノベーションをいかに実現するかが重要な研究テーマになっている。たとえば、イノベーションを実現するための他社との協力、イノベーションを主導するリーダーシップのあり方など、関連するさまざまなテーマが研究されている。
経営学が誕生した頃に企業が直面していたもっとも重要な課題は効率的に大量生産をすることであった。経営学では、複数の人たちが協力して働く仕組みのことを組織と呼ぶが、組織の内部のマネジメントのあり方が当時の経営学の中心的な研究課題だった。
組織内部のマネジメントの課題の一つが、低いワーク・モチベーションであった。生産現場の人たちに意欲的に働いてもらうために、職務のあり方や賃金制度だけではなく、人間関係や上司のリーダーシップなども検討の対象になった。
後でも述べるようにワーク・モチベーションやリーダーシップは現在でも経営学の重要なテーマではあるが、社会の変化とともに、組織の内部のみならず外部にも目を向けることがしだいに重要になってきた。
たとえば、3年前と全く同じメニューしか提供しないファストフード・チェーンは存在しない。その間に顧客の嗜好が変わったり、少し前のタピオカのように新しい食材が話題になったり、ライバルが大幅値下げしたりするといった組織外部の変化を踏まえた適応を図っているためである。
経営学ではこうした外部のことを環境と呼ぶ。環境が変化するなかで、自社の持つ力を生かして、企業としての目標を達成するための戦略が重要性を増してきた。他社との競争にいかに打ち勝っていくかだけではなく、成長のためにどのような事業に力を入れていくかを考えることも経営戦略に含まれる。
環境の変化がますます激しくなるなかで注目が高まっているのが、イノベーションの創出である。イノベーションとは要素の新結合といわれるが、その典型は新製品開発に見いだされる。コンビニには毎日のように新製品が登場する。スマートフォンも、機能がよくなったものが次々と市場に投入されている。そこで動くアプリやキャッシュレス決済のシステムなどもイノベーションの成果である。
しかし、イノベーションの創出にはたくさんのリスクがある。技術的な落とし穴のために開発途中で断念せざるをえないこともあれば、思ったように顧客を引きつけることができずにすぐに市場からの撤退を迫られることもある。しかし、社会の変化が激しいなかで企業が成長していくためにはリスクを取ってでも、イノベーションを追い求めていく必要がある。
このような企業の経営の現状を反映して、近年の経営学ではイノベーションをいかに実現するかが重要な研究テーマになっている。たとえば、イノベーションを実現するための他社との協力、イノベーションを主導するリーダーシップのあり方など、関連するさまざまなテーマが研究されている。
関連する学問分野
このように経営学はその範囲を広げていくなかで、心理学、社会学、経済学といった他の学問分野から、経営現象を観察するための枠組みや方法を取り入れてきた。それは、経営学が、企業などの組織体のマネジメントの研究という、対象志向の学問分野だからである。
たとえば、ワーク・モチベーションについての理論は、教育心理学の理論から大きな影響を受けている。働いている人たちにいかに仕事への意欲を持ってもらうかという問題と、学生にいかに学習への意欲を持ってもらうかという問題には共通点があるためである。また、人間のものの見方を研究する認知心理学は、組織内の意思決定をとらえる際の基礎理論として取り入れられている。
社会学から取り入れた内容の一つとして、社会ネットワーク分析を挙げることができる。上司-部下といった公式的な関係以外でも組織内の人々はつながりをもっており、そうしたつながりは組織内の知識の流通、さらにはイノベーションの創出にも影響を与える。また、社会学に由来する官僚制論は、組織構造を考える前提になっている。
経済学では、なぜ個人が個々に取引するだけではなく会社組織が成立するのかという問いかけから、取引費用に注目する理論が示されている。そうした理論を用いて、どのような活動までを自社内に取り込むことが効率的であるかが分析されている。また、他社との駆け引きを考える際にはゲーム理論も用いられる。
近年では、グローバル化が進展していることもあり、文化人類学のアプローチが取り入れられることもある。また、経営学の研究では統計的な手法を用いることが多いため、統計学も関連する学問分野といえる。
さらに、会計学、商学、経営情報学、経営工学といった学問分野も、経営学を広い意味でとらえたときにそこに含まれるものであり、それらの学問分野と、マネジメントを研究する経営学とは密接な関係がある。このように、経営学ではさまざまな学問分野の知見が活用されている。
たとえば、ワーク・モチベーションについての理論は、教育心理学の理論から大きな影響を受けている。働いている人たちにいかに仕事への意欲を持ってもらうかという問題と、学生にいかに学習への意欲を持ってもらうかという問題には共通点があるためである。また、人間のものの見方を研究する認知心理学は、組織内の意思決定をとらえる際の基礎理論として取り入れられている。
社会学から取り入れた内容の一つとして、社会ネットワーク分析を挙げることができる。上司-部下といった公式的な関係以外でも組織内の人々はつながりをもっており、そうしたつながりは組織内の知識の流通、さらにはイノベーションの創出にも影響を与える。また、社会学に由来する官僚制論は、組織構造を考える前提になっている。
経済学では、なぜ個人が個々に取引するだけではなく会社組織が成立するのかという問いかけから、取引費用に注目する理論が示されている。そうした理論を用いて、どのような活動までを自社内に取り込むことが効率的であるかが分析されている。また、他社との駆け引きを考える際にはゲーム理論も用いられる。
近年では、グローバル化が進展していることもあり、文化人類学のアプローチが取り入れられることもある。また、経営学の研究では統計的な手法を用いることが多いため、統計学も関連する学問分野といえる。
さらに、会計学、商学、経営情報学、経営工学といった学問分野も、経営学を広い意味でとらえたときにそこに含まれるものであり、それらの学問分野と、マネジメントを研究する経営学とは密接な関係がある。このように、経営学ではさまざまな学問分野の知見が活用されている。
経営学を大学で学ぶ
大学で学ぶ経営学は、経営(マネジメント)を対象とした科学的知識の体系であり、経営の実践そのものではない。しかし、そこに含まれる理論は、現実の経営を読み解くために生み出され、抽象化されたものである。抽象化された経営理論を具体的な経営現象に当てはめるとともに、抽象的な理論の間の関係をじっくり考えることで、将来に経営の実践に携わるときに活用できる思考能力が育成されていく。
たとえば、経営学の主要科目の一つである経営組織論ではモチベーションについて理論を取り上げるが、そこで扱う内容の一つに目標設定理論というものがある。膨大な研究をもとに、どのような目標をどのように設定すればモチベーションが高まるかを明らかにした理論である。まず、その理論をこれまでの経験に当てはめてみることで理解が深まる。さらに、別のモチベーション理論(期待理論、動機づけ-衛生理論など)との比較を行うことで、実際にどのような場面で目標設定理論を用いるのが有効であるかが理解できる。企業の経営に関心を持つことに加えて、このような理論と現実の往復を意識することで、経営学を学ぶことの意義が高まる。さらに学ぶことが楽しくなる。
経営学部や経営学科で学ぶのは、マネジメントに関わる科目だけではない。下表には、一例として筆者の在籍する京都産業大学経営学部の主要科目を示しているが、広い意味での経営学に含まれる会計学、マーケティングなどの科目も学べるカリキュラムになっている。それによって企業の経営の多面性を知り、マネジメントの意義をより深く理解できるようになる。
最後に、大学で経営学を専門的に学んだ後の進路について紹介しておきたい。民間企業へ就職する学生が大半だが、業種はさまざまである。筆者が在籍する京都産業大学でも、メーカー、流通、サービス、金融・保険、情報通信など、幅広い業種に就職している。このように、就職先が多岐にわたっているのは、経営学がもたらす知見への期待の高さを物語っている。社会の変化がますます激しくなるなかで、企業をはじめとした組織体のマネジメントについて体系的に学ぶ意義は、いっそう高まっていくだろう。
たとえば、経営学の主要科目の一つである経営組織論ではモチベーションについて理論を取り上げるが、そこで扱う内容の一つに目標設定理論というものがある。膨大な研究をもとに、どのような目標をどのように設定すればモチベーションが高まるかを明らかにした理論である。まず、その理論をこれまでの経験に当てはめてみることで理解が深まる。さらに、別のモチベーション理論(期待理論、動機づけ-衛生理論など)との比較を行うことで、実際にどのような場面で目標設定理論を用いるのが有効であるかが理解できる。企業の経営に関心を持つことに加えて、このような理論と現実の往復を意識することで、経営学を学ぶことの意義が高まる。さらに学ぶことが楽しくなる。
経営学部や経営学科で学ぶのは、マネジメントに関わる科目だけではない。下表には、一例として筆者の在籍する京都産業大学経営学部の主要科目を示しているが、広い意味での経営学に含まれる会計学、マーケティングなどの科目も学べるカリキュラムになっている。それによって企業の経営の多面性を知り、マネジメントの意義をより深く理解できるようになる。
最後に、大学で経営学を専門的に学んだ後の進路について紹介しておきたい。民間企業へ就職する学生が大半だが、業種はさまざまである。筆者が在籍する京都産業大学でも、メーカー、流通、サービス、金融・保険、情報通信など、幅広い業種に就職している。このように、就職先が多岐にわたっているのは、経営学がもたらす知見への期待の高さを物語っている。社会の変化がますます激しくなるなかで、企業をはじめとした組織体のマネジメントについて体系的に学ぶ意義は、いっそう高まっていくだろう。

