何を学ぶ
情報システムをどのように設計し、運用するかを考える学問分野。情報技術そのものだけはなく、システムの目的、使う人などシステムに関わりあるものに着目する。

関 哲人(せき のりひと)先生
北海学園大学/経営学部/教授
1975年、東京都生まれ。修士(学術、電気通信大学)、博士(経営学、高崎経済大学)。2008年北海学園大学経営学部講師、2017年同教授。同学部では、情報教育、数理・データサイエンス・AI教育、産学連携を担当。
経営情報学(経営情報論)とは
経営情報学(経営情報論)*1とは、人間・情報・ICTの有機的な関わりを考える学問である。この学問を述べるにあたって、まずは次の用語について説明しておきたい。
<用語の定義>
・システム:目的、要素、関係を含む集合。
・経営情報システム(MIS*2):経営上の目的を実現するために、人間・情報(※)・ICTが有機的に結びついたもの。
※情報:データに意味・評価が加わったものと定義される。
・システム:目的、要素、関係を含む集合。
※情報:データに意味・評価が加わったものと定義される。
コンピュータ登場時の経営情報学-OA-
コンピュータが業務で用いられる以前の事務作業は、手作業で行っていた。たとえば、顧客の情報は台帳で整理し、取引処理も帳簿で行っていた。1960年頃より、人が大量の紙を用いて膨大な時間をかけて行う単純作業をコンピュータで自動処理をするという社会的要請が出てきた。こうした事務作業をコンピュータなどの機器によって自動化する試みをオフィス・オートメーション(以降、OA)という。だが、単にコンピュータを導入するだけでは、人間の作業をコンピュータに置き換えることはできない。この様子は「100万座席への苦闘〜みどりの窓口・世界初 鉄道システム〜」『プロジェクトX』(NHKエンタープライズ、2005年)というDVDで垣間見ることができる。
<事例>
昭和35年(1960年)国鉄(JRの前身)では、コンピュータを導入し全国150もの駅をネットワークで結ぶ、座席予約・発券システムをみどりの窓口に導入した。これは特急の指定席の発券を、手作業で半日かかるものをわずか数分で行うことを目論んだものであったが、導入当初は失敗が相次いだ。
このシステムを成功させるべく、乗客の要望に対してどんな情報システムを構築すればよいのか(システムの目標は何か)、どうすれば人にとってICTが使いやすくなるのか(人と情報技術の相互作用はどうなっているか)、そのためにはどんな構築体制で臨めばよいのだろうか(人間同士の相互作用はどうすればよいか)などを一つひとつクリアしていったのである。
昭和35年(1960年)国鉄(JRの前身)では、コンピュータを導入し全国150もの駅をネットワークで結ぶ、座席予約・発券システムをみどりの窓口に導入した。これは特急の指定席の発券を、手作業で半日かかるものをわずか数分で行うことを目論んだものであったが、導入当初は失敗が相次いだ。
このシステムを成功させるべく、乗客の要望に対してどんな情報システムを構築すればよいのか(システムの目標は何か)、どうすれば人にとってICTが使いやすくなるのか(人と情報技術の相互作用はどうなっているか)、そのためにはどんな構築体制で臨めばよいのだろうか(人間同士の相互作用はどうすればよいか)などを一つひとつクリアしていったのである。
現在、みどりの窓口は省力化が行われ、自動券売機への置き換えが進んでいる。この目的は何か? これによって何がもたらせるのだろうか? 経営情報学の観点からこの経緯に注目していきたいものである。
OAから経営情報学へ
OAは、人間が行う作業のコンピュータでの代替化のみを考えるものではない。OA研究の進展に伴い、人間とコンピュータの関係をたとえば、次のようにとらえるようになった。
コンピュータが、人間が行っている作業を代替すること。
コンピュータを活用し、人間が意思決定・活動すること。
これは、人間とAI(人工知能)の関係についての最近の議論でも大切な視点でもある。OAも経営情報学も問題意識は同じで、経営情報学は、オフィスを「経営」、オートメーションを「情報」に置き換えたものとして現在に至っている。
さらに近年、データサイエンスの社会的な要請が高まっている。これは、データを正しく分析し、分析結果より適切な考察を実施し、その考察を基に課題を解決し、新たな価値を産み出すものである。そこでは、データ・情報を関連づける力も求められる点で、物事・事象を結びつけることを目的とする学問としての経営情報学を学ぶ価値を見出せる。
したがって、経営情報学とは、学問としての視点は時代は変われど一貫しているが、対象が社会・経済・経営環境の変化とICTの発展に伴い広がっている学問分野といえる。
さらに近年、データサイエンスの社会的な要請が高まっている。これは、データを正しく分析し、分析結果より適切な考察を実施し、その考察を基に課題を解決し、新たな価値を産み出すものである。そこでは、データ・情報を関連づける力も求められる点で、物事・事象を結びつけることを目的とする学問としての経営情報学を学ぶ価値を見出せる。
したがって、経営情報学とは、学問としての視点は時代は変われど一貫しているが、対象が社会・経済・経営環境の変化とICTの発展に伴い広がっている学問分野といえる。
最近の研究動向
わが国における経営情報学の最近注目されているテーマを示すキーワードとして、たとえば、次のものがある。これらも、人間・情報・ICTの相互作用を考えることに他ならない。
・情報倫理 : ICTを正しく用いるための社会的な意義とは何かを考える研究分野。たとえば、ICTが及ぼす負の側面に注目することで、情報・ICTが人間・社会に与える影響を考える視座ともなる。
・IoT :Internet of Things「モノのインターネット」。インターネットによってモノを操作する、インターネットがモノの状態を知ることなどを意味する。たとえば、スマートスピーカーもIoTのひとつではある。
・スマート・モバイル・イノベーション/ビジネス :スマートフォンや携帯電話を最大限に活用して、どのような情報・価値・ビジネスが生み出されるのかを考える研究。たとえば、スマートフォン用のアプリの課金体系はどのようにすればよいのだろうか(人間とICTの接点・相互作用)といった内容もテーマとなる。
「経営情報」と名がつく学部・学科
経営情報学部ないし経営情報学科は、経営情報学を主に学ぶ学部・学科と位置づけているものもあれば、経営と情報を幅広く学ぶことができる学部・学科と位置づけているものもある。また、経営学部・経営学科にある情報を冠するコース・学群・講座は主に経営情報学を学修するものである。さらに、そこで学べる情報の分野は大別して「情報リテラシー」と「理論と技術的応用」がある。
※情報の理論と技術的な応用については、本誌の
ちなみに、理系学部で「経営情報」を冠する学群・講座・コースの場合、経営情報学の視点で、情報科学、情報工学、経営工学・管理工学などの学問・技術の修得が主目的となる。
経営情報学の学び方
近年の情報教育の充実によって、経営情報学を学ぶ機会は多くなっているといえる。ただし、学部・学科によってカリキュラム・ポリシーや設置されている科目が異なる。経営情報学は、経営と情報の双方を学び、経営と情報を結びつけることになる。
ただし、自身が将来社会で達成したい目標に照らし合わせて、経営を重視した学びを選ぶか、情報を重視するのか、バランスを考えて経営と情報の科目を選択する必要がある。
ただし、自身が将来社会で達成したい目標に照らし合わせて、経営を重視した学びを選ぶか、情報を重視するのか、バランスを考えて経営と情報の科目を選択する必要がある。
経済・経営系学部における経営情報学のカリキュラム
コース制と呼ばれる履修方式を取り上げつつ、カリキュラムについて説明する。筆者の属する北海学園大学経営学部の場合、自身のキャリア(ここでは、職業的・社会的に自立するために必要となる能力や態度)を考え、必要な科目を選択するようになっており、学部設置の全科目を履修することができる。とはいえ、さすがに学生が全科目を選択することは不可能である。
そこで、自身が重点的に学びたいことと照らし合わせて本学部経営学科では「組織・マネジメントコース」「戦略・マーケティングコース」、同経営情報学科では「情報・マネジメントコース」「会計・ファイナンスコース」「心理・人間行動コース」を設定している。どのコースに属しても、経営情報学を学ぶことは可能であるが、本学部で経営情報学を重点的に学びたい場合は、経営情報学科に属しかつ情報・マネジメントコースで指定された科目(下表)を選択することになる。本コースでの基幹科目は、情報の理論と実習を幅広くカバーするものとしている。
そこで、自身が重点的に学びたいことと照らし合わせて本学部経営学科では「組織・マネジメントコース」「戦略・マーケティングコース」、同経営情報学科では「情報・マネジメントコース」「会計・ファイナンスコース」「心理・人間行動コース」を設定している。どのコースに属しても、経営情報学を学ぶことは可能であるが、本学部で経営情報学を重点的に学びたい場合は、経営情報学科に属しかつ情報・マネジメントコースで指定された科目(下表)を選択することになる。本コースでの基幹科目は、情報の理論と実習を幅広くカバーするものとしている。
進路について
ここまで俯瞰(ふかん)したように、たとえば、問題解決能力を生かすコンサルティングや提案力が求められる営業で必要な要素も経営情報学を通じて身につけることが大いに可能である。
2023年度の本学部経営情報学科における進路の上位5種を示すと、情報通信業(25.5%)、卸売・小売業(19.1%)、金融・保険業(14.5%)、サービス業(12.7%)、公務員(6.4%)、と多岐に渡っている。
2023年度の本学部経営情報学科における進路の上位5種を示すと、情報通信業(25.5%)、卸売・小売業(19.1%)、金融・保険業(14.5%)、サービス業(12.7%)、公務員(6.4%)、と多岐に渡っている。
経営情報学の学びの成果
最後に本学部情報・マネジメントコース履修生の感想を取り上げ、本稿を結びたい。
<成果例>
・「経営にまつわる問題は私たちが普段知っている手順や法則に落とし込むことができることに気づいた。その結果、経営上の問題の本質的な解決方策を提示することが容易になることもわかった。これによって、『物事の本質が何か、なぜそうなるのかをきちんと考える』姿勢へとつながった。」
・「情報はただ集めるだけでなく、目的の達成上必要に応じて引き出し、カスタマイズできなければならないことに気づいた。この膨大な情報をコンピュータで管理・分析する技術を学ぶことができた。」
・「経営にまつわる問題は私たちが普段知っている手順や法則に落とし込むことができることに気づいた。その結果、経営上の問題の本質的な解決方策を提示することが容易になることもわかった。これによって、『物事の本質が何か、なぜそうなるのかをきちんと考える』姿勢へとつながった。」
・「情報はただ集めるだけでなく、目的の達成上必要に応じて引き出し、カスタマイズできなければならないことに気づいた。この膨大な情報をコンピュータで管理・分析する技術を学ぶことができた。」
*1:経営情報学の定義や定理は一義ではない。「経営情報学」が示す視点・問題意識に基づき、経営、情報を幅広く学ぶものと考えてほしい。
*2:Management Information System
*2:Management Information System

