何を学ぶ
ビジネスを科学的にとらえ、企業と消費者とのあり方を問う学問分野。リアルとデジタルの市場創造やブランド構築に関するマーケティングのおもしろさを学ぶことができる。

新倉 貴士(にいくら たかし)先生
法政大学/経営学部/教授
1966年、神奈川県横須賀市生まれ。慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了。博士(経営学)。関西学院大学商学部教授を経て現職。専攻はマーケティング、消費者行動論。
ビジネスの学
“Make money!”。「あなたは何のために働きますか?」という問いに対して、海外の人たちはこう答えることが多い。メジャーリーグのプレーヤー、一流企業のブランドマネジャー、ファッション業界で活躍するデザイナーなど、「お金を稼ぐ」ということは、ありとあらゆるビジネスの世界に共通する唯一の基準である。もしいまの日本でこう答えると、いささか露骨に思われてしまうかもしれない。でもきっと近い将来、こう答える日本の若い人たちが増えてくるであろう。
「お金を稼ぐ」ということの意味やその重要性を真剣に考え、またその仕組みやメカニズムといったものを科学的にとらえ、そこから得られた有用な知見をさらに実践に役立てるようにするニーズが、日本でも近年ことさらに高まっている。いわゆる「ビジネス」というものを正面から考える学問、これが商学である。商学とは、まさに「ビジネスとは何か」「商いとは何だろうか」を追究するビジネスの学である。
「お金を稼ぐ」ということの意味やその重要性を真剣に考え、またその仕組みやメカニズムといったものを科学的にとらえ、そこから得られた有用な知見をさらに実践に役立てるようにするニーズが、日本でも近年ことさらに高まっている。いわゆる「ビジネス」というものを正面から考える学問、これが商学である。商学とは、まさに「ビジネスとは何か」「商いとは何だろうか」を追究するビジネスの学である。
経済学や経営学との違い
商学という学問とは何かを考えるには、まず他の学問との違いを明確にしておくとよい。
経済学は、ビジネスの主体である企業を取り巻く外部世界の経済システム全体のメカニズムを解明することを主な目的としている。これに対して経営学は、ビジネス主体となる企業それ自体の組織編成や、その企業組織のなかで働く従業員のやる気(モチベーション)の管理など、企業の内部世界のメカニズムの解明に関心を寄せている。
では商学はというと、両学問のちょうど橋渡し的な役割を担いながら、その中間領域を扱う。経済学が関心を寄せる企業の外部世界と、経営学が取り組む企業の内部世界が複雑に入り交じり合いながら生じるさまざまな問題の解明を目的としている。ビジネス主体の「内と外」という単純な識別では割り切れないところに、その難しさと興味深さがある。
このことを、現在の商学の中心に位置づけられている「マーケティング」を例に説明しよう。経営学では、企業の内部世界の問題が中心となり、経営戦略に適切な組織のあり方や、その組織編成と連動した社員のモチベーション管理などが中心に体系化されている。極論すると、企業という内部世界のなかでの管理・統制の問題である。内部世界では、かなりの程度まで管理・統制が可能になる。つまり経営学では、企業を経営する立場からすれば、内部世界にいる「意のままになる者たち」の管理・統制が中心に議論される。しかしながら、企業を経営していく上で欠かせないのは外部世界との関係である。外部世界では、自社に好意的な者もいれば、そうでない者もいる。通常、そうでない者のほうがはるかに多い。マーケティングでは、こうした外部世界にいる「意のままにならない者たち」の問題が中心に議論される。内部世界の管理・統制ならば、経営者の指示に従わない者には、厳しいペナルティを科すことができる。しかし、「意のままにならない者たち」には、このことが容易ではない。そうした意味でマーケティングでは、その中心に「意のままにならない者たち」の代表として「消費者」が位置づけられ、また彼・彼女らの代弁者としての小売業者や卸売業者である「流通業者」の役割が重要視されている。
意のままにならない消費者のとらえ方について、経済学では、経済合理的な消費者を仮定する。そこでは、1円でも安いモノ、少しでもよいモノを選ぶという合理的な消費者が想定されている。
一方のマーケティングでは、こうした合理的な消費者というよりも、世間の評判や個人の感情に大いに左右される消費者を仮定する。評判のよい製品や、自分の好みに適したブランドを購買する社会的・心理的側面を色濃く反映した消費者が想定されるのである。したがって、人々の社会的ニーズや個々人の深層心理にあるニーズというものを解明して、少しでも「意のまま」になるように、消費者との関係を築いていく必要性が認識される。
同様に意のままにならない流通業者へは、店舗の品ぞろえに貢献する消費者データや、魅力的な広告宣伝によるサポート態勢を取りながら、よい関係を築くためのコミュニケーションを展開していかなくてはならない。よい関係を築くことで信頼感が生まれ、価格面・経済面だけの日和見主義的な取引のウエートは減る。このようなコミュニケーション活動により、長期的に「意のまま」になるような仕組み作りが行われている。こうした長期的な信頼関係の構築こそ、マーケティングの目的となる。
経済学は、ビジネスの主体である企業を取り巻く外部世界の経済システム全体のメカニズムを解明することを主な目的としている。これに対して経営学は、ビジネス主体となる企業それ自体の組織編成や、その企業組織のなかで働く従業員のやる気(モチベーション)の管理など、企業の内部世界のメカニズムの解明に関心を寄せている。
では商学はというと、両学問のちょうど橋渡し的な役割を担いながら、その中間領域を扱う。経済学が関心を寄せる企業の外部世界と、経営学が取り組む企業の内部世界が複雑に入り交じり合いながら生じるさまざまな問題の解明を目的としている。ビジネス主体の「内と外」という単純な識別では割り切れないところに、その難しさと興味深さがある。
このことを、現在の商学の中心に位置づけられている「マーケティング」を例に説明しよう。経営学では、企業の内部世界の問題が中心となり、経営戦略に適切な組織のあり方や、その組織編成と連動した社員のモチベーション管理などが中心に体系化されている。極論すると、企業という内部世界のなかでの管理・統制の問題である。内部世界では、かなりの程度まで管理・統制が可能になる。つまり経営学では、企業を経営する立場からすれば、内部世界にいる「意のままになる者たち」の管理・統制が中心に議論される。しかしながら、企業を経営していく上で欠かせないのは外部世界との関係である。外部世界では、自社に好意的な者もいれば、そうでない者もいる。通常、そうでない者のほうがはるかに多い。マーケティングでは、こうした外部世界にいる「意のままにならない者たち」の問題が中心に議論される。内部世界の管理・統制ならば、経営者の指示に従わない者には、厳しいペナルティを科すことができる。しかし、「意のままにならない者たち」には、このことが容易ではない。そうした意味でマーケティングでは、その中心に「意のままにならない者たち」の代表として「消費者」が位置づけられ、また彼・彼女らの代弁者としての小売業者や卸売業者である「流通業者」の役割が重要視されている。
意のままにならない消費者のとらえ方について、経済学では、経済合理的な消費者を仮定する。そこでは、1円でも安いモノ、少しでもよいモノを選ぶという合理的な消費者が想定されている。
一方のマーケティングでは、こうした合理的な消費者というよりも、世間の評判や個人の感情に大いに左右される消費者を仮定する。評判のよい製品や、自分の好みに適したブランドを購買する社会的・心理的側面を色濃く反映した消費者が想定されるのである。したがって、人々の社会的ニーズや個々人の深層心理にあるニーズというものを解明して、少しでも「意のまま」になるように、消費者との関係を築いていく必要性が認識される。
同様に意のままにならない流通業者へは、店舗の品ぞろえに貢献する消費者データや、魅力的な広告宣伝によるサポート態勢を取りながら、よい関係を築くためのコミュニケーションを展開していかなくてはならない。よい関係を築くことで信頼感が生まれ、価格面・経済面だけの日和見主義的な取引のウエートは減る。このようなコミュニケーション活動により、長期的に「意のまま」になるような仕組み作りが行われている。こうした長期的な信頼関係の構築こそ、マーケティングの目的となる。
商学の体系
かつての日本では、「商い」に対する位置づけやイメージは相対的に低かったようである。時代劇などによく登場する豪商・越後屋が、悪代官にひざまずいて悪巧みをするシーンがそれを物語っている。しかし、今日ではこうした位置づけやイメージは大幅に変化した。楽天の三木谷さんやソフトバンクの孫さんなど、商才を持つビジネスリーダーが世の中を動かしている。したがって、その位置づけやイメージは随分と高くなったといえよう。
商学は、中世ヨーロッパで「取引の学」として体系化されたと考えられている。貿易、交通、金融、保険など商取引に関わるあらゆる機能をもとに、その機能に関する知識やテクニックを集積し、体系化が図られてきた。こうした背景から、現在の商学系の学部や学科では、マーケティングを中心にした商業分野のほかにも、貿易に関する国際分野や、銀行・保険・証券などに関する金融分野などが設置されている。
現在の流通業界のように、社会や時代の変化とともにビジネスのあり方が問われるたびに、業界・業種といったものが再編される。これと全く同じように、商学の内部に設置される学科目でも、現在その再編が行われている。今、多くの商学系の学部や学科でカリキュラムの見直しなどが推し進められているのは、従来から機能的に分けられてきた商業・貿易・金融・情報などの各分野の壁に対するものである。
たとえば、モバイルアプリの急速な普及による商業分野と情報分野との融合、規制緩和や経済のサービス化といった現象から生じる「金融マーケティング」といった商業分野と金融分野との融合など、従来の壁を超えて融合される新たな領域に対するカリキュラムの対応が急務とされている。
商学は、中世ヨーロッパで「取引の学」として体系化されたと考えられている。貿易、交通、金融、保険など商取引に関わるあらゆる機能をもとに、その機能に関する知識やテクニックを集積し、体系化が図られてきた。こうした背景から、現在の商学系の学部や学科では、マーケティングを中心にした商業分野のほかにも、貿易に関する国際分野や、銀行・保険・証券などに関する金融分野などが設置されている。
現在の流通業界のように、社会や時代の変化とともにビジネスのあり方が問われるたびに、業界・業種といったものが再編される。これと全く同じように、商学の内部に設置される学科目でも、現在その再編が行われている。今、多くの商学系の学部や学科でカリキュラムの見直しなどが推し進められているのは、従来から機能的に分けられてきた商業・貿易・金融・情報などの各分野の壁に対するものである。
たとえば、モバイルアプリの急速な普及による商業分野と情報分野との融合、規制緩和や経済のサービス化といった現象から生じる「金融マーケティング」といった商業分野と金融分野との融合など、従来の壁を超えて融合される新たな領域に対するカリキュラムの対応が急務とされている。
商学のカリキュラム
一般的な商学系の学部や学科では、各分野ごとに体系化されたカリキュラムが編成されている。たとえば、マーケティングを中心にした商業分野では、マーケティング管理(マネジメント)論を中心にして、消費者行動論、市場調査論、商品学、流通論、広告論、販売管理論、国際マーケティング論、交通論、ロジスティクスなどが主に設置されている。
これは、企業の対市場活動であるマーケティングを統合的なマネジメント視点からとらえた体系であり、消費者ニーズをビジネスの中心にとらえ、それをリサーチし、製品・流通チャネル・広告・販売促進といったマーケティング手段を準備して、世界中の消費者の手元に価値ある製品やサービスを届けるという仕組みを、総論と各論から体系的にとらえることができるように配慮したものである。「ビジネスの学」を体得するために、統合的なマネジメント視点としての総論を押さえながら、ビジネスを成り立たせている基本的な機能となる各論を詳細に把握するために、システマティックに構成されたものである。
これは、企業の対市場活動であるマーケティングを統合的なマネジメント視点からとらえた体系であり、消費者ニーズをビジネスの中心にとらえ、それをリサーチし、製品・流通チャネル・広告・販売促進といったマーケティング手段を準備して、世界中の消費者の手元に価値ある製品やサービスを届けるという仕組みを、総論と各論から体系的にとらえることができるように配慮したものである。「ビジネスの学」を体得するために、統合的なマネジメント視点としての総論を押さえながら、ビジネスを成り立たせている基本的な機能となる各論を詳細に把握するために、システマティックに構成されたものである。
商学のメリット
商学系の学部(商学部や商経学部)や経営学部などにある商学系の学科(マーケティング学科、市場経営学科、市場戦略学科、流通マーケティング学科など)では、それぞれオリジナリティに富んだカリキュラムが設置されている。商学系に進学を希望する受験生は、そうしたオリジナリティを検討するのと同時に、基本的なカリキュラムが確立されているかどうかという視点からも進学先を選ぶことが大事である。
ビジネスを正面から考える学問だけに、短い大学生活の後に役立つ有用な知見が多く、卒業後にこそ、その力が大いに発揮されるであろう。商学のメリットを一言で表現するならば「人生に役立つ学問」といえる。卒業後、ほとんどの大学生は、実務的なビジネス社会に旅立っていかなければならない。その先の長い旅路を少しでも不安のないものとするために、4年後のことも、いまからしっかりと見据えておく必要がある。4年間に蓄えられるビジネスに関する基本的なツールは、その後の人生において強力な武器となるであろう。
法政大学の経営学部(https://www.hosei.ac.jp/keiei/index.html)にある市場経営学科では、商学の中心となるマーケティングに関連する科目が数多く設置されており、産業、技術、金融、交通など幅広くビジネスを学ぶことができる。
マーケティングは、ビジネスにおいて収益獲得の源泉となるマーケットや魅力的なブランドを創り出すという、想像力とユニークさが要求される仕事に関わるものであるために、アーティストのような感覚が必要になることが多い。
ビジネス界では、男女問わず、優秀なブランドマネジャーたちが数多く活躍しているので、繊細で芸術的な感覚や感性を持つ受験生には、ぜひお薦めの学問である。
ビジネスを正面から考える学問だけに、短い大学生活の後に役立つ有用な知見が多く、卒業後にこそ、その力が大いに発揮されるであろう。商学のメリットを一言で表現するならば「人生に役立つ学問」といえる。卒業後、ほとんどの大学生は、実務的なビジネス社会に旅立っていかなければならない。その先の長い旅路を少しでも不安のないものとするために、4年後のことも、いまからしっかりと見据えておく必要がある。4年間に蓄えられるビジネスに関する基本的なツールは、その後の人生において強力な武器となるであろう。
法政大学の経営学部(https://www.hosei.ac.jp/keiei/index.html)にある市場経営学科では、商学の中心となるマーケティングに関連する科目が数多く設置されており、産業、技術、金融、交通など幅広くビジネスを学ぶことができる。
マーケティングは、ビジネスにおいて収益獲得の源泉となるマーケットや魅力的なブランドを創り出すという、想像力とユニークさが要求される仕事に関わるものであるために、アーティストのような感覚が必要になることが多い。
ビジネス界では、男女問わず、優秀なブランドマネジャーたちが数多く活躍しているので、繊細で芸術的な感覚や感性を持つ受験生には、ぜひお薦めの学問である。

