何を学ぶ
自然界のあらゆる物質を探求し、その普遍性を見出そうとする学問。素粒子や宇宙、生物など、対象は非常に広い。近年は量子情報など他学問との融合領域も発展している。

柳澤 実穂(やなぎさわ みほ)先生
東京大学/大学院総合文化研究科、大学院理学系研究科/准教授
1982年栃木県生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。博士(理学)。細胞のような小さな液体や固体を対象とする物理学が専門である。訳書に『自然世界の高分子』(吉岡書店)がある。
物理学とは
物理学とは、自然に見られる全ての現象、自然界にある全ての物質とその性質について探求する学問である。また、できるだけ簡潔にその普遍性(universality)を理解したいという思想を持つ学問ともいえるだろう。この思想により、物理学では自然言語よりも定義が簡単な数式を用いた表現が多くなりがちである。これが、物理学に対して「難しい」というイメージを与えることになっていると思われる。しかし、物理学の進展においてもっとも重要なのは、普遍性を見出そうとするものの見方であり、数式による記述は必須ではない。
実際に、宇宙の始まりをもたらした大膨張「ビッグバン」の生みの親と言われているジョージ・ガモフが、「宇宙が膨張しているならば過去には圧縮された高温・高圧な状態があり、そこでは宇宙をつくる物質の進化もあるはずだ」と述べた1948年の論文には、数式はほぼ含まれない。しかし、宇宙の誕生とともに物質も進化するという大胆かつ論理的な発想が、その後の宇宙物理学や素粒子物理学の発展へ大きく貢献したことは言うまでもない。
物理学において重要となる「普遍性を見出そうとするものの見方」について、もう少し具体的に説明しよう。たとえば、リンゴが木から落ちる様子を見たとき、それを古代から人びとが考えてきた星々の運動と関連づけ、実は同じ法則に従うのでは、と着想することである。この着想を得ることができた最初の人物が、アイザック・ニュートンである。こうした、空間と時間のスケールの違いを飛び越え、普遍性を見出そうとする発想こそが、物理学へ新たな展開をもたらしてきた。さらにその考えを数式で記述することで、異なる現象間の定量的な比較や目の前の現象がこの先どうなるのかという予測、同じ普遍性を持つ現象の推定などが可能となる。これが、数式で記述することの醍醐味である。
実際に、宇宙の始まりをもたらした大膨張「ビッグバン」の生みの親と言われているジョージ・ガモフが、「宇宙が膨張しているならば過去には圧縮された高温・高圧な状態があり、そこでは宇宙をつくる物質の進化もあるはずだ」と述べた1948年の論文には、数式はほぼ含まれない。しかし、宇宙の誕生とともに物質も進化するという大胆かつ論理的な発想が、その後の宇宙物理学や素粒子物理学の発展へ大きく貢献したことは言うまでもない。
物理学において重要となる「普遍性を見出そうとするものの見方」について、もう少し具体的に説明しよう。たとえば、リンゴが木から落ちる様子を見たとき、それを古代から人びとが考えてきた星々の運動と関連づけ、実は同じ法則に従うのでは、と着想することである。この着想を得ることができた最初の人物が、アイザック・ニュートンである。こうした、空間と時間のスケールの違いを飛び越え、普遍性を見出そうとする発想こそが、物理学へ新たな展開をもたらしてきた。さらにその考えを数式で記述することで、異なる現象間の定量的な比較や目の前の現象がこの先どうなるのかという予測、同じ普遍性を持つ現象の推定などが可能となる。これが、数式で記述することの醍醐味である。
物理学の歴史と諸分野
物理学は、星々の運動を含めた力を受けて運動する物体を記述する「力学」より始まった。高校あるいは大学入学直後に学ぶ力学を、初めて体系化したのがアイザック・ニュートンである。彼らが生きた17世紀では、宗教や哲学といった学問が主流であったため、力学の確立は科学史だけでなく、世界史においても重要な意味を持つ。力学と並行して、光に対する研究も発展し、ニュートンは光の粒子性を、クリスティアーン・ホイヘンスは光の波動性を主張して争うことになる。17~18世紀には、液体や気体といった流れを記述する「流体力学」が確立する。19世紀になると、電気や磁気の様子を記述する「電磁気学」が確立し、光も電磁気的な現象の一つであることがジェームズ・クラーク・マクスウェルによって示された。そして、熱が関係する現象を記述する「熱力学」も確立する。
20世紀に入ると、新しい実験結果や考え方に触発されて、物理学は一気に飛躍する。まず、物体の動く速度を光の速度に近いぐらい速めると、従来の力学が適応できないことがわかり、アルベルト・アインシュタインによって「特殊相対論」へと改められた。言い換えると、力学よりも特殊相対論は適用対象範囲が広く、前者は後者の近似理論(物体の速度が光の速度に比べてずっと遅いときにだけ、力学と特殊相対論はほぼ同じ結果を与える)と考えられるようになった。重力についても、ニュートンの万有引力の法則は重力が非常に強いところでは破綻することが判明したことから、「一般相対論」が確立した。これより、宇宙の大規模な空間や時間の構造も議論できるようになり、天体の観測結果の蓄積と結びついて、「宇宙論」の研究が進んだ。
さらに従来の力学は、速く動く物質だけでなく、原子・分子といったミクロな物体に対しても破綻することがわかり、「量子力学」が作られた。ついで、電磁気学も、光が弱いときには破綻することが明らかとなり、光の量子論が作られた。そして、この理論を拡張して、量子力学と特殊相対論を融合した「場の量子論」が作られた。
今日では、原子よりも小さな物質の構成要素(光子、電子、陽子、中性子、クォークなど)は全て、場の量子論で記述できると考えられ、それを研究する分野を「素粒子物理学」と呼ぶ。この分野では現在、一般相対性理論と量子力学をつなぐための試みがなされ、たとえば素粒子を点ではなく弦(ひも状のもの)ととらえる超弦理論など、究極のミクロな理論を創ろうとしている。
また、物質ではなく物質間に生じる力に目を向けてみると、自然界には電気により生じる電磁気力と弱い力、強い力、そして重力という4つの力が存在すると考えられ、重力を除く3つの力を統一して理解しようとする大統一理論、あるいは重力も含めた万物の理論(超大統一理論とも呼ばれる)の確立も目指されている。こうしたミクロな物質に対する物理学を宇宙論へ当てはめることで、宇宙の誕生や消滅の理解も進むことが期待される。
素粒子に代表されるような小さな(ミクロな)物理学が発展すると、大きな(マクロな)変化を表す学問、たとえば熱力学や流体力学と、それをつなげる試みが盛んになった。熱力学を、ミクロな系を対象とする力学や量子力学などと橋渡しするため、「統計物理学(統計力学)」が作られ、ミクロ世界からマクロ世界へのつながりが見え始めた。しかし、熱力学や統計物理も、完成しているのはマクロな物質や熱などの変化が、一時的には無視できる「孤立した系での平衡状態」と呼ばれる特殊な状態のみである。そのため、物質や熱などのマクロな変化が無視できない「非平衡状態」にあるマクロ系の物理学の創成が、今日の物理学者の大きな目標になっている。
また、一口に非平衡状態と言ってもさまざまで、物質が示す熱平衡状態からずれた状態を取り扱う非平衡物理学以外の分野も発展してきている。たとえば、0と1からなる古典的な情報とは異なり、0と1の任意の重ね合わせ状態による量子状態に対する情報を扱う「量子情報」という新しい分野が急速に発達してきている。これは、量子力学に従う原子スケールの操作技術が発展したことにより、いわゆる量子暗号(量子鍵配送)や量子コンピュータへの応用が期待されるためである。
さらに、経済現象や交通流、SNSに見られるネットワークなど、物理学の守備範囲はどんどん拡大している。特に、「データサイエンス」が物理学にも急速に取り入れられつつあり、たとえば機械学習を物理学の研究に取り入れる試みが急ピッチで進んでいる。
このように物理学は、旧来の物理学では取り扱えなかったさまざまな物質や現象へ、物理的な考え方(普遍性や論理性)を持ち込むことによって、新しい地平を開こうという試みにより成長してきた。これにより現在の物理学は、それ以外の学問との境界がぼやけ、また逆に物理学と他の学問との融合領域(境界領域とも呼ぶ)にある学問が発展してきている。もちろん、こうした融合領域が発達したからといって、旧来の物理学領域が廃れてきているわけではなく、たとえば、「天体物理学」「原子物理」「原子核物理」「量子エレクトロニクス」「量子光学」「プラズマ物理」「物性物理」などの分野が深く追求されてきている。特に、物性物理(「凝縮系物理」ともいい、超電導材料といった「固体物理」などを含む)は、応用に近いこともあって、研究者人口の多くを占める分野になっている。
20世紀に入ると、新しい実験結果や考え方に触発されて、物理学は一気に飛躍する。まず、物体の動く速度を光の速度に近いぐらい速めると、従来の力学が適応できないことがわかり、アルベルト・アインシュタインによって「特殊相対論」へと改められた。言い換えると、力学よりも特殊相対論は適用対象範囲が広く、前者は後者の近似理論(物体の速度が光の速度に比べてずっと遅いときにだけ、力学と特殊相対論はほぼ同じ結果を与える)と考えられるようになった。重力についても、ニュートンの万有引力の法則は重力が非常に強いところでは破綻することが判明したことから、「一般相対論」が確立した。これより、宇宙の大規模な空間や時間の構造も議論できるようになり、天体の観測結果の蓄積と結びついて、「宇宙論」の研究が進んだ。
さらに従来の力学は、速く動く物質だけでなく、原子・分子といったミクロな物体に対しても破綻することがわかり、「量子力学」が作られた。ついで、電磁気学も、光が弱いときには破綻することが明らかとなり、光の量子論が作られた。そして、この理論を拡張して、量子力学と特殊相対論を融合した「場の量子論」が作られた。
今日では、原子よりも小さな物質の構成要素(光子、電子、陽子、中性子、クォークなど)は全て、場の量子論で記述できると考えられ、それを研究する分野を「素粒子物理学」と呼ぶ。この分野では現在、一般相対性理論と量子力学をつなぐための試みがなされ、たとえば素粒子を点ではなく弦(ひも状のもの)ととらえる超弦理論など、究極のミクロな理論を創ろうとしている。
また、物質ではなく物質間に生じる力に目を向けてみると、自然界には電気により生じる電磁気力と弱い力、強い力、そして重力という4つの力が存在すると考えられ、重力を除く3つの力を統一して理解しようとする大統一理論、あるいは重力も含めた万物の理論(超大統一理論とも呼ばれる)の確立も目指されている。こうしたミクロな物質に対する物理学を宇宙論へ当てはめることで、宇宙の誕生や消滅の理解も進むことが期待される。
素粒子に代表されるような小さな(ミクロな)物理学が発展すると、大きな(マクロな)変化を表す学問、たとえば熱力学や流体力学と、それをつなげる試みが盛んになった。熱力学を、ミクロな系を対象とする力学や量子力学などと橋渡しするため、「統計物理学(統計力学)」が作られ、ミクロ世界からマクロ世界へのつながりが見え始めた。しかし、熱力学や統計物理も、完成しているのはマクロな物質や熱などの変化が、一時的には無視できる「孤立した系での平衡状態」と呼ばれる特殊な状態のみである。そのため、物質や熱などのマクロな変化が無視できない「非平衡状態」にあるマクロ系の物理学の創成が、今日の物理学者の大きな目標になっている。
また、一口に非平衡状態と言ってもさまざまで、物質が示す熱平衡状態からずれた状態を取り扱う非平衡物理学以外の分野も発展してきている。たとえば、0と1からなる古典的な情報とは異なり、0と1の任意の重ね合わせ状態による量子状態に対する情報を扱う「量子情報」という新しい分野が急速に発達してきている。これは、量子力学に従う原子スケールの操作技術が発展したことにより、いわゆる量子暗号(量子鍵配送)や量子コンピュータへの応用が期待されるためである。
さらに、経済現象や交通流、SNSに見られるネットワークなど、物理学の守備範囲はどんどん拡大している。特に、「データサイエンス」が物理学にも急速に取り入れられつつあり、たとえば機械学習を物理学の研究に取り入れる試みが急ピッチで進んでいる。
このように物理学は、旧来の物理学では取り扱えなかったさまざまな物質や現象へ、物理的な考え方(普遍性や論理性)を持ち込むことによって、新しい地平を開こうという試みにより成長してきた。これにより現在の物理学は、それ以外の学問との境界がぼやけ、また逆に物理学と他の学問との融合領域(境界領域とも呼ぶ)にある学問が発展してきている。もちろん、こうした融合領域が発達したからといって、旧来の物理学領域が廃れてきているわけではなく、たとえば、「天体物理学」「原子物理」「原子核物理」「量子エレクトロニクス」「量子光学」「プラズマ物理」「物性物理」などの分野が深く追求されてきている。特に、物性物理(「凝縮系物理」ともいい、超電導材料といった「固体物理」などを含む)は、応用に近いこともあって、研究者人口の多くを占める分野になっている。
物理学と他の理科科目との違い
先にマクロに非平衡状態にある物理学の創成が、今日の大きな課題であることを述べた。こうしたマクロ系での非平衡状態は、ヒトを含む生物が示す生命現象や化学反応において見られる。そのため、生物あるいは生命現象を対象とする「生物物理」、化学構造変化や化学反応の機構を研究する「化学物理」、泡や液晶などのやわらかな物質を対象とする「ソフトマター物理」などが発展してきている。これにより、研究対象では物理学と他の学問を容易には区別できなくなった。しかし、学問の性質あるいは思想の点では依然として大きな違いがある。
一つには、物理学では、最初に述べたように普遍性を強く追求することがある。それに対して、生物学や化学では、個別の対象の示す特殊性、あるいは多様性にもかなり興味があるように思う。この理由として、生物や化学が対象とする物あるいは現象が、進化や時間変化の過程といった履歴を強く受けるために多様化しやすく、逆にそうした多様性こそが生物や化学物質の特徴の一つとしてとらえられているためだろう。
もう一つは、物理学では「論理性」が強く要求される点である。必ず論理で分析し、理解しようとする。たとえ既存の物理学では理解できない現象に出会ったときでも、なぜその現象が既存の物理学では理解できないのかを、論理的に記述して論文にする。単に「こうやってみたらこうなりました」というような考察なしの論文は、物理学では普通は受け入れられない。
この普遍性と論理性のために、いったん物理学の土俵に乗りさえすれば、物理学は非常にパワフルである。物理学的裏付けがあれば、あらゆる物質や条件をしらみ潰しに調べる必要がなくなったり、実験がほとんど困難な状況での現象を断定的に予言できたりするのである。
しかし、強みと弱みは裏腹であり、うまく(現在の)物理学の土俵には乗らないような問題については、生物学者や化学者の方がずっと早く解決できたりする。どの学問にも強みと弱みはあるのである。
ところで、論理的というならば、物理学は数学により近いのかというと、実はそうでもない。物理学はあくまで自然に見られる現象や物質を相手にするため、いくら数学的に厳密であっても、対象とする現象や物質の性質を記述できなければ価値がない。そのため、数学的には厳密だが実験とは合わない理論よりも、数学的には曖昧な部分があるものの実験と合うような理論の方が、物理学では高く評価される。論理を重視するとは言っても、そのくらいの柔軟性を持っているのが物理学である。
それは、未知の現象を予言する理論があるとき、その実証によって理論の価値が一気に跳ね上がることも意味する。たとえば、物質に質量を与える素粒子であるヒッグス粒子は、1964年に予知されていたが、その存在を実験的に証明することは難しく、2012年7月に初めて観測された。これにより、2013年に予測から実に49年の時を経て、その存在を予測した研究者にノーベル物理学賞が授与されたのである。
このように、物理学は自然現象に対して論理的かつ大胆な発想による予測と実験による証明の両面から推し進められている。
一つには、物理学では、最初に述べたように普遍性を強く追求することがある。それに対して、生物学や化学では、個別の対象の示す特殊性、あるいは多様性にもかなり興味があるように思う。この理由として、生物や化学が対象とする物あるいは現象が、進化や時間変化の過程といった履歴を強く受けるために多様化しやすく、逆にそうした多様性こそが生物や化学物質の特徴の一つとしてとらえられているためだろう。
もう一つは、物理学では「論理性」が強く要求される点である。必ず論理で分析し、理解しようとする。たとえ既存の物理学では理解できない現象に出会ったときでも、なぜその現象が既存の物理学では理解できないのかを、論理的に記述して論文にする。単に「こうやってみたらこうなりました」というような考察なしの論文は、物理学では普通は受け入れられない。
この普遍性と論理性のために、いったん物理学の土俵に乗りさえすれば、物理学は非常にパワフルである。物理学的裏付けがあれば、あらゆる物質や条件をしらみ潰しに調べる必要がなくなったり、実験がほとんど困難な状況での現象を断定的に予言できたりするのである。
しかし、強みと弱みは裏腹であり、うまく(現在の)物理学の土俵には乗らないような問題については、生物学者や化学者の方がずっと早く解決できたりする。どの学問にも強みと弱みはあるのである。
ところで、論理的というならば、物理学は数学により近いのかというと、実はそうでもない。物理学はあくまで自然に見られる現象や物質を相手にするため、いくら数学的に厳密であっても、対象とする現象や物質の性質を記述できなければ価値がない。そのため、数学的には厳密だが実験とは合わない理論よりも、数学的には曖昧な部分があるものの実験と合うような理論の方が、物理学では高く評価される。論理を重視するとは言っても、そのくらいの柔軟性を持っているのが物理学である。
それは、未知の現象を予言する理論があるとき、その実証によって理論の価値が一気に跳ね上がることも意味する。たとえば、物質に質量を与える素粒子であるヒッグス粒子は、1964年に予知されていたが、その存在を実験的に証明することは難しく、2012年7月に初めて観測された。これにより、2013年に予測から実に49年の時を経て、その存在を予測した研究者にノーベル物理学賞が授与されたのである。
このように、物理学は自然現象に対して論理的かつ大胆な発想による予測と実験による証明の両面から推し進められている。
大学で物理を学ぶために
大学を選ぶときの注意とアドバイスを書いておく。まず、物理学を学びたいと思っているとき、全ての分野をカバーする(全ての分野の専門家がいる)大学は、日本にも外国にも一つもない、ということである。
たとえば、筆者も所属している東京大学大学院理学系研究科物理学専攻は、約130名もの物理の先生を抱える巨大な専攻だが、それでもカバーしていない分野は少なくない。また、たとえ自分の希望する分野の先生がいたとしても、その分野のなかのどんな部分をどういう考え方で研究しているかは、人さまざまである。
高度に発達した物理学が現在対象とする領域はきわめて広く、高校生の段階で、全分野を把握し、そのなかから自分のやりたい分野を選ぶことは容易ではないだろう。往々にして高校生の知識では、すでに研究が終わってしまった分野の研究をやりたいと思う、ということになりがちである。
また、特に理論的な研究においては、学部の4年間で最先端の物理学を学んだり研究したりすることはかなり困難だ、ということも注意しておかなければならない。きちんと学ぶのは、せいぜい20世紀前半までの物理学であり、最先端の内容は素人向けの「お話」として紹介される程度である。
学部4年生(大学によっては3年生)になると、研究室に所属して卒業研究として最先端の内容に触れることになるが、各分野の専門的な知識や技術を学ぶには、残念ながら卒業までの1年(あるいは2年)という時間は短すぎる。そのため、本格的に物理学の研究をするためには、大学院に進む必要がある。
大学院の門戸は広く開放されており、大学院進学の時点で他の大学へ移ることは自由である。大学によっては、他大学あるいは他大学院を受けるときに、多少の学力試験を課す所もあるが、試験日さえ異なっていれば、複数の入学試験を受けることが可能であり、選択の自由度は高いといえる。
また最近では、大学院生に対する経済的支援制度が、文部科学省や民間企業から多数立ち上がってきている。こうした制度を考慮しつつ、大学入学時はできるだけ広い範囲をカバーする大学を選んでおき、そこで物理学のさまざまな分野を学んだり先生に話を聞いたりして、自分のやりたい分野を決め、大学院へ進学する段階で、その分野の研究をやっている先生のいる大学院に進むのが良いと思う。
ただし、大学の教員職は流動的であるため、指導を希望して大学へ入学したにも関わらず、大学院進学時にはその先生は他の大学へ移動しているという場合もある。大学院の先生(指導教官)を選ぶ際には、直接その先生に連絡をとり、研究内容だけでなく進学した場合に修士課程(あるいは博士課程まで)にて指導を受けられるか否か、きちんと話を聞くべきだろう。そういう用件なら、どんなに偉い物理学者でも(研究を引退していなければ)会って話をしてくれるものである。
たとえば、筆者も所属している東京大学大学院理学系研究科物理学専攻は、約130名もの物理の先生を抱える巨大な専攻だが、それでもカバーしていない分野は少なくない。また、たとえ自分の希望する分野の先生がいたとしても、その分野のなかのどんな部分をどういう考え方で研究しているかは、人さまざまである。
高度に発達した物理学が現在対象とする領域はきわめて広く、高校生の段階で、全分野を把握し、そのなかから自分のやりたい分野を選ぶことは容易ではないだろう。往々にして高校生の知識では、すでに研究が終わってしまった分野の研究をやりたいと思う、ということになりがちである。
また、特に理論的な研究においては、学部の4年間で最先端の物理学を学んだり研究したりすることはかなり困難だ、ということも注意しておかなければならない。きちんと学ぶのは、せいぜい20世紀前半までの物理学であり、最先端の内容は素人向けの「お話」として紹介される程度である。
学部4年生(大学によっては3年生)になると、研究室に所属して卒業研究として最先端の内容に触れることになるが、各分野の専門的な知識や技術を学ぶには、残念ながら卒業までの1年(あるいは2年)という時間は短すぎる。そのため、本格的に物理学の研究をするためには、大学院に進む必要がある。
大学院の門戸は広く開放されており、大学院進学の時点で他の大学へ移ることは自由である。大学によっては、他大学あるいは他大学院を受けるときに、多少の学力試験を課す所もあるが、試験日さえ異なっていれば、複数の入学試験を受けることが可能であり、選択の自由度は高いといえる。
また最近では、大学院生に対する経済的支援制度が、文部科学省や民間企業から多数立ち上がってきている。こうした制度を考慮しつつ、大学入学時はできるだけ広い範囲をカバーする大学を選んでおき、そこで物理学のさまざまな分野を学んだり先生に話を聞いたりして、自分のやりたい分野を決め、大学院へ進学する段階で、その分野の研究をやっている先生のいる大学院に進むのが良いと思う。
ただし、大学の教員職は流動的であるため、指導を希望して大学へ入学したにも関わらず、大学院進学時にはその先生は他の大学へ移動しているという場合もある。大学院の先生(指導教官)を選ぶ際には、直接その先生に連絡をとり、研究内容だけでなく進学した場合に修士課程(あるいは博士課程まで)にて指導を受けられるか否か、きちんと話を聞くべきだろう。そういう用件なら、どんなに偉い物理学者でも(研究を引退していなければ)会って話をしてくれるものである。
卒業後の進路
上で述べたように、学部の4年間で学ぶ最先端の物理学の内容は聞きかじり程度であるので、物理学を使う仕事に就きたい人は、大学院に進学することを強く勧める。一方、物理学を習うことで身につけた、論理的な思考や普遍性を見出そうとする思想を別の仕事で生かそうとする人は、社会人になる。その場合の就職先は、製造業だけでなく、情報産業、銀行、公務員など、多岐にわたる。就職先をえり好みしなければ、就職に困ることはめったにないだろう。
大学院は通常、2年間の修士課程と3年間の博士課程からなり、博士課程を修了した人には、大学の教員・研究者を志望する人も多く含まれる。その職に就けるかどうかは、本人の努力と才能、そして運もあるだろう。
大学院は通常、2年間の修士課程と3年間の博士課程からなり、博士課程を修了した人には、大学の教員・研究者を志望する人も多く含まれる。その職に就けるかどうかは、本人の努力と才能、そして運もあるだろう。
おわりに
最後に、物理学を一言でまとめると、自然に見られる全ての現象、物質とその性質について、特に普遍性を見出そうとする学問である。今日の物理学は、その対象を情報、経済、生物、化学物質などへ大幅に拡張することで発達してきており、従来の物理、生物、化学のような境界は曖昧になってきている。これは悪いことではない。なぜなら物理学は、研究対象を広げることによって従来の物理学では説明できない対象物や現象を見出し、それを物理的に理解しようと努力することで進展してきており、今後もそれが期待されるためである。
また、研究対象が何であっても、論理的かつ普遍的な理解を求める点は共通しており、こうした思想は社会に出た後も大いに役立つものだといえる。
また、研究対象が何であっても、論理的かつ普遍的な理解を求める点は共通しており、こうした思想は社会に出た後も大いに役立つものだといえる。
