何を学ぶ
数学は、数や図形、それらの変化を抽象的かつ厳密に調べる学問である。数学を学ぶと、考えることの楽しさだけでなく、それを応用して課題を解決する喜びも感じられるだろう。

坂上 貴之(さかじょう たかし)先生
京都大学/大学院理学研究科/教授
1971年生まれ。大阪府出身。京都大学理学部・大学院理学研究科を経て博士(理学)取得。名古屋大学助手、北海道大学准教授・教授を経て現職。専門は非線形解析(数理流体力学)。
現代の情報化社会は「数学」の時代
スパコンやコンピュータ、タブレットやスマートフォンなどの携帯デバイスにいたるまで全てがインターネットでつながり、いつでもどこでもネット空間の中で情報がやりとりされている。現代の私たちの生活は、こうしたバーチャルとリアルな世界が互いに影響を及ぼす情報化社会である。チェスや囲碁の世界チャンピオンを打ち負かすようなAIが現れたのは一昔前、この数年で人工知能やAIの活用が急速に進み、2024年にはノーベル賞にAIを活用した研究が選ばれるなど、最先端の科学技術に不可欠なものとなっている。日常生活でも、ChatGPTに代表される生成AI技術で新しい文章や画像、動画が誰でも作成でき、また、自動運転タクシーの出現、音声を即座に認識して翻訳をする技術も実現しつつある。
しかし、一般にあまり認識されていないのは、これらの技術を支えている基盤分野の1つが数学だということである。これから書くように、数学は人類文明の発達に応じて、時代のさまざまな課題に取り組むために発展してきたが、こうした数学の歴史を振り返ってみても、現代ほど数学を必要とする時代はないのではないかと筆者は考える。
数学の重要性は、数学を専門に学んだ大学卒業者や大学院修了者へのIT企業に代表されるさまざまな企業からの求人の増加にも明確に現れている。保険・金融、ものづくり企業でも、いまや数学に強い人材は「数理人材」として引く手あまたである。たとえば、保険業務にはアクチュアリー(保険数理士)という専門職があり、数学出身者の多くが活躍して来た実績がある。一方、銀行(金融分野)でも最近はFinTechと呼ばれる金融サービスと情報技術を結びつけた新たなデジタルサービスが大きく展開されており、数学出身者を含む理系人材を強く求めていると聞く。三菱UFJフィナンシャル・グループの社長兼最高経営責任者(CEO)である亀澤宏規氏が、東京大学の修士課程で数学を専攻していたということは、この象徴的な事例といえるであろう。
受験生諸君の周辺では「大学や大学院で数学を学んだ人たちは、大学の教員として数学の研究を続けるか、中学・高校などの教員になり数学の教育に携わることが多い」というステレオタイプでキャリアを捉える人も多いのではないだろうか。しかし、数学出身者が社会で活躍する場面は広い。実際、人工知能の普及や情報化社会を支える暗号通信やソフトウェア技術の発展とともに、その方面で活躍する数学出身者も数多くいる。また、数学は伝統的に物理学と密接に関係して発展したが、現代の数学は、生物学、医学・生命科学、経済学、化学、物質科学から経済学、心理学などの広い学術分野の諸問題の解決に用いられ、さらには医療や環境問題、不公平性の解消など社会システムの設計にも活用されている。こうした数学の活用範囲が幅広いという事実は、以下に述べる数学という学問の特徴によるところが大きい。
しかし、一般にあまり認識されていないのは、これらの技術を支えている基盤分野の1つが数学だということである。これから書くように、数学は人類文明の発達に応じて、時代のさまざまな課題に取り組むために発展してきたが、こうした数学の歴史を振り返ってみても、現代ほど数学を必要とする時代はないのではないかと筆者は考える。
数学の重要性は、数学を専門に学んだ大学卒業者や大学院修了者へのIT企業に代表されるさまざまな企業からの求人の増加にも明確に現れている。保険・金融、ものづくり企業でも、いまや数学に強い人材は「数理人材」として引く手あまたである。たとえば、保険業務にはアクチュアリー(保険数理士)という専門職があり、数学出身者の多くが活躍して来た実績がある。一方、銀行(金融分野)でも最近はFinTechと呼ばれる金融サービスと情報技術を結びつけた新たなデジタルサービスが大きく展開されており、数学出身者を含む理系人材を強く求めていると聞く。三菱UFJフィナンシャル・グループの社長兼最高経営責任者(CEO)である亀澤宏規氏が、東京大学の修士課程で数学を専攻していたということは、この象徴的な事例といえるであろう。
受験生諸君の周辺では「大学や大学院で数学を学んだ人たちは、大学の教員として数学の研究を続けるか、中学・高校などの教員になり数学の教育に携わることが多い」というステレオタイプでキャリアを捉える人も多いのではないだろうか。しかし、数学出身者が社会で活躍する場面は広い。実際、人工知能の普及や情報化社会を支える暗号通信やソフトウェア技術の発展とともに、その方面で活躍する数学出身者も数多くいる。また、数学は伝統的に物理学と密接に関係して発展したが、現代の数学は、生物学、医学・生命科学、経済学、化学、物質科学から経済学、心理学などの広い学術分野の諸問題の解決に用いられ、さらには医療や環境問題、不公平性の解消など社会システムの設計にも活用されている。こうした数学の活用範囲が幅広いという事実は、以下に述べる数学という学問の特徴によるところが大きい。
数学の特徴:抽象性・厳密性・普遍性
筆者は2019年4月から2025年3月まで、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業のさきがけ研究領域「数学と情報科学で解き明かす多様な対象の数理構造と活用」の研究総括を務めてきた。ここでは、AIやビッグデータ解析でも十分活用できていない実社会の情報を活用し尽くすための理論基盤を創出することを目指し、革新的な数学の発想を取り入れた情報活用手法の創出を支援してきた。その結果、微生物などの生命体の運動、折り紙の設計、公平な資源割当問題、人工衛星の軌道設計、電力・空調ネットワーク、自動運転制御、生物進化、生物の発生などの多様な課題を解決するため、微分方程式、微分幾何、力学系、離散数学、作用素解析、トポロジーなど多彩な数学が用いられている。こうした幅広い課題の解決に数学が活用できる理由は、数学の「厳密性・抽象性・普遍性」という特徴のおかげである。
まず、数学はきわめて「抽象的に」対象を表現する。数学の最も根幹にある「数」の概念は、もともとは人やリンゴの数を数えたり、土地の広さを計るために生まれたが、それぞれの対象の持つ具象性を離れて抽象化されることで、当初は想定しないものを数えたり測ったりするために広く使えるようになった。たとえば、負の数は会計における負債の表現に使われ、複素数が量子力学や電気・電子工学などに用いられたのは、そのような数学の抽象性に基づく数概念の拡張の大きな効用である。
次に、数学の概念はきわめて抽象的に「定義」され、その性質は「命題」や「定理」として記述される。これに対して、「公理」として与えられた少数の大前提から、厳格な「論理」に基づいて証明が与えられる。その意味で「厳密性」を有する。
最後に、抽象的に表現された数学の概念や理論は、抽象的であるゆえに「普遍的」でもある。つまり、ある分野、たとえば医学分野のある問題を解決するために使う数学理論は、全く違う分野の問題に適用できる。最近の人工知能・AI技術は、ビッグデータからどのように有用な情報を抽出するかという技術の発達に基づくが、そこで用いられた数学的手法は、医療画像データであれ人物の写真データであれ普遍的に適用でき、医療画像データであれば病理診断を、人物写真であれば人物を同定する。
これらの数学の特徴ゆえに、数学は歴史を通じて常にその時代の科学技術の発展に貢献し、厳密な記述を必要とする全ての学術分野において、その表現のための「基礎言語」としての役割を果たしてきた。そして現在も、情報通信技術、環境問題、医療問題、経済や金融などあらゆる社会の基盤に数学が用いられているのも、この数学の特徴が幅広く生かされた結果であるといえよう。
まず、数学はきわめて「抽象的に」対象を表現する。数学の最も根幹にある「数」の概念は、もともとは人やリンゴの数を数えたり、土地の広さを計るために生まれたが、それぞれの対象の持つ具象性を離れて抽象化されることで、当初は想定しないものを数えたり測ったりするために広く使えるようになった。たとえば、負の数は会計における負債の表現に使われ、複素数が量子力学や電気・電子工学などに用いられたのは、そのような数学の抽象性に基づく数概念の拡張の大きな効用である。
次に、数学の概念はきわめて抽象的に「定義」され、その性質は「命題」や「定理」として記述される。これに対して、「公理」として与えられた少数の大前提から、厳格な「論理」に基づいて証明が与えられる。その意味で「厳密性」を有する。
最後に、抽象的に表現された数学の概念や理論は、抽象的であるゆえに「普遍的」でもある。つまり、ある分野、たとえば医学分野のある問題を解決するために使う数学理論は、全く違う分野の問題に適用できる。最近の人工知能・AI技術は、ビッグデータからどのように有用な情報を抽出するかという技術の発達に基づくが、そこで用いられた数学的手法は、医療画像データであれ人物の写真データであれ普遍的に適用でき、医療画像データであれば病理診断を、人物写真であれば人物を同定する。
これらの数学の特徴ゆえに、数学は歴史を通じて常にその時代の科学技術の発展に貢献し、厳密な記述を必要とする全ての学術分野において、その表現のための「基礎言語」としての役割を果たしてきた。そして現在も、情報通信技術、環境問題、医療問題、経済や金融などあらゆる社会の基盤に数学が用いられているのも、この数学の特徴が幅広く生かされた結果であるといえよう。
数学の歴史
上に述べた数学の特徴はどのようにして生まれ、成熟してきたのか?
古代、数学は治水や大規模な土木工事のための土地の測量、農業に必要な暦の作成、物の売買や税の徴収に使われる算術など、生活上のさまざまな必要性から、古代のエジプトやギリシャ、中国など、それぞれの文明で生まれ、発展してきた。生活の中の技術としての算術が洗練されて、次第に学問としての数学が形作られてきた。数学という学問の黎明期に最も大きな足跡を残した数学者として、古代ギリシャのアルキメデスとアレキサンドリアのユークリッド(エウクレイデス)が挙げられる。アルキメデスは、取り尽くし法と呼ばれる、円の面積、球や回転体の体積、表面積を求める方法を発見した。ユークリッドの最も重要な業績の1つが「原論」と呼ばれる著作である。「原論」は幾何学の体系を、点や線、角、円、平行などの基本的な概念の定義と、基本となる5つの公理(自明に真とされる前提)と5つの公準(共通の真理)だけから、400を超える命題(定理)を全て論理に基づいて証明するというスタイルで書かれている。これは論証に基づく数学という記述様式を明確に示した最初の著作であり、数学の標準的教科書として、数学の特徴である論証主義・公理主義の根幹を作った。数学の特徴である「抽象性、厳密性、普遍性」はこのユークリッドの「原論」に象徴される古代ギリシャの数学から生まれたのである。
中世、数学は停滞期に入ったヨーロッパよりは、インドと古代ギリシャの数学の影響を受けたイスラム世界で発展し、アラビア数字(算用数字)が発明され、未知変数xを用いる数学である代数学の分野で大きな発展があったとされる。代数を意味する英語のalgebraや計算機プログラムのアルゴリズム(algorithm)はアラビア語を語源としており、その影響は現代にも及んでいる。
このようなイスラム世界の数学が近世になって次第にヨーロッパに伝わり、ルネサンス期以降、大航海時代の影響で天文学や物理学などの自然科学が爆発的に発展したことに伴って、数学も大きな転換期を迎えた。天体の運動を理解するためにティコ・ブラーエが膨大な観測データをまとめ、そこからケプラーが3つの法則を帰納的に導いたが、ニュートンは、全く新しい微分法を創始し、運動の法則をそれにより記述して、そこからケプラーの法則を演繹的に導出するという画期的な業績を挙げた。同時期にライプニッツはニュートンとは独立に微分積分法を創始した。現代の微分積分学の基本的な記法はライプニッツによるものが大きい。また微分積分学はその後もオイラー、コーシー、リーマン、ワイエルシュトラスらの後世の数学者によって整備・改良され、より厳密な扱いができるようになった。
微分積分学は、それまであいまいに使われていた無限小の概念を数学的に明確にすることで、これまで手が届かなかった数理物理学の問題を解決できるようにした。これは近代の科学や技術の発展に貢献し、西洋の近代文明が大きく進歩する1つの基盤を与えたといえる。微分積分学はその後、解析学として精密化され、また微分方程式という新たな数学分野も生まれるなど、数学の最も基本的な理論として現代でも大きな役割を果たしている。
19世紀以降の数学は、西洋においてさらに抽象化する。これは微分積分学における極限操作の厳密化、あるいは関数概念の拡大などさまざまな契機に始まる。また、代数学の分野でも5次方程式に根の公式が存在しないことを示したガロアによる群の概念の発見は、代数学の抽象化を促した。幾何学においても、ユークリッド「原論」の公理の1つである平行線公理を否定することで異なる幾何学ができあがるという非ユークリッド幾何学の発見やリーマンによる曲面概念の拡張など大きな展開があった。リーマンの空間概念の拡張は後にアインシュタインの一般相対性理論に用いられたことはよく知られている。ほかにも、関数概念の拡張から生まれたフーリエ級数やフーリエ解析は、現代でも信号や情報通信技術の基盤となった。微分方程式は、天体の運行、量子力学、電気・電子回路、化学反応から生命現象、さらには株価の変動まで、あらゆる自然科学や工学、経済学などの諸現象を数理的に記述する数理モデルとして用いられている。
ヒルベルトは19世紀から20世紀にまたがって代数学、解析学、幾何学のいずれにおいても大きな業績をあげた数学者で「現代数学の父」とも呼ばれ、1900年の国際数学者会議では有名な「23の未解決問題」を示し、数学の発展に大きな影響を与えた。ヒルベルトは数学全体を公理から論証によって導かれる体系として初めて明確に位置付け、その基礎として自然数論や実数論、集合論の無矛盾性を証明するという、いわゆる「ヒルベルト・プログラム」を提唱した。同時期には1935年からフランスのブルバキという数学者集団が「数学原論」という著作の刊行を開始した。この「数学原論」の刊行は20世紀末まで続き、その極めて厳密かつ一般的な記述様式はブルバキスタイルと呼ばれ、数学の抽象性を洗練させることに大きな影響を与えた。
このような数学の発展を経て、現代の数学は抽象性を備え、ほかの科学技術分野とは独立した内在する問題意識を持った学問に成熟したといえる。また、この抽象性と一般性が、数学の外のさまざまな問題を、その構造から論理的に分析して解決を見出すための強力な武器となり、数学の諸科学・諸分野や社会の問題の解決への有効性を生み出しているといえるが、それは上記のような歴史を経て獲得されたものであるだろう。
古代、数学は治水や大規模な土木工事のための土地の測量、農業に必要な暦の作成、物の売買や税の徴収に使われる算術など、生活上のさまざまな必要性から、古代のエジプトやギリシャ、中国など、それぞれの文明で生まれ、発展してきた。生活の中の技術としての算術が洗練されて、次第に学問としての数学が形作られてきた。数学という学問の黎明期に最も大きな足跡を残した数学者として、古代ギリシャのアルキメデスとアレキサンドリアのユークリッド(エウクレイデス)が挙げられる。アルキメデスは、取り尽くし法と呼ばれる、円の面積、球や回転体の体積、表面積を求める方法を発見した。ユークリッドの最も重要な業績の1つが「原論」と呼ばれる著作である。「原論」は幾何学の体系を、点や線、角、円、平行などの基本的な概念の定義と、基本となる5つの公理(自明に真とされる前提)と5つの公準(共通の真理)だけから、400を超える命題(定理)を全て論理に基づいて証明するというスタイルで書かれている。これは論証に基づく数学という記述様式を明確に示した最初の著作であり、数学の標準的教科書として、数学の特徴である論証主義・公理主義の根幹を作った。数学の特徴である「抽象性、厳密性、普遍性」はこのユークリッドの「原論」に象徴される古代ギリシャの数学から生まれたのである。
中世、数学は停滞期に入ったヨーロッパよりは、インドと古代ギリシャの数学の影響を受けたイスラム世界で発展し、アラビア数字(算用数字)が発明され、未知変数xを用いる数学である代数学の分野で大きな発展があったとされる。代数を意味する英語のalgebraや計算機プログラムのアルゴリズム(algorithm)はアラビア語を語源としており、その影響は現代にも及んでいる。
このようなイスラム世界の数学が近世になって次第にヨーロッパに伝わり、ルネサンス期以降、大航海時代の影響で天文学や物理学などの自然科学が爆発的に発展したことに伴って、数学も大きな転換期を迎えた。天体の運動を理解するためにティコ・ブラーエが膨大な観測データをまとめ、そこからケプラーが3つの法則を帰納的に導いたが、ニュートンは、全く新しい微分法を創始し、運動の法則をそれにより記述して、そこからケプラーの法則を演繹的に導出するという画期的な業績を挙げた。同時期にライプニッツはニュートンとは独立に微分積分法を創始した。現代の微分積分学の基本的な記法はライプニッツによるものが大きい。また微分積分学はその後もオイラー、コーシー、リーマン、ワイエルシュトラスらの後世の数学者によって整備・改良され、より厳密な扱いができるようになった。
微分積分学は、それまであいまいに使われていた無限小の概念を数学的に明確にすることで、これまで手が届かなかった数理物理学の問題を解決できるようにした。これは近代の科学や技術の発展に貢献し、西洋の近代文明が大きく進歩する1つの基盤を与えたといえる。微分積分学はその後、解析学として精密化され、また微分方程式という新たな数学分野も生まれるなど、数学の最も基本的な理論として現代でも大きな役割を果たしている。
19世紀以降の数学は、西洋においてさらに抽象化する。これは微分積分学における極限操作の厳密化、あるいは関数概念の拡大などさまざまな契機に始まる。また、代数学の分野でも5次方程式に根の公式が存在しないことを示したガロアによる群の概念の発見は、代数学の抽象化を促した。幾何学においても、ユークリッド「原論」の公理の1つである平行線公理を否定することで異なる幾何学ができあがるという非ユークリッド幾何学の発見やリーマンによる曲面概念の拡張など大きな展開があった。リーマンの空間概念の拡張は後にアインシュタインの一般相対性理論に用いられたことはよく知られている。ほかにも、関数概念の拡張から生まれたフーリエ級数やフーリエ解析は、現代でも信号や情報通信技術の基盤となった。微分方程式は、天体の運行、量子力学、電気・電子回路、化学反応から生命現象、さらには株価の変動まで、あらゆる自然科学や工学、経済学などの諸現象を数理的に記述する数理モデルとして用いられている。
ヒルベルトは19世紀から20世紀にまたがって代数学、解析学、幾何学のいずれにおいても大きな業績をあげた数学者で「現代数学の父」とも呼ばれ、1900年の国際数学者会議では有名な「23の未解決問題」を示し、数学の発展に大きな影響を与えた。ヒルベルトは数学全体を公理から論証によって導かれる体系として初めて明確に位置付け、その基礎として自然数論や実数論、集合論の無矛盾性を証明するという、いわゆる「ヒルベルト・プログラム」を提唱した。同時期には1935年からフランスのブルバキという数学者集団が「数学原論」という著作の刊行を開始した。この「数学原論」の刊行は20世紀末まで続き、その極めて厳密かつ一般的な記述様式はブルバキスタイルと呼ばれ、数学の抽象性を洗練させることに大きな影響を与えた。
このような数学の発展を経て、現代の数学は抽象性を備え、ほかの科学技術分野とは独立した内在する問題意識を持った学問に成熟したといえる。また、この抽象性と一般性が、数学の外のさまざまな問題を、その構造から論理的に分析して解決を見出すための強力な武器となり、数学の諸科学・諸分野や社会の問題の解決への有効性を生み出しているといえるが、それは上記のような歴史を経て獲得されたものであるだろう。
数学のカリキュラム
さて、数学を習得するために、大学ではどのようなことを学ぶのか?大学の理工系学部では理系分野では、基礎的な素養として「微分積分学」と「線形代数学」を1年生から2年生の段階で学ぶであろう。微分積分学は、さまざまな関数の増加・減少や最大値・最小値を調べる微分学と、図形の面積や体積などを計算する基礎となる積分学からなる。線形代数学は高次元の比例関係が持つ性質を調べる数学理論で、代数学の一分野ともいえるが、幾何学とも、また微分や積分などの解析学とも密接に関係している。さらに数値計算や統計学、現代ではデータ解析や機械学習の基礎は、この線形代数学にある。
これらに続く理工系の数学の科目として、「ベクトル解析」「複素関数論」「微分方程式」「フーリエ解析」「確率論」や「統計学」などがあげられる。「ベクトル解析」は2つ以上の変数を持つ関数の微分積分学であり、「複素関数論」は複素数値の関数の微分積分論といえる。「微分方程式」は未知関数の導関数の間の関係式(方程式)から元の未知関数を求めたり、未知関数の性質を導いたりするための数学理論である。これら全ての数学理論には線形代数学もさまざまな形で重要な役割を果たす。その後、現代数学そのものを学ぼうとすれば、数学科や数理科学科などの学科に進むことになる。数学の深い抽象性と初めて出会う科目が「集合と位相」であろう。ここでは、現代数学の記述の基本要素である集合と、その要素の間の近さ・遠さの概念を抽象化した位相構造について学ぶ。現代数学の理論は集合と位相を導入して組み立てられることが多い。一度そのような記述様式を体得すれば、より進んだ数学理論を効果的に学ぶことが容易になる。一方、その抽象性のゆえに、「集合と位相」の理解に大きな困難を覚える学生も多いのも事実である。その意味で「集合と位相」は数学を学ぶ上での一つの登竜門なのかもしれない。
学部後半の3年生以降に数学科では、代数学、幾何学、解析学という主要な3分野の基礎理論を学ぶ。代数学ではガロア理論、幾何学では多様体論、解析学ではルベーグ積分と函数解析学などが中心となることが多い。筆者の所属する京都大学理学部の数学のカリキュラムでは、これらの科目はコアコースとして指定されており、対応する演習も含めて十分な時間をかけて授業が行われている。これらを基礎として、4年生ではより深いテーマの卒業研究科目や大学院博士前期(修士)課程につながる。そのような基礎的な学習の上に、大学院博士後期課程では、自らがテーマや未解決の問題を見つけ、それに挑戦して新たな発見を目指すことで、数学の研究が行われている。
これらに続く理工系の数学の科目として、「ベクトル解析」「複素関数論」「微分方程式」「フーリエ解析」「確率論」や「統計学」などがあげられる。「ベクトル解析」は2つ以上の変数を持つ関数の微分積分学であり、「複素関数論」は複素数値の関数の微分積分論といえる。「微分方程式」は未知関数の導関数の間の関係式(方程式)から元の未知関数を求めたり、未知関数の性質を導いたりするための数学理論である。これら全ての数学理論には線形代数学もさまざまな形で重要な役割を果たす。その後、現代数学そのものを学ぼうとすれば、数学科や数理科学科などの学科に進むことになる。数学の深い抽象性と初めて出会う科目が「集合と位相」であろう。ここでは、現代数学の記述の基本要素である集合と、その要素の間の近さ・遠さの概念を抽象化した位相構造について学ぶ。現代数学の理論は集合と位相を導入して組み立てられることが多い。一度そのような記述様式を体得すれば、より進んだ数学理論を効果的に学ぶことが容易になる。一方、その抽象性のゆえに、「集合と位相」の理解に大きな困難を覚える学生も多いのも事実である。その意味で「集合と位相」は数学を学ぶ上での一つの登竜門なのかもしれない。
学部後半の3年生以降に数学科では、代数学、幾何学、解析学という主要な3分野の基礎理論を学ぶ。代数学ではガロア理論、幾何学では多様体論、解析学ではルベーグ積分と函数解析学などが中心となることが多い。筆者の所属する京都大学理学部の数学のカリキュラムでは、これらの科目はコアコースとして指定されており、対応する演習も含めて十分な時間をかけて授業が行われている。これらを基礎として、4年生ではより深いテーマの卒業研究科目や大学院博士前期(修士)課程につながる。そのような基礎的な学習の上に、大学院博士後期課程では、自らがテーマや未解決の問題を見つけ、それに挑戦して新たな発見を目指すことで、数学の研究が行われている。
終わりに
本稿では数学に興味や関心のある高校生の皆さんに、数学とはどのような学問か、数学と現代社会の関わり、そして大学で学ぶ数学について簡単に紹介した。大学で数学を深く学ぼうという人が一人でも多く出ることを心から願っている。

