何を学ぶ
医療機器・システムの開発と操作を含めて、生体に関わる工学技術を体系的に学ぶ。近年は、AI、データサイエンス、自動制御、ロボティクスなどの技術修得も求められている。

檮木 智彦(うつき ともひこ)先生
東海大学/大学院工学研究科、工学部/教授
1967年8月31日、横浜市に生まれる。東京医科歯科大学大学院修了。東京医科歯科大学特任助教、同大学特任講師、東海大学専任講師、准教授を経て現職。専門は生理状態制御工学、生体モデリング。
医用・生体工学は工学と医学の融合
医用・生体工学は、下図の黒色部分で示したように、医用工学、生体工学、臨床工学からなる学問分野であり、近隣の学問分野に福祉工学と人間工学がある。
医用・生体工学は、電気、機械、計測、材料などの工学分野と基礎および臨床医学が融合したものであり、その基礎に数学、物理学、化学、生物学がある。ライフサイエンス、情報通信、材料というわが国の科学技術重点・推進分野にも合致しており、今後の発展が大きく期待されている。
医用・生体工学は、電気、機械、計測、材料などの工学分野と基礎および臨床医学が融合したものであり、その基礎に数学、物理学、化学、生物学がある。ライフサイエンス、情報通信、材料というわが国の科学技術重点・推進分野にも合致しており、今後の発展が大きく期待されている。
医用工学とは?
現在の医療は数多くの医療機器や医用システムを要するが、医用工学はその医療機器や医用システムの開発を目指す学問分野である。
医療機器や医用システムの開発には、工学・医学を含む科学技術と、装置や部品の加工・製造技術が欠かせない。したがって、医用工学の本格的な発展は、血圧計や心電計の原型が発明された1800年代半ば以降からである。
近年は、生体適合性材料の開発や検査・治療用デバイスの開発といった従来の研究に加えて、知能化、情報化、自動化の波が押し寄せている。
たとえば、人工知能を応用して画像上の病巣部位や、患者の麻酔状態を自動判定したりするシステムの開発が進んでいる。また、生理状態や遺伝子の大量なデータ処理から個々人の特性を割り出して個別化医療に役立てる試みも始まっている。さらに、ロボット技術やナビゲーション技術を応用して手術を自動化したり、生理状態の自動制御によって救急医療や集中治療を高度化したりする研究も進められている。
このように医用工学は、検査や治療の効率化だけでなく、医療従事者の労力軽減や医療費の抑制まで期待できるなど、社会的意義が大変高い学問分野である。したがって、工学をどう応用して医療の未来をどう変えるのかというビジョンも問われる。
医療機器や医用システムの開発には、工学・医学を含む科学技術と、装置や部品の加工・製造技術が欠かせない。したがって、医用工学の本格的な発展は、血圧計や心電計の原型が発明された1800年代半ば以降からである。
近年は、生体適合性材料の開発や検査・治療用デバイスの開発といった従来の研究に加えて、知能化、情報化、自動化の波が押し寄せている。
たとえば、人工知能を応用して画像上の病巣部位や、患者の麻酔状態を自動判定したりするシステムの開発が進んでいる。また、生理状態や遺伝子の大量なデータ処理から個々人の特性を割り出して個別化医療に役立てる試みも始まっている。さらに、ロボット技術やナビゲーション技術を応用して手術を自動化したり、生理状態の自動制御によって救急医療や集中治療を高度化したりする研究も進められている。
このように医用工学は、検査や治療の効率化だけでなく、医療従事者の労力軽減や医療費の抑制まで期待できるなど、社会的意義が大変高い学問分野である。したがって、工学をどう応用して医療の未来をどう変えるのかというビジョンも問われる。
生体工学とは?
生体工学は、生物の構造や機能を工学に応用する学問分野である。たとえば、脳波のコンピュータ解析によって意思表示ができるブレインコンピュータインターフェース、仮想感覚と現実感覚を融合したVRやAR、筋肉の動作原理を模倣した人工筋肉などはその成果の一部である。また、2008年の北京オリンピックではサメ皮の表面構造を模倣した高速水着が大問題となり、近年話題の人工知能は神経ネットワークの信号処理機構を応用したものである。
生体工学の始まりは、たとえば古代から「空を飛びたい」と翼を製作し、羽ばたいては失敗を繰り返してきた歴史を考えると明確ではなく、人の欲求に従った自然発生的なものと思われる。ただし、医用工学と同様に、科学技術全体の向上が著しい現在、めざましい発展を遂げつつある。
生体には、思いもつかない高性能で合理的な構造や機能がまだまだあるだろう。それは、発明・開発する際のアイデアの泉のようなものである。しかし、その泉を発見するには、生体の構造と機能をいろいろな角度から検証する力と、目前の工学課題が何で、それをどう解決するのかを論理的に思考する力が必要である。
生体工学の始まりは、たとえば古代から「空を飛びたい」と翼を製作し、羽ばたいては失敗を繰り返してきた歴史を考えると明確ではなく、人の欲求に従った自然発生的なものと思われる。ただし、医用工学と同様に、科学技術全体の向上が著しい現在、めざましい発展を遂げつつある。
生体には、思いもつかない高性能で合理的な構造や機能がまだまだあるだろう。それは、発明・開発する際のアイデアの泉のようなものである。しかし、その泉を発見するには、生体の構造と機能をいろいろな角度から検証する力と、目前の工学課題が何で、それをどう解決するのかを論理的に思考する力が必要である。
臨床工学と臨床工学技士
臨床工学は、臨床工学技士という国家資格に基づく医療職者の学問分野である。臨床工学技士は、医師や看護師などとのチームのなかで、さまざまな医療機器や医用システムの操作と保守・管理を担っている。たとえば、腎不全患者に用いる血液透析装置や心臓手術で用いる人工心肺装置の操作は代表的な仕事である。また、新型コロナウイルス肺炎での救命治療で注目を浴びたECMO(体外式膜型人工肺)は扱える従事者が不足しており、専門知識と臨床経験を持つ臨床工学技士の養成が急務となっている。
医療現場のエンジニアは1950年代には存在したが、資格を持つ医療職ではなかった。1987年、医療機器や医用システムの多様化や高度化に伴って臨床工学技士法が成立し、臨床工学技士という医療職が誕生した。
近年は、医療機器や医用システムの知能化や情報化と、救急や麻酔などの新業務への対応が求められている。それゆえ、臨床工学技士には、工学知識に加えて生体の構造と機能への十分な理解、およびそれらを有機的に結びつけられる問題解決能力が必要である。そして、何より患者の生命を預かっているという責任感が絶対不可欠である。
医療現場のエンジニアは1950年代には存在したが、資格を持つ医療職ではなかった。1987年、医療機器や医用システムの多様化や高度化に伴って臨床工学技士法が成立し、臨床工学技士という医療職が誕生した。
近年は、医療機器や医用システムの知能化や情報化と、救急や麻酔などの新業務への対応が求められている。それゆえ、臨床工学技士には、工学知識に加えて生体の構造と機能への十分な理解、およびそれらを有機的に結びつけられる問題解決能力が必要である。そして、何より患者の生命を預かっているという責任感が絶対不可欠である。
医用・生体工学のカリキュラム
医用・生体工学の教育目標や研究目標は、大学ごとに異なる。ここでは、東海大学工学部医工学科のカリキュラムを説明する。
下図に示すように、同学科は医用工学と生体工学を合わせた生体医工学のエンジニアや学術研究者と、臨床工学の実践者である臨床工学技士の養成を目的とするカリキュラムを用意している。
1年次では専門教育のための基礎科目、2年次では工学系と医学系の専門科目を学習する。医療職の臨床工学技士を目指す場合でも、これだけの工学系専門科目を学習しなければならない。
3年次からは将来の進路に応じて科目を選択する。すなわち、生体医工学エンジニアを目指す場合は、知能化、情報化、自動化の波を念頭に置いた生体医工学科目を多く履修し、臨床工学技士を目指す場合は、3年次と4年次の臨床工学科目を履修したあと、臨床実習でその実際を体験する。
卒業研究は、それまで受け身であった学習態度や思考方式が、社会で必要とされる、未知の発見や論理的考察をするものに切り替わるきわめて重要な科目である。これにより、問題解決能力の高いエンジニアや臨床工学技士の活躍が期待できる。研究プレゼミナールを3年次に設けたのは、大学教育における卒業研究の重要性を考えてのことである。
下図に示すように、同学科は医用工学と生体工学を合わせた生体医工学のエンジニアや学術研究者と、臨床工学の実践者である臨床工学技士の養成を目的とするカリキュラムを用意している。
1年次では専門教育のための基礎科目、2年次では工学系と医学系の専門科目を学習する。医療職の臨床工学技士を目指す場合でも、これだけの工学系専門科目を学習しなければならない。
3年次からは将来の進路に応じて科目を選択する。すなわち、生体医工学エンジニアを目指す場合は、知能化、情報化、自動化の波を念頭に置いた生体医工学科目を多く履修し、臨床工学技士を目指す場合は、3年次と4年次の臨床工学科目を履修したあと、臨床実習でその実際を体験する。
卒業研究は、それまで受け身であった学習態度や思考方式が、社会で必要とされる、未知の発見や論理的考察をするものに切り替わるきわめて重要な科目である。これにより、問題解決能力の高いエンジニアや臨床工学技士の活躍が期待できる。研究プレゼミナールを3年次に設けたのは、大学教育における卒業研究の重要性を考えてのことである。
医用・生体工学の進路
ここでも、東海大学工学部医工学科の卒業後の進路を紹介する。
同学科卒業生の進路は、①臨床工学技士として病院や診療所に就職、②医療機器メーカーや医療機器商社に就職、③非医療関係企業に就職、④開発研究職や学術研究者などを目指して大学院修士課程に進学、に分けられる。
近年は、臨床工学技士の資格を取得しながら医療機器メーカーなどのサービスエンジニア職に就職する例が増加している。医療機器のサービスエンジニアは、必要な専門知識・技能を持つ学生が少ないので、現在、外資系企業も含めて採用意欲が高い。また、③ではシステムエンジニアとしての就職例が増えている。
大学院進学の場合、工学の知識と技術を磨きながら本格的に研究するので、医療系を問わず、開発研究職、コンサルタント、開発プロジェクトマネージャー候補などとして採用されている。また、博士課程に進学して学術研究にまい進する者もいる。高度な専門教育とキャリアパスを考えるなら、大学院進学を目指すのもよいだろう。
同学科卒業生の進路は、①臨床工学技士として病院や診療所に就職、②医療機器メーカーや医療機器商社に就職、③非医療関係企業に就職、④開発研究職や学術研究者などを目指して大学院修士課程に進学、に分けられる。
近年は、臨床工学技士の資格を取得しながら医療機器メーカーなどのサービスエンジニア職に就職する例が増加している。医療機器のサービスエンジニアは、必要な専門知識・技能を持つ学生が少ないので、現在、外資系企業も含めて採用意欲が高い。また、③ではシステムエンジニアとしての就職例が増えている。
大学院進学の場合、工学の知識と技術を磨きながら本格的に研究するので、医療系を問わず、開発研究職、コンサルタント、開発プロジェクトマネージャー候補などとして採用されている。また、博士課程に進学して学術研究にまい進する者もいる。高度な専門教育とキャリアパスを考えるなら、大学院進学を目指すのもよいだろう。


