何を学ぶ
データサイエンスやフィンテックなど、今社会でもっとも必要とされる数理的技術とその正しい使い方を学ぶことができる。数学の知識、論理的思考力、社会への関心が求められる。

吉瀬 章子(よしせ あきこ)先生
筑波大学/システム情報系/教授
1962年東京生まれ。東京工業大学工学部経営工学科卒。工学博士。筑波大学社会工学系講師、同助教授を経て現職。専門は数理最適化。著書『応用数理計画ハンドブック』(共著、朝倉書店)。
経営工学って何?
「経営工学」と聞いてどのような学問分野と答えるだろうか? その名の通り多くの方は「会社の経営を工学する学問」と考えるだろう。しかし、実際にどのようなことを学ぶのか、想像することは難しいかも知れない。実は、皆さんの周りにも「経営工学」があることを紹介しよう。
皆さんの周りにある「経営工学」
この文章を読んでいる多くの皆さんは「高校」に通っていると思う。「高校」を運営するためには、何が必要だろうか? 先生や生徒といった「ヒト」、教室、黒板、体育館といった「モノ」、先生の給与や給食費といった「カネ」はもちろん必要である。しかしそれらがあるだけで、本当に授業ができるだろうか?
例えば授業を行うためには時間割が必要だが、時間割を作る作業は大変である。1人の先生(ヒト)が同時に授業は行えないし、音楽室(モノ)を2つの授業で同時に使うこともできない。1人の先生だけ極端に負担が大きければ、同じ給与(カネ)であることに問題が生じる。そんなことが起きないよう、時間割は多くの時間と手間をかけて作られている。
実は「経営工学」は、こうした手間のかかる面倒な時間割(スケジュール)作成を、あっという間に実現する技術を提供する学問分野である。
例えば授業を行うためには時間割が必要だが、時間割を作る作業は大変である。1人の先生(ヒト)が同時に授業は行えないし、音楽室(モノ)を2つの授業で同時に使うこともできない。1人の先生だけ極端に負担が大きければ、同じ給与(カネ)であることに問題が生じる。そんなことが起きないよう、時間割は多くの時間と手間をかけて作られている。
実は「経営工学」は、こうした手間のかかる面倒な時間割(スケジュール)作成を、あっという間に実現する技術を提供する学問分野である。
社会が必要とする巨大な「時間割」
授業のスケジュールである時間割は、表として一目で見ることができる。しかし世の中には、電車の運行スケジュールや、工場での生産スケジュールなど、複雑で簡単に作成できない上、下手に作ると莫大な経費がかかってしまう難しい問題がたくさんある。こうした難しい問題を、数理的技術で解決しようとするのが「経営工学」である。
データサイエンスやフィンテックなど仕組みを数理的に実現する技術
「ヒト」「モノ」「カネ」の運用や運営の仕組みを論理的(数理的)に構築・実現する技術が「経営工学」である。「管理工学」と呼ばれることもある。「経営工学」の技術は、ロボットや建築の技術のように、はっきりと目にすることはできない。しかし、皆さんがこれから活躍する世界では、ますますグローバル化が進み、「ヒト」「モノ」「カネ」が容易に国境を越えて世界を行き来する。運用・運営の対象規模もどんどん大きくなり、データサイエンスやフィンテックなど、これまで以上に高度な数理的技術・情報技術が必要になる。「経営工学」は、皆さんが活躍する時代に欠くことのできない、重要な工学技術なのである。
来たれ!社会に興味がある理系
ではどのような人が「経営工学」の勉強に向いているのだろうか?
皆さんの中に、「数学は好きだけど、理科より社会の方に興味があるから、自分は理系なのかわからない」という人はいないだろうか? もしあなたがそうであるとすれば、是非進学する分野に「経営工学」を加えてほしい。「経営工学」は工学技術を勉強する分野なので、数学などの知識はもちろん必要だが、社会への関心も、とても重要な要素となっている。
筑波大学では「経営工学」は、運用・運営の仕組み以外の、社会全般の課題を工学的に解決しようとする「社会工学」の1分野と捉え、この教育を「社会問題」×「数理的アプローチ」=「ソリューション創造力」と定義している。
すなわち、「社会工学」教育の目的は、「社会問題」への関心と「数理的なアプローチ」の知識・技術を掛け合わせることで、問題を解決するための「ソリューション創造力」(ソリューション:solution=問題解決法)を生み出すことなのだが、「運用・運営の仕組み構築」に目的を限定した「経営工学」教育も、この模式図と全く同じである。
数学好きで社会に興味があり、理系への進学を考えているのであれば、あなたの「数学」と「社会」への関心を必要とする、「経営工学」「管理工学」「社会工学」の分野を是非、あなたの進学の選択肢の中に含めてほしい。
皆さんの中に、「数学は好きだけど、理科より社会の方に興味があるから、自分は理系なのかわからない」という人はいないだろうか? もしあなたがそうであるとすれば、是非進学する分野に「経営工学」を加えてほしい。「経営工学」は工学技術を勉強する分野なので、数学などの知識はもちろん必要だが、社会への関心も、とても重要な要素となっている。
筑波大学では「経営工学」は、運用・運営の仕組み以外の、社会全般の課題を工学的に解決しようとする「社会工学」の1分野と捉え、この教育を「社会問題」×「数理的アプローチ」=「ソリューション創造力」と定義している。
すなわち、「社会工学」教育の目的は、「社会問題」への関心と「数理的なアプローチ」の知識・技術を掛け合わせることで、問題を解決するための「ソリューション創造力」(ソリューション:solution=問題解決法)を生み出すことなのだが、「運用・運営の仕組み構築」に目的を限定した「経営工学」教育も、この模式図と全く同じである。
数学好きで社会に興味があり、理系への進学を考えているのであれば、あなたの「数学」と「社会」への関心を必要とする、「経営工学」「管理工学」「社会工学」の分野を是非、あなたの進学の選択肢の中に含めてほしい。
経営工学の関連分野
筑波大学には40年の歴史を持つ社会工学に関する学部教育組織(社会工学類)と大学院教育組織(社会工学専攻)がある。40年も続けば社会や技術も大きく変化するので、教育内容もだんだん時代に合わなくなってくる。新たな時代に活躍できる人材を育成するため、筑波大学の「社会工学」大学院組織では、教育内容を見直すことにした。図1はこのように見直しを行った「社会工学」教育がカバーする学問分野である。
現代社会を構成する要素は、「ヒト」「モノ」「カネ」に集約される。それぞれに対応する学問分野として、「ヒト」は人間や組織の行動を科学的に分析し社会活動に役立てることを目的とする行動科学(組織・行動のデザイン)、「モノ」については、土地利用や都市施設など、空間や環境に関する計画を立案する都市計画(空間・環境のデザイン)、「カネ」については、金融やエネルギーといった資産や資源の運用に関する計画を立案するファイナンス・最適化(資産・資源のデザイン)が相当する。しかしこれらは完全に分離しているわけではなく、資産・資源と空間・環境の双方に関係する学問分野(商品の需要と供給を支える物流システムの運用を考えるサプライチェーン・マネジメントなど)や、空間・環境と組織・行動の双方に関係する学問分野(政府や地方自治体の政策に関して研究を行う公共政策学など)などがある。このように段階的に相互に関係することで、複雑な現代社会を記述している。図1はこの様子を表しており、この図において経営工学は、ちょうど図の矢印が覆っている分野に相当する。そして円の中央には、これらの分野を学ぶために必要な基礎分野(数学・情報技術・経済学など)がある。
現代社会を構成する要素は、「ヒト」「モノ」「カネ」に集約される。それぞれに対応する学問分野として、「ヒト」は人間や組織の行動を科学的に分析し社会活動に役立てることを目的とする行動科学(組織・行動のデザイン)、「モノ」については、土地利用や都市施設など、空間や環境に関する計画を立案する都市計画(空間・環境のデザイン)、「カネ」については、金融やエネルギーといった資産や資源の運用に関する計画を立案するファイナンス・最適化(資産・資源のデザイン)が相当する。しかしこれらは完全に分離しているわけではなく、資産・資源と空間・環境の双方に関係する学問分野(商品の需要と供給を支える物流システムの運用を考えるサプライチェーン・マネジメントなど)や、空間・環境と組織・行動の双方に関係する学問分野(政府や地方自治体の政策に関して研究を行う公共政策学など)などがある。このように段階的に相互に関係することで、複雑な現代社会を記述している。図1はこの様子を表しており、この図において経営工学は、ちょうど図の矢印が覆っている分野に相当する。そして円の中央には、これらの分野を学ぶために必要な基礎分野(数学・情報技術・経済学など)がある。
大学でのカリキュラム「経営工学」=「数理・情報・経営」
実際に「経営工学」分野に進学した場合、どのようなカリキュラムを履修することになるのか紹介しよう。「経営工学」のカリキュラムは大きく分けて「数理」「情報」「経営」の3本の柱に分けることができる。
図2は、筑波大学理工学群社会工学類経営工学主専攻のカリキュラムを示している。まず1年目は図1の円の中心に対応する、情報処理、数学、経済学に関する基礎知識を学ぶ。
2〜3年にかけて、経営(マネジメントエリア)・情報(情報技術エリア)・数理(数理工学モデル化エリア)それぞれに関する専門知識を学び、それらの修得の集大成として、必修科目である「問題発見と解決」を受講する。この授業では、自ら社会における課題を見つけ出し、これまで身につけてきた専門知識を用いて、その課題に解決策(ソリューション)を与えることを目標とする授業であり、まさに「社会問題」×「数理的アプローチ」=「ソリューション創造力」を、授業を通して実際に体験する。
さらに同様の授業を行っている東京工業大学、慶應義塾大学、中央大学とも交流授業を行うことで、相互に視野を広げ友好を深めている。
これらの体験を経て4年生となり、卒業研究や大学院への進学の準備を行った上で、進学・就職している。
図2は、筑波大学理工学群社会工学類経営工学主専攻のカリキュラムを示している。まず1年目は図1の円の中心に対応する、情報処理、数学、経済学に関する基礎知識を学ぶ。
2〜3年にかけて、経営(マネジメントエリア)・情報(情報技術エリア)・数理(数理工学モデル化エリア)それぞれに関する専門知識を学び、それらの修得の集大成として、必修科目である「問題発見と解決」を受講する。この授業では、自ら社会における課題を見つけ出し、これまで身につけてきた専門知識を用いて、その課題に解決策(ソリューション)を与えることを目標とする授業であり、まさに「社会問題」×「数理的アプローチ」=「ソリューション創造力」を、授業を通して実際に体験する。
さらに同様の授業を行っている東京工業大学、慶應義塾大学、中央大学とも交流授業を行うことで、相互に視野を広げ友好を深めている。
これらの体験を経て4年生となり、卒業研究や大学院への進学の準備を行った上で、進学・就職している。
卒業後の進路
国立大学の場合6〜7割が大学院に進学する。学部卒・修士修了いずれも、数理技術を身につけ、幅広い知識を学んだこの分野の学生の就職率は非常に高い。主な就職先は、金融、コンサルタント、情報サービス、製造・流通などで、高度な組織管理技術を身につけ、企業や経営団体のトップとなるケースも少なくない。


