何を学ぶ
ものづくりの基盤である「機械」は最先端テクノロジーを取り入れ発展する分野。創造力を養いアイディアを形にするための知識と技術を習得。適応力の高さから就職にも強し。

髙橋 勉(たかはし つとむ)先生
長岡技術科学大学/技学研究院機械系/教授
1961年、石川県に生まれる。東京理科大学大学院修了。工学博士。東京理科大学理工学部機械工学科助手、長岡技術科学大学機械系助手、助教授、准教授を経て現職。専門は液晶や化粧品など複雑流体の流動。
機械工学はなぜ就職に強いか?
機械工学科は不況においても他分野に比べて求人率があまり下がらない、と言われている。機械工学科の卒業生は「つぶしがきく」とも言われる。どういうことだろう? これは機械工学の特徴を知る上で重要なポイントを含んでいるので、最初にこのことについて考えてみよう。
機械工学科卒業生の就職先を調べてみていただきたい。ほとんどの大学がホームページ上に就職状況を公開しているので、検索エンジンを使うと簡単にいくつもの大学の状況を見て比較することができるだろう。その結果どの大学においても、いかにも機械工学が中心という企業、たとえば自動車産業や重工業だけではなく、化学工業や電気・電子工業、情報・通信産業、印刷、建築など分野を問わず「もの」を作っている企業に幅広く就職していることがわかるはずだ。
「もの」を生産するためには必ず機械が必要となる。つまり、製造業であれば必ず製造機械が存在しそれを管理する仕事がある。これを担当するのは機械工学を学んだ人であり、結果としてすべての製造業において機械工学科卒業生が必要とされるのである。しかし、これは機械工学出身者の仕事のなかのほんの1つの側面にすぎない。
1つの機械を作るためにはさまざまな知識や技術を組み合わせる必要がある。機械工学科が対象とする分野は非常に広く、そのすべてについて専門家となることはできない。一人ひとりは基礎となる原理を広く学ぶが、各自がそのなかの得意分野を持ち寄って高機能な、複雑な機械やシステムを構築する。機械工学以外の分野における新しい技術や発見なども必要とあればどんどん取り入れる。
現代のものづくりにおけるこの手法が機械工学の基本であることから、機械工学科では多種多様な問題に対応できる応用力や、協調して問題に取り組む能力の育成を重視する。機械工学科卒業生が就職に強く「つぶしがきく」というのは、機械工学のこのような特徴を反映している。
機械工学科卒業生の就職先を調べてみていただきたい。ほとんどの大学がホームページ上に就職状況を公開しているので、検索エンジンを使うと簡単にいくつもの大学の状況を見て比較することができるだろう。その結果どの大学においても、いかにも機械工学が中心という企業、たとえば自動車産業や重工業だけではなく、化学工業や電気・電子工業、情報・通信産業、印刷、建築など分野を問わず「もの」を作っている企業に幅広く就職していることがわかるはずだ。
「もの」を生産するためには必ず機械が必要となる。つまり、製造業であれば必ず製造機械が存在しそれを管理する仕事がある。これを担当するのは機械工学を学んだ人であり、結果としてすべての製造業において機械工学科卒業生が必要とされるのである。しかし、これは機械工学出身者の仕事のなかのほんの1つの側面にすぎない。
1つの機械を作るためにはさまざまな知識や技術を組み合わせる必要がある。機械工学科が対象とする分野は非常に広く、そのすべてについて専門家となることはできない。一人ひとりは基礎となる原理を広く学ぶが、各自がそのなかの得意分野を持ち寄って高機能な、複雑な機械やシステムを構築する。機械工学以外の分野における新しい技術や発見なども必要とあればどんどん取り入れる。
現代のものづくりにおけるこの手法が機械工学の基本であることから、機械工学科では多種多様な問題に対応できる応用力や、協調して問題に取り組む能力の育成を重視する。機械工学科卒業生が就職に強く「つぶしがきく」というのは、機械工学のこのような特徴を反映している。
機械工学の役割
少し抽象的な話となり、わかりにくかったかもしれない。具体的な例をもとに機械工学の説明をしてみよう。機械の「機」という漢字は「はたおりの道具」という意味を持つ。はたおり機、別名「織機(しょっき)」は、一本の糸を織って布という別の素材を作るために開発された装置であり、「機械」の原点ともいえる。機械を動かすためには「動力」が必要である。最初は人力、その後エンジンやモーターが用いられることとなる。
生産能力の向上や質の高い布を織るために、さまざまな工夫がなされ、そのたびに複雑な「機構」が必要となった。それらを人間がタイミングよく調整することが難しくなり「自動制御」の技術が導入された。強度の高い部品や摩耗しにくい部品を作るための新しい「材料の開発」も要求された。他の工業・産業で開発された新技術・テクノロジーも「織機」の高機能化のためにどんどん取り入れられた。
このようにさまざまな要素技術を把握し、それらを統合して新しい機能を持つ製品として完成すること、これが機械工学の仕事である。
蛇足であるが、「織機」の開発で培われた技術の集積は後に「自動車」という日本の主要産業を生み出す基盤となった。トヨタ自動車という会社が豊田自動織機という会社の一部門から独立したものであることは有名な話である。
生産能力の向上や質の高い布を織るために、さまざまな工夫がなされ、そのたびに複雑な「機構」が必要となった。それらを人間がタイミングよく調整することが難しくなり「自動制御」の技術が導入された。強度の高い部品や摩耗しにくい部品を作るための新しい「材料の開発」も要求された。他の工業・産業で開発された新技術・テクノロジーも「織機」の高機能化のためにどんどん取り入れられた。
このようにさまざまな要素技術を把握し、それらを統合して新しい機能を持つ製品として完成すること、これが機械工学の仕事である。
蛇足であるが、「織機」の開発で培われた技術の集積は後に「自動車」という日本の主要産業を生み出す基盤となった。トヨタ自動車という会社が豊田自動織機という会社の一部門から独立したものであることは有名な話である。
機械技術者としての基礎を重点的に学ぶ
それでは、機械工学科では実際にどのようなことを勉強するのだろうか。先ほど紹介したような多様な技術の内容をすべて勉強するのか、といえばそうではない。講義では機械技術者としての基礎となる部分のみを重点的に学ぶ。あとは実験・実習、設計演習、卒業研究、修士研究(大学院)などを通して、現実に対処し問題を解決する創意工夫の能力を高めていく。
大学での学びについて、もう少し詳しく見てみよう。1・2年次では専門科目に入る前に一般教養科目を受講する。これは他の理科系の学生と同じだが、なかでも数学と物理学が重視される。
主に3年次以降に学ぶ主要な専門科目について自動車の製造を例として紹介してみよう。まず機械工学の基盤となる次の4つの力学を学ぶ。
①材料力学
自動車の車体や部品に加わる力とこれによる変形や破壊を予知し、安全な設計を行う。
②機械力学
エンジンや車体の振動などを予測し制御する。
③熱力学
自動車の心臓部であるエンジンにおいて、燃料から動力を生み出すための基礎理論を学ぶ。
④流体力学
空気抵抗の小さい車体デザインやエンジン内部での燃料や空気の流れを計算する。
これらの力学を「4力(よんりき)」と呼び、ほとんどの大学において必修科目に近い扱いとなっている。
さらに、専門科目の一例を挙げると次のような科目がある。
●計測工学
部品の寸法やエンジン内部の温度・圧力などを高精度で計測するための手法を学ぶ。
●制御工学
エンジンの出力を安定させ、高出力を維持しつつ高燃費を達成するために、燃料や空気の量、燃焼のタイミングなどを最適な状態に制御する。
●機械要素
自動車を構成するさまざまな部品や機構、およびそれらの設計方法を学ぶ。
●機械工作法
自動車の部品をどのようにして作るかを学ぶ。
●機械材料
自動車の部品を作るために、どのような材料を選択するべきかについて学ぶ。
●生産工学/スマートファクトリー
部品を組み合わせて最終的な製品である自動車とするための工場生産の方式や、生産工程の管理などの手法を学ぶ。
また、最近はこれら基盤的な学問に加えて、以下の科目なども重要となっている。
●安全工学
機械を使う人間および生産に関わる人間の安全性の確保について研究する。
●人間工学
道具やモノに関して、快適な使用感を得るための研究を行う。
●資源・環境工学
生産過程で発生する廃棄物や、製品としての寿命が尽きて廃棄する際のリサイクルの容易さなどを検討・研究する。
大学における時間割はこれらの講義科目に必要な予備知識の内容に合わせて学習する順序が適切に考慮されている。学習する個人の将来の希望や興味に基づき系統的に授業を学べるようコース制を取る大学もある。参考までに専門科目の履修の流れを図に例示する。
このような講義科目に加え、機械工学科における重要な科目として機械工学実験と機械設計がある。
●機械工学実験
講義科目に関連した主な現象や特性を体験的に学び、さらに、得られた結果をレポートとしてまとめることで報告書の書き方を学習する。
●機械設計
与えられた課題に対し、各専門科目で得た知識を総合して必要な機能や強度を満たすための条件を解析するとともに、自らのアイディアを取り入れた機械の設計を体験する。
問題解決型の学習として「設計」を利用することが多くあり、テーマや課題遂行に対する取り組み方について各大学が工夫を凝らしている。たとえば企業の協力を得て、具体的な装置について設計から試作までを一貫して学生が行うといった授業も実施されている。
大学での学びについて、もう少し詳しく見てみよう。1・2年次では専門科目に入る前に一般教養科目を受講する。これは他の理科系の学生と同じだが、なかでも数学と物理学が重視される。
主に3年次以降に学ぶ主要な専門科目について自動車の製造を例として紹介してみよう。まず機械工学の基盤となる次の4つの力学を学ぶ。
①材料力学
自動車の車体や部品に加わる力とこれによる変形や破壊を予知し、安全な設計を行う。
②機械力学
エンジンや車体の振動などを予測し制御する。
③熱力学
自動車の心臓部であるエンジンにおいて、燃料から動力を生み出すための基礎理論を学ぶ。
④流体力学
空気抵抗の小さい車体デザインやエンジン内部での燃料や空気の流れを計算する。
これらの力学を「4力(よんりき)」と呼び、ほとんどの大学において必修科目に近い扱いとなっている。
さらに、専門科目の一例を挙げると次のような科目がある。
●計測工学
部品の寸法やエンジン内部の温度・圧力などを高精度で計測するための手法を学ぶ。
●制御工学
エンジンの出力を安定させ、高出力を維持しつつ高燃費を達成するために、燃料や空気の量、燃焼のタイミングなどを最適な状態に制御する。
●機械要素
自動車を構成するさまざまな部品や機構、およびそれらの設計方法を学ぶ。
●機械工作法
自動車の部品をどのようにして作るかを学ぶ。
●機械材料
自動車の部品を作るために、どのような材料を選択するべきかについて学ぶ。
●生産工学/スマートファクトリー
部品を組み合わせて最終的な製品である自動車とするための工場生産の方式や、生産工程の管理などの手法を学ぶ。
また、最近はこれら基盤的な学問に加えて、以下の科目なども重要となっている。
●安全工学
機械を使う人間および生産に関わる人間の安全性の確保について研究する。
●人間工学
道具やモノに関して、快適な使用感を得るための研究を行う。
●資源・環境工学
生産過程で発生する廃棄物や、製品としての寿命が尽きて廃棄する際のリサイクルの容易さなどを検討・研究する。
大学における時間割はこれらの講義科目に必要な予備知識の内容に合わせて学習する順序が適切に考慮されている。学習する個人の将来の希望や興味に基づき系統的に授業を学べるようコース制を取る大学もある。参考までに専門科目の履修の流れを図に例示する。
このような講義科目に加え、機械工学科における重要な科目として機械工学実験と機械設計がある。
●機械工学実験
講義科目に関連した主な現象や特性を体験的に学び、さらに、得られた結果をレポートとしてまとめることで報告書の書き方を学習する。
●機械設計
与えられた課題に対し、各専門科目で得た知識を総合して必要な機能や強度を満たすための条件を解析するとともに、自らのアイディアを取り入れた機械の設計を体験する。
問題解決型の学習として「設計」を利用することが多くあり、テーマや課題遂行に対する取り組み方について各大学が工夫を凝らしている。たとえば企業の協力を得て、具体的な装置について設計から試作までを一貫して学生が行うといった授業も実施されている。
研究のおもしろさを実感する「卒論」
4年次になると「卒業研究(卒研あるいは卒論と略称される)」として、与えられたテーマについて教授の指導を受けながら研究に取り組み、卒業論文を作成する。授業科目のように与えられたものを学習する受け身の姿勢ではなく、自ら考え、必要な知識を身につけ、アイディアを出して、工夫を重ね、そして得られた結果を考察する。
さらに、その結果を正確にかつ適切に論文としてまとめて卒業論文発表会において口頭発表を行う。「卒業研究」は総合的な人間力を高めるために重要であるとともに、学生一人ひとりが主役となる、とても楽しい学習システムである。
卒業研究として取り上げられる研究テーマは各教員の専門、研究に関係するものであり、それぞれの分野において最先端の注目される課題である。企業と共同したテーマや製品開発などもよく見られる。自分の興味や将来の希望に合わせて研究テーマを選択することになるだろう。
大学によっては通常の研究をベースとした卒業研究のほかに、ロボットコンテストやソーラーカーコンテストなど、技術系競技会への参加を目指した設計・製作・研究を実施しているところもある。
さらに、その結果を正確にかつ適切に論文としてまとめて卒業論文発表会において口頭発表を行う。「卒業研究」は総合的な人間力を高めるために重要であるとともに、学生一人ひとりが主役となる、とても楽しい学習システムである。
卒業研究として取り上げられる研究テーマは各教員の専門、研究に関係するものであり、それぞれの分野において最先端の注目される課題である。企業と共同したテーマや製品開発などもよく見られる。自分の興味や将来の希望に合わせて研究テーマを選択することになるだろう。
大学によっては通常の研究をベースとした卒業研究のほかに、ロボットコンテストやソーラーカーコンテストなど、技術系競技会への参加を目指した設計・製作・研究を実施しているところもある。
卒業後の進路は多岐にわたる
冒頭に書いた通り機械工学科卒業生の就職先は多岐にわたっている。機械工学は広い産業分野における製品の開発・設計・生産の基盤となっているため、卒業生にはあらゆる製造業からの求人がある。ある大手の化学系企業の採用担当者が、機械系の学生を採用したいのに応募してもらえない、とこぼしていた。会社のイメージから機械工学科所属の学生は自分に関係が薄い会社だと感じるのであろう。
しかし、機械工学科出身者にはいずれの企業においても必ず仕事があり、機械装置が主力製品ではない企業においては逆にユニークな存在として活躍できる機会が多くなる。化学や生物を専攻する学生にとっては人気が高く就職が難しい企業であっても、機械工学科出身者は採用されやすい場合もある。就職先が広く、どのような業種に就職するかを入学後に選択できることは機械工学を学ぶ学生の大きな特典だろう。
もちろん製造業以外にサービス業や公務員、教員などを目指す学生もいる。具体的な就職先、進路については各大学のホームページを参照するとよい。
しかし、機械工学科出身者にはいずれの企業においても必ず仕事があり、機械装置が主力製品ではない企業においては逆にユニークな存在として活躍できる機会が多くなる。化学や生物を専攻する学生にとっては人気が高く就職が難しい企業であっても、機械工学科出身者は採用されやすい場合もある。就職先が広く、どのような業種に就職するかを入学後に選択できることは機械工学を学ぶ学生の大きな特典だろう。
もちろん製造業以外にサービス業や公務員、教員などを目指す学生もいる。具体的な就職先、進路については各大学のホームページを参照するとよい。
大学院進学のすすめ
近年の技術の高度化、多様化に対応するため、機械系学科の改編が進んでいる。問題解決型の学習システムの導入もその一つである。しかし、4年間という限られた時間で社会のニーズにこたえる高度な教育を行うことは難しい。このため社会に出て指導的技術者となるための専門的な内容や高度な研究能力に関しては、大学院で学習することとなる。
大学院での勉強の重点は研究の遂行と論文の作成である。修了(大学院では「卒業」と言わずに「修了」という)に必要な講義科目の単位数は、学部の卒業に必要な単位数よりはるかに少ない。研究活動やそれに関係する知識を得るためのゼミに集中できるため、卒業研究よりもさらに楽しいと感じる人が多い。同じ研究室の学生、教員との個人的なつながりが強くなり、研究・ゼミだけではなくスポーツイベントや旅行、コンパなど楽しい思い出を作ることもできる。
研究室によっては企業や他大学との共同研究を実施していることも多く、立場の異なる人たちとの交流を通じて多くの経験が得られる。交換留学制度を持つ大学も増えており、海外の大学への短期留学や留学生との交流などを通じて国際感覚を養う機会が多くなる。
研究成果は日本機械学会などの学術団体が主催する講演会で発表を行うだけではなく、海外で開かれる国際会議に出かけて自ら発表するケースも増えている。
修士課程修了生に対する企業からの求人は多く、就職に関しては学部卒業生よりもかなり有利となる。就職後の仕事においても学部卒業生よりも高度で重要な内容を任される機会が多い。
皆さんも、ぜひ大学院まで進み、自分自身の能力アップを目指すとともに、そこでの生活を大いに楽しんでほしい。
大学院での勉強の重点は研究の遂行と論文の作成である。修了(大学院では「卒業」と言わずに「修了」という)に必要な講義科目の単位数は、学部の卒業に必要な単位数よりはるかに少ない。研究活動やそれに関係する知識を得るためのゼミに集中できるため、卒業研究よりもさらに楽しいと感じる人が多い。同じ研究室の学生、教員との個人的なつながりが強くなり、研究・ゼミだけではなくスポーツイベントや旅行、コンパなど楽しい思い出を作ることもできる。
研究室によっては企業や他大学との共同研究を実施していることも多く、立場の異なる人たちとの交流を通じて多くの経験が得られる。交換留学制度を持つ大学も増えており、海外の大学への短期留学や留学生との交流などを通じて国際感覚を養う機会が多くなる。
研究成果は日本機械学会などの学術団体が主催する講演会で発表を行うだけではなく、海外で開かれる国際会議に出かけて自ら発表するケースも増えている。
修士課程修了生に対する企業からの求人は多く、就職に関しては学部卒業生よりもかなり有利となる。就職後の仕事においても学部卒業生よりも高度で重要な内容を任される機会が多い。
皆さんも、ぜひ大学院まで進み、自分自身の能力アップを目指すとともに、そこでの生活を大いに楽しんでほしい。

