何を学ぶ
最先端の科学技術を統合し、人類のフロンティアである航空・宇宙を目指す学術分野である。航空・宇宙機の要素の理解から大規模システムの構築・運用までを学修し、創造する。

笠原 次郎(かさはら じろう)先生
名古屋大学/未来材料・システム研究所/教授
1967年生まれ。大阪府出身。名古屋大学大学院博士後期課程修了、室蘭工業大学助手、筑波大学講師、准教授を経て現職。専攻は推進工学。著書・訳書として「デトネーションの熱流体力学」「デトネーション現象」がある。
航空・宇宙工学の歴史と将来
19世紀のケイリー卿、ペノーらによる航空機の安定性の研究や、リリエンタールの空気力学・グライダー研究などの後、1903年12月17日、米国ノースカロライナ州で、ライト兄弟による有人航空機の初飛行が達成された。その後、複葉機の時代を経て、1935年には、現代の旅客機と類似した形状を持つダグラスDC-3の製造に至っている。1930~1935年にホイットル、オハインによってジェットエンジンが発明され、1954年にはボーイング707によって現代のジェット輸送機の基本型が完成した。その後も、航空工学は、遷音速空気力学、後退翼、複合材料など、さまざまな理論・技術を生み出しながら、ボーイング787(50%以上複合材)、ホンダジェット等へと発展し続けている。現在は、静粛な超音速旅客機の研究、複合材料・金属材料関連技術、スクラムジェット・極超音速ターボジェット、乱気流事故防止システム、プラズマアクチュエータ(先進的な空気力学技術)などの研究が行われており、より短時間で効率的・安全に長距離を移動するための技術が追求されている。最近では、無人機(UAV、ドローン)が活用され、電動航空機、化石由来の燃料に代わる持続可能な燃料の研究も活発である。
航空工学は、翼型理論、揚力の循環理論、境界層理論といった基礎空気力学の発展、新材料・構造の開発とともに、高速の輸送技術として、人類の活動領域を広げることに貢献してきた。宇宙工学分野では、19世紀後半から、チオルコフスキー、ゴダード、オーベルトによって、液体ロケットのパイオニア研究が行われた。その後、同技術は、1940年代に原型が完成し、米ソの宇宙開発競争により、飛躍的に向上した。現在、日本では新型基幹ロケット(H3)の打ち上げ、再使用型ロケットの開発、ハイブリッドロケットの研究、軌道間輸送機の研究、安価な衛星打ち上げ、宇宙旅行を行うための民間でのロケット開発、超小型ロケット、再突入技術、デトネーションエンジン(超音速燃焼技術)などの研究が進められている。人工衛星は、地球観測・地球科学衛星、宇宙科学・太陽・月惑星探査・天文衛星、通信・放送・測位・技術試験衛星など、きわめて多岐にわたり、われわれの生活や人類の知識の広がりに深く関係している。さらに、国際宇宙ステーションにおける有人宇宙活動・宇宙環境利用、また、小型・超小型人工衛星、月・火星探査、有人月面活動に関連した開発が急速に進んでいる。宇宙工学分野の将来技術として、火星有人探査、レーザー推進、宇宙での太陽発電衛星、宇宙エレベーターなどが研究されている。
航空工学は、翼型理論、揚力の循環理論、境界層理論といった基礎空気力学の発展、新材料・構造の開発とともに、高速の輸送技術として、人類の活動領域を広げることに貢献してきた。宇宙工学分野では、19世紀後半から、チオルコフスキー、ゴダード、オーベルトによって、液体ロケットのパイオニア研究が行われた。その後、同技術は、1940年代に原型が完成し、米ソの宇宙開発競争により、飛躍的に向上した。現在、日本では新型基幹ロケット(H3)の打ち上げ、再使用型ロケットの開発、ハイブリッドロケットの研究、軌道間輸送機の研究、安価な衛星打ち上げ、宇宙旅行を行うための民間でのロケット開発、超小型ロケット、再突入技術、デトネーションエンジン(超音速燃焼技術)などの研究が進められている。人工衛星は、地球観測・地球科学衛星、宇宙科学・太陽・月惑星探査・天文衛星、通信・放送・測位・技術試験衛星など、きわめて多岐にわたり、われわれの生活や人類の知識の広がりに深く関係している。さらに、国際宇宙ステーションにおける有人宇宙活動・宇宙環境利用、また、小型・超小型人工衛星、月・火星探査、有人月面活動に関連した開発が急速に進んでいる。宇宙工学分野の将来技術として、火星有人探査、レーザー推進、宇宙での太陽発電衛星、宇宙エレベーターなどが研究されている。
大学での航空・宇宙工学の教育と研究
大学は、航空・宇宙工学の基礎、専門科目を学び、知識を修得する場であるとともに、研究活動を通じて、先端的な研究領域を切り開いている。航空・宇宙工学の基礎科目は、数学、物理学、化学、英語などである。また、重要な基礎・専門科目は、力学、熱力学、流体力学、材料力学、構造力学、飛行力学、制御工学である。これらの科目を履修後、飛行機、ジェットエンジン、ロケット、人工衛星などのシステム全体を理解し、性能をモデル化する手法(各種設計法、数値解析)を修得する。航空・宇宙工学は総合工学であり、物理学、機械工学、電気・電子工学、情報工学などの分野を横断した知識も必要となる。また、航空機、ジェットエンジン、ロケット、人工衛星の各要素、システム、運用方法、デジタル化された設計手法といった観点でも理解を進める必要がある。
大学では、航空・宇宙工学に関するシステム実現のための要素の研究と、システムに関する研究があり、きわめて幅広い。名古屋大学では、航空・宇宙工学の全般の教育・基礎研究を実施している。また、航空宇宙関連企業からの派遣講師による実践的な教育、また、JAXAと連携した研究・教育活動、航空宇宙工学に関する博士養成を行っている。
大学では、航空・宇宙工学に関するシステム実現のための要素の研究と、システムに関する研究があり、きわめて幅広い。名古屋大学では、航空・宇宙工学の全般の教育・基礎研究を実施している。また、航空宇宙関連企業からの派遣講師による実践的な教育、また、JAXAと連携した研究・教育活動、航空宇宙工学に関する博士養成を行っている。
航空・宇宙工学科のカリキュラム・内容
名古屋大学の機械・航空宇宙工学科では、1・2年次で、数学、物理学、化学、計算機ソフトウエア、外国語、解析力学、振動工学、機械・航空宇宙工学序論などを学び、それらの基礎知識の上に、専門科目を履修する。
航空機・ロケットは、軽く、強い材料を使用する必要がある。航空機は、新材料や新構造を採用することによって、飛躍的に進歩してきた。現在では、セミ・モノコック構造にて、多くの航空機はつくられている。航空機の翼や各部には、数~10万回以上のサイクルで力が作用する。高い信頼性を持たせるため、フェイルセーフの考え方が導入されている。2年次の材料力学で各部材に作用する応力と、変形との関係を学習する。3年次では、固体力学、航空宇宙構造工学、加工学第1を学ぶ。
航空機の進歩と流体力学は密接に結びついている。航空機の翼がどのような揚力、抗力が得られるのかは、1931年にNACA4桁列翼列で実験的に系統的に明らかにされた。また、クッタとジューコフスキーによって、1902~1906年に揚力の循環理論が発表され、その後翼の設計法に発展した。高速飛行の翼に関しては、1930年代から研究が開始され1960年代に解明された。音速に近い飛行では、流体の圧縮性が無視できなくなる。関連の流体力学は、2年次の流体力学基礎、粘性流体力学、3年次の圧縮性流体力学、ポテンシャル流れで学ぶ。
ジェットエンジンは、空気を吸い込み、圧縮機で高圧にし、燃料を噴射して高いエネルギーにして、タービンを回転させながら後方に噴射する。現代では、タービンによって、ダクトファンも回転させるターボファンとよばれるジェットエンジンが多くの航空機で使用されている。航空機のエンジンはブレイトンサイクルでその理想性能を計算可能である。2年次の熱力学、3年次の航空推進工学によって、エンジンサイクル、燃焼のモデリング、エンジン各部品(圧縮機翼列・燃焼器など)に求められる機能を学習する。
液体ロケットエンジンは、燃料・酸化剤をポンプで昇圧しながら、燃焼器に供給し、高圧燃焼を行い、ノズルで高速に加速して推進力を生み出す。水素を使用した場合は排気速度がきわめて高く、性能がよい。日本のHⅡ-Aロケット、基幹ロケットのH3ロケットも、水素を使用した液体ロケットである。固体ロケットでは、推進剤(燃料・酸化剤)などを含んだグレインをあらかじめ燃焼室に充てんしてある。供給系がなくてシンプルな構造であるかわりに、全体が高圧になるので、比較的小型のロケットに使用される。固体ロケットは、基幹ロケットのイプシロンロケットの1、2段目として使用されている。ロケットに関しては、3年次の圧縮性流体力学、宇宙推進工学、4年次の航空宇宙機システムにて学習する。先端的な推進システムは、より効率よく熱を利用する必要があり、その手法は2年次の伝熱工学で学ぶ。
飛行機・人工衛星は、並進的な運動とともに、回転運動も行う。この運動を解析し、安全で安定な飛行を行うための知識は、3年次の航空宇宙機力学第1、航空宇宙機力学第2で学ぶ。また、航空機、人工衛星の運動は、航空機では主翼や尾翼に取りつけられた昇降舵・補助翼・方向舵、人工衛星では、姿勢制御用ロケット・ホイールなどで行う。これらの制御方法に関しては、2年次の制御工学第1、電気回路工学、3年次の制御工学第2、最適制御論で学修する。
名古屋地域は、日本の航空宇宙産業の集積地であり、技術者も多い。旅客機や、H3ロケットの生産の拠点である。企業から、実務経験豊富な第一線の技術者を非常勤講師として招き、講義が行われる。非常勤講師の指導の下、4年次の設計製図第4で、ロケットエンジン、航空機、人工衛星の設計を行う。
また、広く機械工学の専門科目が履修できるのも魅力である。材料科学第1、材料科学第2、機構学、材料強度学、有限要素法、エネルギー変換工学、燃焼工学、自動車工学、メカトロニクス工学、ロボット工学、加工学第2、生体工学、電子回路、ディジタル回路、データサイエンス、機械学習、設計基礎論、情報基礎論、計測基礎論、工作機械工学、熱流体機械システム、創造設計製作、設計製図第1、設計製図第2、設計製図第3、機械・航空宇宙システム研修が開講されている。
3年次では、機械・航空宇宙工学実験、工場実習、工場見学が行われ、機械・航空宇宙工学に関する、実験・実習が行われる。4年次では、卒業研究が行われ、自らテーマを設定し、教員と議論しながら研究を進める。テーマは、教員から提示されるが、自ら設定する場合もある。機械・航空宇宙工学に関するテーマであることが多いが、基礎研究、関連領域のテーマも設定可能である。
航空・宇宙工学に関するさらなる専門教育は大学院で行われる。大学院では、流体力学、衝撃波・宇宙推進、推進エネルギーシステム工学、構造力学、生産工学、航空宇宙機運動システム工学、制御システム工学などの研究室のいずれかに所属し、専門科目を履修しながら、研究を進める。
学部卒業、大学院の博士前期課程、博士後期課程を修了後の進路は、重工業の航空宇宙部門、衛星開発企業、宇宙機器関連企業、自動車関連企業、航空宇宙関連のベンチャー企業、大学や研究所の開発・研究・教育職である。航空・宇宙工学分野以外でも、多数の卒業・修了生が活躍している。基礎・目標が定まっていれば、どの分野でも活躍できる。
航空機・ロケットは、軽く、強い材料を使用する必要がある。航空機は、新材料や新構造を採用することによって、飛躍的に進歩してきた。現在では、セミ・モノコック構造にて、多くの航空機はつくられている。航空機の翼や各部には、数~10万回以上のサイクルで力が作用する。高い信頼性を持たせるため、フェイルセーフの考え方が導入されている。2年次の材料力学で各部材に作用する応力と、変形との関係を学習する。3年次では、固体力学、航空宇宙構造工学、加工学第1を学ぶ。
航空機の進歩と流体力学は密接に結びついている。航空機の翼がどのような揚力、抗力が得られるのかは、1931年にNACA4桁列翼列で実験的に系統的に明らかにされた。また、クッタとジューコフスキーによって、1902~1906年に揚力の循環理論が発表され、その後翼の設計法に発展した。高速飛行の翼に関しては、1930年代から研究が開始され1960年代に解明された。音速に近い飛行では、流体の圧縮性が無視できなくなる。関連の流体力学は、2年次の流体力学基礎、粘性流体力学、3年次の圧縮性流体力学、ポテンシャル流れで学ぶ。
ジェットエンジンは、空気を吸い込み、圧縮機で高圧にし、燃料を噴射して高いエネルギーにして、タービンを回転させながら後方に噴射する。現代では、タービンによって、ダクトファンも回転させるターボファンとよばれるジェットエンジンが多くの航空機で使用されている。航空機のエンジンはブレイトンサイクルでその理想性能を計算可能である。2年次の熱力学、3年次の航空推進工学によって、エンジンサイクル、燃焼のモデリング、エンジン各部品(圧縮機翼列・燃焼器など)に求められる機能を学習する。
液体ロケットエンジンは、燃料・酸化剤をポンプで昇圧しながら、燃焼器に供給し、高圧燃焼を行い、ノズルで高速に加速して推進力を生み出す。水素を使用した場合は排気速度がきわめて高く、性能がよい。日本のHⅡ-Aロケット、基幹ロケットのH3ロケットも、水素を使用した液体ロケットである。固体ロケットでは、推進剤(燃料・酸化剤)などを含んだグレインをあらかじめ燃焼室に充てんしてある。供給系がなくてシンプルな構造であるかわりに、全体が高圧になるので、比較的小型のロケットに使用される。固体ロケットは、基幹ロケットのイプシロンロケットの1、2段目として使用されている。ロケットに関しては、3年次の圧縮性流体力学、宇宙推進工学、4年次の航空宇宙機システムにて学習する。先端的な推進システムは、より効率よく熱を利用する必要があり、その手法は2年次の伝熱工学で学ぶ。
飛行機・人工衛星は、並進的な運動とともに、回転運動も行う。この運動を解析し、安全で安定な飛行を行うための知識は、3年次の航空宇宙機力学第1、航空宇宙機力学第2で学ぶ。また、航空機、人工衛星の運動は、航空機では主翼や尾翼に取りつけられた昇降舵・補助翼・方向舵、人工衛星では、姿勢制御用ロケット・ホイールなどで行う。これらの制御方法に関しては、2年次の制御工学第1、電気回路工学、3年次の制御工学第2、最適制御論で学修する。
名古屋地域は、日本の航空宇宙産業の集積地であり、技術者も多い。旅客機や、H3ロケットの生産の拠点である。企業から、実務経験豊富な第一線の技術者を非常勤講師として招き、講義が行われる。非常勤講師の指導の下、4年次の設計製図第4で、ロケットエンジン、航空機、人工衛星の設計を行う。
また、広く機械工学の専門科目が履修できるのも魅力である。材料科学第1、材料科学第2、機構学、材料強度学、有限要素法、エネルギー変換工学、燃焼工学、自動車工学、メカトロニクス工学、ロボット工学、加工学第2、生体工学、電子回路、ディジタル回路、データサイエンス、機械学習、設計基礎論、情報基礎論、計測基礎論、工作機械工学、熱流体機械システム、創造設計製作、設計製図第1、設計製図第2、設計製図第3、機械・航空宇宙システム研修が開講されている。
3年次では、機械・航空宇宙工学実験、工場実習、工場見学が行われ、機械・航空宇宙工学に関する、実験・実習が行われる。4年次では、卒業研究が行われ、自らテーマを設定し、教員と議論しながら研究を進める。テーマは、教員から提示されるが、自ら設定する場合もある。機械・航空宇宙工学に関するテーマであることが多いが、基礎研究、関連領域のテーマも設定可能である。
航空・宇宙工学に関するさらなる専門教育は大学院で行われる。大学院では、流体力学、衝撃波・宇宙推進、推進エネルギーシステム工学、構造力学、生産工学、航空宇宙機運動システム工学、制御システム工学などの研究室のいずれかに所属し、専門科目を履修しながら、研究を進める。
学部卒業、大学院の博士前期課程、博士後期課程を修了後の進路は、重工業の航空宇宙部門、衛星開発企業、宇宙機器関連企業、自動車関連企業、航空宇宙関連のベンチャー企業、大学や研究所の開発・研究・教育職である。航空・宇宙工学分野以外でも、多数の卒業・修了生が活躍している。基礎・目標が定まっていれば、どの分野でも活躍できる。

