何を学ぶ
海上輸送に関連する海、船、物流などの問題に関心を持ち、専門的知識を含む幅広い教養と豊かな人間性とともに、国際的にも活躍できる高度専門職業人が求められている。

南 清和(みなみ きよかず)先生
東京海洋大学/海洋工学部/教授
1966年、大阪府生まれ。東京商船大学卒業、博士(工学)、三級海技士(航海)。海事システム工学科所属。船舶海洋工学、船舶運用技術に関する研究を行っている。
商船学とは
商船学とは、どのような学問であろうか。島国であり、国土が狭い日本では、海外諸国との貿易や交流のために古くから船を利用してきた。現在では人間の移動手段として航空機が主に利用されているが、私たちの生活を支える重要な物資の大部分が商船により運ばれる。石油、鉄鉱石、石炭などを運ぶ船がなくなったら私たちは生活できなくなる。その船に関するあらゆる技術について学ぶのが商船学である。
したがって、そのなかには、船を動かすための操縦技術、海や気象に関する自然現象の知識、船の動力であるエンジンの知識をはじめ、船を円滑に運航するために諸外国の船や港での連絡や通信に必要な知識、積み込んだ貨物に対する知識、さらには外国の文化に対する造詣なども必要になってくる。
最近では、操縦機械の自動化、エンジンの高性能化、効率的な貨物の取り扱いなどにより、最新の制御工学や経営工学、またデータサイエンスなどの知識も必要になってきた。
このようなもの全てを含んだ学問が商船学と呼ばれるものである。工学のなかに経済学や文化学といった文科系の学問も組み込まれ、船というものを一つの例とした総合的な学問といえる。
一見、商船学に必要な知識は、船だけにしか通用しないのではないかと思われがちだが、船舶という一つの例題が与えられていることは、勉学をするときに具体的なイメージを作り出すのに都合がよく、また他の例題が与えられたときにもある程度同じ手法が使えるので、むしろ発展性があり、応用の効く学問であるということができる。
したがって、そのなかには、船を動かすための操縦技術、海や気象に関する自然現象の知識、船の動力であるエンジンの知識をはじめ、船を円滑に運航するために諸外国の船や港での連絡や通信に必要な知識、積み込んだ貨物に対する知識、さらには外国の文化に対する造詣なども必要になってくる。
最近では、操縦機械の自動化、エンジンの高性能化、効率的な貨物の取り扱いなどにより、最新の制御工学や経営工学、またデータサイエンスなどの知識も必要になってきた。
このようなもの全てを含んだ学問が商船学と呼ばれるものである。工学のなかに経済学や文化学といった文科系の学問も組み込まれ、船というものを一つの例とした総合的な学問といえる。
一見、商船学に必要な知識は、船だけにしか通用しないのではないかと思われがちだが、船舶という一つの例題が与えられていることは、勉学をするときに具体的なイメージを作り出すのに都合がよく、また他の例題が与えられたときにもある程度同じ手法が使えるので、むしろ発展性があり、応用の効く学問であるということができる。
航海学・機関学の源流は長崎海軍伝習所から
近代日本の商船学教育の源流は、江戸時代末期に開かれた長崎海軍伝習所に見ることができる。ここでは航海学、機関学、造船学といった西洋の近代化された船に関する知識を修得することにより、勝海舟や榎本武揚など多くの優秀な人材が育っていった。
明治時代の初めに、外国へ出た多くの船には、これら伝習生が乗り込んだ。やがて海外との貿易や交流の必要性が高まるとともに商船学も注目され、東京の隅田川に架かる永代橋の下流近くに係留された船の上で、1875(明治8)年11月に三菱商船学校が創立され、わが国独自の商船学教育が始まった。
商船学教育は、このような古い歴史と伝統を継承しつつ、新しい社会的な要請にも対応しながら発展してきた。こうした流れは、学科の改組、大学院(博士前期課程・後期課程)の設置などに現れている。
2003年10月1日に、東京商船大と東京水産大、神戸商船大と神戸大がそれぞれ統合したが、今までの商船学教育について見てみると、東京商船大から東京海洋大海洋工学部に引き継がれ、神戸商船大から神戸大海洋政策科学部に引き継がれている。
明治時代の初めに、外国へ出た多くの船には、これら伝習生が乗り込んだ。やがて海外との貿易や交流の必要性が高まるとともに商船学も注目され、東京の隅田川に架かる永代橋の下流近くに係留された船の上で、1875(明治8)年11月に三菱商船学校が創立され、わが国独自の商船学教育が始まった。
商船学教育は、このような古い歴史と伝統を継承しつつ、新しい社会的な要請にも対応しながら発展してきた。こうした流れは、学科の改組、大学院(博士前期課程・後期課程)の設置などに現れている。
2003年10月1日に、東京商船大と東京水産大、神戸商船大と神戸大がそれぞれ統合したが、今までの商船学教育について見てみると、東京商船大から東京海洋大海洋工学部に引き継がれ、神戸商船大から神戸大海洋政策科学部に引き継がれている。
商船学で学ぶこと
商船学を学ぶ学科について、東京海洋大海洋工学部を例にとって海事システム工学科と海洋電子機械工学科の内容を見てみよう。
商船学のなかの航海学を学んで航海士や船長になる学科が海事システム工学科、機関学を学んで機関長になる学科が海洋電子機械工学科である。船長や機関長となって船の運航に直接携わるための学問が含まれるのは当然であるが、船舶運航管理、エンジンの保守管理、貨物、コンテナ、倉庫、港湾、海上保険、貨物検査など、船に関連した陸上部門でも活躍できるような幅広い知識を持った人材の育成を目指した内容になっている。3年次から海事システム工学科では船舶管理系と海事工学系の履修モデルのどちらかを選択し、海洋電子機械工学科は機関システム工学コースと制御システム工学コースに分かれる。海事システム工学科の約35名と機関システム工学コース(35名)は、乗船実習科に進学し、海技免状を取得することができる。
教育内容に見られる特徴は、実習や実験を重視して授業科目に多く取り込んでいることである。カッターと呼ばれる約9メートルの小型艇を使ってオールで漕いだり、セールを取りつけてヨットのように帆走したりするような実習や、エンジン付き小型艇の実習、大学所属の練習船に乗船しての実験実習などがある。
在学期間中に航海訓練所の大型練習船に乗って、日本各地や海外を訪れる船舶実習もある。このような実習を通して、現場の様子を体験し、自然を肌で感じ、さらに教室で学ぶ理論を結びつけることにより、明治時代に導入されたスコットランドの工学教育の伝統を生かした、調和のとれた特色ある教育となっている。専門科目の授業の一例を見ると、海事システム工学科では船舶運航論、抵抗推論、船舶制御、航海システム、船舶医学、マリナーズファクターと安全運航、国際法、航海英語、大気環境学、海事情報処理、浮体運動論などがある。
また、海洋電子機械工学科では、機械設計製図、制御工学、内燃機関工学、機関英語、冷凍空調工学、トライポロジー、ロボット工学などがある。
4年間の学部教育を終えた後には、希望すれば6か月の乗船実習科に進み、4年生最後の3か月から連続した実習期間中には、帆船の日本丸または海王丸による海外への遠洋航海の実習を体験することができる。
商船の航海士や機関士として船会社に就職する学生は、大型船の海技免状を取得するために乗船実習科に進学し、学部を3月に卒業した後の10月に入社することになるが、それ以外の会社においても帆船などにおける実習航海を体験することの意義を理解して、乗船実習科への進学を許可してくれるところもある。
卒業生は海運会社やその関連企業を中心に、船舶実習で鍛えた精神の柔軟さとリーダーシップを発揮して、幅広い分野で活躍している。現在の求人状況は良好で、大手の船会社、造船所、エンジンメーカーなどへ多くの学生が就職している。最近、学部卒業生に対して学生の能力を問われているが、ここで学ぶ学生は海技免状取得という一定の基準を満たしたものが卒業している。
商船学のなかの航海学を学んで航海士や船長になる学科が海事システム工学科、機関学を学んで機関長になる学科が海洋電子機械工学科である。船長や機関長となって船の運航に直接携わるための学問が含まれるのは当然であるが、船舶運航管理、エンジンの保守管理、貨物、コンテナ、倉庫、港湾、海上保険、貨物検査など、船に関連した陸上部門でも活躍できるような幅広い知識を持った人材の育成を目指した内容になっている。3年次から海事システム工学科では船舶管理系と海事工学系の履修モデルのどちらかを選択し、海洋電子機械工学科は機関システム工学コースと制御システム工学コースに分かれる。海事システム工学科の約35名と機関システム工学コース(35名)は、乗船実習科に進学し、海技免状を取得することができる。
教育内容に見られる特徴は、実習や実験を重視して授業科目に多く取り込んでいることである。カッターと呼ばれる約9メートルの小型艇を使ってオールで漕いだり、セールを取りつけてヨットのように帆走したりするような実習や、エンジン付き小型艇の実習、大学所属の練習船に乗船しての実験実習などがある。
在学期間中に航海訓練所の大型練習船に乗って、日本各地や海外を訪れる船舶実習もある。このような実習を通して、現場の様子を体験し、自然を肌で感じ、さらに教室で学ぶ理論を結びつけることにより、明治時代に導入されたスコットランドの工学教育の伝統を生かした、調和のとれた特色ある教育となっている。専門科目の授業の一例を見ると、海事システム工学科では船舶運航論、抵抗推論、船舶制御、航海システム、船舶医学、マリナーズファクターと安全運航、国際法、航海英語、大気環境学、海事情報処理、浮体運動論などがある。
また、海洋電子機械工学科では、機械設計製図、制御工学、内燃機関工学、機関英語、冷凍空調工学、トライポロジー、ロボット工学などがある。
4年間の学部教育を終えた後には、希望すれば6か月の乗船実習科に進み、4年生最後の3か月から連続した実習期間中には、帆船の日本丸または海王丸による海外への遠洋航海の実習を体験することができる。
商船の航海士や機関士として船会社に就職する学生は、大型船の海技免状を取得するために乗船実習科に進学し、学部を3月に卒業した後の10月に入社することになるが、それ以外の会社においても帆船などにおける実習航海を体験することの意義を理解して、乗船実習科への進学を許可してくれるところもある。
卒業生は海運会社やその関連企業を中心に、船舶実習で鍛えた精神の柔軟さとリーダーシップを発揮して、幅広い分野で活躍している。現在の求人状況は良好で、大手の船会社、造船所、エンジンメーカーなどへ多くの学生が就職している。最近、学部卒業生に対して学生の能力を問われているが、ここで学ぶ学生は海技免状取得という一定の基準を満たしたものが卒業している。
次世代の商船学
2000年以降、船舶は多くの先進的な技術が取り入れられてきた。航海においては、地球上20,000㎞の宇宙空間に配置された複数個の衛星から発せられる電波を受診し、その値を解析することで船位を得る衛星測位システムが登場し、現在では地球上のどの場所でも複数の衛星を使った精度の高い測位が自動的に得られるようになった。この衛星測位システムを使い、得られた船位を電子海図上に自動的に表示することにより、あたかもカーナビゲーションのように24時間、船舶は世界のどこにいても常に自身の船位を把握できるようになった。機関においてはこれまで舶用主機関(メインエンジン)であるディーゼル機関の燃料として重油、軽油といった比較的安価な化石燃料が用いられてきた。この化石燃料の利用とさまざまな技術革新による低燃費化により、主機関は船舶の推進力を経済的に得ることができた反面、主機関からは排気ガスとして地球温暖化ガス(二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物)が排出されてきた。昨今の深刻な地球温暖化に起因すると考えられる異常気象による災害あるいは地球の海面上昇等による深刻な社会生活への影響を考えたとき、船舶からの地球温暖化ガスの排出は、経済性や輸送効率に優れた船舶であっても、それが許容されるものではない。現在、船舶の主機関の燃料は、地球温暖化ガスの排出が比較的に少ないとされる液化天然ガス(LNG)の利用に変わりつつある。しかしこれは過渡的なものであり、今後はアンモニアや水素などの新燃料への転換によるさらなる主機関からの地球温暖化ガスの削減が計画されている。
海事社会では船舶への新技術の導入が積極的に行われる状況にあり、これが船舶操縦の自動化による安全運航や新型燃料の主機関への利用による地球温暖化ガスの削減に関する研究の推進力となっている。船舶への新たな技術導入により商船学は今後、それに対応した内容が学問へと反映され、その内容は高度化と進化をたどるであろう。そして商船学を教授する大学等の教育機関では、これまで継承されてきた技術や知識に加え、これまでにない新たな船舶の運航に携わるための技術や知識が導入される。次世代の商船学は、海事社会におけるいわば「未来へのパスポート」の役割を担っているのである。
海事社会では船舶への新技術の導入が積極的に行われる状況にあり、これが船舶操縦の自動化による安全運航や新型燃料の主機関への利用による地球温暖化ガスの削減に関する研究の推進力となっている。船舶への新たな技術導入により商船学は今後、それに対応した内容が学問へと反映され、その内容は高度化と進化をたどるであろう。そして商船学を教授する大学等の教育機関では、これまで継承されてきた技術や知識に加え、これまでにない新たな船舶の運航に携わるための技術や知識が導入される。次世代の商船学は、海事社会におけるいわば「未来へのパスポート」の役割を担っているのである。
さらなる学問・研究への道
学部を卒業後、大学院修士課程(博士前期課程)に進学する学生も多く、4月または10月に入学し、2年間に必要な単位を修得して学位論文に合格すると、修士が授与される。
博士課程(博士後期課程)では、商船学を中心とした分野において、世界の最先端の研究機関での最新鋭の研究と教育を目指している。
博士課程(博士後期課程)では、商船学を中心とした分野において、世界の最先端の研究機関での最新鋭の研究と教育を目指している。
