何を学ぶ
病気やけがで生活に支障がある方を支援するリハビリテーション専門職になるための知識や技術を学ぶ。誰かの力になりたいという想いを医療・福祉領域で実現させてみませんか。

岩波 潤(いわなみ じゅん)先生
信州大学/医学部/講師
1984年生まれ、長野県出身。2006年に新潟医療福祉大学を卒業し作業療法士免許を取得。卒業後、長野県松本市の相澤病院に就職し、2011年に新潟医療福祉大学入職、2015年より現職。
リハビリテーションの概要
リハビリテーションとは、障害のある個人を援助し、可能な限りその機能を発揮させるように、そして社会の中に統合させるように、医学的・社会的・教育的・職業的な各手段を組み合わせて実行する過程であるとされています。リハビリテーションというと病院で行われる「医学的」リハビリテーションがイメージされやすいのですが、社会福祉分野、教育分野で行われるリハビリテーションも非常に重要な役割を持っています。
また、現在の日本における重要な領域として、高齢者を対象としたリハビリテーションが挙げられます。日本では高齢化が急速に進行しています。内閣府によると令和5年(2023年)10月時点の日本の総人口は1億2,435万人とされ、65歳以上の高齢者人口はそのうち3,623万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%となったことが報告されました。この高齢化率は、昭和25年(1950年)では4.9%、昭和60年(1985年)では10.3%であったことからみても、急速に高齢化が進行していることがわかります。さらに、2040年にはこの高齢化率は約35%となることが推定されており、今後も高齢化率は上昇していくことが予測されています。この高齢化に伴い、高齢者の健康をいかに維持していくかが課題であるとされ、理学療法士や作業療法士などのリハビリテーション専門職には、高齢者の健康維持や病気やけがの予防のために支援をすることを求められているのです。
リハビリテーションの対象となる方は、一般的にイメージされる病院に入院されている患者さんや施設を利用されている利用者さんだけではなく、発達期におけるお子さんやスポーツ競技者など多岐にわたり、時代のニーズによってリハビリテーション専門職の役割は今後も広がっていくと考えられています。このように多岐にわたる領域を対象とするリハビリテーションは、リハビリテーション専門医・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士・臨床心理士・義肢装具士・薬剤師など多数の専門職種が協業して行います。この中で、医師の指示のもとに処方され、リハビリテーションを実際に提供する中心的な役割として、理学療法士(Physical Therapist)・作業療法士(Occupational Therapist)・言語聴覚士(Speech Therapist)がいます。理学療法士(PT)は、運動療法によって身体機能の改善を図ることを目的としています。運動療法では、関節の動く範囲や筋力の向上などを目的としたアプローチやベッド上での寝返りやベッドからの起き上がり、立ち上がり、歩行などの練習を行います。また、これらを行うために、ホットパックや低周波などの物理療法とよばれる手法を用います。作業療法士(OT)は、「作業活動」を通して心身の機能の回復を図り、日常生活に必要な諸動作(食事動作や更衣動作など)の獲得や社会生活(学校生活や仕事、地域での役割など)への復帰を目標としています。作業活動とは、食べること、着替えること、家事をすること、何かをつくること、仕事や遊びなど人の日常生活に関わる全ての諸活動のことを示し、これらを治療や援助、指導の手段として用いるのです。また、精神に疾病がある方を支援することも特徴です。言語聴覚士(ST)は、言語の障害(話すこと、書くこと、読むことなど)や咀嚼・嚥下の障害(食べ物を噛んだり、飲み込んだりすることなど)に対する治療を行います。このようなPT・OT・STの専門性を生かし、患者さんに必要な援助を協働しながら行っていくことが実際のリハビリテーションになります。令和6年(2024年)3月末時点で、理学療法士は約22万4千人、作業療法士は約11万8千人、言語聴覚士は約4万2千人が国家資格を持っているとされています。この人数は今後も増加すると考えられ、活躍の場も広がっていくことからも、リハビリテーションの専門職は将来性が高い職種であるといえます。
また、現在の日本における重要な領域として、高齢者を対象としたリハビリテーションが挙げられます。日本では高齢化が急速に進行しています。内閣府によると令和5年(2023年)10月時点の日本の総人口は1億2,435万人とされ、65歳以上の高齢者人口はそのうち3,623万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%となったことが報告されました。この高齢化率は、昭和25年(1950年)では4.9%、昭和60年(1985年)では10.3%であったことからみても、急速に高齢化が進行していることがわかります。さらに、2040年にはこの高齢化率は約35%となることが推定されており、今後も高齢化率は上昇していくことが予測されています。この高齢化に伴い、高齢者の健康をいかに維持していくかが課題であるとされ、理学療法士や作業療法士などのリハビリテーション専門職には、高齢者の健康維持や病気やけがの予防のために支援をすることを求められているのです。
リハビリテーションの対象となる方は、一般的にイメージされる病院に入院されている患者さんや施設を利用されている利用者さんだけではなく、発達期におけるお子さんやスポーツ競技者など多岐にわたり、時代のニーズによってリハビリテーション専門職の役割は今後も広がっていくと考えられています。このように多岐にわたる領域を対象とするリハビリテーションは、リハビリテーション専門医・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士・臨床心理士・義肢装具士・薬剤師など多数の専門職種が協業して行います。この中で、医師の指示のもとに処方され、リハビリテーションを実際に提供する中心的な役割として、理学療法士(Physical Therapist)・作業療法士(Occupational Therapist)・言語聴覚士(Speech Therapist)がいます。理学療法士(PT)は、運動療法によって身体機能の改善を図ることを目的としています。運動療法では、関節の動く範囲や筋力の向上などを目的としたアプローチやベッド上での寝返りやベッドからの起き上がり、立ち上がり、歩行などの練習を行います。また、これらを行うために、ホットパックや低周波などの物理療法とよばれる手法を用います。作業療法士(OT)は、「作業活動」を通して心身の機能の回復を図り、日常生活に必要な諸動作(食事動作や更衣動作など)の獲得や社会生活(学校生活や仕事、地域での役割など)への復帰を目標としています。作業活動とは、食べること、着替えること、家事をすること、何かをつくること、仕事や遊びなど人の日常生活に関わる全ての諸活動のことを示し、これらを治療や援助、指導の手段として用いるのです。また、精神に疾病がある方を支援することも特徴です。言語聴覚士(ST)は、言語の障害(話すこと、書くこと、読むことなど)や咀嚼・嚥下の障害(食べ物を噛んだり、飲み込んだりすることなど)に対する治療を行います。このようなPT・OT・STの専門性を生かし、患者さんに必要な援助を協働しながら行っていくことが実際のリハビリテーションになります。令和6年(2024年)3月末時点で、理学療法士は約22万4千人、作業療法士は約11万8千人、言語聴覚士は約4万2千人が国家資格を持っているとされています。この人数は今後も増加すると考えられ、活躍の場も広がっていくことからも、リハビリテーションの専門職は将来性が高い職種であるといえます。
学問の現状と課題
理学療法や作業療法などが病院でどのように行われているかをご紹介します。リハビリテーションは、薬と同じように医師からの処方が必要です。リハビリテーションが処方されると、担当する療法士は患者さんがどのような病気やけがであるか、元はどんな生活をしていたのかなどのさまざまな情報をまずは収集します。次にその病気やけがにより患者さんの心身の機能や日常的な生活動作がどのような状態に変化したのかを明らかにするための「評価」を行います。この評価の結果や情報収集の結果を踏まえて、その患者さんに適切な目標を設定し、その目標を達成させるために必要となる具体的な「介入(アプローチや治療ともいいます)」を行います。そして、リハビリテーションの介入を行った結果、患者さんの状態がどのように変化したのか、目標が達成されたのかを確認するために、再度評価を行います。非常に大雑把ですが、これがリハビリテーションの流れです。この一連の流れを行うために、リハビリテーション専門職にはさまざまな能力が求められます。
まず、リハビリテーションはヒトを対象とする仕事ですので、その「ヒト」を理解することが必要です。このためには、人体の構造とその仕組みを理解するための学習(解剖学、生理学、運動学と呼ばれる内容)や、病気や障害を理解するための学習(内科学、整形外科学、臨床医学など)を行います。このような基礎となる学習を踏まえた上で、理学療法や作業療法などの専門的な内容(評価や介入の方法)の学習に進んでいきます。また、専門的な内容の学習では、講義形式のいわゆる座学だけではなく、実際の技術を身につけるために実技形式の演習を行うことが多くなります。演習の内容は、関節の動かし方、筋力のはかり方、立ち上がりの介助の方法など多岐にわたりますが、学生同士での練習を通して技術を習得していきます。さらに、それまでに大学で学んだ内容が実際の現場でどのように行われているかを学ぶために、病院や施設に出向き、医療従事者やリハビリテーション専門職としての技能を高める数週間の臨床実習を行います。
このようにリハビリテーションの領域における学問は、さまざまな内容を積み重ねていき、知識だけでなく技術や医療従事者としての態度などを身につけ、卒業後にリハビリテーション専門職として働けるような学問体系となっているのです。
まず、リハビリテーションはヒトを対象とする仕事ですので、その「ヒト」を理解することが必要です。このためには、人体の構造とその仕組みを理解するための学習(解剖学、生理学、運動学と呼ばれる内容)や、病気や障害を理解するための学習(内科学、整形外科学、臨床医学など)を行います。このような基礎となる学習を踏まえた上で、理学療法や作業療法などの専門的な内容(評価や介入の方法)の学習に進んでいきます。また、専門的な内容の学習では、講義形式のいわゆる座学だけではなく、実際の技術を身につけるために実技形式の演習を行うことが多くなります。演習の内容は、関節の動かし方、筋力のはかり方、立ち上がりの介助の方法など多岐にわたりますが、学生同士での練習を通して技術を習得していきます。さらに、それまでに大学で学んだ内容が実際の現場でどのように行われているかを学ぶために、病院や施設に出向き、医療従事者やリハビリテーション専門職としての技能を高める数週間の臨床実習を行います。
このようにリハビリテーションの領域における学問は、さまざまな内容を積み重ねていき、知識だけでなく技術や医療従事者としての態度などを身につけ、卒業後にリハビリテーション専門職として働けるような学問体系となっているのです。
今後の課題
リハビリテーション専門職には医療従事者としての研究力が求められます。当然のことながら、患者さんにリハビリテーションを提供した場合、一定の治療費をいただきます。これは、病院での検査やお薬の処方と同じです。病院で行われるリハビリテーションの場合、その治療費は診療報酬という制度で決められていますが、これは理学療法士や作業療法士が行うリハビリテーションには、その治療費に見合うだけの価値があると判断されているからといえます。この価値を認め続けてもらうためには、リハビリテーションの効果を十分に検証し、それを明らかにしていく必要があります。日本では、リハビリテーション専門職種の国家資格が制定されたのは理学療法士・作業療法士が昭和40年(1965年)、言語聴覚士が平成9年(1997年)とまだまだ若い分野であることがわかります。多様化するニーズにリハビリテーション専門職として応えていくためにも、常に科学的根拠に基づいた医療(Evidence-based Medicine)を提供していくことが求められているのです。将来、リハビリテーションの科学的根拠を示すことができるように、大学では研究手法を学び、研究力を高めていくことが重要です。
さらに、日々変化する時代に乗り遅れないよう常に学ぶ姿勢を持つことが大切です。近年の科学の躍進は目まぐるしく、次々と新しい技術が開発されています。これはリハビリテーションの領域においても同様で、リハビリテーションの実践にAI(artificial intelligence: 人工知能)やVR(virtual reality:仮想現実)を取り入れたり、ロボット技術を活用したリハビリテーションが開発されたり、再生医療にリハビリテーションが関わったりと、変化する時代の中で、最先端の技術や知識を手に入れなければなりません。このことから、養成校を卒業し、リハビリテーション専門職の国家資格を得たらそれで終わりということではなく、実際の仕事の中で学んだり、研修会に参加したり、研究論文を読んだりして、常に興味を持って学び、さまざまな方向にアンテナを張り情報を手に入れる努力を続けなければなりません。
さらに、日々変化する時代に乗り遅れないよう常に学ぶ姿勢を持つことが大切です。近年の科学の躍進は目まぐるしく、次々と新しい技術が開発されています。これはリハビリテーションの領域においても同様で、リハビリテーションの実践にAI(artificial intelligence: 人工知能)やVR(virtual reality:仮想現実)を取り入れたり、ロボット技術を活用したリハビリテーションが開発されたり、再生医療にリハビリテーションが関わったりと、変化する時代の中で、最先端の技術や知識を手に入れなければなりません。このことから、養成校を卒業し、リハビリテーション専門職の国家資格を得たらそれで終わりということではなく、実際の仕事の中で学んだり、研修会に参加したり、研究論文を読んだりして、常に興味を持って学び、さまざまな方向にアンテナを張り情報を手に入れる努力を続けなければなりません。
大学での主な学科目の内容とカリキュラム
ここまでにリハビリテーションの概要や学問の現状を述べましたが、最後にどのような授業が大学で行われているのかを、筆者が所属している信州大医学部保健学科を例として挙げていきます。信州大のカリキュラムでは、ただ医療人になるための医療に関する知識や技術だけを学ぶのではなく、生命の尊厳を深く理解し、人間性豊かな医療人として医療を担うことを目標としています。図1(P.860参照)に信州大医学部保健学科の教育課程の概要を、図2(P.861参照)に作業療法学専攻におけるカリキュラム体系を示しました。1年次には、「共通教育科目・専門基礎科目」という外国語や解剖学・生理学などの授業を通して、医療従事者になる上で必要な人間性を育み、幅広い医療知識の習得を目指します。2年次には、「保健学科共通専門科目」という内科学、整形外科学などの授業を通して、21世紀の医療と社会、生命の仕組みと人間、医療を支える科学技術の理解を深めていきます。それらの科目で学んだことを土台とし、3・4年次には「専門科目」という治療学や臨床実習などの授業を通して各専門職種のより高度な知識や技術を研鑽していきます。そして、それぞれの専攻に対応する国家資格を取得するための国家試験を受けます。さらに、信州大では大学院教育にも力を入れています。大学卒業時、多くの学生は就職しますが、中にはより高度な専門的知識・技術と、科学的根拠に基づく問題解決能力や国際的な視野を持つ高度専門保健医療職者になるため、大学院の修士課程および博士課程に進学する学生もいます。大学院での学びは、リハビリテーションの科学的根拠を明らかにするために欠かせないといえます。
リハビリテーション専門職は、容易な仕事ではなく、患者さんのために何ができるか悩むことも少なくありません。しかし、リハビリテーションを必要としている方のお役に立ち、支援することができた際に得られる達成感は何にも代えがたく、やりがいにあふれた仕事だと思います。若者である皆さんの力を、国民の健康や生命の質を向上させることに役立ててもらえることを期待しています。
リハビリテーション専門職は、容易な仕事ではなく、患者さんのために何ができるか悩むことも少なくありません。しかし、リハビリテーションを必要としている方のお役に立ち、支援することができた際に得られる達成感は何にも代えがたく、やりがいにあふれた仕事だと思います。若者である皆さんの力を、国民の健康や生命の質を向上させることに役立ててもらえることを期待しています。


