何を学ぶ
病気や健康を客観的に評価するための方法やテクノロジーを学ぶ学問です。医療、健康に関する専門科目に加え、近未来ではロボティクスやAIの知識が求められます。

齋藤 邦明(さいとう くにあき)先生
藤田医科大学/副学長/教授、
京都大学/名誉教授
京都大学/名誉教授
1960年愛知県生まれ。1989年藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)大学院医学研究科卒。米国国立衛生研究所上席研究員、岐阜大学准教授、京都大学教授を経て現職。専門は病態生化学および先進診断薬開発。
はじめに
臨床検査学は、疾患あるいは健康を客観的に評価するために行う現代医療で必要不可欠な学問であり、英語ではLaboratory Scienceといいます。臨床検査に関わる職業は、医師のほかに臨床検査技師があり、国家資格です。臨床検査技師は、医学部保健学科、医療科学部、保健学部などで専門教育を受け、幅広いサイエンスを理解できる医療専門職として養成されます。
臨床検査学の歴史と将来展望
臨床検査の発端として、ヒポクラテスが紀元前に尿の観察をしたと記載されているそうですが、現実には16-17世紀のオランダで、レーベンフックが自作顕微鏡で赤血球を観察した頃に始まります。わが国でも江戸時代末に、杉田玄白が顕微鏡による観察像を著書で紹介していますが、明治時代に西洋から顕微鏡が輸入された頃から大いに進歩し、昭和にかけて細胞、微生物、尿、糞便の観察や、病理組織の検査、疫病の細菌検査などが行われていました。しかし、実際に日本で臨床検査が発展したのは第二次世界大戦後のことです。それまでの検査は医師の仕事の1つであり、診察結果を確認するための補助的なものでした。
1948年に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の指示で、国立病院に「研究検査科」が設置されたことから認知度が高まり、臨床検査を専門的に行う施設が続々と登場しました。需要の増加に伴い、検査に関する知識と技術も高度化して専門家が求められるようになり、1958年に衛生検査技師法が成立して資格制が実現しました。さらに、1970年の法改正を受けて、採血や生理検査、さまざまな検体検査を担う検査のプロフェッショナルとして「臨床検査技師」が誕生しました。臨床検査は、「検体検査」と「生体機能検査(生理機能検査)」に大きく分けられ、「検体検査」はさらに次の3つに分類されます。
(1)生化学、免疫、血液、微生物、遺伝子の検査(血液、尿、糞便、喀痰(かくたん)、髄液などのさまざまな試料を用いた検査)
(2)輸血検査(血液型や輸血製剤の検査、血液製剤の管理)
(3)病理検査(がん細胞の検査など)
これに対して、「生体機能検査」は、心臓、肺、脳などの生体シグナルをさまざまな医療測定機器でキャッチし、直接解析します。
検体検査は当初手作業で行われていましたが、自動分析装置が続々と開発され、機械化が進んでいます。最近は30項目以上を同時に検査できる機器もあります。近未来では、検査業務へのロボティクス導入や、細胞診などの病理画像診断で人工知能(AI)が広く活躍することは疑いがなく、これらの技術を活用できる医療職が求められています。
これからの臨床検査技師には、よりベッドサイドに近いところで医師や薬剤師、看護師などの医療スタッフと連携して業務を行うことが期待されています。たとえば、同じ医療専門職である薬剤師の調剤業務は、ロボットがかなり普及していますが、調剤業務に使っていた時間を、病棟での服薬指導などへシフトできるようになっているのです。臨床検査技師も同様に、多職種が連携した医療チームに参加して、患者へ検査の目的や内容の説明などを行い、医療全体の質を引き上げることが望まれています。国も医療従事者の働き方改革として、今まで医師が担当していた業務の一部を、臨床検査技師などの医療職が担当できるように規則を改正しており、今後はより患者に近いベッドサイドで技師たちが活躍できる機会が増えることが見込まれます。
臨床検査技師の卒後の進路は必ずしも病院に限定されず、多様な可能性をもって広がっています。臨床検査はこれまで病気を正確に診断するためのものでした。現在は遺伝子解析などで薬効や副作用を投薬前に予測するコンパニオン診断や、将来かかりやすい病気を発症前に診断し、予防的治療を施す先制医療にも用いられています。これらを実現する最先端技術の開発に臨床検査技師のサポートは欠かせません。
1948年に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の指示で、国立病院に「研究検査科」が設置されたことから認知度が高まり、臨床検査を専門的に行う施設が続々と登場しました。需要の増加に伴い、検査に関する知識と技術も高度化して専門家が求められるようになり、1958年に衛生検査技師法が成立して資格制が実現しました。さらに、1970年の法改正を受けて、採血や生理検査、さまざまな検体検査を担う検査のプロフェッショナルとして「臨床検査技師」が誕生しました。臨床検査は、「検体検査」と「生体機能検査(生理機能検査)」に大きく分けられ、「検体検査」はさらに次の3つに分類されます。
(1)生化学、免疫、血液、微生物、遺伝子の検査(血液、尿、糞便、喀痰(かくたん)、髄液などのさまざまな試料を用いた検査)
(2)輸血検査(血液型や輸血製剤の検査、血液製剤の管理)
(3)病理検査(がん細胞の検査など)
これに対して、「生体機能検査」は、心臓、肺、脳などの生体シグナルをさまざまな医療測定機器でキャッチし、直接解析します。
検体検査は当初手作業で行われていましたが、自動分析装置が続々と開発され、機械化が進んでいます。最近は30項目以上を同時に検査できる機器もあります。近未来では、検査業務へのロボティクス導入や、細胞診などの病理画像診断で人工知能(AI)が広く活躍することは疑いがなく、これらの技術を活用できる医療職が求められています。
これからの臨床検査技師には、よりベッドサイドに近いところで医師や薬剤師、看護師などの医療スタッフと連携して業務を行うことが期待されています。たとえば、同じ医療専門職である薬剤師の調剤業務は、ロボットがかなり普及していますが、調剤業務に使っていた時間を、病棟での服薬指導などへシフトできるようになっているのです。臨床検査技師も同様に、多職種が連携した医療チームに参加して、患者へ検査の目的や内容の説明などを行い、医療全体の質を引き上げることが望まれています。国も医療従事者の働き方改革として、今まで医師が担当していた業務の一部を、臨床検査技師などの医療職が担当できるように規則を改正しており、今後はより患者に近いベッドサイドで技師たちが活躍できる機会が増えることが見込まれます。
臨床検査技師の卒後の進路は必ずしも病院に限定されず、多様な可能性をもって広がっています。臨床検査はこれまで病気を正確に診断するためのものでした。現在は遺伝子解析などで薬効や副作用を投薬前に予測するコンパニオン診断や、将来かかりやすい病気を発症前に診断し、予防的治療を施す先制医療にも用いられています。これらを実現する最先端技術の開発に臨床検査技師のサポートは欠かせません。
大学での主な臨床検査学の科目とカリキュラム
大学での一般的なカリキュラム構成について説明します。
一般的には1年次と2年次の前期に、教養を身につけるための共通教育科目(外国語、数学、生物学、化学、倫理学など)と、生化学、生理学、薬理学、免疫学、微生物学、解剖学、細胞生物学、分子生物学などの専門基礎科目を修得します。この時期に、医療従事者として求められる幅広い知識と豊かな人間性、医療の基礎を学びます。
2年次後期から3年次には、表に記載した通りの必須科目に加え、専門科目の講義と臨床実習が行われます。学生は実習を開始する前に、技能と心構えが一定の基準に到達しているかを評価する客観的臨床能力試験(OSCE:Objective Structured Clinical Examination)に合格しなければなりません。病院を併設する大学では3年次後期、あるいは4年次に、学内の病院や関連施設で行います(併設されていない大学では学外の医療施設のみ)。
4年次には自身で研究テーマを選び、卒業研究(ゼミナール)に取り組んで、より高度な技術や専門的知識を深めます。
各大学が独自のアドミッションポリシーを掲げているので、情報を集めて、自分の方向性と合っているか確認することをお勧めします。さらに、近年では課題解決型学習(PBL)を授業に取り入れている大学も増えているので、大学のカリキュラムほか教育内容をチェックして志望校を決めてください。的確に病気の診断を支援する技師の養成はもとより、現在は再生医療やロボットなどのAI技術の研究開発に積極的に取り組んで、先端科学教育に力を入れている大学もあります。一般社団法人日本臨床検査学教育協議会のホームページに養成施設一覧があるので、施設の充実度をよく検討して進路を決めてください。
一般的には1年次と2年次の前期に、教養を身につけるための共通教育科目(外国語、数学、生物学、化学、倫理学など)と、生化学、生理学、薬理学、免疫学、微生物学、解剖学、細胞生物学、分子生物学などの専門基礎科目を修得します。この時期に、医療従事者として求められる幅広い知識と豊かな人間性、医療の基礎を学びます。
2年次後期から3年次には、表に記載した通りの必須科目に加え、専門科目の講義と臨床実習が行われます。学生は実習を開始する前に、技能と心構えが一定の基準に到達しているかを評価する客観的臨床能力試験(OSCE:Objective Structured Clinical Examination)に合格しなければなりません。病院を併設する大学では3年次後期、あるいは4年次に、学内の病院や関連施設で行います(併設されていない大学では学外の医療施設のみ)。
4年次には自身で研究テーマを選び、卒業研究(ゼミナール)に取り組んで、より高度な技術や専門的知識を深めます。
各大学が独自のアドミッションポリシーを掲げているので、情報を集めて、自分の方向性と合っているか確認することをお勧めします。さらに、近年では課題解決型学習(PBL)を授業に取り入れている大学も増えているので、大学のカリキュラムほか教育内容をチェックして志望校を決めてください。的確に病気の診断を支援する技師の養成はもとより、現在は再生医療やロボットなどのAI技術の研究開発に積極的に取り組んで、先端科学教育に力を入れている大学もあります。一般社団法人日本臨床検査学教育協議会のホームページに養成施設一覧があるので、施設の充実度をよく検討して進路を決めてください。
卒業後の進路とキャリア形成
医療職全体にいえることですが、国家試験に合格して病院に就職することが終着点ではありません。卒後も技能研修会に参加したり、さらなるスキルアップのため、認定資格を取得したりすることが必要です。時代の流れに乗り遅れないように、情報収集する努力も大切です。一部の大学ではキャリアサポートを充実させています。
臨床検査技師の活躍の場は病院以外にも数多くあります。例を挙げれば、保健所や科学捜査研究所といった公的機関、健診センター、企業(食品関係、診断薬、再生医療、検査機器関係)、動物関連施設など、ほかの医療職に比べて進路の選択肢が広いことが特徴です。近年は大学院教育にも意欲的な大学が増え、修士、博士課程への進学を推奨しています。臨床研究を実施する機関では、研究のできる医療技術者が不足しており、大学院修了者の雇用チャンスが増えています。医薬品、医療機器、食品関連の企業へ就職する人も多く、新しい診断薬の開発に携わる先輩たちが未来を見据えて活躍しています。これからの日本を担う若者には、自分が将来どの分野で力を発揮したいか、イメージして頑張ってほしいと思います。
臨床検査技師の活躍の場は病院以外にも数多くあります。例を挙げれば、保健所や科学捜査研究所といった公的機関、健診センター、企業(食品関係、診断薬、再生医療、検査機器関係)、動物関連施設など、ほかの医療職に比べて進路の選択肢が広いことが特徴です。近年は大学院教育にも意欲的な大学が増え、修士、博士課程への進学を推奨しています。臨床研究を実施する機関では、研究のできる医療技術者が不足しており、大学院修了者の雇用チャンスが増えています。医薬品、医療機器、食品関連の企業へ就職する人も多く、新しい診断薬の開発に携わる先輩たちが未来を見据えて活躍しています。これからの日本を担う若者には、自分が将来どの分野で力を発揮したいか、イメージして頑張ってほしいと思います。

