何を学ぶ
児童心理、保育・教育、児童福祉、児童文化など子どもに関わる多様な分野について学ぶ。卒業後の進路は保育士や小・中学校の教員だけではなく子ども関連企業にも広がる。

金田 卓也(かねだ たくや)先生
大妻女子大学/家政学部/教授
1955年、栃木県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程修了。オレゴン大学客員助教授を経て現職。専攻は芸術教育。共編著『ホリスティック教育ガイドブック』『ピースフルな子どもたち』(せせらぎ出版)。
子どもについて知ること
子どもと大人を分けるのは、どんな点なのであろうか? 童話のなかでピーターパンは、大人になることを拒否した子どもの心を持ち続ける少年として描かれている。ネバーランドは子どもたちのなかにしか存在しないのか? 受験を控えた高校生の君たちはもう大人なのか? それとも、まだ純真な心を残している子どもなのだろうか?
子どもたちの生活を見ると、その大きな変化に驚かされる。ベビーカーに乗った乳児がスマホの画面を見つめている姿を目にすることもある。最近ではユーチューバーが小学生の憧れの職業の一つになっている。パソコンやスマホばかりではなく、LINEなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスを自由に使いこなす子どもも普通になってきている。
教育の分野においてもIT化が進むなか、チャットGPTのようなAIをどう扱うかということは大きな課題になってきている。小学校での英語教育も本格化している。高校生からも「最近の小学生の話にはついていけない」というような話を聞かされることがあるが、ますます、子どもと大人の境目が見えなくなってきている。
大きく変化する現代社会のなかで、子どもたちの問題について問うということは、私たち自身を見つめることでもあり、究極的には、人間とは何か、ということを探ることにほかならない。子どもについて考えるということは、ある意味では未来に希望を託すということでもある。児童学とは、そうした問題意識に基づき、子どもを通して人間の本質について理解し、未来を築いていこうとする分野だといえる。
子どもたちの生活を見ると、その大きな変化に驚かされる。ベビーカーに乗った乳児がスマホの画面を見つめている姿を目にすることもある。最近ではユーチューバーが小学生の憧れの職業の一つになっている。パソコンやスマホばかりではなく、LINEなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスを自由に使いこなす子どもも普通になってきている。
教育の分野においてもIT化が進むなか、チャットGPTのようなAIをどう扱うかということは大きな課題になってきている。小学校での英語教育も本格化している。高校生からも「最近の小学生の話にはついていけない」というような話を聞かされることがあるが、ますます、子どもと大人の境目が見えなくなってきている。
大きく変化する現代社会のなかで、子どもたちの問題について問うということは、私たち自身を見つめることでもあり、究極的には、人間とは何か、ということを探ることにほかならない。子どもについて考えるということは、ある意味では未来に希望を託すということでもある。児童学とは、そうした問題意識に基づき、子どもを通して人間の本質について理解し、未来を築いていこうとする分野だといえる。
子どもの世界から見る
ゲームのキャラクターに夢中になっている子どもたちの生活を見ると、野の草を集めたり、虫を捕ったりする場所も時間もほとんどなくなっていることに気がつく。子どもたちの興じるゲームの空間というものは、自然のなかの遊び場さえ奪われた子どもたちが、自由に遊ぶことのできる唯一の場であるのかもしれない。最近では、AR(拡張現実)技術が進み、画面を見ると現実空間の中に空想上の生き物が存在しているかのように見えるようになった。
子どもたちの世界を探ることによって現代社会のさまざまな問題が浮かび上がってくる。児童学とは、子どもの世界から私たち自身の姿を見つめ直すことでもある。
子どもたちの世界を探ることによって現代社会のさまざまな問題が浮かび上がってくる。児童学とは、子どもの世界から私たち自身の姿を見つめ直すことでもある。
児童学の成立
19世紀末に子どもたちの世界の独自性に注目し、その重要性を主張した児童学(paedology・pedology)という研究分野が誕生した。現在あるような家政学のなかでの〈児童学〉というものは、子どもの心と身体の発達を総合的にとらえ、保育や教育のよりよい実現を目指して研究する学際的(interdisciplinary)な色彩を持った分野である。それは、児童心理・児童保健・保育・児童文化など、多様な領域を含んで成立している。最近では、児童学という言葉に代わり、子ども学と呼ばれることもある。
欧米の大学には、児童学科は必ずしも多いとはいえないが、カナダのトロント大学の伝統ある児童学研究所(Institute of Child Study)のように、現代社会におけるさまざまな子どもの問題に積極的に取り組んでいるところもある。
児童学は、高校の家庭一般・保育の延長上にあるのではなく、より広い視野に立って、子ども独自の世界を明らかにし、どう育てていけばよいかということを考え、理想的な保育や教育の可能性を探る魅力的な分野である。
子どもの保育や教育について考えることは、少子化の進むなかでの家族のあり方や女性の生き方とも深く結びついている。
欧米の大学には、児童学科は必ずしも多いとはいえないが、カナダのトロント大学の伝統ある児童学研究所(Institute of Child Study)のように、現代社会におけるさまざまな子どもの問題に積極的に取り組んでいるところもある。
児童学は、高校の家庭一般・保育の延長上にあるのではなく、より広い視野に立って、子ども独自の世界を明らかにし、どう育てていけばよいかということを考え、理想的な保育や教育の可能性を探る魅力的な分野である。
子どもの保育や教育について考えることは、少子化の進むなかでの家族のあり方や女性の生き方とも深く結びついている。
児童学と「教育」
児童学と「教育」は深く関わっているが、児童学で学ぶことイコール教職への道というわけではない。本来、教育の場というものは、学校の授業だけに限られているのではなく、家庭はもちろんのこと、児童館、博物館、キャンプなどの野外活動といったように、学校外でも子どもたちが学ぶ場というものはたくさんある。
児童学は「教育」を学校の枠だけに限定せずに、さまざまな視点から子どもと教育について研究するところにその特徴がある。そうした意味で、卒業後の道は教師だけではなく、より広がっているといえる。
児童学は「教育」を学校の枠だけに限定せずに、さまざまな視点から子どもと教育について研究するところにその特徴がある。そうした意味で、卒業後の道は教師だけではなく、より広がっているといえる。
多様な科目
▶児童心理
子どもの発達に応じた心の変化や、日常のさまざまな場面における心理と行動などについての理解を深める。高校では直接勉強する機会のなかった心理学の基礎理論を学ぶとともに、心理学的な実験や調査の方法についても学ぶ。
子どもの発達に応じた心の変化や、日常のさまざまな場面における心理と行動などについての理解を深める。高校では直接勉強する機会のなかった心理学の基礎理論を学ぶとともに、心理学的な実験や調査の方法についても学ぶ。
▶保育・教育
保育や教育というと、すぐに保育園や幼稚園あるいは学校を思い浮かべがちだが、保育も教育も、家庭や地域社会など、広い視野から考えていくことが重要である。現場での子どもたちとの関わりを大切にしながら、保育や教育の本質を学ぶ。
保育や教育というと、すぐに保育園や幼稚園あるいは学校を思い浮かべがちだが、保育も教育も、家庭や地域社会など、広い視野から考えていくことが重要である。現場での子どもたちとの関わりを大切にしながら、保育や教育の本質を学ぶ。
▶児童福祉
最近、ボランティア活動に関心のある学生も多く、地域で積極的な実践を行っている者も少なくない。授業では、社会福祉の基本原理を十分に理解した上で、支援を必要としている子どもたちが実際に抱えているさまざまな問題に着目しながら、児童福祉の理念と実践について学ぶ。
最近、ボランティア活動に関心のある学生も多く、地域で積極的な実践を行っている者も少なくない。授業では、社会福祉の基本原理を十分に理解した上で、支援を必要としている子どもたちが実際に抱えているさまざまな問題に着目しながら、児童福祉の理念と実践について学ぶ。
▶児童文化
絵本や童話、玩具など、子どものためにつくられた文化はもちろんのこと、アニメやゲームなどを分析することによって、子どもたちを取り巻く環境の意味を問い直すことも含まれる。また、外国の子どもたちの遊びや生活を比較文化的な視点から研究することも試みられている。
ほかにも、児童学では子どもに関する多様な科目を学ぶことができる。
絵本や童話、玩具など、子どものためにつくられた文化はもちろんのこと、アニメやゲームなどを分析することによって、子どもたちを取り巻く環境の意味を問い直すことも含まれる。また、外国の子どもたちの遊びや生活を比較文化的な視点から研究することも試みられている。
ほかにも、児童学では子どもに関する多様な科目を学ぶことができる。
臨床的なアプローチ
最近では、子どもたちのあるがままの姿に接するなかから、さまざまな問題を解決する糸口を見出す臨床的な視点からの児童学研究も進められている。
本来、臨床という言葉は、患者を診察・治療するという意味を持っているが、そうした視点は、カウンセリングなどの立場と重なるところがある。筆者の所属する大妻女子大学では、付属の施設として児童臨床研究センターを設置し、さまざまな活動を行っている。
このような臨床的な考え方に見られるように、“子どもたちと直接触れ合うことによって学ぶ” ことを重要視する児童学科では、単なる文献中心の学びだけではなく、実際に現場に入り込んでのフィールドワークに基づいた卒業論文を必修にしているところもある。
本来、臨床という言葉は、患者を診察・治療するという意味を持っているが、そうした視点は、カウンセリングなどの立場と重なるところがある。筆者の所属する大妻女子大学では、付属の施設として児童臨床研究センターを設置し、さまざまな活動を行っている。
このような臨床的な考え方に見られるように、“子どもたちと直接触れ合うことによって学ぶ” ことを重要視する児童学科では、単なる文献中心の学びだけではなく、実際に現場に入り込んでのフィールドワークに基づいた卒業論文を必修にしているところもある。
ゼミと卒業研究
大妻女子大学では子どもを原点にした視点から、1年次に教室以外の場において子どもについて体験的に学ぶ授業も開講されている。3年次からは、少人数のゼミで、指導教員の専門性を生かしたさまざまな領域について学ぶ。4年次では、ゼミを発展させて、自ら選んだテーマをもとに必修の卒業研究に取り組んでいく。
保育の現場で、子どもたちの遊ぶ様子を観察して記録したり、子どもたちに人気のあるミュージアムを取材調査したりして、文献からは得られないデータの収集が求められる。
卒業論文のテーマは多岐にわたり、「学童保育と子育て支援」「幼児期の子どものユーモア」「幼稚園と保育園における異文化交流」「算数におけるメタ認知」といった興味深いものが多い。
卒業研究として「手作り玩具」や「オリジナル・キャラクター」といったテーマについて制作を通して研究する場合もある。
保育の現場で、子どもたちの遊ぶ様子を観察して記録したり、子どもたちに人気のあるミュージアムを取材調査したりして、文献からは得られないデータの収集が求められる。
卒業論文のテーマは多岐にわたり、「学童保育と子育て支援」「幼児期の子どものユーモア」「幼稚園と保育園における異文化交流」「算数におけるメタ認知」といった興味深いものが多い。
卒業研究として「手作り玩具」や「オリジナル・キャラクター」といったテーマについて制作を通して研究する場合もある。
卒業生の進路
多くの大学の児童学科では、保育士資格、幼稚園教諭一種免許状、小学校教諭一種免許状のいくつかが取得できる。中学校教諭一種免許状が取得できるところもある。
卒業後は、取得資格を生かして幼稚園・小学校・中学校の教職、あるいは保育士や児童館のスタッフなどになる者が多い。海外の日本人幼稚園や日本人学校で活躍する者もいる。
また、玩具メーカー、児童図書出版関係、教材会社など、子どもやファミリー関連企業へ就職する者もいる。子ども相手の仕事ではないが、教えることの意味や心理を学んだ経験を生かして、一般企業の研修業務などの分野で活躍している者もいる。
また、児童学は学部の勉強だけで終わるわけではないので、大学院に進学し、子どもに関する研究者を目指す道もある。
児童学科で学ぼうとする者には、子どもに対する深い愛情と、しなやかな感性が欠かせないことは言うまでもないが、子どもたちの世界に飛び込んでいくことのできる行動力と、軽いフットワークとともに人間の本質について考察することのできる洞察力というものも必要である。
卒業後は、取得資格を生かして幼稚園・小学校・中学校の教職、あるいは保育士や児童館のスタッフなどになる者が多い。海外の日本人幼稚園や日本人学校で活躍する者もいる。
また、玩具メーカー、児童図書出版関係、教材会社など、子どもやファミリー関連企業へ就職する者もいる。子ども相手の仕事ではないが、教えることの意味や心理を学んだ経験を生かして、一般企業の研修業務などの分野で活躍している者もいる。
また、児童学は学部の勉強だけで終わるわけではないので、大学院に進学し、子どもに関する研究者を目指す道もある。
児童学科で学ぼうとする者には、子どもに対する深い愛情と、しなやかな感性が欠かせないことは言うまでもないが、子どもたちの世界に飛び込んでいくことのできる行動力と、軽いフットワークとともに人間の本質について考察することのできる洞察力というものも必要である。

