何を学ぶ
生活を、自然科学、社会科学、人文科学の多様な学問領域を基盤として研究し、生活の質の向上を目的とする分野。よりよい生活を目指して、この分野が解決すべき課題は多い。

飯田 薫子(いいだ かおるこ)先生
お茶の水女子大学/基幹研究院/教授
東京都出身。筑波大学大学院医学研究科修了。筑波大学大学院講師、お茶の水女子大学准教授を経て現職。専門は代謝内分泌学、病態栄養学、生活習慣病学。著書に『きちんとわかる栄養学』(西東社)。
家政学・生活科学の歴史
家政学(ホームエコノミクス、Home Economics)の語源はギリシャ語のオイコノモス(oikos nomos → oikonomos)からきています。oikosは家のことですが、ひいては財を表し、nomosは適正に治め管理することを意味しています。財とは生活に関わる全ての財、すなわち生活の資源を指し、人的資源や物的資源も含んだものを管理・統治する学問という意味があります。
学問としてのホームエコノミクスを確立したのは化学者でありアメリカ家政学会の初代会長であるエレン・H・スワロウ・リチャーズです。彼女は「神学が宗教生活の学問であり、生物学が物的生命の学問であるように、…これから、エコロジーを、私たちの健全な家族生活の学問に」と提唱し、アメリカで学校給食制度や家政学の成立に貢献し、現代の家庭生活や都市生活の新たな方向を示しました。彼女はエコロジー、消費者運動、公衆衛生学、栄養教育など幅広い分野におけるパイオニアでもありました。
家政学・生活科学という分野は時代とともに変化していく分野です。男は仕事、女は家庭という古い時代では家を守る学問が家政学でした。しかし、現代では市民社会とデモクラシーの成熟や科学技術の発展に伴い社会・経済状況が急激に変化し、価値観が多様化しています。こうした状況のなかで、心身ともにより豊かな生活を営むためにはどうしたらよいかを、生活者の視点から、学際的、多面的に考える学問として、家政学・生活科学はますますその守備範囲を広げています。
学問としてのホームエコノミクスを確立したのは化学者でありアメリカ家政学会の初代会長であるエレン・H・スワロウ・リチャーズです。彼女は「神学が宗教生活の学問であり、生物学が物的生命の学問であるように、…これから、エコロジーを、私たちの健全な家族生活の学問に」と提唱し、アメリカで学校給食制度や家政学の成立に貢献し、現代の家庭生活や都市生活の新たな方向を示しました。彼女はエコロジー、消費者運動、公衆衛生学、栄養教育など幅広い分野におけるパイオニアでもありました。
家政学・生活科学という分野は時代とともに変化していく分野です。男は仕事、女は家庭という古い時代では家を守る学問が家政学でした。しかし、現代では市民社会とデモクラシーの成熟や科学技術の発展に伴い社会・経済状況が急激に変化し、価値観が多様化しています。こうした状況のなかで、心身ともにより豊かな生活を営むためにはどうしたらよいかを、生活者の視点から、学際的、多面的に考える学問として、家政学・生活科学はますますその守備範囲を広げています。
日本における家政学の歴史
日本では、江戸時代から明治にかけては家父長制の家族制度でした。そのもとでは、良妻賢母を養成するのが家政学の役目でした。
その歴史をたどると、明治9年(1876年)に、東京女子師範学校(現お茶の水女子大学)に付属幼稚園が設けられ、保育練習科が設置され、実地保育を学ぶことになりました。明治12年(1879年)には、学科課程に裁縫が取り入れられ、明治16年(1883年)に家政学の授業が始まり住居・飲食・衣服・出納・養生・育児を学ぶようになりました。
その後、明治32年(1899年)に技芸科が誕生し、わが国初めての家事専門の教員養成が開始され、家事という学科目が作られました。その内容は裁縫・編物・刺繍・割烹・衛生・衣食住・育児・看護・家計簿記・教授法であり、ほぼ現在の家庭科の中身ができあがりました。
第二次世界大戦後の1949年、新制大学発足にあたっても依然として家政学部は食物・被服・児童・家庭経営・住居を中心とする学部でした。
その歴史をたどると、明治9年(1876年)に、東京女子師範学校(現お茶の水女子大学)に付属幼稚園が設けられ、保育練習科が設置され、実地保育を学ぶことになりました。明治12年(1879年)には、学科課程に裁縫が取り入れられ、明治16年(1883年)に家政学の授業が始まり住居・飲食・衣服・出納・養生・育児を学ぶようになりました。
その後、明治32年(1899年)に技芸科が誕生し、わが国初めての家事専門の教員養成が開始され、家事という学科目が作られました。その内容は裁縫・編物・刺繍・割烹・衛生・衣食住・育児・看護・家計簿記・教授法であり、ほぼ現在の家庭科の中身ができあがりました。
第二次世界大戦後の1949年、新制大学発足にあたっても依然として家政学部は食物・被服・児童・家庭経営・住居を中心とする学部でした。
家政学から生活科学へ
一方、1990年ごろから家政学を冠していた家政系大学の学部・大学院で、名称変更が行われるようになりました。
家政学には、その成立時において衣食住といった生活者個人の生活基盤が家庭に置かれていたため、もっぱら家政(家庭生活)を対象としているイメージが強かったのです。しかし、時代の変遷とともに生活者個人の生活において、社会や環境との関係の重要度が増し、家政学はその研究対象を広げ、より多様な学問を取り込み、新たに「生活科学」という学問領域が生まれてきたのです。
アメリカでも、1994年6月に、アメリカ家政学会は、アメリカ家族・消費者科学学会(American Association of Family and Consumer Sciences)に名称変更し、研究対象領域を拡大しています。
こうした流れのなかで、伝統的な家政学部のほかに、人間、生活、環境、科学などを冠した新しい学部、学科が設置されてきました。たとえば、生活科学部は、お茶の水女子大学、大阪市立大学(現・大阪公立大学)、実践女子大学、同志社女子大学などに、生活環境学部は、奈良女子大学、武庫川女子大学などに設置されました。
それぞれの大学の教育目的、方針によって、重点となる学問領域の置き方に違いはあります。しかし、基本的には人間の生活を、多様な学問分野から科学的に研究し、いろいろな意味で人間生活の質を向上させることを目的としている学部、学科と言えます。
家政学には、その成立時において衣食住といった生活者個人の生活基盤が家庭に置かれていたため、もっぱら家政(家庭生活)を対象としているイメージが強かったのです。しかし、時代の変遷とともに生活者個人の生活において、社会や環境との関係の重要度が増し、家政学はその研究対象を広げ、より多様な学問を取り込み、新たに「生活科学」という学問領域が生まれてきたのです。
アメリカでも、1994年6月に、アメリカ家政学会は、アメリカ家族・消費者科学学会(American Association of Family and Consumer Sciences)に名称変更し、研究対象領域を拡大しています。
こうした流れのなかで、伝統的な家政学部のほかに、人間、生活、環境、科学などを冠した新しい学部、学科が設置されてきました。たとえば、生活科学部は、お茶の水女子大学、大阪市立大学(現・大阪公立大学)、実践女子大学、同志社女子大学などに、生活環境学部は、奈良女子大学、武庫川女子大学などに設置されました。
それぞれの大学の教育目的、方針によって、重点となる学問領域の置き方に違いはあります。しかし、基本的には人間の生活を、多様な学問分野から科学的に研究し、いろいろな意味で人間生活の質を向上させることを目的としている学部、学科と言えます。
学問の現状と課題
第二次世界大戦後のわが国の急速な経済成長、科学技術の発展には目を見張るものがあり、昔では考えられないほど物質的に豊かで、健康で快適な生活を享受できるようになりました。 しかしその一方、急激な環境や社会情勢の変化に伴い、新たな問題や課題が生じています。
そのため、自然環境や社会との相互作用を踏まえ、家政学・生活科学の学問領域を広げつつも、あくまでも生活者の視点から生活の質の向上に取り組むことが必要です。
たとえば、現代は少子高齢化、女性の社会参加が進むなかで、家庭生活における子育てや高齢者介護などの問題に対応した新たな研究や技術開発が求められています。また、AI(人工知能)やロボットなど新しい分野の知識・技術の生活への導入も今後ますます進むことが見込まれます。さらに、保育のあり方や社会的養護など児童福祉の問題や、多様な人びとからなるダイバーシティ社会の問題などへの対応も課題となります。
食については、過度な豊かさを志向した代償として、過食やアンバランスな食事による生活習慣病などが問題となっていますが、その解決に食物栄養学からのアプローチが求められています。
近年では大震災や異常気象などによる自然災害、原子力発電所の事故など科学技術への過信による事故などにより、日常生活が危険にさらされるなかで、生活の豊かさとは何かを再考する必要が出てきました。災害に備えての食物の安全・備蓄、災害に強く高齢者にやさしい住居、子どもや高齢者への身体的・心理的ケアなど、家政学・生活科学に解決が期待される課題はたくさんあります。目前の課題の解決のみではなく、生活を営んでいる人びとの視点から、環境や社会との関係のなかで、総合的に問題を考える姿勢が重要です。
家政学・生活科学の分野を志す皆さんには、自分の専門だけでなく、隣接した学問領域にも視野を広げて学んでほしいと思います。
そのため、自然環境や社会との相互作用を踏まえ、家政学・生活科学の学問領域を広げつつも、あくまでも生活者の視点から生活の質の向上に取り組むことが必要です。
たとえば、現代は少子高齢化、女性の社会参加が進むなかで、家庭生活における子育てや高齢者介護などの問題に対応した新たな研究や技術開発が求められています。また、AI(人工知能)やロボットなど新しい分野の知識・技術の生活への導入も今後ますます進むことが見込まれます。さらに、保育のあり方や社会的養護など児童福祉の問題や、多様な人びとからなるダイバーシティ社会の問題などへの対応も課題となります。
食については、過度な豊かさを志向した代償として、過食やアンバランスな食事による生活習慣病などが問題となっていますが、その解決に食物栄養学からのアプローチが求められています。
近年では大震災や異常気象などによる自然災害、原子力発電所の事故など科学技術への過信による事故などにより、日常生活が危険にさらされるなかで、生活の豊かさとは何かを再考する必要が出てきました。災害に備えての食物の安全・備蓄、災害に強く高齢者にやさしい住居、子どもや高齢者への身体的・心理的ケアなど、家政学・生活科学に解決が期待される課題はたくさんあります。目前の課題の解決のみではなく、生活を営んでいる人びとの視点から、環境や社会との関係のなかで、総合的に問題を考える姿勢が重要です。
家政学・生活科学の分野を志す皆さんには、自分の専門だけでなく、隣接した学問領域にも視野を広げて学んでほしいと思います。
大学での主な学科目の内容とカリキュラム
家政・生活科学分野の学部、学科では、基本的には衣食住や家族に関する科目、すなわち、被服学、服飾学、食物学、栄養学、住居学、環境学、また児童・保育学、家族関係論などを基礎的な概論科目として開講することが多いと言えます。
それに加えて、学部、学科の目的に応じて、消費経済学、ジェンダー論、生活法学、企業経営論、比較文化論、衣材料学、食品学、栄養学、調理学、住環境学、CG概論、構造力学、環境衛生学、電気磁気学、臨床心理学、カウンセリング論、心理統計学など、さまざまな科目が設置されています。また、実験科目や現場での実習科目も多いのが特色と言えましょう。
どのような応用科目が設置されているかが大学・学部の個性・特徴となります。また、応用科目として学んだことが将来の就職にもつながりますので、どのようなカリキュラム構成か、どのような資格が取れるかなどを十分に調べて、受験する大学を選んでください。
それに加えて、学部、学科の目的に応じて、消費経済学、ジェンダー論、生活法学、企業経営論、比較文化論、衣材料学、食品学、栄養学、調理学、住環境学、CG概論、構造力学、環境衛生学、電気磁気学、臨床心理学、カウンセリング論、心理統計学など、さまざまな科目が設置されています。また、実験科目や現場での実習科目も多いのが特色と言えましょう。
どのような応用科目が設置されているかが大学・学部の個性・特徴となります。また、応用科目として学んだことが将来の就職にもつながりますので、どのようなカリキュラム構成か、どのような資格が取れるかなどを十分に調べて、受験する大学を選んでください。
大学で取得できる資格
家政学部・生活科学部で取得できる主な免許・資格(*付は受験資格)は、中学校・高等学校教諭一種免許状(家庭科)、栄養教諭一種免許状、博物館学芸員、公認心理師(要大学院履修または実務経験)*、栄養士、管理栄養士*、一級建築士(要実務経験)*などがあります。各大学のパンフレットや募集要項などをよく見て、取得できる免許・資格を確認してください。
卒業後の進路
家政学・生活科学の分野で学んだ物の見方・考え方は、いろいろな職業分野で生かすことができます。卒業後の進路としては、教員やアパレル、住宅、食品、福祉、出版、商社、ITなどの関連産業、国民生活センターなどがあります。また、大学院へ進学し研究者を目指す人や、公務員になる人も多くいます。

