何を学ぶ
生涯にわたるライフステージを対象とし、健康づくりを支援するための知識や技法、システムなどを総合的に学ぶ。体育学や保健学など、幅広い学問分野との連携で展開される。

大久保 菜穂子(おおくぼ なおこ)先生
順天堂大学/スポーツ健康科学部/先任准教授
1974年岩手県生まれ。東京都育ち。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科健康科学領域博士後期課程修了。博士(スポーツ健康科学)。専攻は健康教育学。著書に『ヘルスリテラシーとは何か?』(垣内出版)、『ヘルスプロモーション』(メヂカルフレンド社)などがある。
健康とは(主観的健康観)
「あなたにとって健康とは何ですか?」
このような問いかけをされた場合、あなたは何と答えるだろうか。
心身ともに健やかなことであろうか。身体が丈夫で元気がよく調子がよいこと。心も身体も人間関係もうまくいっていること。病気でないこと。前向きに生きることができることであろうか。
健康に対する思いや考えというのは人それぞれ異なる。この考え方を主観的健康観という。
人によっては、幸福なこと、仕事ができること、快食・快眠・快便であること、健康を意識しないこと、長生きできること、規則正しい生活ができることと答える人もいる。
さらには、人を愛することができることが健康ととらえる人もいる。
また、たとえばがんの手術をして、再発・転移などの予防のために定期的に経過観察しながら生活している人のなかには、前向きに生きられることが健康ととらえている人もいる。
このように、幅広い意味としてとらえることができる健康について科学的にアプローチする「健康科学」という学問について考えてみよう。
このような問いかけをされた場合、あなたは何と答えるだろうか。
心身ともに健やかなことであろうか。身体が丈夫で元気がよく調子がよいこと。心も身体も人間関係もうまくいっていること。病気でないこと。前向きに生きることができることであろうか。
健康に対する思いや考えというのは人それぞれ異なる。この考え方を主観的健康観という。
人によっては、幸福なこと、仕事ができること、快食・快眠・快便であること、健康を意識しないこと、長生きできること、規則正しい生活ができることと答える人もいる。
さらには、人を愛することができることが健康ととらえる人もいる。
また、たとえばがんの手術をして、再発・転移などの予防のために定期的に経過観察しながら生活している人のなかには、前向きに生きられることが健康ととらえている人もいる。
このように、幅広い意味としてとらえることができる健康について科学的にアプローチする「健康科学」という学問について考えてみよう。
WHOの健康の定義とHealth for All
少子・高齢社会を迎えた今、健康に関する関心はますます高まっている。世界の健康をつかさどるWHO(世界保健機関)の「健康とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態」という健康の定義は保健の授業で必ず学ぶ。その一方、人は疾病や障害を免れない存在である。順天堂大学スポーツ健康科学部島内憲夫元学部長は、それゆえ、われわれは「たとえ病気や障害があっても生き生きと生きている・生きようとしている状態」をも健康と考えると述べている。
すなわち健康科学とは、健常者に限らず、疾病や障害の種類や程度など、人の全ての状態に目を向け、健康づくりを支援するための知識や技能、さらにそれを機能させるためのシステムについて扱う総合的な学問領域である。
このような幅広い健康観、そして健康状態を支援することによりWHOが掲げる「Health for All (ヘルス・フォー・オール:すべての人々に健康を)」という目標を達成することができると考える。
すなわち健康科学とは、健常者に限らず、疾病や障害の種類や程度など、人の全ての状態に目を向け、健康づくりを支援するための知識や技能、さらにそれを機能させるためのシステムについて扱う総合的な学問領域である。
このような幅広い健康観、そして健康状態を支援することによりWHOが掲げる「Health for All (ヘルス・フォー・オール:すべての人々に健康を)」という目標を達成することができると考える。
健康科学の特色
健康科学は乳幼児から高齢者までの生涯にわたるライフステージを対象とし、健康をさまざまな角度からとらえる学際的な学問領域である。
「健康科学」という表現は、1980年代からよく使われるようになり、それまでの医学を中心とした、公衆衛生学、精神医学、看護学などの健康関連諸科学との連携と、現代の社会的ニーズによって誕生している。アメリカでは、早くに学部として独立した学問分野を形成しており、日本においても健康科学領域の学部や学科の整備が急速に進んでいる。
健康に関する人びとの関心は、現在ますます高まっている。それは健常者の体力増進、健康維持、レクリエーションスポーツの習慣化などの形で、多様な広がりを見せているほか、病気や障害のある人びとが、高い「QOL(Quality of Life クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)」を実現するための健康のとらえ方やアプローチ方法を求めていることからもうかがえる。したがって、それを担う健康科学は、体育学、保健学、看護学、福祉学、心理学、社会学、教育学などの幅広い学問分野とつながりながら展開している。
この分野の日本での大きな特徴といえば、スポーツ・運動をはじめとして広い意味での「体の動き」、つまり「身体性」に目を向けていることである。そのため、健康科学系学部はスポーツ・体育領域とともに発展し、健康科学領域に関連する職業も多岐にわたる。
この分野を学んだ者はスポーツ指導や保健体育科教育、特別支援、養護(保健室)などの学校現場以外にも、医療保健や福祉、自治体や行政、企業などの分野に進出し、さまざまなかたちで健康支援を展開している。
「健康科学」という表現は、1980年代からよく使われるようになり、それまでの医学を中心とした、公衆衛生学、精神医学、看護学などの健康関連諸科学との連携と、現代の社会的ニーズによって誕生している。アメリカでは、早くに学部として独立した学問分野を形成しており、日本においても健康科学領域の学部や学科の整備が急速に進んでいる。
健康に関する人びとの関心は、現在ますます高まっている。それは健常者の体力増進、健康維持、レクリエーションスポーツの習慣化などの形で、多様な広がりを見せているほか、病気や障害のある人びとが、高い「QOL(Quality of Life クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)」を実現するための健康のとらえ方やアプローチ方法を求めていることからもうかがえる。したがって、それを担う健康科学は、体育学、保健学、看護学、福祉学、心理学、社会学、教育学などの幅広い学問分野とつながりながら展開している。
この分野の日本での大きな特徴といえば、スポーツ・運動をはじめとして広い意味での「体の動き」、つまり「身体性」に目を向けていることである。そのため、健康科学系学部はスポーツ・体育領域とともに発展し、健康科学領域に関連する職業も多岐にわたる。
この分野を学んだ者はスポーツ指導や保健体育科教育、特別支援、養護(保健室)などの学校現場以外にも、医療保健や福祉、自治体や行政、企業などの分野に進出し、さまざまなかたちで健康支援を展開している。
健康科学の歴史的背景
健康科学の歴史は、人間の生存に必要とされる最低限の環境や健康維持の実現から始まった。そのため、健康に関する問題は、従来、食品・環境衛生、母子保健、結核等の感染症対策といった社会全体の公益を守るため、保健所(健康福祉センター)等が主な担い手となって展開してきた。現在は、生活習慣病や少子高齢化の問題はもとより、文化や生活の変化によって生じる新たな課題に向き合っていく必要がある。
また、大震災や豪雨などの自然災害、さらに新型コロナウィルス(COVID-19)など新たな感染症問題に対して、より一層高度化した公衆衛生の仕組みづくりも求められている。
さらに、WHOは21世紀の健康戦略として、ヘルスプロモーションという概念を提唱している。これは、健康の対立概念として疾病を位置づけ、疾病や障害がないことを意味する「消極的健康」から、よりポジティブな側面に目を向けて、健康的な環境をつくり、QOLの向上を目的としたヘルスプロモーションという考え方に重点を置く方向に発展していることを意味しており、「積極的健康」(Positive Health)を目指す方向となっている。この考えをもとに、現在、高校の学習指導要領の「保健」の目標のなかにヘルスプロモーションの重要性がうたわれている。
このようなことから、人びとの健康を支えるための取り組みの担い手として、従来からの保健所や自治体、地域の医師や薬剤師、保健師、栄養士、学校の保健体育科教員や養護教諭のみならず、社会のさまざまな組織や団体がその実践に参加するようになってきている。健康への取り組みとして、各自治体では「健康づくり条例」の制定を進めており、企業では健康で働くためのCSR(企業の社会的責任)を明確にしている。
こういった健康問題の多岐にわたるニーズに応えるためには、教育、医療、福祉などの視点から、幅広い分野について、基本から専門に至る知識と対応力を備えておくことが大切になってくる。今後さまざまな健康課題に向け、家庭、学校、地域、職場といった生活の場において、相互に連携して新たな健康支援モデルをつくることが必要である。
また、大震災や豪雨などの自然災害、さらに新型コロナウィルス(COVID-19)など新たな感染症問題に対して、より一層高度化した公衆衛生の仕組みづくりも求められている。
さらに、WHOは21世紀の健康戦略として、ヘルスプロモーションという概念を提唱している。これは、健康の対立概念として疾病を位置づけ、疾病や障害がないことを意味する「消極的健康」から、よりポジティブな側面に目を向けて、健康的な環境をつくり、QOLの向上を目的としたヘルスプロモーションという考え方に重点を置く方向に発展していることを意味しており、「積極的健康」(Positive Health)を目指す方向となっている。この考えをもとに、現在、高校の学習指導要領の「保健」の目標のなかにヘルスプロモーションの重要性がうたわれている。
このようなことから、人びとの健康を支えるための取り組みの担い手として、従来からの保健所や自治体、地域の医師や薬剤師、保健師、栄養士、学校の保健体育科教員や養護教諭のみならず、社会のさまざまな組織や団体がその実践に参加するようになってきている。健康への取り組みとして、各自治体では「健康づくり条例」の制定を進めており、企業では健康で働くためのCSR(企業の社会的責任)を明確にしている。
こういった健康問題の多岐にわたるニーズに応えるためには、教育、医療、福祉などの視点から、幅広い分野について、基本から専門に至る知識と対応力を備えておくことが大切になってくる。今後さまざまな健康課題に向け、家庭、学校、地域、職場といった生活の場において、相互に連携して新たな健康支援モデルをつくることが必要である。
健康科学を学ぶ際のカリキュラム
日本で健康科学領域の学部学科を持つ大学は、近年増加傾向にある。現代では、前述のようにライフスタイルの変化や新しい健康観の出現により、スポーツ・体育・レクリエーション・運動療法・リハビリテーションなど、対象者の状況や年代にも幅広く目を向けており、確実にニーズが増えていることが背景にあると考えられる。
健康科学領域は、体育学部やスポーツ科学系学部の中に学科やコースとして設置されているケースがもっとも多い。医療系、福祉系、人間科学系、心理系、さらには時代の要請として環境学、経営学、情報科学に関連させながら構成している学科・コースも設置されるようになり、幅広い形態が用意されている。
近年新たに大学、学部、学科が新設されているので、志望校を決める上では、それぞれの建学の精神や教育目標、カリキュラムを理解し、さらに取得できる免許・資格や卒業生の進路等をよく調べて選定していただきたい。
(1)カリキュラムの内容
主に以下の図で示すような科目を中心に学びが用意されている。各領域にまたがって幅広く履修できる場合も多い。
ここで順天堂大学を例に概説していきたい。
1年次は一般教養科目群(外国語、人文・社会科学、自然科学科目)や専門基礎科目群(スポーツ健康科学総論やスポーツ指導者に必要な医学的知識、体つくり運動など)を履修し、2年次は分野に分かれ、分野共通科目(キャリアデザイン、スポーツ心理学、運動生理学、衛生・公衆衛生学など)およびスポーツ健康・教育分野科目(健康学概論、学校保健学、障害者教育総論など)を履修、3・4年次は健康科学コースとして、健康運動指導論、健康運動指導実習、スポーツによる健康サポートの科学、健康教育学、健康学実習等を履修し学びを深める。
(2)取得できる免許・資格
保健体育教諭免許の取得のほか、スポーツ指導、健康運動指導に関する資格や福祉系の資格など、取得できる資格は多岐にわたる。
取得できる代表的な免許・資格は以上の通りだが、各大学・学部・学科によって異なるので、よく確認していただきたい。卒業生は、学校、地域、職場、行政、医療関連施設などさまざまな分野で活躍している。全ての人びとの健康づくりに向けた研究と実践はもとより、自分自身の健康づくりに関心と意欲を持っている受験生に大いに挑戦していただきたい。
健康科学領域は、体育学部やスポーツ科学系学部の中に学科やコースとして設置されているケースがもっとも多い。医療系、福祉系、人間科学系、心理系、さらには時代の要請として環境学、経営学、情報科学に関連させながら構成している学科・コースも設置されるようになり、幅広い形態が用意されている。
近年新たに大学、学部、学科が新設されているので、志望校を決める上では、それぞれの建学の精神や教育目標、カリキュラムを理解し、さらに取得できる免許・資格や卒業生の進路等をよく調べて選定していただきたい。
(1)カリキュラムの内容
主に以下の図で示すような科目を中心に学びが用意されている。各領域にまたがって幅広く履修できる場合も多い。
ここで順天堂大学を例に概説していきたい。
1年次は一般教養科目群(外国語、人文・社会科学、自然科学科目)や専門基礎科目群(スポーツ健康科学総論やスポーツ指導者に必要な医学的知識、体つくり運動など)を履修し、2年次は分野に分かれ、分野共通科目(キャリアデザイン、スポーツ心理学、運動生理学、衛生・公衆衛生学など)およびスポーツ健康・教育分野科目(健康学概論、学校保健学、障害者教育総論など)を履修、3・4年次は健康科学コースとして、健康運動指導論、健康運動指導実習、スポーツによる健康サポートの科学、健康教育学、健康学実習等を履修し学びを深める。
(2)取得できる免許・資格
保健体育教諭免許の取得のほか、スポーツ指導、健康運動指導に関する資格や福祉系の資格など、取得できる資格は多岐にわたる。
取得できる代表的な免許・資格は以上の通りだが、各大学・学部・学科によって異なるので、よく確認していただきたい。卒業生は、学校、地域、職場、行政、医療関連施設などさまざまな分野で活躍している。全ての人びとの健康づくりに向けた研究と実践はもとより、自分自身の健康づくりに関心と意欲を持っている受験生に大いに挑戦していただきたい。

