【小論文対策-2-1】資料分析型小論文-3つの攻略ポイント

小論文対策

2024.06.20

資料分析型小論文-3つの攻略ポイント

いざ小論文を書いてみようと思っても、うまく書けないことも多いのではないだろうか?ここでは「資料分析型小論文」の攻略ポイントを紹介する。過去に実際に出題された例題をもとに具体的な攻略ポイントを解説していくので小論文対策に役立ててほしい。

資料分析型小論文の
最初に押さえておきたいこと

資料分析型小論文は、提示されたデータ、グラフ、統計情報、図表などの資料を読み取り、その内容を分析・解釈して、自分の意見や考えを述べるタイプの小論文だ。

攻略ポイントを紹介する前に、資料分析型小論文に取り組むにあたって押さえておきたいことが3つある。

  1. 分布の偏りを見分け、変化の経緯を見届けること。
  2. その奥に潜んでいる「論じる上でもっとも重要な対象」を見抜くこと。
  3. 「全てを説明する」のではなく、最優先事項を論述する対応が求められること。

資料分析型小論文の例題

次の図は、公立小学校児童における年間の学習塾費と学校外スポーツ支出の推移を表したものである。図から読み取ることができる学習塾費と学校外スポーツ支出の変化について説明し、その変化をもたらしたと考えられる要因についてあなたの考えを論述せよ。なお、論述には「スポーツの産業化」という語句を用い、600字以内で論述すること。

グラフ

(注)値は公立小学校児童の平均
(出典:清水紀宏(2021)『子どものスポーツ格差―体力二極化の原因を問う』大修館書店)

2023年度 高知工科大学 経済・マネジメント学群 総合型選抜入試問題

【攻略ポイント①】×〈読み上げ〉
○〈読み取り〉

資料に示されている数字や動きを、言葉に直して書き表す〈読み上げ〉。資料に示されている数字や動きから、もっとも重要な流れを汲み取る〈読み取り〉。
限られた文字数の中で設問の課題に対応するためには、〈読み取り〉の方が有効である。〈読み上げ〉は、手元のメモを作る上で活用するように心がけたい。

〈棒グラフ〉にて表現される資料では、分布の偏りを「読み取る」。その際に用いるのが〈くくりあげ〉という技法だ。テーマに即しながら、最大公約数的な内容を各項に見出そう。〈折れ線グラフ〉にて表現される資料では、変化の経緯を〈読み取る〉。折れ線が著しい変化を示しているポイントに注目。そのポイントの意味を考察することが〈読み取る〉コツとなる。

今回の課題は〈折れ線グラフ〉系のデータ。多少の増減はあるものの高い水準を維持する「学習塾費」に対して、「スポーツ・レクリエーション活動費」は著しい上昇を見せ、近年では「学習塾費」を上回っている。大まかな読み取りを行ってから、次の段階へ進もう。

【攻略ポイント②】〈要因〉を探る3つの要素とは

〈要因〉を探る。それは、〈変化〉の〈きっかけ〉を探ることである。
入試問題における〈変化〉とは、次の3つの要素の複合体として理解しておこう。

「それまで」
+
「きっかけ」
+
「結果」

つまり、〈要因〉をとらえるためには、3つの要素が必要になるのだ。しかしながら、与えられているデータだけでは、うまく3つを想定できない。そこで、重要になるのが、変化を示すデータを重ねる作業だ。

調査対象は、1994年から2018年の公立小学校児童である。小学生をめぐる変化を考えてみよう。
思い浮かべたいのは、「少子化」の動きである。児童数は減少し続け、2020年には1980年代の半数ほどになっている。細かい数字を記憶している必要はない。大切なのは変化の動きだ。少子化が進行するにつれて、「スポーツ・レクリエーション活動費」は増大し続けている。現代社会の変化の動きには、日頃から注目しておこう。資料分析型解答の底力になるはずだ。

【攻略ポイント③】〈対立するもの〉を考えてみる

少子化に注目しただけでは、意見はまとまらない。
資料を見て意見をふくらませるためには、〈対立〉をうまく機能させることが必要になる。「スポーツ・レクリエーション活動費」に注目してみよう。「費」とあるからには、お金がかかるということだ。

では、お金がかからない「スポーツ・レクリエーション」を考えてみよう。地域のボランティアの方々が運営してくれていたスポーツクラブ。これは、まさしく、お金がかからないスタイルの「スポーツ・レクリエーション」だ。ここに「少子化」の変化を重ね合わせて考察してみよう。児童の数が少なくなると、お金がかからないスポーツクラブも運営ができなくなってくる。サッカーチームや野球のチームも作れなくなるからだ。集団で参加していたスポーツクラブが機能しなくなると、個別の活動として産業化されたスポーツジムや有料のクラブへと活動の場を移す児童の割合が増加してくることが想定される。〈変化〉と〈対立〉を用いて、意見の方向を作り出してみよう。

【合格へのアドバイス】「くくりあげ」が
腕の見せどころ

ヒト、クジラ、ネコ、ネズミ。これらを「哺乳類」という特徴で、すくいあげるのを〈くくりあげ〉と名づける。ヒト、クジラ、ネコ、カエル。これを「哺乳類」とくくりあげるのは間違いだ。「脊椎動物」あたりがふさわしい。「地球上の生物」というくくりあげは、ちょっと大げさ過ぎるだろう。資料の具体的な項目を適切に〈くくりあげ〉するのが、腕の見せどころ。

複数のデータを対象に論述のポイントをつくるためには、一つひとつを読み上げるのではなく、その最大の特徴を〈くくりあげる〉のが有効となる。

小論文とは、細かい数値を報告する場ではない。論述すべき対象を限定した上で、それに対してどのような評価を施すか、その過程を示すことが、合格解答作成のための条件である。

資料分析とは、データの奥に潜む「意味」や「価値」を見届ける行為にほかならない。そして、それは、データの向こうにある人や世界への想像力によって促され培われる。世界へのまなざしを鍛えよう。