大学ってどんなところ?

高校卒業後は大学に行くのが当たり前…と思っていませんか?
親が望んでいるから、周りがみんな行くから、という理由でなんとなく大学に進学してしまうと、こんなはずじゃなかったと後悔することになりかねません。
大学以外にも選択肢はあります。まずは大学のことをきちんと知り、大学で何ができるのか、自分は何をしたいのか検討をして、自分の手で進路を選びとりましょう。
大学受験まるわかり

大学はこんなところ!

国内には794大学があり、学部は多様化

 現在(2023年4月時点/パスナビ調べ)、国内には794の大学があります。大学は設置者により国立・公立・私立に分けられ、国立大学82校、公立大学97校、私立大学607校となっています(794大学には、そのほかに、文部科学省所管外の大学校8校を含みます)。全体の約4分の3を私立大学が占めており、国立大学、公立大学は1割程度です。国立・公立・私立にかかわらず、教育理念や伝統、校風、学部の種類、立地、規模などにより、大学の個性・特色は実にさまざまです。

 では、大学とはどういうところなのでしょうか。ひとことで言うと、大学はあらゆる「知」の集まった「学術の中心」です。世の中にはさまざまな学問がありますが、大学はそれぞれの分野の専門家・研究者が広く・深く研究を行う場であり、同時に、教養や専門性を身につけるための教育を行う場でもあります。研究施設や図書館、博物館なども充実しており、自分の興味・関心のあることをとことん追究することができます。大学に行くということは、アカデミックな世界に一歩足を踏み出すということ。人やものとの出会いや交流を通して多くのことを学び、経験し、世界を広げることができます。

 大学には学問分野に応じてさまざまな「学部」があります。かつては文学部、法学部、経済学部、理学部、医学部などのシンプルな名称で分類されていましたが、昨今は学問分野の多様化に合わせて、学部名のバリエーションも豊富になっています。

 学部は「学科」に分かれており、例えば「文学部歴史学科」「工学部航空宇宙工学科」などのように専門性によって細分されます。さらに、学科の中に「コース」や「専攻」を設けているところもあります。学部・学科の種類や数は大学により異なり、一般的には、さまざまな学問領域の学部・学科がある大学を「総合大学」と呼び、学部・学科がひとつしかない大学を「単科大学」と呼びます。規模も学生数も多い総合大学と小規模・少人数の単科大学では雰囲気が大きく異なり、大学を選ぶ基準のひとつにもなります。なお、学部・学科を「学群・学類」「学域・学類」とする大学もあります。

日本の大学で学べる主な学問分野(学科数が多い順)
学問分野学科数
1経営学・経営情報学・商学・会計学499
2医療・保健学357
3社会学・観光学・メディア学352
4語学340
5国際関係学・国際文化学332
6情報工学309
7看護学297
8経済学277
9小学校・幼稚園課程274
10心理学260
11文学251
12文化学240
13機械工学212
14電気・電子工学202
15社会福祉学194
16児童学・子ども学182
体育・健康科学182
18数学・情報科学175
19芸術系その他(CG等含む)169
20法学166
21建築学163
22デザイン146
23中学校課程144
24栄養学143
25史学・地理学138
26生物学・生命科学135
27政治学・政策学134
28応用化学133
29特別支援教育課程124
30環境科学分野/その他112
薬学112
32食物学107
33土木工学104
34人間科学分野/人文系その他101
35哲学96
36農学87
37生物工学86
38物理学85
39農芸化学83
40医学82
41化学80
42医用・生体工学75
43教育学74
44生物生産・生物資源学67
45材料工学64
46総合科学62
47光工学分野/その他57
48音楽55
49住居学53
美術53
51家政・生活科学51
52航空・宇宙工学44
53畜産学・動物学43
54地学41
55農業経済学40
被服学40
57応用物理学38
58水産学37
59農業工学35
工芸35
61教養学34
養護教諭課程34
63森林科学33
64経営工学・管理工学31
65歯学29
66獣医学17
67資源工学15
68船舶・海洋工学・商船学14
69原子力工学9
70教育支援等その他6
71高等学校教員養成課程2

※学問分野は『螢雪時代』(旺文社)の分類による。
※複数の学問分野を学べる学科は、該当各分野にそれぞれカウント。
※学科組織がない場合は、学部をカウント。
※学部横断プログラムや特別履修課程など、学部相当・学科相当と判断したものは集計。

旺文社教育情報センター『日本の大学数 2022年度は790大学』より作成

一般的には4年制。一部6年制も

 大学は基本的に4年制が一般的ですが、医学科、歯学科、獣医学科、薬学科(薬剤師養成課程)は6年制です。大学では科目を履修して一定の成績を収めると、その証として「単位」を取得できます。科目には、講義形式の授業だけでなく、少人数でディスカッションをするような授業や実習・実験などもあり、大学や学部の特性や専門性により変わってきます。

 また、高学年になると、先生のもと少人数で学ぶ「ゼミ(ゼミナール)」や「研究室」に所属し、そこで研究した内容を「卒業論文」としてまとめ、提出するのが一般的です(卒業論文が不要な学部もあります)。なお、近年はゼミ形式の授業を1・2年生から受講できるところも増えています。

 卒業に必要な単位が定められており、単位を取得して大学を卒業すると、「学士」という学位が得られます。なお、単位が足りずに4年間または6年間では卒業できないケースもあります。大学卒業後は就職する道のほか、「大学院」に進学してさらに研究を続けることもできます。大学院への進学率は大学や学部により異なりますが、一般的に理系の学部では高くなっています。例えば、国立大学で比較した場合、2022年の文系の進学者は10.6%ですが、理系では51.8%となっています(旺文社教育情報センター『2022年の大学卒業者 進路決定率85.0%!』より)。

試験に合格した人だけが入学できる

 大学に入学するためには、各大学が実施する入学試験を受け、合格しなければなりません。入学試験にはさまざまな形式がありますが、大きくは「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」に分かれます。

 一般選抜ではいわゆる学力試験が重視され、国公立大学では「大学入学共通テスト(共通テスト)+大学ごとの個別試験(2次試験)」、私立大学では大学ごとの入試方式で合否が決まるのが一般的です。なお、私立大学では共通テストの点数を合否の判定に利用する共通テスト利用入試を行うところも多くあります。また、総合型選抜や学校推薦型選抜では書類審査や面接が行われることが多く、高校での取り組みや実績、大学での学びへの意欲などが重視されます。昨今は入試の多様化が進んでおり、受験機会や選択肢が増えています。

学費は国公立と私立で大きく異なる

 気になるのが大学の学費。国立大学の学費については文部科学省が定めた標準額の20%増を限度に、各大学が決定できます。標準額は、授業料は53万5,800円、入学金は28万2,000円、両者を合わせた初年度納入金は81万7,800円となっています。公立大学ではおおむね国立大学に準じていますが、入学金については、入学者や保護者などの住所によって異なる大学が多いです(大学指定の地域内に住所があると安くなる)。

 一方、私立大学の学費は、平均して授業料96万7,288円、入学金26万1,004円、これらに施設設備費などを合わせた初年度納入金は164万3,466円です。医・歯・薬学部系統をはじめとする理系ではより高くなっています。

旺文社教育情報センター『2022年度 大学の学費平均額』より作成

短大・専門学校とどう違う?

短大は基本的に2年制。大学への編入も可

 高校卒業後に進学を希望する場合、短大や専門学校という選択肢もあります。それぞれについて見ていきましょう。

 短大の正式名称は短期大学、2年制(看護系など一部は3年制)の大学のことです。限られた時間で基礎を集中して学び、専門的な知識や高度な技能を身につけます。看護・医療・福祉といった専門的な職業人育成の場にもなっており、国家資格の取得を目指すこともできます。短大を卒業すると、「短期大学士」の学位が得られます。短大で学ぶなかでもっと勉強したい、研究したいと思った人には、大学編入学(途中の学年から大学に入学すること)の道もあります。

専門学校では実用的な技能を習得

 一方、ある分野の専門的・実践的な知識やスキルを身につけるための専門課程があるのが専門学校です(専修学校のうち、専門課程を設置する専修学校のことを「専門学校」と呼びます)。2年制がもっとも多いですが、教育内容によって1~4年制までさまざまです。美容師・理容師やデザイナー、ゲーム開発者など、なりたい職業が明確に決まっている人にとっては、短期間で効率よく、仕事に直結する知識や技術を身につけられるというメリットがあります。また、看護系、医療系、福祉系など国家資格の取得を目指す人にとっては、短大と同じく専門学校も選択肢になるでしょう。

 専門学校を卒業すると「専門士」という称号が得られ、短期大学士と同等の証明となり、大学への編入学も可能になります。なお、専門学校での修業年限が4年以上など一定の条件を満たすと、「高度専門士」の称号が得られます。

広く教養を身につけたいなら大学へ

 短大や専門学校と大学との最も大きな違いは、アカデミックな視点で広い教養を身につける、という点。大学の多くでは1・2年次を中心に一般教養科目(名称は大学により異なります)を履修し、専門以外のことも学んで視野を広げ多面的な視点を養います。教養は社会人として生きていくうえでも豊かな人生を送るうえでも大切なものですが、考え方は人それぞれです。手に職をつけて早く働きたい、修業年限を短くして学費を抑えたいという人は、短大や専門学校進学という選択も視野に入れてみましょう。

そのほかの選択肢は?

大学の夜間主コースや通信教育課程で学ぶ

 大学の夜間主コースや通信教育課程で学ぶという選択肢もあります。

 夜間主コース(2部とも呼ばれます)は、「昼間は働きながら大学教育を受けたい」という人のために開設されているものです。授業が行われる時間帯は16時台~21時台が一般的で、図書館などの大学施設も利用できます。カリキュラム(何を学ぶか)は昼間に開講されているものとほとんど変わりなく、4年制が中心で、5年制としている大学も一部あります。学生の年齢層が幅広いのが特徴で、さまざまな社会経験をもつ人々と共に学べるのもメリットです。なお、夜間主コースは昼間部に比べて学費が安く設定されていることが多く(国立大学は昼間部の半額)、経済的な負担を軽減しつつ大学教育を受けたいという人の受け皿になっています。

 一方、通信教育課程は、時間的・地理的など何かしらの制約があって通学できない人のために開設されているものです。2022年度時点で、通信教育課程のある大学は36校、通信教育課程のみの大学は6校あります。近年はインターネットを利用したオンライン授業なども行われていますが、卒業に必要な単位のうち約4分の1(124単位のうち30単位)は、スクーリングと呼ばれる面接授業で修得しなければなりません。大学卒業を目指す「正科生」としてだけでなく、「聴講生」や「科目別履修生」として特定の科目のみ履修することも可能なため、年齢や職業を問わずさまざまな人が通信教育課程で学んでいます。

専門職大学で職業に直結する力を身につける

 2019年度から新たに設置されたのが「専門職大学」。専門知識や技術などの高度な実践力と幅広い教養を身につける、職業教育に重点を置く大学のことです。2022年度時点で専門職大学は15校(公立2校・私立13校)あり、2023年度にも新たに4校が開校します。なお、修業年限が短い「専門職短期大学」もあります。

文部科学省所管外の大学校で職業訓練を受ける

 そのほかにも「大学校」と呼ばれる教育・訓練を目的とした学校もあります。大学校のうち大学に相当する教育を行うとされる学校では、卒業すると「学位」(大学卒業者と同等)が得られます。いずれも職業に直結した学びが可能ですが、卒業後の進路(就職先)がある程度定められているケースが多く、高校生にとってはあまり一般的な進路ではありません。しかし、なかには授業料等が不要で在学中に給与や手当が支給される学校もあるので、興味のある人は調べてみるとよいでしょう。


 大学とはどういうところか、高校卒業後に進学を希望する場合、大学以外にどのような選択肢があるのか、大枠を把握できたでしょうか。ここで紹介したのは概要に過ぎません。それぞれの学校の特徴を調べ、後悔がないよう、自分に合った進路、納得のいく進路を選びとってください。