2024年国公私立大入試 学部別&日程別 志願者動向最新レポート

国公立大一般選抜の地区別の確定志願状況と、私立大一般選抜の志願状況をお伝えする。
共通テストの平均点アップで、国公立大の志願者は前年並み、「初志貫徹」の出願傾向となった。
私立大一般選抜は1%増(2月19日現在)で、中でも共通テスト利用方式は4%増となった。
入試動向分析

◎凡例

(1)本文中の表記について
◎前期日程=【前】、後期日程=【後】、公立大中期日程=【中】、昼・夜間主コース=[昼][夜]、共通テスト=共テ、個別学力検査等(2次試験)=2次、と略記。
◎変更点は「2023年→2024年」で表記。
◎学部・学科名は略称で「学部<学科>」と記載。

(2)国公立大の志願者増減について
志願者増減は、一般選抜の確定志願者数(2月20日発表)について、2023年の志願者数(2024年に募集しなかった旧学部等・日程を含む)と比較し、%で表示。ただし、専門高校・総合学科卒業生選抜、欠員補充2次選抜、追試験等を除く。

(3)私立大の志願者増減について
志願者増減は、2月19日現在で判明した確定志願者数について、2023年と比較(一部未確定を含む)し、%で表示。

国公立大

共通テスト易化で「初志貫徹」
前・後期とも志願者前年並み

 2024年(以下、24年。他年度も同様)の志願者数は、全体で約42万3千人と前年並み(別日程の公立4大学を除く)。大学受験生数は減少(約3%減。旺文社推定)したが、共通テスト(以下、共テ)の平均点アップ(=易化)が受験生を後押しした形だ。

 前年同様、「初志貫徹」の傾向が見られ、東北大・名古屋大・京都大・九州大や、筑波大・千葉大など難関~準難関校の志願者が増える一方で、25年新課程入試を控えた「後がない意識」から、前年の反動(志願者増減や倍率の変動による)も顕著だった。

●北海道・東北地区

 地区全体で志願者は前年比1%減。北海道大は3%減(以下、大学名の後のカッコ内に増減を表示)。前期の総合入試(文系・理系の大括りで募集)は文系がやや減少、理系が微増。また、学部別募集の後期は5%減、前年の反動と見られる。

 一方、東北大は9%増。前年の8%減の反動に加え、「国際卓越研究大学」に選定されたことも、難関校志望者の人気を集めた要因と見られ、定員増の工【前】や経済【前】【後】・理【後】・医〈医〉【前】・薬【前】の増加が目立つ。

 この他、前年の反動で、北見工業大(66%増)・岩手大(21%増)・秋田県立大(21%増)が大幅増。一方、やはり前年の反動で、北海道教育大(22%減)・室蘭工業大(33%減)・福島大(13%減)が大幅減。また、弘前大(7%増)・秋田大(9%増)の増加、山形大(9%減)・岩手県立大(11%減)の減少も目立った。

●関東・甲信越地区

 地区全体の志願者は前年並み。東京大は1%増、文科三類【前】(7%増)・理科一類【前】(9%増)が人気を集める一方、文科一類【前】(8%減)・文科二類【前】(5%減)は2段階選抜を実施しなかった(他の4科類は実施)。一橋大(1%増)は前年並みだが、東京工業大(4%減)は募集人員減(4%減。学校推薦型・総合型選抜の女子枠新設による)に見合った結果となった。

 準難関校では、学部増設のお茶の水女子大が14%増、筑波大(3%増)・千葉大(3%増)もやや増加。一方で、横浜国立大(9%減)・東京都立大(3%減)が減少。横浜国立大は2年連続大幅増の反動と見られる。

 この他、学部等増設の茨城大(17%増)・宇都宮大(31%増)や、山梨大(15%増)・横浜市立大(11%増)・都留文科大(11%増)が大幅増。一方、群馬大(10%減)・高崎経済大(10%減)や後期募集停止の埼玉県立大(55%減)は大幅減となった。

●北陸・東海地区

 地区全体で志願者2%減。名古屋大は3%増、経済【前】・工【前】の増加、法【前】・農【前】の減少が目立った。前年の約4割減の反動から、福井大が激増(64%増)。また、三重大(5%増)・愛知県立大(10%増)も増加した。

 一方、富山大(19%減)、情報系増設の富山県立大(32%減)や、石川県立大(44%減)・石川県立看護大(28%減)が大幅減。また、定員増の金沢大も7%減。能登半島地震の影響による、他地域からの流入減と見られる。この他、岐阜大(7%減)・静岡大(8%減)・名古屋工業大(5%減)も減少した。

●関西地区

 地区全体の志願者は1%増。京都大は5%増、総合人間〈理系〉【前】・教育〈文系〉【前】・法【前】・経済〈文系〉【前】が大幅増となった。また、神戸大は3%増で、文【前】・法【前】・理【前】・医〈保健〉【前】【後】・農【前】が大幅増、海洋政策科学【後】が大幅減。一方、大阪大は3%減、外国語【前】・理【前】・歯【前】の増加、薬【前】・基礎工【前】の大幅減が目立った。

 この他、奈良教育大(16%増)が大幅増、滋賀大(7%増)・京都工芸繊維大(4%増)・奈良女子大(4%増)・兵庫県立大(4%増)も増加した。また、国公立大で志願者最多の大阪公立大も1%増。一方、前年の反動で和歌山大は9%減、「3→5学部」に再編した京都府立大も2%減となった。

●中国・四国地区

 地区全体の志願者は前年並み。前期のみ実施の岡山大は7%増。文・法[昼]・経済[昼]・理が大幅増、教育・医〈保健〉・農が大幅減となった。一方、広島大は6%減。総合科学・文・法[昼]・歯・薬の前期、情報科学【前】【後】が大幅増、経済[昼]・工・生物生産の前・後期、総合科学・文・教育・理の後期が大幅減となった。

 この他、前年の反動から鳥取大(43%増)・島根大(39%増)・香川大(28%増)・広島市立大(36%増)が大幅増、徳島大(8%増)も増加した。一方、やはり前年の反動から、山口大(24%減)は大幅減。なお、情報系学部等を増設した公立3大学は、下関市立大(20%増)が大幅増、周南公立大(20%減)・高知工科大(30%減)が大幅減と明暗が分かれた。

●九州地区

 地区全体では志願者2%増。九州大は4%増、文【後】・教育【前】・経済【後】・農【前】【後】で大幅増、法【後】で大幅減となった。情報系増設の熊本大も5%増。

 この他、前年の反動から長崎大(17%増)・北九州市立大(25%増)が大幅増、大分大(7%増)・長崎県立大(9%増)も増加した。一方、前年の反動と農の定員減から、宮崎大(23%減)が大幅減。また、佐賀大(6%減)・琉球大(6%減)も減少した。

私立大

チャレンジ志向で準難関人気
共テ利用方式が人気アップ

 2月19日現在の、主に2月入試の志願状況(集計数:186大学・約251万9千人)を見ると、志願者数は前年比1%増。学校推薦型・総合型選抜の志願者増が予想外に小幅(23年12月末で2%増)で、やや一般選抜志向が復活。近年の合格者増による易化を見越し、チャレンジ志向が見られる一方、「後がない意識」から、合格確保校の併願を若干増やす、オーソドックスな出願傾向が見られた。

 各大学の独自入試が1%減、共テ併用方式が前年並み。一方で、共テ利用方式は4%増。出願締め切りが共テの前の方式では前年の、後の方式では今年の共テ平均点アップが追い風になった模様だ。また、英語外部検定利用方式も人気を集めた。

 以下、誌面の都合上、一覧表に掲載できなかった大学や方式等も含め、主な大学の志願状況を紹介する。

●首都圏

 難関~準難関校では、出願期間を延長した上智大(11%増)が大幅増、慶應義塾大(1%増)・東京理科大(1%増)も微増。また、青山学院大(7%増)・学習院大(12%増)・法政大(3%増)が増加、明治大も微増(1%増)。共テ利用方式の増加が目立ち、大都市圏志向、チャレンジ志向、国公立大からの併願増が影響したと見られる。一方、日本女子大(15%減)が大幅減、中央大(3%減)・立教大(3%減)・早稲田大(2%減)はやや減少した。

 中堅上位校のうち、いわゆる「日東駒専」は、不祥事による混乱が続く日本大が25%減、一方で専修大(14%増)・東洋大(18%増)は大幅増、駒澤大(2%増)も微増。

 また前年の反動から、成蹊大(17%増)・成城大(15%増)・武蔵大(16%増)の大幅増が目立った。

 その他、獨協大(14%増)・国士舘大(10%増)・大東文化大(37%増)・武蔵野大(11%増)が大幅増、東京電機大(8%増)・東京都市大(7%増)も増加した。一方、亜細亜大(23%減)・工学院大(11%減)は大幅減、芝浦工業大(5%減)・東海大(8%減)も減少した。

●京阪神地区

 いわゆる「関関同立」は、関西学院大(20%増)が3年連続の大幅増、同志社大(2%増)・立命館大(5%増)も増加したが、関西大(6%減)は減少した。また、いわゆる「産近甲龍」では、甲南大(11%増)の2年連続の大幅増に対し、近畿大(1%減)・龍谷大(1%減)は微減、京都産業大(20%減)は大幅減となった。関西学院大は学部個別日程の配点による複線化と受験料併願割引制度の拡充が、大幅増の要因となったものと見られる。

 その他、京都橘大(19%減)・神戸学院大(17%減)が大幅減、大阪工業大(8%減)・摂南大(7%減)も減少。また、京都女子大(26%減)・同志社女子大(16% 減)・武庫川女子大(19%減)と、女子大の大幅減も目立った。一方、2学部増設の神戸女学院大の激増(233%増)や、佛教大(13%増)・大阪経済大(8%増)のように反動による増加も見られた。

●その他の地区

 中部大(76%増)・名城大(11%増)が大幅増、愛知大(4%増)も増加。西南学院大(1%減)・福岡大(1%増)はほぼ前年並み。一方、東北学院大(3%減)・南山大(2%減)はやや減少、岡山理科大(14%減)・九州産業大(18%減)は大幅減となった。


この記事は「螢雪時代(2024年4月号)」より転載いたしました。