2025年国公立大入試について、人気度を示す「志願者動向」を分析します。大学受験生数の増加を背景に、一般選抜の志願者数は前年に比べて約1%増。共通テストは易化しましたが、「初志貫徹もやや慎重」な出願傾向が見られました。
文部科学省の発表によると、2025年(以下、25年。他年度も同様)の国公立大一般選抜の確定志願者数は428,501人で、24年に比べ1.2%増加(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大・叡啓大・芸術文化観光専門職大は集計に含まれない)。全募集人員(98,236人)に対する倍率(志願倍率)は4.4倍で、前年に比べ0.1ポイントアップした(グラフ①)。
4(6)年制大学の受験生数は前年比で約3%増(『螢雪時代』推定)、大学入学共通テスト(以下、共テと略)の志願者数も約1%増となり、基本ベースの拡大に比例して国公立大の志願者も増えた形だ。
入試日程別に志願状況(グラフ②)と志願倍率の変化(24年→25年)を見ると、前期は「1.5%増:2.9倍→2.9倍」、後期は「0.1%増:10.0倍→10.3倍」、公立大中期は「5.7%増:12.9倍→13.8倍」となった。募集人員の増減(前期:0.1%減、後期3.3%減、中期0.5%減)と比較すると、後期の募集枠縮小に対処するため、公立大中期の併願がやや増えたものと見られる。
さらに、国立・公立別の志願状況を比べると、国立大の「前期0.6%増、後期0.9%減」に対し、公立大は「前期4.2%増、後期3.1%増」。公立大の人気アップが示される結果となった。
共テは平均点が3年連続でアップ(=易化)し、受験生数や共テの志願者数の増加とともに、国公立大の志願者増につながった。新課程科目の影響など、さらに詳しく要因を考えていこう。
新課程初年度の今回から、出題教科に「情報」が追加され、国立大のほとんど、公立大のほぼ半数で必須とされた。国公立大受験の共テ科目の標準となる、文系・理系に共通の6教科7科目(地歴・公民1科目として100点、理科1科目として100点、情報100点の900点満点。経過措置の旧課程科目を含む)の加重平均点(科目別平均点と受験者数から算出。理科基礎は2分野受験の加重平均点)を算出すると、535.57点(得点率59.5%)となった。教科・科目数が異なるため、加重平均点の単純比較はできないが、得点率は24年の57.7%に比べ1.8ポイントアップ。新課程になっても共テが易化したことが、国公立大への出願を後押ししたといえる。
表1で科目別に見てみよう(地歴・公民、数学は24年の旧課程科目との比較)。
【易化】国語、「歴史総合,世界史探究」、「公共,政治・経済(以下、公共政経と略)」、英語リーディングなどで平均点がアップ。国語は近代以降の文章が「2→3問」に増加、新たに実用的な文章が出題されたが、他の2問(論理的な文章、文学的な文章)が複数素材の組み合わせでなく、単独素材でセンター試験に近い出題形式のため、取り組みやすかったと見られる。
また、新科目の情報Ⅰは予想より平易で、平均点を押し上げる要因となった。必須とする大学でも、共テの配点の10%以下が大多数を占めるため影響は小さいが、安心材料となったことは確かだ。
【難化】一方、「数学Ⅱ,数学B,数学C(以下、数学ⅡBCと略)」、英語リスニング、化学などが平均点ダウン。数学ⅡBCは、出題範囲に数学Cが加わった負担感が影響したといえる。なお、公立大では主に看護・医療系で数学1科目(ⅡBCの影響を受けない)のケースも多く、これも公立大人気につながった模様だ。
【地歴・公民で明暗】科目構成が全面的に再編された地歴・公民では、24年(旧課程科目)と比べ、「地理総合,地理探究」が平均点大幅ダウン、公共政経は大幅アップと明暗が分かれた。
【実際の出願傾向は…】平均点アップを背景に、やや強気な出願も予想された。しかし、自己採点後のボーダーラインも上がったため、強烈な現役志向から、結果的に「基本は初志貫徹だが、やや慎重」な出願傾向となり、難関校より準難関校の志願者増、中堅校では前年の反動と「国立大→公立大」の志望変更が目立った。また、物価上昇などによる家計不安が影響し、地元出身者が学費面で優遇されることが多い公立大の人気アップにつながった可能性もある。
25年入試の主要な変動要因として、新課程初年度の共テ以外に注目されたのが、理工系・情報系の定員増や女子枠の導入だ。
理工系・情報系の定員増は、福島大・横浜国立大・岐阜大・名古屋大・三重大・滋賀大・大阪大・和歌山大・広島大などで実施された。このうち、一般選抜の募集人員が増加した福島大‐理工学群の前期、岐阜大‐工の前・後期、滋賀大‐データサイエンスの前・後期、広島大‐情報科学の前期などは志願者大幅増につながった。
一方、理工系・情報系の学校推薦型・総合型選抜で女子枠の新設・拡大が相次いだ影響で、千葉大‐情報・データサイエンス、東京科学大‐理学院・工学院、佐賀大‐理工、長崎大‐工の各前期、福井大‐工の後期などで募集人員を削減。このうち、東京科学大‐工学院の前期、福井大‐工の後期は志願者大幅減につながった。
この他、京都工芸繊維大が全学で後期を募集停止したことも影響大。国の施策で新増設や定員増が相次いだ割に、後述のように工学系統の志願者は伸び悩むこととなった。
この続きを読むには
に登録(無料)が必要です
さらに旺文社のサービスで
この他にも便利な機能が!
詳しくはこちら