全体解説
新課程移行に伴う変更以外に、新増設や2次の変更が多数。募集人員が一般選抜から学校推薦型・総合型選抜へ移行
国立15大学が推薦型・総合型で女子枠新設、一般選抜にも影響
国公立大の2025年(以下、25年。他年度も同様)入試「選抜要項」で、各大学の募集人員、入試科目・配点が正式に発表された。
新課程への移行に伴う初登場の教科・科目(情報、歴史総合など)が注目を集めるが、その他の変更も多い。ここでは、主に新増設・改組と一般選抜の変更点(募集人員、科目・配点の増減など)を紹介する。
共通テスト(以下、共テ)の出願へ向け、『螢雪時代』10月号付録「2025年 全国 国公立大学 入試科目・配点一覧」と併せ、志望校決定の参考にしてほしい。
ただし、これらは今後の変更もあり得るので、大学ホームページで最新の発表をチェックしよう。
(1)新増設・改組
文部科学省の理・工・農・情報科学系の人材育成強化支援政策により、それに基づく学部等の新設や定員増が目立つ。一方で文系・教員養成系の定員減を伴う場合も多く、前年同様、「理系拡大、文系縮小」の傾向が見られる。
【大学・学部の統合】
東京医科歯科大と東京工業大が統合し、「東京科学大学」に名称変更。また、名古屋市立大で医・看護の2学部を統合する。
【新増設】
理工系や文理融合の情報科学系の学部等新設が目立つ。国立大では岩手大‐ 獣医、秋田大‐ 情報データ科学、山形大‐ 社会共創デジタル学環、筑波技術大‐ 共生社会創成、神戸大‐ システム情報、山口大‐ ひと・まち未来共創学環が開設予定。公立大では福井県立大‐ 恐竜、下関市立大‐ 看護が開設予定だ。
【定員増】
福島大‐ 理工学群、茨城大‐ 工、筑波大‐ 理工学群・情報学群、横浜国立大‐ 理工、新潟大‐ 工・創生、三重大‐ 工、大阪大‐ 工・基礎工、奈良女子大‐ 生活環境、広島大‐ 工・情報科学などで定員増が申請された。
【学科の再編】
既存の学部で複数の学科を整理するのは、最近の傾向だ。岩手大‐ 理工が3→1学科に統合、同‐ 農が6→4学科に再編(「主な変更点は何か」北海道・東北の岩手大の図も参照。獣医学部新設も関連)。島根大‐ 総合理工が7→1学科、宮崎大‐ 農が6→2学科に統合。福島大‐ 理工学群も9→4コースに再編。一方、岐阜大‐ 応用生物科学では「2課程1学科→4学科」に改組する。
(2)推薦型・総合型の「女子枠」導入
後述の「主な変更点は何か」では触れていないが、学校推薦型・総合型選抜(以下、推薦型・総合型)の新規実施や募集枠拡大が目立つ。要注目は、理工系・情報科学系における「女子枠」の新設・拡大。千葉大・神戸大など国立15大学で新設。東京科学大・名古屋大・島根大でも募集枠を拡大する。
(3)日程変更・募集人員
【日程変更】
京都工芸繊維大が後期を募集停止、関西地区の理工系志望者への影響大。京都大‐法、茨城県立医療大、沖縄県立看護大も後期を募集停止。一方、山陽小野田市立山口東京理科大‐ 薬で前期、和歌山大‐ 観光で後期を新規実施する。
【募集人員】
定員増により、福島大‐ 理工学群、三重大‐ 工、滋賀大‐ データサイエンス、和歌山大‐ システム工、広島大‐ 情報科学の各前・後期、大阪大‐ 工・基礎工の前期などで募集人員増。一方、和歌山大‐ 教育の【前】・後期、秋田大‐ 教育文化の前期、神戸市外国語大‐ 外国語の後期などで募集人員減。また、推薦型・総合型の女子枠新設・拡大などの影響から、千葉大‐ 情報・データサイエンス、東京工業大‐ 理学院・工学院、佐賀大‐ 理工、長崎大‐ 工の各前期、福井大‐ 工の後期などで募集人員を削減。さらに、茨城大‐ 工、富山大‐ 工、福岡教育大では「後期→前期」へ募集人員を移行する。
(4)2段階選抜
九州大‐ 薬(臨床薬)、長崎大‐ 薬(薬)、熊本大‐ 薬の各前期で新規実施。新設の神戸大‐ システム情報の前・後期でも実施する。また、旭川医科大の前・後期、東京大の前期(理科三類以外)で予告倍率を引き締め、大阪公立大‐ 医(医)の前期で選抜基準に倍率を追加(従来は得点)、奈良県立医科大‐ 医(医)の前期では得点を追加(従来は倍率)する。一方、横浜国立大が全学で2段階選抜を廃止する。
(5)科目等の増減
【共テ】
富山大‐教育の後期で4→8科目に増加。新潟県立看護大の前・後期で数学を2→1科目に軽減する。
【2次】
宇都宮大‐ 農の前期で英語重視の1→2科目に増加。和歌山大‐ 経済・観光の前期で総合問題を学科2科目に変更。鳥取大‐ 農(共同獣医)の前期で数学を追加。熊本大‐ 薬の前期で英語・面接を追加。鹿児島大‐ 法文・農・共同獣医(畜産)の前・後期で調査書点数化を追加。東京都立大では6学部の前期で英語を追加(共テの英語、英語外部検定の利用を含む)。静岡県立大‐ 経営情報の前期で1→2科目に増加する。
一方、一橋大は全学で外国語から聞き取り・書き取り試験を除外。名古屋大‐ 医(医)・理で国語を除外。島根大‐ 教育の前・後期で調査書点数化を除外。神戸市外国語大・高知工科大では全学の後期で2次を取りやめる。
(6)その他の変更
【学外試験場】
宮崎大‐ 農・地域資源創成の前期で横浜に新設、三条市立大の前・中期で札幌・東京に増設。一方、富山大‐ 経済、北九州市立大‐ 法の各前期で学外試験場を廃止する。
【学費等の減免】
東京都立大で生計維持者が都内に在住する学生の授業料全額免除を導入。神奈川県立保健福祉大でも入学金を半減する。
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新課程初年度の共テは、初登場の教科・科目以外の変更は少なく、既卒者対象の経過措置(旧課程科目の出題)もあり、大きな難易変動はなさそう。ただし、情報Ⅰの追加、国語の出題増、数学の出題範囲増などの負担が敬遠され、「共テ離れ」は進みそうだ。
国公立大志向は根強いが、募集枠が拡大した共テを課さない推薦型・総合型へ流れる可能性もある。また、共テの平均点次第では、情報Ⅰを「選択しなくて済む」「配点比率が低い(10%未満)」、または数学1科目の大学・学部への志望変更も見込まれる。加えて、理系学部等の増設や定員変更も、志願動向にやや影響するものと見られる。
ここがポイント
理系学部等の新設・定員増、英語に関連する2次変更が目立つ
東京大など、2段階選抜は予告倍率・基準を引き締める方向