併願校の選び方

受験生の多くが、第1志望校とは別の大学・学部も受験します。1校しか出願・受験しない「専願」に対して、複数校に出願・受験することを「併願」と言い、併願校選びは受験勉強にもその後の進路にも大きく関わってきます。今回は、併願の目的や意義、併願校選びのポイントや注意点などについて解説します。
大学受験まるわかり

なぜ併願をするのか?

併願の目的・意義を確認しよう

まずは、併願の目的・意義を整理しておきましょう。

併願の目的・意義は、大きく3つにまとめられます。

①第1志望校に不合格だった際の、代わりとなる進学先を確保する。

②本命である第1志望校の試験本番に向けた実戦訓練になる。

③進学先確保により、メンタル面を安定させる安心材料になる。

基本的には「併願校=進学する可能性がある大学・学部」であり、特に①を目的として受験する併願校については、「入学したい(入学してもいい)と思える大学・学部」を選ぶことが重要になります。

また、併願校対策が第1志望校対策にあてる時間を奪うようであれば本末転倒ですから、受験科目はもちろん、できれば入試問題の出題傾向が近い(大きく外れない)学部・学科であることが望ましいと言えるでしょう。詳しくは後述します。

併願パターンを押さえよう

受験生からよくあるのが、「併願校は何校受けるべき?」という質問です。

一般的には、第1志望校を含めて4〜8校程度が基準になります。

翌年の進路に関わり、受験料の問題もあるため、まずは家庭の方針・事情(浪人の可・不可、一人暮らしの可・不可、いくらまでなら受験料を出せるか等)について保護者と話し合っておきましょう。

併願パターンは、大きく3つ(標準型・スリム型・チャンス拡大型)。「目標校(=第1志望校)」を軸に、「実力相応校(=直近の模試の偏差値±2のレベルの学校)」、「合格確保校(=直近の模試の偏差値−3〜5のレベルの学校)」の3つに分類して考えていきます。個別対策が不要な「共通テスト利用入試」を組み込むと、少ない負担で併願校を増やすことができます。

第1志望校に集中したい人や受験料を抑えたい人は、「スリム型」がおすすめ。「チャンス拡大型」については、受験校を増やすあまり試験日程が詰まりすぎて第1志望校の本番に支障が出ないよう、注意が必要です。

併願校選びのポイントは?

難易度から選ぶ

「目標校=第1志望校」以外の受験校は、直近の模試の自分の偏差値を参考にしつつ、「実力相応校」は偏差値±2のレベルの学校が、「合格確保校」は偏差値−3〜5のレベルの学校が、対象になります。

最終的には、入試科目や出題傾向なども考慮したうえで、それぞれ数校に絞り込みましょう。もちろん、「行きたい大学・学部(行ってもいいと思える大学・学部)」を選ぶことが大前提です。

入試科目から選ぶ

併願校は、第1志望校の受験科目と同じ科目で受けられる学部・学科であることが鉄則。対策の負担を減らすためにも、第1志望校と出題傾向が近い学部・学科だとベストです。例えば、日本史で近現代史が重視される、古文では高度な古典常識が問われるなど、いわゆる「クセのある出題」が見られる学部・学科は、それに応じた対策が必要になるため、できれば避けたいところです。

国公立大を第1志望にしている人は、私立大の共通テスト利用入試を活用すると、対策の負担を減らせます。

試験日程を考慮する

受験スケジュールを組む際には、「目標校=第1志望校」を最終ゴールに設定し、そこまでの期間に併願校の受験を組み込んでいくのが基本。「合格確保校」で自信をつけ、「実力相応校」で場に慣れ、「目標校=第1志望校」で実力を最大限に発揮する…というように、徐々に難易度を上げていけるのが理想です。

日程は詰めすぎず、できれば試験と試験の間を1日は空けたいところ。それが難しくても、連続受験は3日までにとどめます。うまく日程が合わないない場合は、共通テスト利用入試などの別方式で受験することも検討しましょう。

学校推薦型・総合型選抜を利用する

受験チャンスを増やすために、学校推薦型・総合型選抜を利用する手もあります。ただし、学校推薦型・総合型選抜は「専願(=合格したら必ず入学する)」のケースもあるため、併願校として検討する場合は十分に注意しましょう。

なお、学校推薦型選抜の中でも「指定校制推薦」は基本的に併願や合格後の辞退ができないことにも留意しておきましょう。

第1志望が国公立大・私立大の2つの併願ケースの例を見ながら解説します。

国公立大の学校推薦型・総合型選抜には1校しか出願できません。一方、学校推薦型・総合型選抜が「併願可」の私立大であれば、併願が可能です。

学校推薦型・総合型選抜において、A大学(第1志望校)・B大学(併願校)どちらも合格or A大学のみに合格した場合は、A大学に入学が決定します(専願のため)。

一方、図のように、A大学は不合格でB大学に合格した場合は、B大学の合格を確保しつつ、A大学の一般選抜に再チャレンジできます。もちろん、他大学の一般選抜を受験してもOKです。

また、A大学・B大学どちらも不合格の場合も、一般選抜で再チャレンジができます。

私立大の学校推薦型・総合型選抜は、「併願可」の大学であれば、複数校に出願できます。図のように、C大学(第1志望校)は不合格でD大学(併願校)には合格した場合は、D大学の合格を確保した状態で、一般選抜で再びC大学や他の大学に挑戦することができます。

注意したいのが、学校推薦型・総合型選抜の選考スケジュールです。学校推薦型・総合型選抜は、一般選抜に比べて出願・選考期間が早く始まり、合否も早くわかるケースが多いですが、国公立大の共通テストを課すタイプなどは、合否がわかるのが一般選抜の直前というケースもあります。

その場合は、学校推薦型・総合型選抜の対策と一般選抜の対策を長期的に並行して進める必要があり、学習面でもメンタル面でもそれなりの負担があることを理解しておきましょう。


今回は、受験戦略に不可欠な「併願」について解説してきました。近年は、学校推薦型・総合型選抜の枠を拡大する大学が増え、入試方式も多様化が進み、受験生にとってはチャンスが広がっていると言えます。

一方、受験機会が多いからとやみくもに併願校を増やすことは、おすすめできません。まずは、「標準型(6校程度)」「スリム型(4校程度)」「チャンス拡大型(8校程度)」のいずれかでいくのかを決めましょう。

そして、自分にとっての「目標校=第1志望校」を軸に、「実力相応校(=偏差値±2のレベルの学校)」、「合格確保校(=偏差値−3〜5のレベルの学校)」を洗い出し、受験科目や試験日程を照合しながら総合的に決めていきましょう。

繰り返しになりますが、併願校選びの最大の基準は、「行きたい・行ってもいいと思えるか?」です。判断に迷ったときは、自分に「この大学に行きたい? 行きたくない?」と問いかけてみてください。