SNSや実家暮らしの門限問題など、子どもの大学入学後に保護者が直面する可能性がある悩みのテーマ別に、齋藤先生にQ&A形式でアドバイスをうかがいました。
若い世代のSNSやネットに関する価値観は、親世代には理解が難しく、交流の実態も見えにくいものです。交友関係がネットの世界だけで完結しがちな人もいれば、SNSの情報が支えになっている人もいますし、ゲームなどを通じた交流がリアルな友達関係に移行する人もいます。親世代とのギャップは大きく、心配もあるでしょう。警戒が必要なのは、たとえば詐欺や闇バイトなど安全面に関する問題です。そうした場合は、ためらわず介入してください。
お子さんが実家から大学に通う場合、門限など生活に関するルールは、特に1年生のうちはあっていいと思います。たとえば高校時代の門限が20時だとしたら、大学入学直後は21時半とまず決めます。その後、サークル活動やアルバイトが始まったら、その都度親子で相談し、見直していくといいでしょう。親から一方的に生活のルールを押しつけるのではなく、一緒に暮らす家族として、親子でともにルールを作る意識を持っていただくのがいいと思います。
一人暮らしには、子どもの自立を促す力があります。ただし、いきなり保護者との関わりが激減すると、お子さんの心境が孤独に傾き過ぎてしまう恐れがあるので、適度な関与は必要です。とはいえ、干渉し過ぎもよくないので、1年生の前半くらいの期間をかけて、徐々に距離感を探るといいでしょう。序盤は毎日連絡を取り、少しずつ数日に1回、週に1回と頻度を落としていきます。その中で、お互いに安心できる連絡の取り方や頻度を見つけましょう。
大学生はどんどん自立・成長していく時期なので、子どもたちは様々な挑戦をします。安心安全が脅かされるようなものは別ですが、保護者の方には、基本的には子どもの挑戦や変化を見守っていただきたいと思います。
子どもたちの変化には、若者らしい髪型や服装も含まれるかもしれません。服装や髪の色などが高校時代と比べて変わったら、それを受け止めて話題にできる関係が築けているかどうか、を考えてみてください。服装や髪形が明らかに変わったのに、お子さんがその話題を拒絶するとか、保護者側がそれに触れにくい状況だと、少し注意が必要です。雑談を含めた日常的な会話を大事にして、そうした変化も話題にできるような親子関係を構築してほしいと思います。
前述の通り、大学1年生は大人に向かって少しずつ成長していく時期です。ゆくゆくは親子が対等に相談し合い、支え合う自立した家族になっていけるといいでしょう。ただし、お子さんが大学生の間は、保護者が抱える悩みなどをすべて打ち明けるのは控えたほうがいいケースもあります。大人として自立していく段階であるとはいえ、大学生はまだ成長の途上であることを忘れないでください。
もし保護者が健康面や経済面、親戚関係などで深刻な問題を抱えている場合は、お子さんに相談しても受け止め切れない可能性があります。そうした場合は、まず専門機関や自治体などに相談するのが先決です。保護者の方も、悩みを抱え込み過ぎないようにしてください。
困ったら保護者に頼るのも大事
自分でできることを増やそう
大学に合格した皆さんにお伝えしたいのは、「親には心配してもらっていいよ」「決して迷惑じゃないよ」ということです。私が普段、相談を受けている学生さんたちには、自分が困っている状況について「親には知られたくない、申し訳ない」と打ち明ける人が多くいます。しかし、保護者に頼ることが必要な場面はあります。子どもが悩みを抱え込んだ結果、心の傷が長く残ったり、孤独にうずくまる時間が長期化したりすることのほうが、保護者にとっては悲しいことです。
同時に、様々な新しい経験が待ち受ける大学生活では、自分で壁を乗り越えていくことも大事です。独力でできることを、少しずつ増やしていきましょう。
子どもの新たなステップを喜び
様々な挑戦を応援してほしい
お子さんが大学に合格された保護者の方々にお伝えしたいのは「息子さんや娘さんの成長をまずは精一杯喜びましょう」ということです。これまで説明してきた通り、大学進学とはお子さんの人生が新たなステップに進むということを意味します。ひょっとすると、第1志望校でない大学への進学が決まったお子さんもいるかもしれません。しかし、それでも新たなステップには違いありませんし、大学ではきっと様々な出会いや、可能性を広げる挑戦の機会が待っています。
保護者の方々には、お子さんが新たなステップに進んだことを一緒に喜んでもらえればと思います。また、お子さんの様々な挑戦を応援し、支えてもらいたいと願っています。
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