総合型選抜ガイド | 選考の特徴からスケジュールまでまるっと解説!

基礎知識

2024.09.26

総合型選抜ガイド | 選考の特徴からスケジュールまでまるっと解説!

早めの合格を得られるルートとして存在感を増す入試方式

かつて「AO入試」の名称で実施されていたが、入試改革に伴い2021年度に「総合型選抜」と改称。学力試験を必要としない形式も多く、また年内に合格を確保できるという魅力で年々志願者数と入学者数を増やしてきた。すでに私立大においては、一般選抜を経て入学する学生の数は半数を割り、4割ほどまでになっている。「総合的な探究の時間」や「資格試験」、「留学経験」など高校時代に多様な活動を経験した学生にとっては、自らの多様な経験を生かしてチャレンジできるため、総合型選抜は魅力的な入試方式といえる。

総合型選抜とは

総合型選抜は、かつてのAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と同じく、大学・学部が求める学生像(アドミッション・ポリシー)と受験生の能力・適性・意欲・目的意識が合致しているかどうかを選考する入試方式だ。

1次選考と2次選考に分かれて行われることが多く、学校推薦型選抜と比べて選考期間が長くなることが多い。私立大の一部では本出願の前にセミナー等への参加や面談が必要というケースもある。

基本的には専願が多かったものの、私立大では併願可能な総合型選抜も増加している。

総合型選抜と他の入試制度の違い

学校推薦型選抜(指定校推薦・公募制推薦など)との違い

学校推薦型選抜(指定校推薦・公募制推薦など)は、学校内での成績や評価を重視し、受験資格も学校から推薦を得た者に限られる。一方、総合型選抜は個人の多様な面を評価するため、出願条件を満たせば誰でも出願ができる。そのため、総合型選抜では学校からの推薦書の必要がない。ただし、出願に際しては、調査書の他に志望理由書など自分で用意・準備が必要になる書類がある。必要書類は大学によって異なるため注意しよう。

一般選抜との違い

一般選抜では学力が最重要視される。一方、総合型選抜は学力だけでなく、個々の個性や意欲などが重視される。また一般選抜の選考は基本的には2~3月に実施されるが、総合型選抜は9~11月が多く、一般選抜よりも早く選考が行われる。さらに合格も年内の11月~12月頃に発表されるため、一般選抜よりも早く合格を確保できる。国立大を中心に大学によっては翌年1月の共通テストを課す場合もあるが、多くの私立大と一部の国立大においては年内に入試を終えられるのが総合型選抜の特徴だ。

総合型選抜学校推薦型選抜
(指定校推薦など)
一般選抜
特徴 学力だけでなく、個人の意欲や能力、将来の目標に対する適性が重視される。 高校からの推薦が必要。推薦枠が限られており、高校が適切と判断した生徒に対して推薦が行われる。 基本的に一発勝負の学力試験に依存するため、学力以外の要素を評価される機会が少ない。
応募者の
自由度
志望校に対する強い意欲と明確な目標を持つ生徒が対象。自分の個性や実績をアピールする機会が多い。 応募には高校の推薦が必要であり、自分の意志だけで選ぶことは難しい。高校の内申点や校内での評価が選考に影響する。 特別な提出書類や高校からの推薦は必要なく、出願書類さえ揃えれば、誰でも出願は可能。
選考の
タイミング
早期に実施されることが多く、合格すれば年内に進路が決まることが多い。 早期に実施されるが、高校での推薦プロセスを経る必要があるため、推薦を得るための競争がある。 2月あたりから年度末にかけて行われる。そこから合格発表までも時間を要す。
必要書類志望理由書、調査書、活動報告書など学校推薦書、調査書、成績証明書など調査書、成績証明書
評価基準志望理由書、調査書、面接、小論文など学校推薦書、評定平均、面接など学力試験(共通テストや大学独自の入試試験)
求められる
スキル
コミュニケーション能力や自己表現力、課題解決能力やリーダーシップなど、幅広いスキルが評価対象となる。 高校の成績、生活や学習の状況が重要視される。学力に加え、推薦を得られるだけの学校生活を送ることができたかが影響する。 試験の得点が重視されるため、受験生の勉強量や試験対策が合否を大きく左右する。

大学の「アドミッション・ポリシー」の
把握が大切!

総合型選抜を受験するにあたっては、大学が公表している「アドミッション・ポリシー」を把握していることが大前提となる。アドミッション・ポリシーとは、「こんな学生を求めている」「こんな学力を身につけておいてほしい」と大学が受験者へ求めていることであり、大学の学校案内や募集要項、公式webサイトに書かれていることが多い。

総合型選抜は、大学の方針と受験生の希望のマッチングを重視する入試であるため、受験生がアドミッション・ポリシーに書かれた「求める学生像」に当てはまる人物かどうかが選考においては重要視される。

アドミッション・ポリシーの把握で1つ気をつけたいのは、大学全体で掲げている場合と、学部・学科個別に存在している場合があること。そのため、大学選びの際には、早めにアドミッション・ポリシーを読んで確認しておくといいだろう。

総合型選抜の出願要件と選考方法

出願要件と出願資格

総合型選抜の受験で大切なのは「評定平均」である。評定平均とは、全科目の成績(5段階)を足し合わせ、科目数で割った数値のことで、高校1年~高校3年の1学期までの成績を対象として算出する。大学側が提示する評定平均の出願基準に満たない場合は、基本的に出願自体が不可能になるため、注意しよう。高い評定平均を取るには1年生からしっかりと成績を収めることが大切だ。

他にも、出願資格として英語の検定試験の取得や現役生限定などが要件になっている場合もあり、入試要項などで確認が必要だ。

選考方法

  • 書類審査+面接
  • 書類審査+小論文+面接
  • 書類審査+学力試験+面接
  • 体験授業(セミナー)+書類審査+面接
  • 書類審査+プレゼンテーション+面接

総合型選抜の選考方法は、書類審査と面接、小論文を基本に、様々なパターンがある。さらに、書類審査のなかでも志望理由書や学修計画書、自己PR書など様々なパターンがあり、大学によって提出書類は異なる。国公立大では学校推薦型選抜と同様に共通テストを課すタイプも増加しており、選考が長期戦になるところもある。

総合型選抜のスケジュール例
【図表で確認】

総合型選抜は例年、9月1日から出願が始まり、11月1日以降に合格発表が行われる。一般選抜や学校推薦型選抜と比べて早くに試験が行われる分、準備や対策も早めに進めておく必要がある。なお、大学によっては出願条件として、オープンキャンパスや個別説明会への参加を課していることもあるため、これらのイベントには、できるだけ早く参加しておこう。

総合型選抜の
スケジュール例

総合型選抜のスケジュール例

3年1学期の中間・期末テストが最後のチャンス

総合型選抜の出願書類には、3年1学期(前期)の成績までが加味される。そのため、3年1学期の中間・期末テストが最後のチャンスだ。現役生は、2年生のうちに自分の志望大学・学部の成績基準を調べ、2年生までにおける自分の学習成績の状況を確認しておこう。3年1学期(前期)のテストでどれくらいの評定を狙うかを明確にして学習に取り組もう。

総合型選抜におけるよくある失敗例

エピソード1: アドミッション・ポリシーの理解不足

Aくんは、国立大学の工学部を志望していた。彼は「大学ではアルバイトや得意な英語の資格試験の対策に力を入れて早く社会で活躍したい」と考えていたが、大学が求める人材は「将来研究者として活躍したい人材」であり、アドミッション・ポリシーにも明示されていた。
総合型選抜の面接では「大学ではどのような研究がしたいか」や「将来研究者になりたいか」などの質問が問われたが、うまく答えることができず、面接官に対して、大学の求める人物像に合っていないという印象を与えてしまった。高校の評定平均はよい成績だったものの、不合格となった。

エピソード2: 安易な気持ちで総合型選抜を受験

Bくんは、学力試験に不安があるため、総合型選抜で第一志望の大学に挑戦することを考えた。最初は、書類審査と面接であればそこまで時間がかからないだろうと軽い気持ちで受験したが、予想以上に準備が大変で時間を取られ、学習時間が減ってしまった。面接でアピールできる高校時代の実績も持ち合わせていなかったので、総合型選抜に不合格。一般選抜でも志望校の変更を余儀なくされ、こんなことなら最初から勉強して学力を上げて一般選抜を狙えばよかったと後悔した。

エピソード3: 面接での準備不足

Cさんは、総合型選抜の面接に臨む際、志望理由書に関してはしっかりと準備していたが、面接に対する準備が不足していた。初対面の面接官2名に質問されて、緊張のあまり言いたいことを十分に伝えることができなかった。面接で質問された内容は、志望理由書の内容を深堀りするような内容で事前に想定しておけば対応できる内容だったと、準備不足を反省した。

これらのエピソードは、総合型選抜において「アドミッション・ポリシーの理解」、「自己理解」、「十分な準備」がいかに重要であるかを示している。総合型選抜を受験するまでに、大学で学びたい具体的な内容を明確にし、自分の言葉で説明ができるようしっかりと準備をしておこう。

まとめ:総合型選抜の選考方法に応じた準備でチャンスを逃さない

総合型選抜は出願時期や試験時期が一般入試よりも早いため、志望理由書対策、小論文対策、面接対策など、早期の準備や対策が必要になる。それぞれの選考方法に合わせた対策で、チャンスを逃さずに志望校合格への第一歩を踏み出そう。

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