どんな活動をしているのか
企業からの課題に取り組む
少人数形式の学びであるゼミに力を入れる武蔵大学では、学部ごとに行われる通常のゼミとは別に、学部横断型ゼミナール・プロジェクトを実施している。その名の通り、様々な学部から意欲のある学生が参加するゼミの形だ。
学部横断ゼミの最大の特徴は、実際の企業の課題を、学生たちが自ら発見し考察すること。毎回異なる企業の協力を得て、学生たちは約3カ月かけて「その企業を取り巻く社会課題を解決するための提案」を行うことを目指す。
学生たちは、人文学部なら企業の歴史といったように、各学部の専門性を生かして協力企業を徹底的に調査する。他学部の学生との協働から、異なる考え方を知り、多様な視点を得る。
活動の目的と得られる経験とは
思考力や社会人基礎力を養う
企業が直面する社会課題には、明確な答えがないケースが多い。学生たちには自ら調べて考える姿勢が求められる。学部横断ゼミを担当する経済学部の鈴木正明教授は「これからは不確実性の時代。そうした社会で生きていくために、学生には学部横断ゼミを通じて、未知の問題を考える力や、社会を生きる足場となる世界観を獲得してほしい」と狙いを説明する。
さらに、背景の異なる仲間と協働することや主体的に問題に取り組むことで、学生たちに社会人としての基礎力を身につけてもらうのも目的。学生同士でチームを作り活動する過程や、企業の担当者と密に対話できる経験自体も、社会人として活躍するための助走になっている。
参加した学生の成長
現場での発見を提案に反映
学生たちは前半で企業について調査し、中間発表会を経て、後半で社会課題の解決に向けた提案をまとめ、最終報告会で企業に発表する。その過程で、企業の経営者にインタビューしたり、実際の生産現場を見学したりする機会もある。2024年度の春学期は、雪印メグミルク株式会社が学部横断ゼミに協力。学生たちの一部は、北海道の牧場や茨城県の工場などを見学し、酪農や同社の製造現場に理解を深めた。
見学した学生は、「酪農は大変なものだというイメージがあったが、とても楽しそうだったのが意外だった」と語り、最終的な提案には実際に感じた酪農の楽しさを反映した。提案をまとめる際は、学生視点らしい発想の独自性と、実現可能性とのバランスが難しかったという。
活動の成果と今後の展望
成長を実感し未来へ羽ばたく
学部横断ゼミを経験した学生たちは、指導する教職員の目から見ても「大きく成長した」と感じることが多い。学部で学んだ専門知識を生かすことや、最終的な提案という目標の達成、チームで活動する難しさ、自分の言葉での発表などを経験し、社会でも必要とされる力が身につくからだ。学生同士や企業と関わる中で、コミュニケーション能力も磨かれる。
大学側としては、企業に協力してもらうことのメリットも大きい。外部の企業の目が入ることで学生たちの緊張感や成長につながる。さらに、学生たちが未知の産業の存在や企業理念などを学び、視野を広げる貴重な機会にもなる。主体性やチームワークを育む学部横断ゼミ。今後も企業と連携しながら、社会問題の解決に貢献できる人材を育成していく。